TS不幸少女のゼムリア大陸災難記   作:黒岩

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中枢塔で最終決戦に挑む不幸

 ──アーヤは、レンの憧れの人。

 

 明るくて面白くて優しくて、どんな時でも動じない強い人。

 レン以上に辛いことがあっても笑っているすごい人。

 だからレンはアーヤみたいになるって決めたの。

 だから《結社》にいることだって間違ってるはずがない。

 

 ……だからエステルに、レンが結社にいることが間違ってるって言われた時、すごく心がざわついた。

 

 自然と言葉が漏れ出て、感情が昂って、その気持ちのままにエステルたちを殺そうとした。

 その機を逃した後にはもう普段通りに笑えたけれど、あの瞬間だけはどうにも我慢が出来なかった。

 それに何度思い出しても感情が溢れちゃうの。

 だからレンが皆と一緒に浮遊都市の中枢塔で待ち構えた時、レンはエステルたちを殺さない代わりにエステルにその言葉を取り消してもらうことをお願いした。

 レンが結社にいることが間違ってるなんて、そんなはずがない。レンは結社に来たからこそパパとママにも会えたし、目標も見つけられた。強くなれて、幸せにもなれた。

 だからその言葉を取り消してほしい。そうじゃなきゃ、レンはレンを保てなくなるかもしれない。

 それがどうしてか分からなかったけれど、とにかく取り消してもらわないと気がすまない。だからいつも通りに笑顔でお願いした。

 なのに──

 

「……甘ったれるのもいい加減にしなさいよね」

 

「! …………え」

 

 それなのに──エステルは、そのお願いを聞いてくれなかった。

 レンを真っ直ぐに見て、まるで当然のように迷いなく言葉を向けてきた。

 

「世界はレンを中心に回っているわけじゃないわ」

 

 レンに対して、そんな風に真っ直ぐに言葉をぶつけてくる。

 

「レンのために都合よく変わってくれるものでもない」

 

 レンに向けて、そんな風に当たり前に叱ってくる。

 

「たとえレンが、物凄く大きな力を持っていたとしても……あの大きなパパとママが助けてくれたとしても……それでも……人の心までは自由にはできない」

 

「…………………………………………」

 

 それがどうしても嫌なことを思い出させて……でも同時に昔に感じたまた別の何かも思い出させて。

 

「レンに結社にいて欲しくないのはたしかにあたしのエゴかもしれない。だから無理強いするつもりはないけど……でも、できればレン自身に気づいて欲しいと思う。いつでもヨシュアみたいに後戻りが出来るんだって……」

 

「……エステル……」

 

「…………そう…………」

 

 だから頭で理解しようとするのを全力で拒んで。

 またその制御できない感情をぶつけるように、レンは得物を取り出して、パパとママをも呼んだ。

 本当の本当に気に入らなかった。レンの生き方を否定するその言葉が。

 

「《パテル=マテル》! リミッターを解除しなさい! 出力全開でエステルたちを殲滅するわよ!」

 

 だからレンはレンに名付けられた渾名の通りに、エステルたちを殲滅しようとした。

 かつてレンの気に入らない人たちを殲滅してくれたアーヤたちのように。力でそれを否定しようとした。

 負けるはずがなかったわ。

 確かにエステルは強くなってるし、ヨシュアだって強い。他の仲間の人達やティータだって頑張っている。

 でもレンの方がもっともっと頑張ったし強い。結社に来て学んだ幾つもの技術やパテル=マテルのスペックなら負けるはずがなかった。

 それなのに──

 

「ど、どうして……」

 

 ──そう。それなのに、レンは負けた。

《パテル=マテル》は負けてしまった。

 負けるはずがないエステルたちに。

 声をかけても立ち上がれなくなっちゃったパパとママを見て、レンは一気に力が抜けるような気がして。

 心の中がぐちゃぐちゃになって落ち込むしかなかった。

 そのまま感情を制御しようとして、泣きたくなったけれどそれも我慢して。

 1人で立ち上がるために自分の心に整理をつけようと頑張ろうとした。

 だけどそんなレンに、エステルたちは近づいてきた。

 

