──どうも、執行者No.ⅩⅢ《血染の裁縫師》アーヤ・サイードです。……ということで引き続き《中枢塔》の屋上でエステルちゃんたちと遂に対峙しました。めちゃくちゃ動揺したけど切り替えよう……しょうがない。これはしょうがない。なのでレーヴェとエステルちゃんたちの会話に私はいつも通り混ざっていく。
「だが思ったよりは早かったな。もう少しばかり待たされるかと思っていたぞ」
「ま、あたしたちも少しは成長してるってことよ。さすがに、あなたたちのお仲間にはかなり手こずらせてもらったけど」
「フフ……言うじゃないか。だが、この《剣帝》を彼らと同じには考えないことだ。正面からの対決において俺を凌駕する者はそうはいない。たとえS級遊撃士や《蛇の使徒》といえどな」
「まあ大陸全土で見ても上から数えた方が早いのは確実だよね。レーヴェに勝てるのって私も数人くらいしか知らないや」
レーヴェって本当に強いからね。確実に上だって言えるのは結社でもマクバーンとリアンヌママくらいだし。結社以外だと……えーっと、星杯騎士団の総長とか帝国の《黄金の羅刹》くらい? 後は《鉄血宰相》とかも最強クラスだっけ。同格ってなるともっといっぱいいるんだけどね。ただレーヴェの場合はこの時点ですら発展途上だから! 絶賛成長期だからね! まだまだ強くなる可能性があります! 生き残ればね!
「……そしてアーヤにしても同じことだ。伝説と称されるほどの暗殺者……《血染の裁縫師》。殺しの技術という一点においては俺すらも凌駕する。その前に立つ意味を本当にわかっているのか?」
「あー……まあそうなるのかな。本当は私的ルールに抵触するから殺したくはないんだけど……本気でやるってことはその可能性もあるってことだし。ってことでやめといた方がいいとは思うよ?」
そしてレーヴェのことを褒めたらお返しじゃないだろうけどなんかレーヴェまで私のことを褒めてくれたので一応はそれを肯定する。強さはともかくとして危ないのは間違いないんだよね。自分で言うのもなんだけど、私って戦い方じゃなくて殺し方だからさ。まあ殆ど変わらないんだけどね。正確に言うなら戦闘技術じゃなくて殺人技術ってだけで。だから物騒な技が多いのは許してほしい。私の基礎は《月光木馬團》時代に出来上がったものだから今更矯正出来ないんだよね……一応レーヴェやリアンヌママからも習ってはいるとはいえ、私の師匠は誰かってなるとレティ姉さんとかになる。次点でクルーガーちゃんとオジサン。つまりは殺すのが上手。でもレーヴェより上って言われると首を傾げるけどね。レーヴェの方が強いんだから上手じゃない? それとも強さと殺しの上手さはまた別って話? それならまあ私ってせこせこした戦いが得意だから一応納得する。──ってことで危ないから引き下がれるなら引き下がった方がいいよ! 結局は戦う必要はあるだろうけど数人くらいは下がっても良いんじゃないかな! 主にクローゼちゃんとかティータちゃんとか!
だけど私のその思いは届かないようでエステルちゃんたちは全員が覚悟を決めた顔をしていた。
「……うん。あなたたちの強さはよく分かってるわ。でも、あたしたちも理由があってこんな所までやって来た。《輝く環》による異変を止めて混乱と戦火を防ぐために……沢山の人たちに助けられてあたしたちは今、ここにいる──だから……退くつもりはないわ」
「ええ。退くつもりはありません」
──と、しかもエステルちゃんに続いてクローゼちゃんが一歩前に出て私に視線を向けてきた。うっ、ちょっと怖い。何言われるんだろう。「貴方は本当にどうしようもないクズですね先輩」とか? そんなこと言われたら立ち直れない! さすがに言わないとは思うけど!
「アーヤ先輩……私、考えました」
クローゼちゃんはまずそう切り出してくる。な、なにを? 私と絶縁したいとか? そんなこと言われたら立ち直れない! 言われても仕方ないかもだけど!
「先輩が《切り裂き魔》で結社の執行者だと知った時……先輩が事情を少し話してくれた時……すごくショックでした」
ぎゃ──!!? やっぱり絶縁宣言だー!? でもそうだよね酷いよねー!! そりゃそうなるよねー!!
「でも……わかったんです。確かに先輩は結社の執行者で暗殺者で……私の知らないところで人々を苦しめていたのかもしれません」
「……まあそういうことを全くしてないと言うと嘘になるね。それで?」
「はい。ただそれを聞いても──先輩が私の先輩で、
「え?」
──え? ま、マジ? 本当に言ってる? てっきり罵倒されると思って覚悟してたのに……まさかそんな風に言ってくるなんて思わなかった。
でもクローゼちゃんは冗談を言ってるような雰囲気じゃない。真剣そのものだ。だからこそ私も若干驚きながらその言葉を聞く。
「1年にも満たない付き合いですけど……その中で先輩が見せた優しさは嘘じゃないと私は感じました。学園で過ごしている時も、エステルさんたちと一緒に行動している時だって、先輩は優しかった。それどころか、結社からの指令で動いている時ですら無用に血を流さないように配慮していましたよね?」
「ん……それはまあ……出来ればね。私も必要のない殺しをするのは嫌だから」
「……だからと言って先輩のやったことが全部許されるわけじゃありません。そして結社から抜けてくださいなんて、事情も知らないのに無責任なことも……少なくとも今の私に言う資格はありません」
「……ま、それは重々承知してるし、結社のことも言われても困るかもね。それで、だったらどうするの?」
「はい。だから私はここに──証明しに来ました」
私の敢えてのちょっぴりいじわるな質問にもクローゼちゃんは動じず、剣を抜きながら真っ直ぐに告げてきた。
「私が友人として、どれだけ先輩を想っているかを。私が先輩の
「!」
私は更に意外な答えが来てびっくりする。相談って……あ、結社を抜けろとかそういうことは言わないけどってこと? もしかして私のことをもっと掘り下げようとしてる?
