TS不幸少女のゼムリア大陸災難記   作:黒岩

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浮遊都市を攻略する不幸

 ──僕はずっと彼女のことが苦手だった。

 

 それはグロリアスから逃げる飛空艇の中でも言ったこと。

 

「僕とアーヤは……結社の同期みたいなものでね。僕が教授に拾われて調整を終える少し前に彼女も結社に入っていたんだ。執行者候補として初めての訓練相手……殺し合いの相手が彼女だと教授に告げられてね」

 

「そうだったんだ……」

 

「…………」

 

「でも調整された僕の殺しの技も彼女には通用しなくてね。ほぼ一方的に負けてしまって……それからは同じ執行者候補として幾つもの仕事や訓練を一緒に行ったんだ」

 

 そう。僕はそうして結社での生活を、人形としての生を始めた。

 だけどそこでも僕は不完全な存在であることを突きつけられた。

 

「でも一緒に仕事をすればするほど嫌でも理解させられたんだ。僕は……アーヤには敵わないんだって。肉体の頑強さ。殺しの技術。精神的な強さ。アーヤは僕以上に無茶な任務をこなし続けてきた。執行者の席も彼女に先に座られてしまって……」

 

 暗殺者としての優劣は完全に向こうの方が上だと証明されてしまった。

 だけど昔の僕が目を背けたのはそういう部分よりも──

 

「でも彼女は僕よりも重い過去を持ちながら……それなのに僕なんかよりよっぽど人間らしく輝き続けていたんだ」

 

「それは……」

 

「その様子だと2人も少し聞いてしまったみたいだね……なら分かると思うけど、彼女は僕よりも辛い経験をしながら、それでも心が壊れるようなことはなかったし、人間らしさをいつだって保ち続けた──僕は彼女の下位互換でしかなかったんだよ」

 

「そんなことは……!」

 

「うん、ありがとう。そう言ってくれるのは嬉しいけどね。でも僕にとってはそれが事実だった。心が壊れ、調整しなければ戦えない不安定で虚ろな人形よりも、身体も心も決して壊れることのない強い人間の方が有用だった。だからこそ人形である僕はいつしか彼女を苦手に思ってしまったんだ」

 

 そう……僕は彼女たちにそう告げた。

 もちろん嫌いじゃない。嫌いにはなれなかった。彼女の人格は結社の人間にしては明るいものであったし、その過去を考えれば嫌いになれる要素は特になかった。

 だけどそういう僕とは違って人間だからこそ苦手意識を感じたんだ。

 僕が最初、エステルを遠ざけたように。僕と彼女では違う存在なんだと、そう感じてしまったから。

 

 ──だけど、今はもう違う。

 

 その後、僕はエステルと改めて話をして……エステルは、僕自身の嘘を暴いてくれた。

 僕が僕に抱える欺瞞……それを見抜いた上で、それを認めてくれた。1人の人間として。

 だから僕も、1人の人間としてまた戻ることが出来た。

 そして、改めてエステルたちと共に結社の計画を阻止することに決めた。

 もちろんそれは茨の道だ。

 教授もレーヴェもアーヤも、仮にグロリアスを爆破したところで倒せる確率は極めて低かった。

 だけど正面から戦えば、それ以上に苦しい戦いになることが分かっていたから僕は敢えてその手段を取ったんだ。

 でもそれでも……もう僕は逃げない。エステルと一緒に最後まで歩いて行くことを決めた。

 

 ──そうして僕は色んな人に、仲間たちや父さんにも謝って、そうしてまた戻ることが出来た。

 

 それからは再び事態を収拾するために《アルセイユ》で各地にある塔に向かうことになり……そこで僕は古巣である結社の執行者たちと改めて対峙することになった。

 

 ブルブラン……ヴァルター……ルシオラ……誰もが僕以上の達人たちで、やはり簡単にはいかなかったし、目的は遂げられてしまった。

 だけどそれ以上に辛くなったのはレンと対峙した時だろう。

 僕じゃなくて、エステルやティータ、クローゼが心配になった。彼女と戦った後に、レンは自分の過去を語り聞かせたんだ。

 

「でも代わりにアーヤが……それにヨシュアとレーヴェもレンを迎えに来てくれたのよ。悪い大人を皆殺しにしてね」

 