「なによぉ……エステルたちの勝ちなんだからもうどうでもいいじゃない……さっさと端末を解除して上に行っちゃいなさいよぉ……」

 

「……そっちも大事だけど後回しにすることにするわ。今はあんたの方が大事だからね」

 

 その言葉を聞いて、とうとうレンは我慢出来なくなった。

 

「なによぉ……エステルなんてレンのこと何も知らないくせに……! どうしてそんなに……構ってくるのよぉ……!」

 

 そう、エステルは何も知らない。

 レンの過去も気持ちも。どんなことをされてきたかなんて知らない。

 それに何よりも、他人。パパとママでも、ましてやお姉さんでもない。

 レンに構う理由なんて1つもない。それなのに、どうして構うのか。

 

「フフン、決まってるじゃない」

 

 だけどエステルは、レンに言った。──以前、言われた時みたいに。

 

「あたしがレンのこと、好きだからよ」

 

「!!」

 

『──え? レンに構う理由? そりゃあほら……レンのことが好きだからかな!』

 

 ──以前、前にも言われた時のことを思い出した。

 

「だからこそ……あたしはレンにやっておかなきゃならない事がある。悪いけど、軽く行かせてもらうわよ」

 

「え……」

 

 そしてエステルはそう言って、レンの頬を優しく叩いた。

 以前やられたみたいに。

 

「…………ぶった…………」

 

「悪いことをしたらぶたれるのは当たり前よ。じゃないと、他の人の痛みを感じられなくなっちゃうからね。あたしも小さい頃は父さんに散々ゲンコツをもらったんだから」

 

「エステルも……同じなんだ……」

 

 そう、同じだった。

 

「痛がってるのに……ぜんぜん止めてくれなかった……」

 

 昔されたみたいに。レンをぶって叱った。

 

「レンを……レンに酷いことをした……あの人たちと同じ……」

 

「同じかどうかはレンが自分で考えてみて。どう……本当にそう思う?」

 

「……わから……ない…………」

 

 ──ウソ。本当はわかってる。

 レンの言葉の一部は本当でウソ。だって、レンは前にも同じことをされたから。

 

『こら、レン! そんな簡単に殺しちゃダメだよ!』

 

『え、どうして……? 皆は殺せって言ってるじゃない。それにアーヤだって、いっぱい殺してるでしょ?』

 

『うっ……それはそうだけど……でもレンはダメなの! あんまり殺したら取り返しがつかなくなっちゃうからね! 別に殺さなくていい時までやる必要はないんだから!』

 

『……でもレンは、アーヤみたいになりたくて……』

 

『私だっていつも殺してるわけじゃないし……それに、いつも言ってるけど私みたいになんてならなくていいからね! レンはレンらしく、私よりももっと魅力的な大人になるんだから!』

 

『…………っ……でも……』

 

『ダメったらダメ! ほら、言う事聞かないとぐりぐりするよ!』

 

『っ……痛いっ……! な、なんで痛いことするのよぉ……?』

 

『そりゃ子供が悪いことしてたら叱るのは当たり前だし……いや、私が言っても全然説得力ないけどね……で、でも私だって出来ることなら止めるよ! 止めれることだけだけどね! 身勝手だけど嫌なものは嫌だし! で、レンのそれは嫌だし止められるから止めてるってこと! 分かった?』

 

『…………うん…………わからないけど……わかったわ……』

 

 でもそれを見ないようにして、否定されたことを思い出さないようにしてきた。

 否定されたら、レンの全てが無駄になる。

 だからそんな言葉は聞きたくなかった。

 レンはアーヤと同じになりたかった。

 

「だったら……これならどう?」

 

「……あ…………」

 

 だから……そうやってエステルに抱きしめられた時だって、レンは思い出してしまった。

 エステルはアーヤに似てる。

 温かくて優しくて。ちょっと面白くて心が強くて。悪いことをしたら叱ってくれて。

 そして──何かがあれば抱きしめてくれる。

 

「レンならわかってるはず。だってこんな風に抱きしめたのは……多分、あたしだけじゃないでしょ?」

 

