──私は自分の知る世界が酷く狭いことに気がついた。
理解しているつもりだった。王族として、1人の学生として、この大陸に生きる人間として。世界には様々な事情で苦難に陥っている人々がいることを。
そしてその中には生まれた時から大変な目にあって人並みの生活を享受出来ず……その果てに命を落としてしまう子供がいることだって、知っているつもりだった。
マーシア孤児院の子供たちのように、親切な人達に救われて愛情を与えられるならそれでもいい。両親を失くしたって家族や隣人に恵まれているなら、それでもまだ恵まれている。
──だけどそれも何もない……生まれた時からずっと人としての尊厳を踏み躙られて生きてきた相手にかける言葉は……何もありませんでした。
……正直なところ、最初にそれを聞いた時は先輩の語り口があまりにも軽かったので冗談かと思ってしまいました。もしかしたら頭が理解することを拒んでしまったのかもしれません。
だけどすぐに、それが冗談ではないことに気づき、徐々にそれが事実だということに胸の鼓動が強くなり、身体に圧迫感を感じて、急激に身体が重くなる……そんな感覚を得ました。
その生い立ちには一切の救いがない──アーヤ先輩のこれまでの経緯には、どこを取っても闇しかない。
私はそこで先程の教授と呼ばれた男の人の言葉を思い出しました。──私では、決して彼女を理解出来ない。生まれに恵まれ、闇の一端すら知らない私では。
そして知ったとしても、理解出来るかどうかは分からない。その言葉の意味を、ここで初めて理解した。
私はアーヤ先輩のことを何も知らなかったし、知ったとしても何も理解は出来ない。その過去の重みに、それに少し触れただけで私の心は悲鳴を上げている。その言葉を使いたくはない。でも正直に言えば、どうしようもなく可哀想で。真剣に考えれば考えるほど彼女にはまともな道が用意されていなかったであろうことが分かって──私は何も言うことが出来なくなっていた。
それなのに──
「──ってことでそんなことがあったわけだけど、
「え……?」
「気にしないでって……どういうこと……?」
それなのに先輩は、そんな過去を口にしながらも私たちにそう言いました。
私たちのことを気遣うように。いつものように明るく、エステルさんの疑問に答えます。
「気にしたってしょうがないし、
「っ……!」
「それ、は……」
「……………………」
おどけるように、しかし、真面目にそう思っている──そんな様子のアーヤ先輩の言葉に、私は二の句を継げなくなる。エステルさんも言葉をつまらせ、レーヴェさんですら無言のまま何か思うところがあるような雰囲気を見せています。
その明るさ。いつも通りの優しさ。割り切りの良さに、私は罪深いことに異常さを感じ取ってしまったから。
気にしない──言葉で言うのは簡単でも、それをするには難しすぎる過去。
だけど実際にアーヤ先輩はそう言っていて思っていて……その苦難に満ちた過去をどうでもいいと切り捨てているようにも見えて。
もしくは心が壊れてしまったのか……それともそれだけの事を経たからこそ、歪んでしまったのか。
それとも本当に、気にしていないで、今が楽しいからと笑っているのか。
今が楽しければ良い──それだけのことで、笑えていることに、私は言いようのない感情を、複雑な、ないまぜになった感情を感じて。
一言で言うなら、痛ましさを感じて。そして──
「……あはは、だから気にしないでってば。泣きそうな顔しないで」
「……ぁ……」
──アーヤ先輩は、私にそっと近づいて頭を撫でてきます。
まるで小さい子をあやすように。マーシア孤児院の子供たちにも見せたように。
アーヤ先輩は変わらず優しくて……。