「え……」

 

「……《結社》はたまに下劣な犯罪組織を潰す事がある。もちろん正義のためじゃなく、自らの秩序に組み込むためにね。そんな任務の1つだったんだ」

 

「そうだったんだ……」

 

 そしてレンが結社に引き取られた経緯を僕からも補足して……。

 レンは更にアーヤとの関係についてもエステルたちに説明した。

 

「リベールのお姫様。レンもあなたとはちょっと違うけれど、アーヤの後輩なの」

 

「え……?」

 

「もちろん学校じゃないわよ? さっきも言ったレンがいた場所……アーヤもレンが来る何年も前にそこにいてね。レンもかなり上手な方だったけどアーヤはそれ以上だったって悪い大人たちは惜しむようにいつも言ってたわ」

 

「……っ……」

 

「ふふ、本当にアーヤったらすごいのよ? レンは痛いのも苦しいのも慣れなかったけど、アーヤはそれに慣れて対応していたし、それを何年も続けていたの。レンが来る頃にはいなくなっちゃってたけど……でもアーヤは戻ってきた。今度は強くなって、レンたちを苦しめた大人を皆殺しにして、レンを抱きしめてくれたのよ」

 

「……レン、ちゃん……」

 

「アーヤにも()()()()()()()()()()()()()、それでもアーヤは私の面倒を見てくれた。優しくて明るくて面白くて……まるで本当のお姉ちゃんみたいに接してくれた」

 

「レン……」

 

 その時のことは……僕もよく覚えている。

 レンの傷ついた姿に、アーヤのほんの僅かに困ったようなあの表情がとても印象的で……思い出しただけで顔をしかめてしまうような、そんな出来事だった。

 そしてそんな経験を経たからこそ、レンもまた純粋なまま歪んでしまったのだろう。

 

「子供のレンが《結社》にいること自体間違ってる……? そんなのウソ! 《結社》に引き取られたからレンは本物のパパとママに会えた! アーヤやヨシュアたちにも出会えて、この世で1番幸せな女の子になれた!」

 

「……レン……」

 

「レンはアーヤみたいになるのが夢なの。どんな時でも明るく笑って、日常も非日常もどんなことだって楽しくこなしちゃう優しいお姉さん。──だからそれを否定するならエステルはレンの敵よ……パパとママに潰されて苦しみながら死ねばいい」

 

 そうしてレンはゴルディアス級戦略兵器パテル=マテルを僕たちに襲いかからせ、辛くもそれを凌いだ後、レンは目的を果たして離脱していった。

 だけどレンがあんな風に昂ったところは初めて見た。

 それはエステルの言葉が効いた証拠なんだろう。アーヤに似ている部分も少なからず影響したのかもしれない。でも間違いなくエステルにしか出来ないことだった。

 僕とは違って心が壊れなかったレン。

 だけど、レンもアーヤみたいに心が傷つかないわけじゃない。

 レンは感情を制御して我慢しているだけなんだ。

 だからこそレンの心には響くものがあるはずで、僕もまたエステルと同じようにレンを救いたいとそう思った。

 

 ──でもその後すぐに、大変な事態が起こった。

 

 ──《輝く環》……ヴァレリア湖上空に現れた浮遊都市によって、リベール全土の導力機が停止してしまったんだ。

 

 国家としての機能が麻痺したことで国中が混乱した。

 そこで僕たちはラッセル博士が開発した零力場発生装置を各地の支部に届けることで通信網を回復させるべく行動を開始した。

 もっとも数に限りがある上に、限定的な使い方しか出来ないからこうするしかなかったんだけど……それでも通信網だけでも回復すれば物資や人員をどこに移動させればいいかの対処が出来るようになる。

 だから僕たちは王国の各都市を周り始めた。……因みに、最初に降り立ったボース市ではアーヤが社長を務めるサイード社の社員さんたちやセラさんとも出会ったけれど、彼らは暖房が使えなくなった市民に無料で温かいコートや衣服なんかを提供しながら、アーヤについては先に共和国に帰ったものと認識しているらしい。いつもふらふらして勝手に色んなところに行ってしまうから特に心配もしていないそうだ。

 僕たちはそれを聞いてアーヤさんのことについて説明するべきか迷ったけれど……今は置いておくことにした。彼らに心配をかけることになるし、通信を復活させることの方が先決だ。