「! ……それは……」

 

「ふふ、やっぱりね。グロリアスの時や塔でのレンの言葉。それにヨシュアの話や……何よりアーヤ自身を見て思ったの。きっと、アーヤもレンのことを大切に思ってるんじゃないかって」

 

 そしてエステルは、そのことも理解してくれていた。

 

「だからこそ、あたしからは何も言えないけど……それでも、レンが自分の心で感じるままに判断してくれればいいと思う」

 

「…………レン、は…………」

 

 レンはアーヤみたいになりたい。

 優しくて強いから。

 でもそれは、アーヤと同じことをしなきゃいけなくて──

 

「──エステルちゃんの言う通りかな」

 

「! え……」

 

「!? ──アーヤ!?」

 

 ──そうして頭がこんがらがっちゃいそうになった時、唐突に声は掛けられた。

 レンの憧れの人。アーヤが、レンたちの前に歩いてきて。エステルたちも驚いてるみたいだったし、レンも驚いた。

 

「い、一体いつからそこに……」

 

「あーごめん。最初からずっと見てたよ。個人的にも気になったし、一応教授からも動向を把握するように言われちゃったからね」

 

「……相変わらず、僕以上に隠れるのが上手だね」

 

「あはは、どっこいどっこいだと思うけどね。……とまあ、それはさておき──レン」

 

「!」

 

 アーヤがレンのことを呼ぶ。

 いつもみたいに変わらない様子で。

 だけど今だけは怖かった。不安だった。何を言われるか分からなくて。

 ──ううん。本当はわかってる。わかってるけど、わかりたくない。だからレンは、ずっと見ないようにしてきたのに。

 

「負けちゃったみたいだね」

 

「う、うん……ごめん、なさい……」

 

「いや、それは全然いいし怒ってないよ。ただ私が言いたいのはエステルちゃんと同じ。──レンが自分で判断して考えたことなら、私も応援するってだけ」

 

「…………で、でも…………」

 

「でもじゃなくて自分で考えてね。私のことなんて無視していいからさ」

 

「っ…………」

 

 それはまるで、突き放すような言葉で。

 でも温かさや寂しさも感じる、不思議な言葉だった。

 だからこそ、レンは余計に分からなくなる。何が正しくて、何が悪いのか。レンは本当は、何がしたいのか。どうなりたいのか。

 

「…………わからない…………」

 

 だからレンは答えた。正直な気持ちを、そのまま。

 

「わからないけど……考えてみる……」

 

「うん、そうして」

 

 レンはアーヤとエステルに言われたことを考えてみる。

 そのためにも今は離れることにした。このままここにいたら考えもまとまらない。心もかき乱される。

 だからレンはパテル=マテルにお願いして、離脱するために手の上に乗った。そして最後に、エステルやヨシュア、ティータたち。それにアーヤを見て……。

 

「……じゃあね。エステル、ヨシュア。それにティータ」

 

 本当はアーヤに手加減してあげるように頼みたかったけど、それは難しいと思って言うのをやめる。

 代わりにエステルたちに言った。レンの今の正直な気持ちを。

 

「レンはもう行くけど……死んだりしたら許さないんだから!」

 

 そう、死んでほしくない。

 少なくともそうは思えるくらいには、レンにとってエステルたちも大事だと感じたから。

 

 

 

 

 

 ──レンを見送った後、あたしたちは改めてアーヤと向き合った。

 

「行っちゃったねー」

 

「アーヤ……その、レンのことは……」

 

「ん、まあレンにも良いきっかけになったんじゃないかな」

 

「でも……仲良かったんでしょ? それなのにアーヤの元から離れるようなことをレンに言っちゃって……」

 

「それもいいって。そもそも私なんかのところにいるより、離れた方がレンも幸せになれるだろうしね」

 

「…………そう言うってことは、アーヤも結社を抜けたりする気はないってこと?」

 

「あー…………それはまあ……何と言うか……ね。私にも私なりの事情があるからさ。少なくとも今は抜けられないんじゃないかな」

 