「っ……どうして……何故、そんな……」
「んー? まあ
「っ……」
──だけどその言葉の節々には、今までは見えなかった闇が垣間見えて。その何気ない先輩にとっての普通の言葉を聞くだけで、どうしようもなく胸が苦しくなって。
「……その辺にしといてやれ」
「え? ああ、うん。だからこれ以上語るつもりもないよ。あはは、嫌な気持ちにさせちゃってごめんね? 私はもう出ていくからさ。辛かったら私のことなんて考えなくてもいいから安心……は出来ないかもだけどゆっくり休んでね」
「……せん、ぱい……」
「アーヤ……」
──レーヴェさんがアーヤ先輩の言葉を止めて、そろそろ一緒に部屋から出ることを促したところでアーヤ先輩は私たちを気遣うようにして苦笑いを浮かべながら背中を向けて部屋を出ていきます。
私はそれを止めることが出来ない。なんて声を掛けたらいいのかも分からない。ただその闇の一端を知っただけで、蹲ってしまうような情けない小娘に、アーヤ先輩を引き止めることなんて出来ない。
「ちょ……ちょっと待って!」
「!」
だけど、エステルさんは違いました。
そこで踏みとどまって、去っていく2人に声を掛けます。勇気を振り絞って、為すべきことを為そうとして。
「あなたたちは一体何を……何のために、こんなことをしているの?」
「え、ああ、私は……まあちょっと個人的な理由で……」
「……俺は俺の、選んだ道がある。その道を遮るものは如何なるものも斬ると決めた。たとえそれがカリンの願いであってもな」
そしてその質問を受け、視線を横に迷わせたアーヤ先輩と違って、レーヴェさんは迷いのない瞳でエステルさんの質問に答える。
ヨシュアさんですら排除すべき存在であり、いずれ始末をつけると言うレーヴェさんの言葉にも動揺しながらも、私はアーヤ先輩の目的が気になってしまって。
でもそれを推測する材料はなくて。結局私は何も言えずに2人が去っていくのをただ見送りました。
「計画の第三段階がいよいよ実行に移される」
「だ、第三段階って……」
「フッ……お前がそれを知る必要はない。事が成ったら、2人共家に帰してやることも出来るだろう」
「それはそうだね。ちゃんとすぐに帰してあげるからそこは心配しないで!」
「ああ。それまではせいぜいここで大人しくしているがいい」
「ちょ、ちょっと……!?」
「言っておくが……逃げようなどと考えるなよ。地上8000アージュの高みだ。どこにも逃げ場など無いぞ」
「落ちたら即死だろうからね。落ちないように気をつけてね! 後何か用事や必要なものがあったら何でも言って! ご飯でもお洋服でも何でも用意するし。あ、お風呂もあるよ! 入りたくなったらいつでも言ってねー。それじゃ!」
そうして最後に計画のことを仄めかし、いずれは帰してもらえること。逃げないようにと忠告をした上で2人は今度こそ部屋を出ていきました。
「……クローゼ……大丈夫?」
「エステルさん……」
「なんて……あたしも正直大丈夫じゃないんだけどね。レーヴェだけじゃなくてアーヤの過去まで聞いて……正直ちょっと参っちゃってるかな……」
「そう、ですね……私も参ってしまいました。なんて言葉を掛ければいいか……未だに分からないんです」
「…………」
「でも……何とか考えて答えを出さないと……そうじゃないと先輩は……」
「……そうね。でも、今は……少しの間だけ
「……え?」
閉じ込められて絶体絶命の状況で、だけどエステルさんは思い悩む私にそう言いました。
「前に学園でヨシュアのことについて相談した時もそうだったけど……アーヤのことを聞かされて、不安に思うのも悩んでしまうのも当然だと思うの。私だって正直悩んでるし、深く考えると心が哀しくて、どうにかなりそうになる」