「きっと先輩にはやむを得ない何らかの事情があるんでしょう。それも私の想像を上回るどうしようもない事情が。聞いたところで先輩の言う通りどうしようもないのかもしれません」
ああ、やっぱりそういうことみたいだ。クローゼちゃんはどうやら、以前の私の言葉を聞いてなお、そこに踏み込む覚悟を決めてきたらしい。
「ですがそれでも、友人が困っているなら少しでも力を貸してあげたい。手を差し伸べられる人でありたい。迷わず頼られるような頼りがいのある人になりたいんです。先輩が私にしてくれたように……今度は私が先輩の悩みに向き合いたいんです……!」
「……あたしも同じ気持ちよ。友人が間違ってるなら、そこにどんな理由があろうとも止めて、その上で事情を聞く。どうするかはその後で決めればいいわよね?」
クローゼちゃんが強い意志を見せて武器を構えたところで、エステルちゃんもまた笑みと共にそこに同意してくる。
クローゼちゃんの曇りなき目も、エステルちゃんのその光を感じる不敵な笑みも揺るぎなく、頼もしいものだった。それこそ今すぐ相談しても問題なさそうなぐらいには。でも──。
……いや、すごく嬉しいけど……でも色んな意味で話せない……シンプルに色んな人に借りがあったり、繋がりが多すぎるし、《庭園》のこともあればメルキオルとかも怖いし、オジサンはヤバいし……そして何より、私の身の安全のためにも少なくとも今は結社にいた方が都合がいいとか言えないし……なんなら抜けたところでその……実のところ殺しを完全にやめるわけにはいかないというか……残党を全員殺すまではもうちょっとだけこっそりとやるつもりだし……。
そりゃ抜けたいよ? 裏の仕事なんてそりゃ出来れば辞めたいけどさ。でも個人的なものも含めて抜けられない事情がありすぎてね。今回の計画みたいに結社にいた方が利用出来ることもあったし……そういう目的もあるからなぁ……利己的な理由はやっぱり話せないよね……幻滅されちゃうし! こんなに慕ってくれてると余計に話せない!
それにそれを抜きにしても私の過去を更に詳細に話すなんて本当に大丈夫なんだろうかという疑いがある。この間のあれくらいでもすごい嫌な気持ちにさせちゃったし。嫌な気持ちにはさせたくないし、ぶっちゃけあんまり巻き込むのも忍びないんだよね。
とはいえこうまで言ってるのに拒否もし辛い。なので私は──
「……そっかぁ。それならしょうがないね」
と、とりあえず笑って認めておくことにした。
いやまあ相談すると決まったわけじゃないからね。今は分からない。なのでとりあえず保留! 未来のことは未来の私に任せた! 今はとりあえず本気の勝負とこの後のイベントに集中する! クローゼちゃんとエステルちゃんは何とか良い感じに訳ありな感じで乗り切ろう! 険悪じゃない訳あり敵組織に所属してる実質味方のお姉さん的な感じで!
「フ……どちらも理由としては悪くない。──だが、ヨシュア。お前の理由は違うようだな?」
「え……」
「お見通し……みたいだね」
なので次はレーヴェとヨシュアパートだ! 私のことは忘れてこっちを注視しよう! こっちの方が遥かに大事だし! なので私は大人しくヨシュアくんの話を聞きます。
「僕は……自分の弱さと向き合うためにここまで来た。あの時、姉さんの死から逃げるために自分を壊したのも……教授の言いなりになり続けたのも……全部……僕自身の弱さによるものだった。それを気づかせてくれた人に報いるためにも……大切なものを守るためにも……僕は……正面からレーヴェやアーヤ、教授に向き合わなくちゃいけないんだ」
「ヨシュア……」
おお……あのヨシュアくんがこんなに立派に……知ってたけど実際に昔っから接してきた身としては感動もひとしおだ。本当によくここまで成長したねって感じで。
「……………………巣立ちの時か。もうカリンの代わりに心配する必要もなさそうだ」
そしてこれにはレーヴェもニッコリ。いや、そこまで笑顔じゃないけどね。でも悩みが1つ消えたって感じで少しだけ気持ちが軽くなったんじゃないかな? そんな空気を隣から感じる。その証拠に、レーヴェは魔剣《ケルンバイター》を取り出してヨシュアくんたちに突きつけた。
「……これでようやく手加減する必要は無くなった。本気で行かせてもらうぞ」
「ちょ、ちょっと! どうしてそうなるのよ!? ヨシュアの事を心配しておいてどうして──」
「いいんだ、エステル。覚悟を決めただけではレーヴェは納得してくれない。その覚悟を貫き通せるだけの力が伴っていないと駄目なんだ」
「フフ、そういうことだ。──アーヤ、お前も構わないな?」
「……うん。覚悟は聞いたからね」
ヨシュアくんとレーヴェの対立を少しだけ心配したであろうエステルちゃんが若干の戸惑いを見せるもそれをヨシュアが止める。戦わないといけないことには変わりないからね。なのでレーヴェからも再度、私に確認の言葉が飛んできたので私も頷いた。そしてレーヴェと同じように空間から《ゾルフシャマール》を取り出して構えることに。
「実際に相談するかはさておき──そこまで言うならまずは可愛い後輩たちとその仲間の実力を確かめさせてもらおうかな」
「はい……証明してみせます!」
私の言葉にクローゼちゃんが正面から答えるとそれと同時にレーヴェがお供のライオン丸──じゃなくてライアットセイバーを一体召喚したので私もエクス=マキナを召喚して戦闘モードにする。というかお供呼んでいいんだ! そりゃそうか! それならちょっとだけ楽出来るかも!
「──俺にも俺の覚悟がある。もし、お前たちの覚悟が
「私も本気で行くからね! 死なないように気をつけてよ!」
「うん……!」
「……望むところよ!」
──そして遂に、その時が……ああ、その時が来てしまった……けど、もうしょうがないからヤケクソだ!! 熱い展開でテンションも上がるし、頭の中で『銀の意志スーパーアレンジバージョン』でも流しながらこっちもやる気出すぞ! ただレーヴェの発言だけは気になるけどね! え、修羅って何? 私も修羅だったの? どっちかっていうと修羅なの? 殺す覚悟持ってるから修羅なの? わ、分かんないけどとりあえず行くぞー! おらー!
