──俺は生きなきゃならなかった。
俺の居た組織は殺人を強要される場所だった。
年端もいかない子供たちを各地から買い取っては訓練を施し、それを無事死ぬことなく乗り越えた者たちだけを構成員とし、2人一組のパートナーを組ませ、互いに組織を裏切らぬよう監視し合いながら、組織の管理人から与えられる暗殺任務に従事するそんな酷い場所。
酒やクスリに溺れ、俺や妹に暴力を振るっていた酷い親父によって金のために売られた俺はそんな酷い組織に所属し、管理人に従って人を殺し続けることで何とか生きることが出来ていた。
正式な構成員になってようやく満足な衣食住が提供され、人並みの生活を送ることができた。そうならなければならなかったからそうした。
──だが、そんなものは普通の人間の生き方じゃない。
人が人を殺す……もちろんそれを行っても普通に生きてる奴はいる。
国に所属する軍人や……あるいは猟兵といった連中。大多数のマフィアも滅多なことではやらないとはいえ、それを厭いはしないしいざとなれば躊躇はしないだろう。
だがそれらは自分で選んだ生き方だから……自分で納得して決めたことだから普通でいられるってだけだ。俺達はそうじゃない。親に売られ、組織の利益や管理人の愉しみのためにそういう風に生きることを強要されているだけだ。
そしてそういう風な経緯で犯したものだからこそ、俺たちは殺人を嫌悪していた。
──そう、俺たちは、だ。俺には目的を同じとする頼もしいパートナーがいた。
名前を
だがそいつとはウマが合った。俺の少し年下で、真面目すぎるところもあるスリーは気づけば俺の親友で歳の近い弟のような存在になった。
そんなスリーだからこそ、俺たちは互いに組織を裏切って逃亡することを決意したし、組織に隠れて出した手紙にもスリーという頼もしい相棒がいることは知らせておいた。
──もしもの時……妹が、スリーを、相棒を頼れるように。
もちろん生き残れるならその方がいいしそうする。だけど組織は甘くない。裏切ったと知ればすぐに追手を差し向けてくるだろう。
それらを仮に撥ね退けたとしても……管理人に勝てるとは正直なところ思わなかった。
だから俺たちができるのは組織の目を掻い潜り逃げ隠れることだった。
「死ね! スリー!!」
「あああぁぁああああああ!!」
──そして……それは叶わなかった。
俺の悪い予想は的中し、逃げた俺とスリーの元に“
奴はその圧倒的な力で俺とスリーを追い詰めた。その気になればすぐにでも捕らえることも殺すこともできたのに、俺たちに絶望と恐怖を与えるためにわざと狩りでも楽しむかのようにゆっくりと迫ってきた。
そしてそんな絶体絶命の状況だからこそ、俺は覚悟して──
組織のルールに従って、パートナーを殺せば組織から許されて生き延びることができる。俺がスリーを殺せば、俺は生き延びることができる。
俺はどうしても生きなきゃならなかった。妹のためにも。
──そうして……その建前を理由に俺はスリーに殺されることにした。
相棒を生かすために。俺は自分が死ぬことを決めた。
その選択に思うところがないわけじゃない。苦渋の決断でもあった。もしかしたら、妹は俺を恨むかもしれない。ここでスリーを殺して組織に許され、妹と生きて再会する──その方がよっぽど良い道だったのかもしれない。
だが……それでも相棒を殺すことは出来なかった。そして、スリーならきっと妹のことも何とかしてくれると、俺は相棒にそれを託すことにした。
……だけど、それは思えば逃げだったのかもしれない。
「──やあ、お目覚めかね? “
──目が覚めた時……そこには《皇帝》がいた。
「……っ……俺は……生きて……?」
「ああ、その通りだ。今君は、辛うじて生きている。──もっとも選択の如何によっては我によってすぐに殺されることになるがな」
どうやら俺は生きているらしい。どこかの研究室……診療台のような場所に乗せられている俺は皇帝の声を聞いて──自分がまだ助かっていないことを思い知った。
「さて、このまましばらく君の姿を眺めていたいのは山々だがあまり時間もないのでね。単刀直入に問おう。“
「っ……なに、を……?」
「フフ、疑問に思うのも無理はない。何故組織を裏切った自分が許されようとしているのか。おそらく君はそう思っているのだろうが、その問いに対する答えは単純だ。
だから殺すのは惜しい──そう告げてきた皇帝の言葉に、俺は悍ましいものを感じた。
何が殺しの才能だと。そんなものを褒められても何も嬉しくはない。これ以上、組織のために働くのも御免だった。
「……殺、せ……」
「ほう。断ると言うのか?」
俺は当然、それを拒否した。
俺の目的は殺されることにあった。今更命など惜しくはない。後はスリーに全て託した。
だから俺は皇帝の誘いを断った。
……だが、甘く見ていた。
組織の非情さを。管理人の──皇帝の悪辣さを俺は低く見積もっていた。それを証明する言葉が、皇帝の口から放たれる。
「ふむ。あくまで組織を裏切るつもりか。フフ、愚かではあるが仕方ない。君の意志は尊重しよう。死にたいのであれば仕方ない。組織の掟通り──君と君のパートナーを処分するとしよう」
「っ……な……!?」
──その言葉は俺を二重の意味で震わせるのに充分なものだった。
「何を驚いている? 当然のことを我は話したつもりだが?」
「ふざ……ける、な……組織の、掟……は……!」
「裏切りを行った2人の内、片方を殺せばもう片方は生き延びる。その掟のことを言っているのならば確かにそれは間違いではない。──だが
「……っ」
──最初、それを言われた時は何を言われているか理解できなかった。
だが、時が進むに連れて徐々にその意味を理解していく。そして、それに比例して酷い恐怖と絶望を感じた。
「無論、君が死んでいればソードの3は許されることになっていただろうが、生憎と完全に殺すことは出来ていない──たとえ死にかけていた君を我が治療したとしても、死んでいない以上は殺したことにはならない」
俺はそれを理解して、俺たちの置かれている状況が何も変わっていないことを知った。
それどころかより悪くなっている。ここで俺が皇帝の誘いに乗らなければ、どちらにせよ俺もスリーも死ぬことになる。もはやどちらかが片方を殺すことも出来ない。
「さて、それを聞いた上でどうするかね?