「…………」
「……いずれ悩んで……それで答えを出さなきゃいけないと思う。だけど今は……そのためにも、ここから脱出することを考える方が先だと思うんだ」
「エステルさん……」
エステルさんのその言葉を、一緒に悩みながらも私を励まし、そしてそれでも前に進もうとする。
今まで私たちを引っ張ってくれたその力に、私は心がほんの少し軽くなるのを感じました。
「……そうですね。何をするにも……どんな答えを出すとしても……今はこの状況を何とかしないと始まりません」
「うん。だから一緒に頑張りましょ。ここから脱出して前に進むために」
「……はい!」
そして私も……エステルさんみたいに、前に進まなければならないと。
どんなに辛くても、苦しくても……エステルさんや、アーヤ先輩のように──前に進まなくちゃいけない。
私はポケットに入れていた銀の翼を模したブローチを、アーヤ先輩が落としたそれを強く握りながら思う。悩みは尽きないし、答えだってまだ出てこない。
だけどいずれ、私は答えを出して……その時になってアーヤ先輩にこれを返したい。未だ重く苦しい心を抱えながらも、その想いだけは真実で──エステルさんがヨシュアさんを想うように。エステルさんが私を勇気づけてくれたように……その絆が、私の身体に力を与えてくれた。
──だから私は立ち上がり、エステルさんと共にこの船から脱出することにした。
──はいどーもー。アーヤ・サイードでーす。最近過去を友人たちにカミングアウトしたらドン引きされてしまいました。やっぱりもうちょっとギャグも入れといた方が良かったかな……? 薬飲まされたらお腹壊しちゃった話とか、No.1の人気嬢に如何にして上り詰めたかをサクセスストーリー風にして語り聞かせるとかの方が良かったかもしれない。もし次があればもうちょっと考えよう。
まあそれはともかくとしてだ。エステルちゃんとクローゼちゃんを同じ部屋にして私の過去を話して2人が苦しそうな表情になったのを悪く思いながらもレーヴェと共に部屋を出ていった私は、それからしばらく服を縫ったりしながら時間を過ごした。素性はバレちゃったし、どうなるか分かんないけど服を仕立てるのは楽しいからね。すごく落ち着く──あ、そう言えばブローチ。クローゼちゃんが拾ったままだ。どうしよっかな……今から返してもらうのもなんか気まずいし……まあちょっと惜しいけどしょうがないかな。クローゼちゃんも返すつもりないかもしれないし。いや、そんな子じゃないか。次会った時にでも返してくれたりするかもしれないし、こっちから言わずに待っていよう。友達が物を借りてる時に返してと言い辛くなる心理みたいなものだ。気まずいから向こうから言い出すまで待ってみよう。いつまで経っても返ってこない可能性もあるけどその時はその時だ。甘んじて受け入れよう。
なんてことを考えながら服を仕立てること2時間。私の元に報告が来た──なんでも、エステルちゃんとクローゼちゃんが部屋から逃げ出したらしい。お、いいぞ! そのまま逃げろ逃げろー! このまま船にいても良いことなんて何もないからね! エステルちゃんもそうだけど王女誘拐なんて洒落にならないんだからさっさと帰してしまった方が良い。
なので私は絶対に2人を捕らえるのを手伝わない。手伝わないけど、一応形だけでも止める素振りは見せないといけないのでレーヴェと一緒に甲板に向かう。すると報告通りエステルちゃんとクローゼちゃんだけじゃなく──ヨシュアくんもいた! きたー! やっぱり潜入してたんだね! 信じてたよヨシュアくん! 君なら絶対やってくれるってね! 目がまだ死んでるけどそこはヨシ! エステルちゃんにレーザー治療してもらえばすぐ治るからね!