──屋上であたしたちは遂にレーヴェとアーヤとの戦いに臨んだ。
事前に想定した通りの12人での戦い。それだけの数がいることもあって連携には気をつける必要がある。
もちろん数がいるからといって楽な戦いが出来るとは思ってなかった。なかったけど……レーヴェとアーヤは想定以上の強さだった。
「綺麗に染めてあげる! ──せいっ!」
「っ!? これは……糸!?」
「ただの糸じゃない! 鋼糸だ! 気をつけて!」
戦闘が始まってすぐにアーヤから飛ばされた針とそこに括りつけられた糸があたしたちを襲う。ヨシュアはそれに注意するように言うも、それより先にアーヤは動いていた──真っ白い巨大な布をどこからともなく取り出して、あたしたちに覆いかぶせてくる。
「綺麗に巻き取って……これで仕上げ!」
「マズいかも……ケビンさん!」
「ああ! ──我が右手に在りし星の杯よ。天より授かりし輝きを持って我らが盾となれ……!!」
あたしたちは不意に現れた白い布に巻き取られてしまって隙を作ってしまう。アーヤの攻撃が致命的なものであることを感じ取ってケビンさんに指示を出した。あたしやヨシュアの役目は12人がしっかりと連携を取って動けるようにする中心。リーダーとして指示も出さないといけない。だからこそここは最初から全力で対抗する必要があると判断した。そして、その判断はおそらく間違ってない。アーヤ。それにレーヴェの攻撃は、あたしたちを一網打尽にする必殺の連携だったから。
「“グラールスフィア”!!」
「“ドレーピングアナトミー”!!」
アーヤが白い布に包まれたあたしたちを切り取ろうとして、しかしケビンさんの術によって阻まれる。
「うわっ!? 防がれた! さすが星杯騎士!」
「フッ、やるな。だが次は防げるかな?」
「!? アカン! 次や!」
だけどそこにレーヴェが動いていた。白い布が取り払われ、集まったあたしたち目掛けてレーヴェがとてつもない気を溜めていて。
「受けてみよ《剣帝》の一撃を……はああああっ!! ──“鬼炎斬”!!」
「うっ!?」
「きゃあっ!?」
レーヴェが周囲にいるあたしたちを一斉に回転斬りで薙ぎ払う。その衝撃の威力は馬鹿げていて、ガードをしてもなおふっ飛ばされ、直撃していないティータたち後衛すら影響を与えるほどだった。
全員がレーヴェとアーヤから少し離れる形になる。だけどやることは変わらない。むしろ好都合。全員で囲んで、それぞれ役割をしっかりと果たしていけば勝機はあるはず。
「行くわよ! アーヤ! やあああっ!!」
「! 良い瞬発力だね! さすがエステルちゃん!」
だからあたしはまずアーヤに向かって攻撃を放ち、そうして本格的な戦闘を始めた。絶対に乗り越えてみせる!
レーヴェとアーヤを取り囲むことは殆ど想定通り。
だけど問題はここから。僕やエステル。ジンさんにアガットさん。ミュラーさんにユリアさんといった前衛は2人を絶対に後衛に行かせないように食い止めなければならない。
それは2人の攻撃に長くは耐えられないだろうという予想のもの。後衛の援護を継続させて常に攻め続けないと2人は倒せない。
そして僕の役目は更に重要だった。眼前にレーヴェが迫ってくる──だけどそれは本物のレーヴェじゃない。それをアガットさんが口にした。
「“分け身”の戦技だ!!」
「惑わされないでください! 本物のレーヴェを叩けば分け身も維持出来なくなります!」
「その通りだが、果たしてそれまで耐えられるかな」
「っ!」
レーヴェの使う“分け身”。それによって僕たちは数の利を詰められ、対処を迫られる。
だけど分け身に対処をしたってしょうがない。本物を削れば分け身も維持は出来ないことは分かっている。だからこそ僕は徹底して分け身を、こっちもとにかく速く動いて分け身とレーヴェを自由にさせないことに終始することにした。
幸いにも機動力だけなら僕の方が2人よりも上だ。だからこそ2人の攻撃にも反応出来るし、対応も出来る。指示も出せる。間近に迫った本物のレーヴェの一撃をなんとか躱し、そのレーヴェにアガットさんが斬りかかるのを横目で見ながらも、エステルを吹き飛ばしたアーヤがこっちにその刃を振るってきたので僕は更にそれを刃で受け流しながら後退した。
「強くなったねヨシュアくん! 昔よりも速くなってるよ!」
「おかげさまでね! そっちも異常な硬さは変わってないみたいだけど!」
「それほどでもないよ! ちゃんと痛いから──さっ!」
アーヤから距離を取り、アーヤがまた別の方向へ刃を振るうのを僕は見る。後方からの攻撃。ジョゼットとティータの導力銃や砲撃が直撃するも、アーヤはそれに殆ど怯むことなく近くに迫っていユリアさんやジンさんの対処に動いていた。
「じゅ、銃が効かない!? どんな硬さしてんのよ!?」
「砲撃が防がれちゃいました……!?」
「──ジョゼット! ティータ! アーヤに攻撃する時は関節などを狙って動きを止めるように行うと効果的だ!」
「わ、わかった!」
「頑張ります!」
「こんな可愛い女の子にそんな鬼畜な指示出すな──って! もう危ないなぁ!」
「くっ、ガードが硬いっ……!」
「さすがは伝説の暗殺者と言われるだけはあるな……! 気功を使っていないのにこうも硬いとは……!」
アーヤの攻撃は殺しの技。それだけに徹底してアーヤの攻撃は防がなければならない。
だからこそジンさんを中心に致命的な攻撃をさせないことを徹底することにした。ユリアさんやエステル。時折クローゼも隙を見て周囲から攻め立てる。
レーヴェの方は僕とアガットさんとミュラーさんで止めつつ、この間にシェラザードさんやオリビエさんに人形兵器を破壊してもらって、それが終われば全員でまた2人を攻める。それでも一筋縄ではいかない。一瞬でも間違えれば瓦解しかねない。
だけど僕たちは負けるわけにはいかない。必ず皆でこの2人を乗り越え、力と覚悟を証明する。もう──僕は逃げない……!
俺とこいつは因縁がある。赤い仮面を付けて情報部に乗り込んでいた時。ボースで熱くなって1人で挑んで剣を折られたこともあったし、その後の墓参りでも奴の闇を知った。
そしてもう1人も、おかしな民間人だと思ってたが悪い奴じゃないと思っていた。今も話を聞いておそらく悪い奴じゃねえのは分かる。
だがだからといって借りを返さなきゃならねえ。この事件を解決するためにも──今度は全員でぶっ倒してやる! 行くぜ! ドラゴォォォン!! ダアアアァァイブ!!