 

 ──そしてその後は目的通り各地を回って……そして王都にもやって来たところで、僕たちはそこで飛空艇が王都の方へと向かうのを見かけた。

 

 導力停止現象の中でも動く結社の飛空艇。それを見かけた僕たちは急いで王都に向かい、途中で倒れていた兵士に聞いて王城へと向かった。

 おそらく、彼らの目的は女王陛下とクローゼだろう。理由は分からないが教授が指示したことに違いない。

 そしてやって来たのはやはり塔で対峙した執行者の4人みたいだった。途中で城門が素手で破壊された痕跡もある。これはおそらくヴァルターの、泰斗流の絶招だろう。以前にアーヤとレンとヴァルターが話していた覚えがある──「それ知ってるわ、ヴァルター! 確かアーヤを嘔吐させた技よね!」、「どんな覚え方してやがる……言っとくが、嘔吐くらいで済んだのはあいつが化け物みてえに硬いからで……」、「そうだよ、レン! ヴァルターはこうやって人を嘔吐させることで相手を戦闘不能にするんだから」、「わあ、そうなのね! すごいわヴァルター」、「おう──って、違えよ!! 変なこと教えてんじゃねえ!!」──という会話をしていたのを思い出す。つまりヴァルターは最低でもいることは確定だ。

 

 僕たちは急いで城の中に入り、途中で倒れているフィリップさんやデュナン公爵を尻目に女王宮へ駆けつけた。

 そして空中庭園に辿り着き、そこで見たのは……既にアリシア女王陛下とクローゼが彼らに囚われている光景──

 

「──おらぁ!! 待ちやがれてめえ!?」

 

「きゃ──!!? 来るなヴァルター!! ──レン! お願い!! ヴァルターを食い止めて!!」

 

「うふふ、分かったわ。レンはヴァルターの相手ね♪」

 

「フッ、レンを使ってヴァルターを足止めしたか。だがこの私から逃げ切れると思うな、アーヤ・サイード! 君が抱えるクローディア姫は、我が手で必ず──うっ!?」

 

「──やったあ!! 喰らったね! アーヤちゃん特製香辛料爆弾! 辛さにして私が普段食べる10倍はある必殺激辛兵器だよ!! オジサンにも褒められたんだからね!!」

 

「ぐっ、げほっ、ごほっ!! ぐっ、なんど、優雅ではないて゛をぉ……! 汚いぞ、アーヤ・サイード……!」

 

「へへーん! 大口開けて喋りながら追いかけてくる方が悪いもんねー! ばーか、ばーか! そして更に行け! ジーク! みだれづき!」

 

「ピューイ!」

 

「ぬ、おおっ……!? 小癪な……!!」

 

「あ、あの……先輩……いつの間にジークにそんな芸を覚えさせたんですか……?」

 

「学園で仲良くしてたら自然に覚えたよ! 後はフィーリングだね! ──ってことで更についばんで仮面を奪ってやれ!」

 

「ピューイ!」

 

「ぬぅっ!? さ、させん……!! ゲホッ、ゲホッ! まさかこれほどに苦戦するとは……ふ、フハハハ!! だが面白い……! ゲホッ! これも我に与えられた試練ということか……! ごほごほごほっ!」

 

「……よく来たわね、ヨシュア。それにお嬢さんたち」

 

「……皆さん、よく来てくださいましたね」

 

「な……何よこれ……?」

 

 僕たちは、その空中庭園で何故かクローゼを抱きかかえて逃走するアーヤとそれをサポートするレン。追いかけるヴァルターとブルブランに、真ん中でそれを何とも言えない表情で眺めているルシオラとアリシアⅡ世女王陛下たちを見かけた。

 僕はその状況を冷静に見て、判断する。おそらくこれは──

 

「…………どうやらもう捕まってしまったようだね」

 

「そうは見えないんですけど!?」

 

 ──ダメだよエステル。アーヤのやることを真面目に受け取ったら。

 

 冷静にあまり気にすることなく対処するべきことだけに対処するのがコツだってレーヴェは言っていた。そのため、僕はエステルたちと共にその状況に対処することにした。

 

 

 

 

 