「フフ……ようやく姿を現したか」
「あ、やっぱりいた!」
ということで私はレーヴェと一緒にヨシュアくんの前に姿を現す。そうして元気よく声を掛けた。久し振りだからね。前に会った時は記憶はなかったし、本当に懐かしい。執行者候補時代は一緒に色んなところに出かけて敵を殺しまくったこととか思い出す。
「……久し振り、レーヴェ、アーヤ。僕が潜入していたことを予想していたみたいだね」
「お前の能力を考えれば充分ありえる話だからな。アーヤの報告もあって手段についてもおおよそ見当は付いているが……一応聞かせてもらおうか?」
「頑張りました!」
「……この船が来る直前に航路確保の偵察艇を狙った。《執行者》もいなかったからわりと簡単に潜入できたよ」
「……教授が方舟を呼び寄せることまで読んだか。結社にいた頃のカンは完全に取り戻せたようだな」
「ヨシュアくんすごーい! さすがの実質執行者! 私がいなかったら絶対に執行者に成れてたくらいすごい!」
「おかげさまでね。いつレーヴェやアーヤたちに発見されるかヒヤヒヤさせられたけど」
「フッ、お前の隠形を見破れる者はそうはいない。見破れるとしたらお前以上の暗殺者であるアーヤくらいのものだが、そのアーヤが船にいないのではな」
「いやーいたとしても難しいと思うよ? 私も隠れる方がちょっと得意なだけだし。探す方は他の皆の方が上手いんじゃないかな?」
「……いずれにせよ、隠形というものは一度認識されたら終わりだ」
そんな感じで楽しくお喋りをしながらレーヴェは剣を抜く。なので一応、私も《ゾルフシャマール》を取り出してやる気はありますよアピールはしておく。実際には絶対やらないけどね。レーヴェ1人でもオーバーキルなのに私まで混ざったらバッドエンドまっしぐらだし。
「お前は最大の武器を失った。この《剣帝》と《血染の裁縫師》……執行者2人相手にいったい何をするつもりだ?」
「何かするつもりなら早めにした方がいいよ。あんまり遅いと大変なことになっちゃうかもだしさ」
「……………………」
「念の為言っておくけどあたしだって動けるんだから!」
「私も加勢します……!」
「そうよ! いくらあなたたちが強くたって、そう簡単には……」
「……2人とも下がって。レーヴェは強い。僕たち3人を合わせたよりも」
「う……」
「アーヤにしたって僕以上の暗殺者だ。正面からの戦闘力も僕より遥かに上で相性も悪い。勝ち目はないよ」
「ですが……」
え、そうなの? 暗殺者としてはヨシュアくんの方が上だったりしない? まあ確かに正面からの戦闘はすっかり差がついたというか、ヨシュアくんの方にブランクがあるせいか私の方が強くなっちゃったけどさ……でもヨシュアくんの方が速いし、ミスは少ないし、隠れるのだって上手だし、判断力もあるから優秀だと思うけど……まあ勝てないって意味じゃ確かにその通りかもだけどさ。でもヨシュアくんは私のことそんな風に思ってたんだ。そう思うとちょっと照れるなぁ。意外と尊敬されてたんだね、私。
「それが分かっていながらお前はこの場に現れたわけだ。別にその事を甘いと言うつもりはないが……ならば、どうしてお前はその娘の前から姿を消した?」
「……っ…………」
「あ……」
「守るなら守る。切り捨てるなら切り捨てる。そう徹底しろと俺はお前に教えたはずだな?」
「うん……そうだね。教授の調整が終わった直後……初めての訓練で教えてくれた」
「え、そうだったの? てっきり最初の訓練相手って私かと……いやでも懐かしいね。いきなり殺し合いをさせられた時はどうなるかと思ったよ。本当に殺されそうで怖かったなぁ」
「僕にしてみれば僕の攻撃が何1つ通じない君の方が怖かったけどね」
「……本当にその娘が大事ならお前は消えるべきではなかった。罪悪感に苛まれながらも側に居続けるべきだった。お前がそうしなかったのはただの逃避──欺瞞にすぎん」
うわぁ……レーヴェ厳しい……弟分だからかもしれないけどレーヴェってそういう現実逃避とか嘘とかそういうの嫌いだもんね。欺瞞は絶対に許さないというか嫌悪してる。まあ生い立ちが生い立ちなんでしょうがないけどね。レーヴェもヨシュアくんも可哀想で仕方ないよ。ほんと。
「分かってる……レーヴェに言われなくてもそんなの分かっているさ……」
「ヨシュア……」
「でも……だったらレーヴェはどうなの……? 本当なら、僕だけが払うべき代償だったはず……なのに《結社》に入って《剣帝》なんて呼ばれて……どうして今も教授なんかに協力しているのさ……!」
「…………………………………………」