アーヤさんはすごく優しい明るい人です。いっぱい親切にしてもらいましたし、ランドセルだって貰いました。レーヴェさんにしても見逃してもらいましたし、2人とも事情があるって分かってます。
そしてどちらもエステルお姉ちゃんやレンちゃん、ヨシュアお兄ちゃんたちの大切な人で、だからこそ仲直りしてほしい。
だから私も、足手まといにならないよう精一杯頑張ります! 衛星兵器起動します!
一緒に呼び出された人形兵器を倒して私はオリビエと一緒に加勢する。
私はそれほどレーヴェともアーヤとも因縁があるわけじゃないけれど、大事な妹分や弟分の大事な相手のことを蔑ろにしていいはずがない。
だから私もまた鞭を振るう。貴方たちの運命……占ってあげるわ!
ハーメル村出身の彼に共和国を中心に猛威を振るったという伝説の暗殺者……どちらも奇妙な縁を感じる2人だ。
ボクもまた帝国の皇子としていずれは向き合わなければならないだろう。その覚悟は半ば決まっている。
だけど今はまだ美を追い求める旅人として、エステルくんやヨシュアくんの仲間として彼らに加勢しよう! ──さあ、この曲は君たちの痛ましい過去に捧げるレクイエムさ!
伝説の暗殺者《切り裂き魔》の話は俺もよく知っている。
俺もカシウスさんと共に関わった教団殲滅事件。あの一件に、あるいは関与していたのではないかと疑われる人物こそ目の前の少女だ。エステルたちからその過去を共有してもらって、俺は更にその疑いを強くし、それと同時にかつての自分たちの不甲斐なさを感じてしまう。半ば確信をもったその疑いが真実であるのならば、その事情はエステルたちの想像するより遥かに重く苦しいものになるだろう。
だがそれでも、遊撃士として隣人としてその事態は解決しなければならない。そのためにも俺は拳を振るう。泰斗の奥義……しかと見よ!
正直、星杯騎士団という立場の自分にしてみれば2人とも相容れない敵になる。
だけど2人とも……特にアーヤ嬢ちゃん──《切り裂き魔》の方は教会の中でも判断に迷っとるところや。
かつて教会の従騎士をも殺害した連続殺人犯。やけどその事情はバルクホルン卿曰く、情状酌量の余地があるとして、もし見つけても問答無用で争うようなことはしないよう頼まれとる。一部隠密僧兵なんかには睨まれとるようやが……嬢ちゃんの場合は法で裁けないんやない。法や教会の秩序で守れなかった子供や。
だから俺もエステルちゃんたちの希望が叶うとええと思ってるし、力になる。本当の狙いはこの2人やなくて、その上にいる蛇の使徒。最悪の破戒僧の方やからな。そこに辿り着くためにも──俺も気張らせてもらうで!
クローディア姫を護衛する王室親衛隊という立場としては、目の前の青年や暗殺者の少女には思うところはある。彼らは少なからず王国の混乱に加担し、特に少女の方は軍に……死傷者は出ていないとしても幾つもの被害を出している。本来なら許してはならない相手だ。
だが、個人としては私もクローゼの力になりたい。彼女から仲の良い先輩の話は聞いていたし、沢山親切を受け、孤児院の子供たちを中心に施しを行い、ボース市でも救助を行ったと聞いている。その事情も含めて、情状酌量の余地はあるだろうし、何より仲直りをしてもらいたい。私としても以前から直接言葉を交わしてみたいと感じているし、事態の解決もしなければならない。我が主と義のために──覚悟してもらうぞ!
ハーメル村の遺児に都市伝説の暗殺者……どちらもとてつもない腕前を持っているようだな。全く、あの馬鹿のせいでこんなところまで付き合う羽目になるとはな。
だが自分としてもハーメル村の一件は納得がいかないものを感じているし、暗殺者の少女の事情に関しても噂は聞いたことがある。帝国ではあまり問題にはならなかったとはいえ、そういうことを行わせる組織の話には心当たりがあった。それが関係しているかどうかは分からぬが……どちらにせよ俺のやることは変わらない。戦火を起こさせないためにも、我が全霊をもって無双の一撃を為す!
この女……アーヤ・サイードってもしかしてあの“
でも黙っておく代わりに服とかちょっと仕立ててくれないかな? それでヨシュアにアピールして……後は運送業を始めるなら服の配送とかも任せてもらえるように交渉すれば……結構いいかも?
……よし! それを無事に叶えるためにもボクもヨシュアのために一肌脱いでやらないとね!
アーヤ先輩、レーヴェさん。そのどちらも油断出来る相手じゃありません。
回復アーツを絶え間なく発動しなければならないほどに向こうの攻撃は苛烈なもの。個人の攻撃は然ることながら、2人の連携も取れています。おそらく、互いに信頼し合っているのでしょう。アーヤ先輩が危ない時はレーヴェさんがカバーし、レーヴェさんが有利に立ち回れるようにアーヤ先輩も時折サポートしています。
その戦いぶりを見ても、やはり2人は純粋に悪い人ではないと思います。どちらも痛ましい過去を持っていて、そうならざるを得なかったんだと。
……私にはリベールの王家の人間としての責任があります。
だから優先しなければならないことがあって、そのためには2人を倒して計画を止めないといけない。
でもだからこそ、誇り高きリベール王家の一員として、苦難に見舞われた人を放って置くことは出来ません。
私はアーヤ先輩の友人として、そしてエステルさんやヨシュアさんの仲間としても、2人に力を証明する。
ですからアーヤ先輩。少し痛いかもしれませんが我慢してくださいね。大丈夫、先輩がこの程度で死なないことはよく分かっています! さあ、行きますよ!