 アーヤは苦笑いをしてそう言った。

 あたしのレンのことに対する謝罪に対しても、アーヤはレンのことを考えてか自分のところにいない方がいいって、そんな寂しい答えで返してきた。

 その後の言葉にしてもだ。きっと、アーヤが言うようにアーヤには闇があって事情があって……だからこそあたしたちの前に立ち塞がるんだろう。

 

「……それで、君はこのままここで僕たちと戦うつもりなのかい?」

 

「そうしたいところだったけどね。残念ながら屋上でレーヴェと一緒に待ち構えることになったからさ」

 

「! レーヴェと一緒に……」

 

「それと暗殺なんてことは頼まれても絶対にしないから安心して。しっかり準備を整えてから来るといいよ」

 

「……うん、わかったわ」

 

「待ってるから。それじゃあねー」

 

 そうしてアーヤは来た時の神出鬼没さとは打って変わって、呑気に徒歩で塔の中に戻っていった。

 あたしたちはそれを見送ってから、再び口を開く。

 

「これで……良かったのかな」

 

「……アーヤは昔からレンのことをよく気にかけていた。アーヤ自身も悪い人じゃないし、あの言動から察するにアーヤももしかしたらレンが離れることを望んでいたのかもね」

 

「そう……なら、後はレンが答えを出すことよね?」

 

「ああ。きっと大丈夫だと思う」

 

「レンちゃんなら……きっとまた会えるよね」

 

 あたしの不安を取り除くようにヨシュアは言葉をかけてくれたし、ティータもレンにまた会いたいし、会えるはずだって、そう言ってくれた。

 それであたしもそう信じることにした。レンのことは心配だけど、あたしたちには他にもやるべきことがあるから。

 

「さてと。気持ちを切り替えなきゃ。確か屋上でレーヴェとアーヤが待っているって言ってたわね」

 

「うん……執行者No.Ⅱ。《剣帝》レオンハルト。それと執行者No.ⅩⅢ《血染の裁縫師》アーヤ。レーヴェは《執行者》たちの中でも一、二を争う戦闘力の持ち主だし……アーヤにしても結社随一の暗殺者だ。一度アルセイユに戻って万全の準備と対策を整えた方がいいかもね」

 

「……了解!」

 

 ──そして気持ちを切り替えたあたしたちはレーヴェとアーヤが待ち構える屋上を突破するために、一度アルセイユに戻って準備を整えることにした。

 

 

 

 

 

 ──はぁ……レンちゃん行っちゃった……お姉ちゃん寂しい……あ、どうも。執行者No.ⅩⅢ《血染の裁縫師》アーヤ・サイードです。たった今さっき、心を鬼にしてレンをエステルちゃんたちに任せました。

 

 まあ元々そうしようというかそうなるとは思ってたんだけど、なんか話聞いてると妙な流れだったんで私からも改めて私のところにいないほうがいいよって諭しといた。レンの場合は逃げられるんだから逃がしといた方がいいよね。博士なんかは執着してくるだろうけどそれもそのうち解決するだろうし。私は私が逃げられないからといって部下をブラック企業に留まらせるような血も涙もない上司ではないのだ。……いや、別にレンは部下でもないし私は上司じゃないけどね。単に親心みたいなもん。やっぱり面倒も見てたし、好きなキャラでもあるから幸せにはなってほしい。なのでちゃんと逃がしといた。ポ◯モンのことを考えてあえて逃がす選択肢を取るサ◯シみたいな感じ。バイバイレン。

 

 ってことで無事にレンを突破したエステルちゃんたちだけど……いやー、ここに来るまで長かったし色々あった。

 あの王都襲撃の後も、エステルちゃんたちはエレボニア帝国の蒸気戦車を使った侵攻をオリビエと一芝居打って食い止めたりしてたし、その後にようやくリベルアークに乗り込む時だってアルセイユに乗り込んでそれを阻止しようとする結社の小型飛空艇やグロリアスと空中戦をしてるのがこっちからも見えてめっちゃ熱くなった。お菓子片手に観戦して応援したし、レーヴェがドラギオンに乗ってアルセイユ斬った時なんかも盛り上がった。さすがレーヴェ。