おっと! 今度はヨシュアくんからの口撃だ! まあそりゃ嫌だよね。変態ショタコンエロ教授に協力してるなんてさ。私だって嫌だもん。レーヴェのことがなければすぐにでもボイコットどころか反逆して世のために闇討ちしようか迷うところなのに。ヨシュアくんとしてもあの変態性悪教授に兄みたいな存在が協力しているなんて嫌だろうし、レーヴェの方も思うところはありそうだ。──まあそれでもレーヴェにはレーヴェの目的があるんだけどね。
「俺が教授に協力するのはお前の件とは一切関係ない。あくまで俺自身の望みのためだ」
「レーヴェの望み……それってやっぱりカリン姉さんの……?」
「復讐してもカリンが戻ってくるわけではない。だから俺は……この世を試す事にした。それが教授に協力する理由だ」
「この世を試す……」
そうそう、そういう理由があるんだよね。でも一応ヨシュアくんのことだって気にかけてるよ。レーヴェは優しいからね。そう言いながらも犠牲者を必要以上に出さないようにはしてるし、そうすることで今後の欺瞞による犠牲者も減らそうとしている。うーん、やっぱりかっこいい! 1回でいいから抱いてくれないかな。
「さて……お喋りはここまでだ」
「え!? もう終わり!?」
「お前の選択肢は3つある。仲間と共に投降するか。仲間を守ってここで果てるか。仲間を見捨てて1人逃れるか──『アーヤちゃんともう少しだけ楽しくお喋りをするか』……4つ目の選択肢は除いて選ぶがいい」
「ヨ、ヨシュア……」
「ヨシュアさん……」
「……………………………………悪いけど、4つ目の選択肢を選ばせてもらうよ」
「えっ!? 嘘!? 私と楽しくお喋りするの!? 自分で言っといてなんだけど本当に!? ……ヨシュアくん頭おかしくなっちゃった?」
「……5つ目の選択肢を選ばせてもらうよ」
「なに……」
そしてヨシュアくんが何故か4つ目の選択肢を選びかけながらも5つ目の選択肢を選んだ直後──船が振動し、轟音が響いた。
「なっ!?」
「これは……」
「……導力機関に細工をさせてもらった。放っておいたらこの船は海の藻屑と化すだろうね」
「「あ、あんですって~!?」」
「……やってくれたな。まさか認証が必要な機関部に侵入するとは……」
「ほんとだよ! 思わずエステルちゃんと一緒に驚いちゃったじゃない!」
「22基のエンジン全てに異なる仕掛けを施している……教授やレンたちがいない今、解除できるのはレーヴェだけだ」
「え、私も出来るよ?」
「計画を阻止するための最後の切り札というわけか……」
「レーヴェ、私も出来るよ?」
「それをこのタイミングで切ってしまうという意味……その欺瞞からいつまで逃げるつもりだ?」
「……っ…………」
「私も出来るよ?」
「フフ、今度会う時までに答えを用意しておくがいい」
「頑なに無視されてる!? え、私も解除出来るよ!? なんで私に任せないの!? なんで!?」
「楽しみにしているぞ。──さあ行くぞアーヤ。お前は俺の側から離れるな。目の届くところにいろ。そして、
「え……キュン……あ、はい……」
そうして、私は何故かレーヴェにキュンとする言葉を掛けられて連れて行かれる……いや、私的にも助かるんだけどなんでだろう……爆弾解除の経験なら私もあるし、知識もちゃんとある。……まあ確かにたまに失敗する時もあるけどさ。でも今度はちゃんと失敗しないように学んできたし、今度こそ成功すると思うんだけど……私にしては真面目に勉強してきたのに……毎回ちょっと運が悪いだけなんだけどなぁ……それにエステルちゃんたちの足止めも頼まないのは何でだろう。やっぱり手心を加えてるのかな? 私が脱出阻止に動いたら3人が脱出出来ないかもだしね。
──ということで私とレーヴェはその後、グロリアスのエンジン部分に仕掛けられた22個の爆弾を全て解除していった。私は爆弾に触れるのも近づくのも禁止されたのでレーヴェの目の届く場所で応援役だ。レーヴェはこういうことも出来るんだよね。というか大体何でも出来る。レンも天才だけどレーヴェも天才だよね。なんならヨシュアくんも天才だし、私の周り天才多すぎる。
そんでまあ、その後ヨシュアくんはエステルちゃんとクローゼちゃんを連れて小型飛空艇で脱出したらしい。カンパネルラが後で教えてくれた。そっか……無事脱出出来たんだ。良かったぁ……これで後は良い感じにエステルちゃんがヨシュアくんを光パワーで何とかしてヨシュアくんもパーティ復帰! そして結社の陰謀を阻止だ! しっかりと流れが出来てるぞ! 偉いぞ!