──うわあああああああああああああああ!!? 痛──────い!!? ちょ、まっ、やめっ……攻撃激しいって!!? エステルちゃん奥義痛い! 螺旋とかチート親父みたいなこと習得しないで! ヨシュアくん速い! 逃げていいんだよ! アガットは帰れ! 私はロリじゃないぞ! ダイブしてくるな! ティータちゃんその衛星兵器どうやって作ったの? 時代先取りし過ぎじゃない? シェラザードさん鞭で《エクス=マキナ》破壊しないで!? なんか《エクス=マキナ》も嬉しそうに破壊された! オリビエはそのリュートどうなってんの!? アーツ痛いって! ジンさんはもうとにかく硬い! でかい! 強い! ガチで斬ってるのに死なないのすごい! ケビンはガードうぜええええええ!! なーにがグラールスフィアじゃ!! 私とレーヴェの攻撃を定期的にガードしないでくれるかなぁ!? いやまあガードしないと何人か死んじゃってたかもしれないからナイスなんだけど、本気で攻撃してるこっちとしては普通に鬱陶しいジレンマ! ユリアさんは普通に強い! 後良いモデルになりそう! 後で名刺渡すからモデルとして私の服着て欲しい! ミュラーは怖い! ミュラーが怖いというかヴァンダール流が怖い! レーヴェもミュラーの剣を受けて「ヴァンダール流か……中々に良い太刀筋をしている」とか不敵に褒めてるけどそんな場合じゃないよ! 帝国の剣士は最終的にハチャメチャなことしてくるって相場が決まってるんだから! なぜか私の方にSクラフト撃ってくるしね! ジョゼットちゃんはさっきからビシバシ銃弾が当たって痛いよ! 私じゃなきゃ死んでるですけど!? ヘッドショットやめて! そしてクローゼちゃん! クローゼちゃんは頑張りすぎ! 回復アーツもやってアーツで攻撃してジーク飛ばしてたまに剣で殴りに来る! 働き過ぎ! めちゃくちゃ気合入ってる! って、うわぁ!? レーヴェが“絶技・冥王剣”使ったーー!!? でも見てる余裕ない! もうこっちも色んなところから攻撃飛んできて間に合わないんで双剣にして片方ガードするね!
「なっ……!?」
「そんな……!」
おっと。分離は読めなかったかな? エステルちゃんとクローゼちゃんが同時攻撃を防がれて動揺したので、私はその隙を突いて2人を吹き飛ばす──邪魔な相手……ジンさんの方に!
「──させませんっ!」
そして更に私の攻撃を阻もうとティータちゃんが砲撃を行ってきたので、私はその砲撃をあえてその場で叩いて爆発させた上で、ジンさんの上から後方に宙返りをするように跳躍し、再び《ゾルフシャマール》を通常状態に戻して開いた──あ、これ大丈夫? 取れちゃうけど。
「危ない! ジンさん!!」
「っ……!?」
頭上から“グリムシザー”。首を狙ってちょきんと挟む──あー……マズい。本気だから止めきれないや。うわぁ、めっちゃ後悔しそう……でもしょうがない。覚悟したことだもんね。割り切って気にしないようにしよう。謝っても許してくれないかもだけど、
「やあああああああっ!!」
「っ!?」
──って思ったらエステルちゃんが割って入ってきた。いや、エステルちゃんでも私の“グリムシザー”はガード出来な──うおお!!? マジ!?
「今よ!! クローゼ!!」
「はい! はああああああっ!!」
「あっ……!?」
そしてまたしても後衛のはずのクローゼちゃんが、私の背後から勇ましく。これまでで1番の鋭い剣の一振りで私──じゃなくて、私の《ゾルフシャマール》を狙って。
予想以上の力で振るわれたせいもあって、私の《ゾルフシャマール》は私の手から離れた遠くへ飛んでった。あっ、やばっ。す、すぐに取りに行かないと──!!
「アーヤ先輩!!」
「これで終わりよ!!」
「あうっ……!?」
と、そうしてその場から脱しようとする私に、2人がタックルを仕掛けてくる。飛び込んで掴んで地面に押し倒すように。私の両腕を取って拘束するために。
その上で上に乗られてしまえば──さすがの私も動けなくなる。
「や、やった……!」
「はぁ……はぁ……やりました……!」
エステルちゃんとクローゼちゃん。そして他の仲間たちも息を乱し、あるいは疲れを見せながらも私を制したことに喜びを見せる。
そして見れば、レーヴェの方も片膝を突かせることに成功していた。私はそれを見て、素直に感心する。私には珍しく、混じり気のない素直な称賛と感動を。
「…………なるほどね。最初っから私をどうにかして捕らえようとしてたんだ」
「ええ……ヨシュアから、アーヤに勝つには隙を見つけて抑えるしかないって言われてたからね」
「これで先輩がまだ戦えたとしても……勝負あり、ですよね?」
「たしかにね。捕まったらそりゃ負けだ。まだ戦えたとしてもね」
エステルちゃんとクローゼちゃんの言葉を受けて私はやれやれと自然に息をつく。まあまだ全然戦えるけど、確かに捕まえられるってのは負けに違いないし、死の危険もないせいか焦りもなければちょっとめずらしく清々しい気持ちにもなる。捕まるってのは普通はそういう身の危険があるものなんだけどね。
だから抜け出す気にもなれない。本気で危ない時はここからでもまだ逃げ出すために悪あがきしまくって逃げるんだけど危険じゃないし割と満足したんで逃げない。だから私は、負けを認めたことで力を抜いてくれる優しい後輩2人の手を借りて立ち上がりながら、まだ終わっていないレーヴェに声を掛ける。
「ごめん、レーヴェ。私、負けちゃった」
「……そのようだな。まさかアーヤを捕らえるとは……なかなかやるな」
「うん。だから後は1人で頑張ってね」
と、私がそう言えば他の皆が動揺した気がした。まあそうなるよね。お供を倒して私もなんとか捕えたとしても、レーヴェがまだ残ってる。しかも、まだまだ余力を残したレーヴェが。
「だが俺の修羅を止めるほどではない」
そう言って問題なく立ち上がるレーヴェ。やっぱり力は有り余っている。それにレーヴェは私みたいに隙が多くないから捕まえることも難しいだろう。
「所詮、お前たち遊撃士は人を守るだけの存在だ。《理》に至りでもしなければ《修羅》に届く道理はない」