 ──あけましておめでとうございまーす。アーヤ・サイードです。色々ありすぎて祝う暇すらなかったけどもう年もとっくに明けて私も誕生日をこの間迎えました。今は1203年の2月。私はもう19歳です。後1年で完全に成人だ! お酒が飲めるようになるぞ! ひゃっほう! それに車の免許も取れるから色々落ち着いたら取りに行かないと! 何買おうっかなー。今度カタログ買おっと。

 

 でも今の私はまだ執行者としてリベールで《福音計画》を進めないといけません。なので遊びやら諸々はこれが終わってから。もうすぐで卒業式もあるから早く帰りたいんだけどね。出席出来るかどうかは知らないけど、まあそういうことは後回しにしよう。出来なければその時はその時だ。正直色々と憂鬱なことはあるけど……それでも今だけはテンションが高い! 何故かってそりゃあこの景色がすごいからね! 

 

 ──ということでやって来ました浮遊都市リベルアーク! 古代の実験都市! 全長5000アージュ以上! 多分高度は1万アージュ超えてる! 空に浮かぶ空中都市! 空に浮かぶ理想郷! 空の軌跡のラストダンジョン! 

 

「うわー! すごいよレーヴェ! めちゃくちゃ綺麗! テンション上がる! 新しいデザインの着想が得られるよ!」

 

「それは良いが、あまり油断するなよ。永きに渡って異空間に封印されていた都市だ。何があっても不思議ではない」

 

「大丈夫大丈夫! ほら、水綺麗! これって飲めるのかなぁ……? ねえ、レーヴェ。どう思う?」

 

「この辺りは工業区画だ。見たところ澄んだ水でも何か得体の知れない物質が紛れ込んでいる可能性がある。飲まない方が賢明だろう」

 

「ごくごく……ぷはぁー! うん、美味しい! すごい! なんか山の水みたい! 水もすごく美味しいよ! これだけ水があれば水道代かからないね!」

 

「……あらゆる願望が《輝く環》で叶えられる都市に、そのような概念はないとは思うがな。とはいえ、水も含めてあらゆるものに困らなかったのは事実だろうが」

 

「へー、やっぱ《輝く環》ってすごいんだねー。──って、また来た!? 人形兵器! しかもめちゃくちゃ集まってきたー!? レーヴェー!」

 

「……またか。お前がいると信じられないほどに制圧が捗るな……まさかじっとしているだけで人形兵器や魔獣が集まってくるとは」

 

「何でも良いから助けてー! すごい数多いー!」

 

「分かっている」

 

 と、そんなリベルアークには私と同じく、教授にリベルアークの制圧を命じられたレーヴェと一緒に来ていて、愉快に楽しく観光をしながら与えられた仕事をこなします。都市の真ん中にある中枢塔に移動しながら集まってきた人形兵器や魔獣をレーヴェと2人で蹴散らしていく。結構強いけど、正直楽だ。レーヴェもいるからね。私も戦うけど割と命の危険はない。

 

 とはいえいつまでもぐずぐずしてはいられない。制圧が終わったらすぐに王都に移動するつもりだからね。今は迎えの飛空艇を待っているところ──来る時はレーヴェのドラギオンでやって来た──なので今は暇してるけどもう少ししたら王都でクローゼちゃん守らないと。また攫うのはちょっと良くないよね。せっかく帰したんだからさ。教授の命令には反するけどこれくらいは許してほしい。計画には関係のないことだからね。たまには自由を行使させてもらおう。

 

 ……というかもうちょっとで計画も終わりなんだよね。ゲーム的には空の軌跡SCもほぼ終わり。後はなんやかんやあってエステルちゃんたちがこのリベルアークに乗り込んできて、因縁のある執行者たちとそれぞれ戦って、最終的にラスボスよりも強いレーヴェと戦って乗り越えた上で面白教授を倒してハッピーエンドだ。

 だがそのラストバトルにおいてレーヴェが死んでしまう。なので、私はそれを阻止するために計画に参加した。ここまで色々あったけどね。その苦労の甲斐あってその時はすぐそこまで迫ってきている。

 いやー上手くいくかなぁ……色々考えてはみたけどね。多分いけるとはいえ危険も伴うため油断出来ない。そもそも相手が塩カス変態エロ教授とはいえ、その能力は高いからね。ラスボス形態になった教授が実際どんなものなのかも未知数だし、難しいところはある。