 

 そしてその後はリベルアーク内をエステルちゃんたちが探索、攻略し始めたのでちょろっと行って観察した。途中でカプア一家を助けたりもしてたね。結社の人間としては食い止めた方が良かったのかもしれないけどそんな義理はないのでもちろん食い止めない。むしろ応援した。セキュリティカードとかそれとなく落とそうか悩んだくらいには。さすがにそれは露骨すぎるのでアイテムを落としておくくらいで我慢した。無事にちゃんと乗り越えてもらわないと困るからね。アイテムはしっかりと揃えておいてもらわないと。

 

 そんでカプア一家を救出してジョゼットちゃんを新たに仲間に加えた後は遂に《中枢塔》まで辿り着いてそこから塔を上り始めた。最初の端末の前に控えるのは執行者No.Ⅹ《怪盗紳士》ブルブラン。メンバーはエステルちゃんとヨシュアくん固定のオリビエとクローゼちゃん。うんうん、安定だね。因縁的にそりゃそうなる。

 

 ──で、観戦を初めて、正直なところエステルちゃんたちが執行者を倒せるのかどうかめちゃくちゃ不安になりながら見てたんだけど……もうこれが本当にすごかった! ミラクルというか、連携がめちゃくちゃ上手でかなりの激戦でね! エステルちゃんが前面に出てヨシュアくんも側面や後方を取るように攻撃しながらオリビエがアーツで攻撃してクローゼちゃんも細剣振るったり回復アーツ使ったりジーク飛ばしたりして超頑張ってた! そして遂にブルブラン撃破! 強い! すごい! 半年くらい前は話にならないくらいだったのに! やっぱり迷いがなくなったのと普通に成長したんだろう。4人がかりでも執行者倒せるのはかなりすごいよ! 

 

 ってことで安心しながらも私はエステルちゃんたちに付いて行き、観戦に次ぐ観戦。2戦目は執行者No.Ⅷ《痩せ狼》ヴァルター。ぶっちゃけなんでヴァルターがこの位置なのか謎すぎる。ヴァルターってここにいる執行者の中じゃレーヴェの次に強くない? 強いやつ次鋒に置くとかどんな戦略だよって教授にツッコミたかったけど教授は都市の中心でシコシコして忙しいのでツッコミは出来ない。なので大人しく観戦。メンバーはエスヨシュに加えてジンさんとケビン。……このメンバーガチすぎない? ジンさんはぶっちぎりのトップ戦力だし、ネギも新米とはいえ星杯騎士団の守護騎士だしさ。やっぱりヴァルター相手はそれくらいやらなきゃって判断したのかもしれない。

 そしてその判断も間違ってなかったんだろう。ヴァルター相手も辛くも勝利。今度はジンさんが主に前に出て、ケビンが後ろからクロスボウやアーツでサポート。エスヨシュもジンさんに続いてヴァルターをひたすら攻め立てる。武術のぶつかり合いがすごくて見応えがあった。というかジンさんとヴァルターに関してはその足場下手したら壊れちゃうんじゃないかって不安になった。さすがに丈夫で壊れはしなかったけど何度も足場が振動したんでさすがにビビったよね。しかも最後は一騎打ちでジンさんがヴァルターに勝利。最後にタバコを吸って気絶してた。でもタバコって危ないよね。なのでエステルちゃんたちがいなくなった後でその吸い殻はしっかりと消した上で回収しておいた。ポイ捨て良くない! 

 

 で、吸い殻を回収した後は執行者No.Ⅵ《幻惑の鈴》ルシオラ姉さんとの戦いだ。メンバーはエスヨシュにシェラザードとジョゼット。まあ安定かな。シェラザード外すわけないもんね。ジョゼットは余りで入れました感あるけど、道中の戦闘見てる限りなんだかんだ導力銃やアーツの扱いが中々良い。さすが帝国出身。弱い貴族なんているわけないよなぁ!? 