そしてその間にも私はグロリアスで待機しつつ、他の執行者たちが四輪の塔で実験というか計画を進めるのを見守って、4人と教授が帰ってきたところで皆と一緒に甲板へ。レンとかからエステルちゃんたちの様子について話を聞きたかったけどこの分ならまた後になりそうかな。多分普通に過去匂わせしつつ戦ったんだろうけどね。詳しいことは後で教えてもらおう。
──そして遂に……
「おお……!」
「これは……」
「クハハ……マジかよ!」
「うふふ……素敵ね」
「あはは! 確かにこれはスゴイや! 教授が勿体ぶってたのも納得だ!」
「ねーすごいね! あ、写真撮らなきゃ! これは映えるし見てるだけで創作への刺激が高まるし! レンも一緒にほら、入って入って! はい、チーズ!」
「フフ……お気に召したようで何よりだ。《輝く環》は永きに渡って異次元に封印されていた……だが端末たる《福音》があればこちらの次元にも干渉できる。問題はレプリカの精度がどこまで上げられるかだったのだ」
──教授がなんか色々言ってるけど割とどうでもいい! すごいから写真撮らないと! いや、知識としては知ってたし、今この瞬間にも大規模な導力停止現象が起こってるから不謹慎極まりないけど実際に見ると確かにすごい! 浮遊都市《リベルアーク》! 《輝く環》が封印されてる空に浮かぶ古代の空中都市! ガチですごい! なので写真撮る! 新しい衣装のデザインが浮かびそう! ついでにレンとも一緒に映ろう! 記念写真だ! いえーい! ピースピース! 教授の御高説なんて聞こえないぜ!
「諸君の働きのおかげで第三段階は無事完了した! これより『福音計画』は最終段階へと移行する──」
──そして教授はそう宣言した。……で、何するんだっけ? 最終段階とか言ってるけど後は《輝く環》を手に入れて願いを叶えてもらうとかそれだけじゃないの? なんだっけ……あんまり覚えてないけど、とりあえずワイスマンがラスボスになることは覚えてる。年末の歌番組の大トリで出てくる感じの……ハッ!? もしかして白面ってそういうこと!? 白組とかけてる!? なんてこった……さすがファルコムさん。そんな隠れた意味まで持たせていたとは恐れ入る。
ならそれまでは暇なのかな? 後は待ち構えるだけかもしれない。つまりはエステルちゃんたちがラストダンジョンであるリベルアークにやって来るまでは良い感じに暇して──あ、そういえばまだイベントあったっけ? それならそっちに参加した方が良いかも知れな──
「さて、レーヴェ。それにアーヤ。君たちには浮遊都市リベルアークの制圧をお願いするよ。都市には古代の人形兵器や多くの魔物が巣食っているだろうからね。邪魔が入らぬようある程度は間引く必要がある」
「──了解した」
「──あ、はい。よろこんでー」
──と思ってたんだけど、なんと私はレーヴェと一緒にリベルアーク制圧班に回されてしまった……うわああああ!!? リベルアーク攻略だー!! レーヴェと一緒にー! それは全然良いんだけど、このままじゃ王都が襲われちゃうー!? そっちに行ってさり気なくクローゼちゃんを守ってあげようかと思ってたのにー!? 早く終わらせないと間に合わないよー!? うわあああああん!!?
遂にラストダンジョンが出てきたところで今回はここまで。次回はまたヨシュア視点とか執行者が城を襲撃したりとかリベルアーク攻略したりとか色々。どの辺を描写するかは悩み中。暗い話大好きな変態の読者様に向けてお届けします(前回の感想が多すぎて良い意味で引きました。ありがとうございます)。ということでお楽しみに。
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