 そもそもそこまで辿り着けるかもちょっとだけ心配。後はレンとかもちゃんとエステルちゃんの元に行けるかなぁ……? まあ大丈夫だとは思うけど、ちゃんと背中を押して上げないとかもね。

 後やっぱりレーヴェのことだけど……いや、勝てるとは思うんだけどさ、ヨシュアくんが本当に勝てるのかが心配だ。レーヴェの強さはよく知ってるし、ヨシュアくんの能力もよく知っている。それだけに、かなり厳しい戦いになるだろうし。しかもなんか私までいるし……まあ私はどこで戦うか知らないけど適当に流せばいいから──

 

「……どうかしたのか?」

 

「? 何が?」

 

「珍しく何か思い悩んでいるように見える。何か迷いや心配事でもあるのか?」

 

 ──おっと、まずい。水辺で足ぱしゃぱしゃさせてじっと無言で考え込んでいたらレーヴェに心配させてしまった。心労をかけすぎないように適当に答えよう。本当のことを答えるわけにもいかないしね。えーっと。

 

「ううん、別に何でもないよ! ただ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

「………………………………」

 

 と、まあ笑顔で適当に言っておこう。これも嘘じゃない。本心だしね。レーヴェの望みが叶う=私の望みも叶う。つまり生き残るってことだ。

 

「……ふっ、そうか。お前は変わらないな」

 

「えっ? それどういう意味? 私だって成長してるんですけどー? もう19歳で来年には成人するんだからね!」

 

「ああ。分かっている」

 

「来年になったら車の免許も取る予定だし、そしたらレーヴェも乗せてあげるね!」

 

「──いや、遠慮しておこう。それに免許も取らない方がいい」

 

「えー……やだ。免許は取るし車にも乗ってもらいます! 約束したからね!」

 

「約束した覚えは全くないが」

 

「ぶぶー! ダメでーす! もう絶対乗ってもらうからね! ってことで来年をお楽しみに!」

 

「ふぅ……まったく仕方のない奴だな」

 

 お、レーヴェが笑ってる! さすが私! 誤魔化しと適当な会話をさせたら大陸一だ! ……自分で言うとなんか虚しくなる気もするけど、誤魔化せたしレーヴェもなんか励ませた気もするからヨシ! 

 

 ──そしてそうこうしている間に迎えの飛空艇がやって来たので私はそれに乗り込んですぐに王都へ向かう。2人がかりだから予定以上に制圧が終わったし、多分間に合うはず! 

 

 私は居ても立っても居られずに飛空艇から王都を見下ろす。そして先に行ったレンたちを探して──あ、いた! やばい! もう空中庭園まで来てる! このままじゃ攫われちゃう! 

 

「あそこ! あの上に行って!」

 

「は……しかし、あそこに着陸することは……」

 

「いいの! 飛び降りるから!」

 

「! ……わ、分かりました」

 

 もうかなりギリギリだったので私は飛空艇を動かしている操縦士に命令してそのまま空中庭園の上空に。そして建物の近くまで来たところで跳躍し、そのまま降りる──するとちょうど、4人がクローゼちゃんと女王陛下を連れていこうとしていたので。

 

「ハッ! 勝負はどうやら俺の勝ちのようだな──」

 

「──いや、私の勝ちだよ!」

 

「なっ!? てめえ!?」

 

「アーヤ!」

 

「アーヤ先輩!? ──きゃっ!?」

 

「その通り! アーヤちゃんです! クローゼちゃんは攫わせないよ!」

 

 私はその場にしゅたっと降り立ってクローゼちゃんをお姫様抱っこで即奪取。皆の前で名乗りながら、ヴァルターやブルブランと対峙する。レンとかルシオラ姉さんは多分味方になってくれるはずだからね! 