あ、そういえば私が修羅だって話は結局何なの? ──って、聞きたいけどさすがにこの流れでは聞けない。レーヴェの大事な時なんでさすがに黙って考えるけど、よく分かんない。やっぱりガチで殺す覚悟でも持ってたら修羅だったりする? まあ確かに私がガチで殺そうとしてる時、教団の人間とか悪人とか猟兵とか殺す時の方が調子良い感じはするけどさ。でもレーヴェの言葉的には殺すかどうかより非情さみたいなところっぽいし……うん、やっぱりよく分からん。色々終わったらレーヴェに教えてもらおう。
「小手調べはここまで──そろそろ全力で潰してやろう」
そうして私が考えている間にレーヴェは更に本気で臨む宣言。その言葉に怯むエステルちゃんたち。
でもここからが本番というか見せ場だ。
「……だったら、レーヴェ。ここから先は僕1人で挑ませてもらうよ」
そう、ヨシュアくんが覚悟を見せる番だ。
──そしてそこからはヨシュアくんが1人でレーヴェに挑む。一対一の真剣勝負。さっきまでの戦闘で少しは動きが落ちている──レーヴェが言うには機動力が落ちているので勝機はあるとヨシュアくんは言う。
だけど正直、実際に見てみると勝機は本当に薄い。私じゃ絶対勝てないし。スピードで勝るヨシュアくんでもかなり厳しい。だけどそれでもやると言うヨシュアくんとレーヴェの戦いが始まって……かなり見応えのある応酬が行われた。やっぱ速いってそれだけで強いよね。昔も思ったけど速いってだけで格上にも割と戦えるし。
まあそれでもある程度の実力がなければレーヴェにこんなに渡り合えないだろうけど。なんならヨシュアくんがかなり押してるように見える。
でも更にレーヴェが全開で攻勢に出ればヨシュアくんも苦しそうになる。どっちもがんばえー! いや、これは確かにやばい。どっちも知り合いとして見る戦いだからかなり心配になる。
そして更に、戦いの中でヨシュアくんはレーヴェに質問する。なぜ教授に協力しているのか。レーヴェはどんな目的で結社に入ってこんなことをしているのか。
その理由をレーヴェは問われて、そして答えていた──「人という存在の可能性を試してみたくなっただけだ」と。
まあこの理由がまたね。色々あるというか、レーヴェはハーメル村の一件で人の弱さと人が欺瞞を抱えていることを思い知った。なので人々にその真実を思い知らせ、欺瞞をなくすために計画に協力している。そうすることでこれからも起こり続けるであろう悲劇。第2、第3のハーメルの悲劇。そこで死んでいくカリンみたいな人を出さないために《身喰らう蛇》に入って修羅となることを決めたってのがレーヴェの言い分だ。
まあそれに対する私の正直な感想は、レーヴェは優しいなぁってくらいだ。正直レーヴェがそこまでやる必要ある? って思っちゃうし。だって人間には良い人も悪い人もいるし、なにをしようが悪い人は悪いままで死んだって多分変わらないだろうしね。レーヴェには悪いけど
まあだからといって人間皆死ねばいいとも思ってないし、そりゃ平和ならそれに越したことはないけどね。だからやれることはやるけど、でもどうしようもないものはどうしようもないので割り切ってしまう。
──だからその後のヨシュアくんの答え……「それこそ……欺瞞じゃないか」って話の方が頷けるかもしれない。
ヨシュアくんは、人は大きい存在の前にも無力なだけじゃなくて、カリンがヨシュアくんを救ったみたいに出来ることはあるよねと言っている。そしてカリンを強く想っていたレーヴェがそれに気づかないはずがない。だからそれも欺瞞だってことだ。
それに対してレーヴェは剣を鍔迫り合いながら、カリンは特別でそんな人はそう簡単にいないと答える。だから人は試さないといけないと。カリンの犠牲に値するのかどうか。
そしてヨシュアくんがそれに対して、それは自分が証明してみせると答える。
「姉さんを犠牲にして生き延びた弱くて、嘘つきなこの僕が……エステルたちと出会うことで自分の進むべき道を見つけられた! レーヴェのいるここまで辿り着くことができた!」
そして最後にこう言った。名言来るぞ!
「人は──人の間にある限りただ無力なだけの存在じゃない!」
「!!!」
──名言キタ──!! うおー! 熱い! テンションあっがるー! そしてそれと同時にヨシュアが今までで1番速い──限界を超えた連撃を放ち……!
「あ……」
そしてレーヴェの剣を遂に弾き飛ばす。
それが決着だった。呆気に取られるレーヴェの前で、ヨシュアは膝を突いて肩で息をする。それを見て私は自然に笑みを浮かべながら言っておくことにした。
「勝負あり、だね」
「や、やった……」
──やったああああああ!! うわああああ!! 心の中だけで歓喜する! エステルちゃん以上に喜ぶとなんか変な感じになりそうだからね! 良いシーンだから噛み締めよう!
「俺に生じた一点の隙に全ての力を叩き込んだか……まったく……呆れたヤツだ」
「はあ……はあ……ダメ……かな……?」
「フッ……《剣帝》が剣を落とされたのではどんな言い訳も通用しないだろう。素直に負けを認めるしかなさそうだ」
「…………あ…………」
レーヴェが遂に負けを認め、弟分の成長に小さく笑みを浮かべる! そしてエステルちゃんたちが喜びを爆発させたので私もまた一緒になって近づくことにした。
「凄い! 凄いよヨシュア! あの《剣帝》に勝ったんだよ! しかも……剣だけを弾くなんて!」
「そうでもしない限り……万に一つの勝ち目も無かったからね。それにそれを言うならエステルたちもアーヤに勝ったじゃないか」
「あはは……うん。でもそれはやっぱり……」
「うん。なるべく相手を傷付けずに無力化することを優先する……父さんに教わった遊撃士の心得が役に立ったよ」
「なるほどな……《教授》に仕込まれた技術と《剣聖》から教わった心得……その2つを使いこなせば、俺たちが敗れるのも道理か……」
「レーヴェ……」
「………………………………」
そしてレーヴェがそう得心したところで、ヨシュアから再度名を呼びかけられ、レーヴェは考え込む。そしてややあって答えを出したのだろう。はっきりと口にした。
「俺は、人という存在を試すために《身喰らう蛇》に協力していた。その答えの一つをお前が出した以上、もはや協力する義理は無くなった。そろそろ……脱ける頃合いかもしれないな」
「あ……!」
そう、レーヴェが《身喰らう蛇》を抜ける。
その意志を確かにしたことでヨシュアの緊張の糸が切れて──そこでなんとレーヴェに思い切り抱きついた! きゃー! なんか変な趣味に目覚めそう! どっちも美形だしほぼ兄弟だしどっちも知り合いだから倒錯的すぎる! 新しいデザイン生まれそう!