 そしてルシオラ姉さん戦に関しては幻術やらアーツやらが飛び交う中々に演出的に面白い戦いだった。ルシオラ姉さんは戦い方上手なんだよね。元はただの旅芸人なのに強いという。本当にサーカスでも見てるかのような派手さだった。思わずお捻りを投げたくなったけど自重した。

 そして戦いが終わった後はお決まりの事情を話して──うわあ!? 危ないっ!? って感じでルシオラ姉さんが身投げしようとしたのでヒヤヒヤした。いや、生き残ることは分かってても怖いよ。もしかしたら本当に死ぬかもしれないし。なので念のために塔の1番下まで全力で戻って落下地点で待ち受けることにした。し、下は水だから大丈夫だよね……? って不安になりながら見てたら落ちてくる途中で普通に転移してたんで取り越し苦労だった。なーんだ、結局普通に生き残るんじゃん。もうルシオラ姉さんってばお茶目だね。でもどこに行ったのかは分からないけど、まあまた会えるはず。というか絶対に会う。占いしてもらいたいしね。場所は覚えてるから今度会いに行こっと。

 

 安心した私は次にレンとの戦いを眺めることにした。メンバーはエスヨシュにティータとアガット。物理がお強い。正直ティータちゃんに関しては今でもちょっと不安だけど、最強のロリコンのアガットさんが守ってくれるはずだから大丈夫だろう。

 で、戦いはこれまた大変というか、レンも強いけどパテル=マテルが厄介というか規模がでかいんで怖かった。ビームが壁に張り付いてる私に当たりそうになった時はマジで死ぬかと思ったよね。声も出そうになったけどなんとか我慢した。

 ただレンの場合は戦闘よりも戦った後の会話がすごい心配だったけど、さっきも言ったように私も途中で出ていってレンの巣立ちを後押しすることにした。なのでこれでもうエステルさん家の子になるルートに入った……はず! 多分大丈夫! 私のことなんてエステルちゃんに比べたらそんなに大事じゃないはずだし! まあ結構懐いてたし面倒も見てたから危ないけど、最後の言葉でいけるはず! 

 

 そしてエステルちゃんたちと会話をした後はやっと屋上に戻って来る──と、これまでのことについてはこんな感じだ。後はもうエステルちゃんたちを待ち構えるだけ、ではあるんだけど……。

 

「……戻ったか」

 

「うん。ちゃんと見届けてきたよ。もうすぐでエステルちゃんとヨシュアくんたちもここに来るんじゃないかな」

 

「そうか」

 

 ってことでレーヴェと軽く会話。レーヴェもなんだかんだレンのことについては気にかけていたからなんか察してるっぽいね。そして、何となく無言になってしまうのはなんだかんだ私も緊張してるし、レーヴェも来たるべき時が来たって感じで集中して物思いに耽ったりしてるんだろう。

 まあでもしょうがない。私もありえないくらい緊張してる。いや、だってレーヴェとエステルちゃんたちが戦うってだけでも緊張するのに、私までいるんだよ? そりゃレーヴェに比べればクソ雑魚ナメクジだろうけどだとしても更に苦戦するだろうし、私も私で間違って殺しちゃわないかどうかめちゃくちゃ不安でしょうがない。腕とか足とか切り落としちゃったら目も当てられないし、手加減はしたいけど手加減しすぎると変な感じになるし、教授に何言われるかも分かんないしで手加減も難しい。まず4対2ってのがなぁ……しかもお供を出すなら数では同数になっちゃうし、本当に勝てるの? ここでバッドエンドになったら困る。なので勝ってほしいけどわざと負けられないジレンマがここにある。くっ……どうしたら──

 

「──アーヤ」

 

「な、なに? 今精神集中の最中なんだけど?」

 

「大したことじゃない。ヨシュアたちとの戦いだが……もう手加減する必要はない。()()()()()()()()

 

「え? や、やだなぁ。そりゃ本気でやりますよって。もうやる気満々なんだからこっちは」

 

「お前がこれまでヨシュアたちに手心を加えていたことをどうこう言うつもりはない。俺も似たようなものだからな。だが……ここから先は本気でなくては意味がない」

 

 うわっ、手加減しようとしてたことバレてる!? ど、どうしよう……でも手加減しないと勝てないかもしれないし……。

 