 

「てめえ……何しに来やがったんだ? レーヴェと浮遊都市の制圧に行ったはずじゃ……」

 

「思ったよりも早く終わったからね! それで教授から王都を襲撃するって聞いてたから一応阻止しに来たよ! クローゼちゃんは私の後輩だから攫っちゃダメってことで!」

 

「ほう……ならば君は、教授の命令に背くというのかね?」

 

「ぶぶー! 違いまーす! 私は命令されてないので背いたことにはなりませーん! それに執行者には自由が認められてるので仮に背いたところで問題にはなりませーん! はい論破ー!」

 

「む……」

 

「……まあ、確かにそうね」

 

 おっと、これには言葉が出ないかな? ルシオラ姉さんも認めてくれたし、これで私の勝ちってことで! クローゼちゃんを攫うことは諦めてもらおう! あ、ごめんだけど女王陛下の方はいいよ! そっちはしょうがない。いや、ダメだけどね。ただ私が危険を犯してまで守る理由が特にないし、危険な目に遭うわけでもないから……もし攫われても後でこっそり帰せばいっかなって……でもクローゼちゃんはエロ催眠かけられる可能性があるからダメ! 

 

「ふっ……面白い。ならば、ここは奪い合いと行こうか」

 

「え?」

 

「ああ。俺たちの邪魔をしたんだ。遊ぶ覚悟くらいは出来てんだろうな……?」

 

 ……え、マジ? 戦わないといけないの、私? 執行者2人と? 

 い、いやでも私手が塞がってるし……逃げるしか……いや、でも逃げるだけなら……と、とにかくやるしかない! よーし……! 

 

「──う、うわあああ!!? き、キリカだー!!? キリカ・ロウランだー!? 泰斗流の達人でヴァルターの元恋人だー!? なんでこんなところにー!?」

 

「ハッ、バカが。こんなところにあいつがいるわけ──」

 

『──バカは貴方よ、ヴァルター。私の気配すら分からなくなってしまったの?』

 

「!!? なっ──!? キリカ、なんでこんなところ──『はーい。ヴァルター。どーもこんにちはー。()()()()()()()と申しますー』……に……」

 

 私はヴァルターの背後に《エクス=マキナ》を出現させた上で、遊びで付けた声真似機能を使ってヴァルターの隙を作る。ヴァルターが完全に一瞬だけ固まった。その瞬間に、私はヴァルターに飛びかかった。

 

「とりゃあああ!!」

 

「ぐおっ!?」

 

 ドロップキックで先制攻撃! そして直ぐ様仕掛けをしてもう一度クローゼちゃんを抱きかかえて離脱だ! 

 

「引っかかったな! やーい! ばーかばーか!」

 

「ぐっ……クソが……! フザけた真似しやがって……! 上等だぜ……殴られる覚悟は出来て──んっ!? なんだ!? 足が動かねえ!?」

 

「気付くのが遅いよー! 鋼糸で固めちゃったもんねー! ──ってことでマキナー!」

 

『了解ですマスター。えいっ』

 

「ぬおおおっ!?」

 

 そしてまたまた動きを止めたヴァルターに今度はその場にいたエクス=マキナがヴァルターのちん◯んに軽く蹴りを入れてもらう。本気でやっちゃうと大変なことになるから軽くね。本気で敵対したいわけじゃないし。あくまでいたずら程度に。

 

「やーいやーい。ヴァルターのちん◯ん痩せ狼ー! クローゼちゃんは諦めて降参しろー!」

 

「ぐっ……こ、殺す……!」

 

「あはは! すごいわ、アーヤ! ヴァルターを完全に手玉に取るなんて!」

 

「フッ……さすがは私が認めた芸術家だ。手ぬるい任務で退屈していたことだし、ここは君の挑戦を受けることで退屈への慰めとしよう」

 

「ブルブランもやっぱ来るの!? じゃ、じゃあレン! 手伝って! レンはこっちチームで2対2ね! それならどう!?」

 

「いいわね、すごく楽しそう! なら私はアーヤを守ればいいのかしら?」

 

「ふむ、確かに2対1でそちらは姫を抱きかかえたままではこちらが有利となってしまう──良かろう! そのルールで挑戦を受けようではないか!」

 

「俺は何でも構わねえ……とにかく一発ぶん殴ってやる!!」

 

「ぎゃー!? 糸が引き千切られた!? る、ルシオラ姉さんと女王陛下は審判ね! そこで大人しく見守ってて!」

 

「……は、はぁ……いえ、しかし……」

 

「……申し訳ないけど、大人しく見ててくれる? 私じゃ収拾が付けられないしね……」

 

「よ、よーし開始の宣言をして! マキナ!」

 