──そしてその後はレーヴェが皆を褒めて大団円だ! 12人もいるからお褒めの言葉も多いぞ! しかも的確というか良いとこを突いてくる! こうして見るとレーヴェって教師とか向いてるかもしれない。士官学院にでも転職したら? それとも遊撃士になるのかな? 結社を抜けた後のレーヴェの進路ってちょっとどうするつもりなのか気になるよね。
「いやー本当に良かったね! 私から見てもレーヴェとヨシュアが対立してるのってちょっときつかったし。仲直り出来て私も嬉しいよ!」
「アーヤ……そうか。君も気にかけてくれていたんだね」
「まあ2人とも昔から知り合いだしね。ほんとレーヴェがヨシュアくん始末するって言った時はどうしようかと思ったよ」
とまあ私も話に混ざってヨシュアくんと談笑というか、久し振りに互いの目を見て話す。ヨシュアくんと笑顔で会話するのなんてなんなら初めてだからね。新鮮で良い感じだ。
「あの……アーヤ先輩。先輩は……その、どうするつもりなんですか?」
「! あー……そうだね」
──で、良い感じに空気になろうと思ったけどそれは許してくれない。クローゼちゃんは私の顔を窺うように聞いてきたので、私も考えた末に答える。
「……とりあえず、クローゼちゃんやエステルちゃんたちが強いことは分かったからね。結社を抜けることは出来ないけど……これからは気が向いたら頼りにさせてもらおうかな」
「……やっぱりやめるわけにはいかないんですね?」
「うん。私の方は
「いえ、いいんです。先輩に事情があることは分かってますから」
私は気まずくなりながらそう答える。いや、ほんとごめん。空気悪くしちゃったかもしれない。レーヴェのことで良い空気で終わりそうだったのに水差してほんとうにごめん。
でも意外にもクローゼちゃんは笑みを浮かべていた。仕方ないって感じで。少し困ったように。
「ですが忘れないでくださいね。私は先輩の後輩で、そして友人なんですから。何かあったらいつでも相談に乗りますから言ってください。──それとあまり悪いことや、無茶なことは出来れば控えてくださいね?」
「う……そ、それはまあ……ね。でも難しいところもあるというか……」
「ですからあまり、と言いました。そしてもしどうしようもなくなったら……私たちのことも思い出してください。先輩のことを大事に思ってる人がいることを」
クローゼちゃんはそう言って懐からそれを──私が落とした贈り物のブローチを私にもう一度手渡してきた。クローゼちゃんの体温を感じる。え、何。めちゃくちゃエモい感じじゃん。もうこれキスしていい? 殆ど告白だよねこれ。まさかクローゼちゃんにこんなに愛されてるなんて……これはもう結婚かな?
──いや、でも真面目な話、ここまで言われると……まあ、それくらいはね。約束してあげてもいいかな。
「……そうだね。可愛い後輩のお願いだし、それくらいは聞いてあげようかな」
「はい。そうしてください。もしあんまり勝手なことをしたり、連絡がないようなら──また
「え?」
──え? クローゼちゃん追いかけてくるの? そ、それはちょっと……クローゼちゃんはリベールをあんまり出ない方がいいんじゃない? 王女だし、これからもっと危なくなるし……。
「……い、いや、クローゼちゃん王女でしょ? だからそれこそあんまり無茶なことはやめた方が……」
「そう思うなら先輩が自重してくれていいんですよ? でないと私は止まれませんから。それに王族だとしてもやり方は幾らでもあります。オリビエさんみたいに変装したっていいわけですし……」
「なっ……!?」
私がその通りの言葉を口にしてクローゼちゃんを諌めようとするも、クローゼちゃんは頑ななママモードを発動してそんなふざけたことを口走ってしまう。ユリアさんが驚愕していた。更にオリビエさんも口元に笑みを浮かべる。
「ほう……それはいいね。ならもしそうなった時はボクからもアドバイスを送らせてもらおうか。ふむ……そうだね。クローディア姫ならシンプルに良家の子女の旅行者……いっそ芸能事務所に所属するアイドルの卵なんてどうかな?」
「やめろこの馬鹿! 国際問題になったらどうするつもりだ!?」
「いたたた!? い、痛い、痛いよ、ミュラーくん? やだなぁ、冗談じゃないか」
「ふふ、そうですね。ではもしその時になったら参考にさせてもらいます」
「く、クローディア姫……その、あまりお戯れは……」
「……な、なるほど。これは気をつけないとね……」
私はクローゼの冗談なのかそうじゃないのか──いや、これは多分冗談じゃない。そう判断して肝に銘じることにする。これからは更に隠れないとね。でないとクローゼちゃんが押しかけてくることになりかねない。そう思ってクローゼちゃんから貰ったブローチを再びしまい込むけど──
「……………………アーヤ。もしお前が力を必要としているなら、俺も手を貸そう」
「え?」
──なんかレーヴェが私の方を向いて思うところがあるような感じでそんなことを言ってきた。私は更に戸惑う。え、なんで?
「お前のやることに意味があることは理解している。だからあえて止めはしない。むしろ事情によっては協力できることもあるだろう。お前がもしそう思ったなら、声を掛けてくれて構わない。その時は俺も力になろう」
「……わかった。それも覚えとくよ」
めちゃくちゃ疑問だし嬉しいけどあえてクールぶって笑顔でその気持ちを受け取っておく。困った時って……ど、どうしよう。結婚相手に困った時とか声かけていいのかな? レーヴェもその気はないだろうけどお情けで結婚してくれたりとかない? ──ないか。馬鹿なこと考えてすみません……いざという時の切り札にさせてもらいます……レーヴェをデリバリーで頼めるってだけでも破格だしね。
「そういえば……どうしてレーヴェとアーヤはここにいるの?」
──と、話がある程度一段落ついたところでエステルちゃんが話を主軸に戻す。さすが主人公。そうそう、まずは先の話よりこの事態を解決しないとね。なのでレーヴェが《輝く環》のある場所──《根源区画》にあるよってのと効果範囲とかを色々と説明する。しかも《輝く環》って自律思考もするし、外敵が来たら排除するように色々けしかけてくるから面倒だよってね。
「そしてお前たちは、その苦労に加えて《白面》も相手にしなくてはならない」
「まあそうなるよねー」
「!!」
「……当然、そうなるだろうね。でも、レーヴェが協力してくれたら教授にだって対抗できる気がする」
「こいつめ……俺が付いてくるのを当然のようにアテにしてるな?」
「へへ……」
ははは、此奴め。さすがはヨシュアくん。そりゃレーヴェが味方にいるならそりゃ使うよね。相手は《面白》だし。ってことで全員でエレベーターに乗って地下へ行こう! あ、もちろん私も手伝うよ!