「いや、ただでさえレーヴェ1人でもキツいのに、本気出しちゃったら……」

 

「それでもだ。もしあいつらが覚悟を決めて来たのならば……お前も本気を出してほしい」

 

「でも……」

 

「頼む」

 

 だけど、躊躇う私に対してレーヴェはそれでもと真剣に頼んでくる。

 人という存在の可能性を試すために。ヨシュアという弟分とその仲間の覚悟と力を問うためにだ。

 そして……そう言われると……正直弱い。

 確かに手加減して乗り越えさせたとしても意味がないだろう。私がここにいるということも含めて、エステルちゃんたちは乗り越えないとレーヴェは認めてくれない。

 そうなると和解も出来なくなるし、私としてもそういうのは望んでない。

 だから柄じゃないんだけど……いや本当に、ガラじゃないんだけど──

 

「……仕方ないなぁ」

 

 私は心に決める。

 

「レーヴェが言うから特別だよ? 本当はガラじゃないんだからね?」

 

「ああ。恩に着る」

 

「ま、私もエステルちゃんやヨシュアくん、クローゼちゃんたちの成長を見てみたいしね」

 

 そう言って、私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 これも私の目的を達成するため。ちゃんとハッピーエンドを見届けるために。

 

「……来たか」

 

「屋上到達おめでとー!」

 

 ──私はそうして、屋上に上がってきたエステルちゃんにヨシュアくん。クローゼちゃんにジンさんの前に立ち塞がった──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっほー。エステルちゃんにヨシュアくん。それにクローゼちゃんも。それと他の仲間たち全員も! ………………………………ん?

 

「フッ、全員で来たか。どうやら俺たちがどれほどの脅威か理解しているらしいな」

 

「ええ。あなたたち2人を相手にするには、皆の力が必要だって話し合ったの」

 

「うん。レーヴェとアーヤ相手にたった4人で挑むのは少し無謀だからね。悪いけど、仲間と相談して全員で来ることにした。2人を倒し……教授の計画を阻止するためにね」

 

「あはは……なるほど。そういうことね」

 

 ──私は並んでいるメンバーを眺める。エステルちゃんにヨシュアくん。クローゼちゃんにジンさん。ティータちゃんにアガット。シェラザードにオリビエ。そこにケビンとジョゼットも。おまけにミュラー・ヴァンダールにユリア・シュバルツまで。

 

 ……うん、なんか──全員で来た。

 

 それを見て、私は苦笑しながら内心だけで叫ぶ。この期に及んで情けないところは見せたくないので、心の中だけで。

 

 ──ぜ……ぜぜ、全員で来るなあ──!!!? バカ!! 本当にバカ!! だからって全員で来る奴があるかぁ!! 4人でってのがルールでしょ!!? ゲームのシステムを守れ────!! 12人で来るとかバカじゃないの!!? せめて2パーティにしろ!! もう手加減とか言ってる場合じゃない!! 本気でやらないと殺される──!! 死んじゃう──!! うわああああああああん!!? 

 

 そうして私はレーヴェと共に最終決戦に挑むことになった……。




ということで次回はレーヴェ&アーヤVSエステルとヨシュアたち。きっと熱い戦いになるんだろうなって。空も後2、3話で多分終わります。
ということで空の軌跡SCでの(倒せるレベルまで落とし込んだ)アーヤちゃんの敵ステータスを置いておきますので暇がある人は他のボスデータと比べてみてください。

《血染の裁縫師》アーヤ LV93 HP50000 ATK1416 DEF2000 ATS593 ADF2000 SPD97 MOV20 属性有効率 全属性80 有効な状態異常なし
使用技
ドレーピングアナトミー:Sクラフト 即死・混乱90%
グリムシザー:即死・混乱50% 
キラーソーイング:封技20% 駆動解除
ヴェノムリッパー:毒80% 即死20%
カットアンドソーン:遅延
デスカッティング:即死20% DEF↓
ティアラル:HP大回復
ティアラの薬:HP中回復

感想、評価、良ければよろしくお願いします。
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