決闘(デュエル)開始ィィィ!!』

 

 ──と、そういうことで私はレンと組んでヴァルターとブルブランとの姫様争奪追いかけっこを始めることになった。

 後はまあひたすら逃げて逃げて逃げまくって、色々ありながらもエステルちゃんたちが来るまで逃げ回った。クローゼちゃんは私の腕の中でずっと困惑してたけどね。それでも一度だけ真面目に声を掛けてきた。

 

「……アーヤ先輩は、どうしてそんなに優しいんですか?」

 

「え!? い、いや、だって後輩だし友達だし……危ないっ!? 別に普通だよ普通! うわぁ!?」

 

「…………」

 

 なんてことを確か話しつつも、しかし逃げることで焦っていた私は途中でジークを使ったり、レンと協力して何とかひたすら逃げ続け……しかしエステルちゃんがやってきたタイミングでとうとう捕まってしまう。

 

「げほっ、げほっ……ど、どうやら我々の勝ちのようだな……」

 

「手間取らせやがって……ぜぇ……ぜぇ……」

 

「うふふ、負けちゃったけど楽しかったわ!」

 

「そう……良かったわね」

 

「わーん! 負けたー!? え、エステルちゃん! ヨシュアくん! 助けてー!」

 

「な、何やってんのよ……」

 

「……落ち着いて、エステル。ここは勝機を窺うしかない」

 

「この状況でなんで落ち着けるか分からないんですけど……」

 

「右に同じだぜ……あいつら、こんなところで何バカやってやがるんだ……?」

 

「あ、あはは……賑やかなのは変わってないんですね。アーヤさん……」

 

 お、エステルちゃんとヨシュアくんだけじゃなくロリコンアガットさんにティータちゃんもいる! これで助けてもらえる! 後はもう問題ないね! この後は普通に……えっと、確かシード中佐と玉ねぎ剣士が出てきて結社の執行者を撃退してくれるはず! 

 

「えっ……!?」

 

「やあ、みんなご苦労だったね──陛下、殿下。遅くなって申し訳ありませんでした」

 

 ──うおおお!!? とか言ってたら来たー!? シード中佐だー! レンとブルブランに攻撃だー! 防がれるけどね! でもこうなったら後はもう流れは決まってる! 

 

「ほう……けんせ、ごほっ、け、《剣聖》に連なる者か……っ」

 

「うふふ……惜しかったわね。あともうちょっとでレンたちの隙が作れたのに」

 

「そうだー! 惜しかったぞー!」

 

「ああ、正直ショックだよ。まさか今の打ち込みが返されてしまうとはね」

 

「正直もう腹いっぱいだが……せっかくだ。口直しに俺たちと遊んでいくかよ?」

 

「こらー口直しってどういう意味だー!?」

 

「いや、遠慮しておこう。自分はあくまで囮に過ぎないからね」

 

 ──お! ってことは……き、きたー!? まずはジークがルシオラ姉さんに攻撃! でも躱される! というかさっきまで私とレンの味方をしてくれてたのに空気を読んで切り替える辺りジーク賢いな!? そして続いてとうとう出てきたぞ! 玉ねぎ剣士! リシャール大佐! クーデター事件の主犯でFCの実質ラスボスみたいな人! だから強いぞ! ルシオラ姉さんに居合で攻撃! 続いてヴァルターにも攻撃してクローゼちゃんと女王陛下から引き離すんだ! やれー! ……って、あれ……? なぜか私にも刀が迫って──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃーん!!?」

 

「間に合ったか……」

 

 ──私はリシャール大佐の刀で斬られて女王宮の壁に吹き飛んで激突した。ねえ、痛いんですけど!? 私、クローゼちゃん守ったのにー!! 

 

 そしてその後はちょっとした会話をしてから謎ワープでその場から離脱した……あ、危なかった……斬れてはないけど斬られた……痛い……もー! せっかく私もかっこいいイベントにかっこよく混ざりたかったのにー! うわーん!!




今回はとってもシリアスな話でしたね。次回は遂にリベルアークで待ち構えます。まずはレン視点から始まりつつ空の軌跡SCの屈指の難敵でありクソボスの《剣帝》レーヴェ&《血染の裁縫師》アーヤにエステルたちが挑みます。お楽しみに。

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