「──それじゃ私も手伝おうかな」
「え、アーヤも?」
「いいんですか? 先輩」
「いいっていいって。負けた時点で計画からは脱落したようなもんだし、ここからは頼りになる協力者として──」
「フフ……仲直りしたようで結構だ。しかし少々打ち解けすぎではないかな?」
そして私も協力すると意思表示した時──どこからともなく面白くない声が! お、よし来たな催眠エロ教授! 私はちゃんと忘れてないぞ! 不意打ち対策はばっちり! 現れた瞬間ちょん切ってやる! さあどこから──あ、いた! 出てきた! よーし、不意打ち阻止──
「がっ……」
「いっ……!?」
──だけどレーヴェと
「あ……」
「レーヴェ……!」
「アーヤ先輩!?」
「フフ……ご機嫌よう。見事、試練を乗り越えてここまで辿り着いたようだが……こういうルール違反は感心しないな」
──って、あれ──? 私も攻撃されたー!? そんな効かないけど痛いー!? て、ってかなんか身体動かないんですけど? 金縛り? ──あ、いやこれ違う! 面白教授の魔眼だ! 動き止める奴! 私がまだ1回も喰らったことのない術だ! マズい! 動けない!? ああああ!! バカバカバカ! 何してんだ!! レーヴェに攻撃するなー!! この面白くない教授めー!? さては私のことも対策してたな!? ふざけやがってー!!
「な、なにがルール違反よ! あたしたちは正々堂々と執行者たちと戦ったわ! そしてあたしたちはアーヤに勝ったし……ヨシュアは……レーヴェとの勝負に勝った! 変な言いがかりを付けるんじゃないわよ!」
「そうだそうだー! 何がルール違反だー!」
「フフ、まだまだ今回の計画の主旨に気付いていないようだね。結社に属する者は皆、それぞれ何らかの形で《盟主》から力を授かっている。そのような存在が君たちに協力してしまったら正確な実験は期待できないだろう?」
「執行者は自由を保証されてますー! 別に計画の阻止側に動いても何の問題もありませんー! もう一度結社のルール見返した方が良いんじゃないですかー!? バーカバーカ!」
「……相変わらず、君は私を苛立たせるのが上手いようだね。確かに執行者は自由を認められているがね。私の実験の邪魔はして欲しくないのだよ」
「実験って……?」
「まさか……僕たちがここに来たことすら計画の一部だったというのか!?」
「フフ……幾分、私の趣味は入っているがね。少なくとも計画の主旨の半分を占めているのは間違いない」
「大体趣味だろー! この変態ロリコンショタコン催眠野郎!」
「クク……全ては《盟主》の意図によるもの。そういう意味ではアーヤ。君やレーヴェに邪魔されるわけにはいかないし、ヨシュア。君も実験の精度を狂わす要素だ」
なーにが《盟主》の意図だ! お前盟主に死ぬこと予言されてますけど!? って言いたいけどそこを言っちゃうと死なない可能性があるので言えない! くぅ、悔しい! この悔しさはこの後ぶつけてやる!
「非常に申し訳ないが……そろそろ私の人形に戻ってもらうよ」
「!!! ぐっ……!?」
「ヨシュア!?」
──そしてそこからはまたしても教授が暗示でヨシュアを人形にしてしまう。それに驚愕する一同。私も知っていてもぐぬぬってなる。まだ動けないし……! ここは我慢して後で仕返しするしかない!
なので教授のネタバラシと趣味の悪い語りを聞いて、その後のエステルちゃんの痺れる啖呵も聞いた。
「──あんたなんかぶっ飛ばして絶対にヨシュアを取り戻すんだから!」
「フフ……そう来なくては。だが、私もこれから外せない大切な用事があってね。《根源区画》で待っているから是非とも訪ねてきてくれたまえ」
そう言って教授は謎ワープで消える。それと同時に私も動けるようになったので、レーヴェを他の皆と一緒に介抱することに。
「奥にある……大型エレベーターを使え……」
「レーヴェ……! よかった、無事だったんだ! 奥にあるエレベーターって……まさか……あの大きなプレート!?」
「《環》が眠る《根源区画》に……降りることができるはずだ……急げ……もう時間がない……アーヤ……俺の剣と回復を頼む……」
「うん! レーヴェは私が見てるからエステルちゃんたちは急いで奥に行って!」
「わ、わかったわ!」
そして私がレーヴェを見て他の皆を奥に向かわせればきっと何とかなるだろう。よーし、このままレーヴェと一緒に行動してれば──って、ぎゃー!? ドラギオン来たー!?
「あれは……アルセイユを撃墜した……!」
「《トロイメライ=ドラギオン》……ワイスマンめ……俺の機体以外にも用意していたのか……」
「くっ……何とかして切り抜けないと……『とりゃー!!』──え?」
──と、話している間に私は《ゾルフシャマール》でドラギオンに斬りかかる! ふっ、馬鹿め! この程度で今更私がビビると思った!? レーヴェを救うためにこの辺りのことは予め覚悟済みだ! ドラギオンくらいぶっ倒してやる!
「大丈夫! ここは私が抑えてるから! エステルちゃんたちは先に行って!」
「で、でも……!」
「いいから行って!」
「……わかった! ありがとうアーヤ!」
「行け……! エステル・ブライト……! その輝きをもってヨシュアを取り戻すがいい……!」
「……うんっ!!」
そしてエステルちゃんたちは、私とレーヴェの後押しを受けて奥のエレベーターへと走っていく。残った私は残りのメンバーと一緒に2体のドラギオンを足止め…………って、あれ?
──なんか……私1人なんですけど?
「無理はするなよ……アーヤ」
レーヴェがそう言う中、私に向かって2体のドラギオンが攻撃を仕掛けてきて……やっぱり私は叫んだ──うわあああああ!!? なんで私1人なの!? いや、確かにここは任せろって言ったけどさぁ!! 私の計算だと大勢の仲間と一緒に撃破して余裕を持って《根源区画》に向かうつもりだったんですけど!? ──ぎゃー!? 攻撃してきた!! や、やばい! 早く倒さないとクライマックスに間に合わないからエステルちゃんたちが危ないしレーヴェも危ない! うわああああ!! こなくそー! こうなったら単独ドラギオン2体撃破RTAしてやるー!! アーヤちゃんの世界新記録を見ろー! うおおおおおお!!
ってことで長かったけど今回はここまで。本気アーヤちゃんは敵だと怖いし味方だと頼もしいという回。
そして次回はワイスマンが遂にその変態趣味を暴露し、更に変態します。ちなみにバトル回はもうないです。後2話で空の軌跡SCは終わりかな。お楽しみに。
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