つまり、俺に最初から選択の余地はなかったのだ。
その時点で俺の言うべき言葉は、選ぶべき選択は決まっていた。俺は口を必死に動かして問いかける。
「……その、制限……というのは……?」
「大したものではない。我がこれから行う実験を受け入れること。そしてソードの3や君の身内といった君を知る者との接触を禁じ、今まで以上に監視が厳しくなるだけのことだ」
「っ……」
そして皇帝は既に、全てを把握している。
俺の目的。手紙を出していたこと。俺の家族の存在も。何もかも。
そして仮に条件を飲んだとしても──俺は死んだことになるのだとそう告げられた。スリーが組織に許された表向きの理由を作るために。
そしてそれが組織の隠された掟──“卒業”なのだと皇帝は言う。細かい条件は“園”によって変わるものの、どうやら俺はその条件を満たしてしまっていたようで。
条件を飲んでもスリーや妹に会うことは出来ない。既に死んだ人間として組織のために働き続ける……そんな茨の道。
「……わかっ、た……」
だけど俺は、それを選んだ。
そうするしかなった。だけど、それでもスリーが生き延びてくれるならそれでも良い。
どの道俺は死ぬと決めた人間だ。俺はどうなっても構わない。スリーと、そして妹が生き延びてくれるなら──。
「フフ……フハハ……!」
そして俺がそう自分の運命を決めた時、皇帝は俺に更なる治療と実験を行い──そしてそれが成功に終わったことで皇帝は高笑いを行った。
俺は新たなる感覚を得てそれをどこか他人事のように眺める。既に死んだ人間として。
「喜びたまえ
そして皇帝は“卒業”と言った。
皇帝の管理する園からの“卒業”。人として逸脱した証。
だがそれは支配の脱却を意味していない。
「フフ、日曜学校すら卒業していない君には理解しにくいだろうが、“卒業”とは新たな門出でもある。卒業と同時に人は新たなる道を進むもの。ゆえに我もまたそれに倣い、君を新たなる居場所へと誘おう」
そう。そうして堕ちる場所。
それこそがこの《庭園》の隠された最後の《園》。
「その名は──《
そうして俺は新たなコードネーム《A》を与えられ、皇帝に紹介されるがままその《庭園の主》と出会った。
「──《
──そうして出会った《庭園の主》……俺が嫌悪する組織の頂点に立つ相手は……俺の想像しているものとかけ離れていた。
管理人《皇帝》の発する禍々しさや暗い雰囲気など一切ない。明るい中東人の女性であり、裏の人間とはとても思えなかった。
だがそれでもこのアーヤという人が《庭園の主》であることは間違いないようで、俺は戸惑いを抑えながらこれまでのように……いや、これまで以上に組織の道具として感情を殺して恭しく接することにした。相手がどんな人物であろうと関係ない。俺は求められるままに殺すだけの道具だ。スリーや妹を人質にされた以上、俺にはもはや意志などない。そして、髪の色も真っ白になり、人とは少し違ってしまった俺には……。
「それじゃ気は進まないけど今日は皆でピクニックがてらお仕事に行くからね。──ってことでイクスとヨルダとも仲良くしてあげてね!」
──そして俺の意志などもはやなく、すぐに仕事へ向かうという《庭園の主》に《血の庭園》に所属する2人の暗殺者……イクスとヨルダという子供を紹介され、その幼さと強さに驚いた。年齢で言うなら俺やスリーよりも若い。まだ9歳で妹よりも若く、組織で言うならばまだ養成所に通っているような年齢の双子の少年少女だった。
「ハハッ! お前が新入りかよ! なんか辛気臭そうな奴だな!」
「ふうん? 少しは出来そうだけど……ま、いいや。私たちの足を引っ張らないでよ?」
「……ああ。努力しよう」
だがその双子の実力は驚くべきことに俺よりも上だった。
銃弾の軌道を曲げる異能を持つイクスと影を操る異能を持つヨルダ。《血の庭園》に所属するたった2人の暗殺者なだけはある。2人は今まで見てきたどの構成員よりも上だった。
だけどそれ以上に──《庭園の主》の方が遥かに異常だった。
「それでエースくんは趣味とか好きなものとかある? この後仕事が終わったご飯食べようと思うんだけ──痛っ! 急に何! ……あー何かと思えばライフルね。まあこれくらい大したことない──わけないでしょうが!
──正直なところ、この目で見るまでは彼女が《庭園の主》であることに半信半疑だった。
だが実際に目の当たりにして、少なくともこのアーヤという人が常識からかけ離れた相手であることだけは理解する。頭に狙撃銃による一撃を喰らっても石を投げつけられたような反応で済ませ、迎撃してきた拳士らの攻撃も殆ど通じず、空間から取り出した俺の剣にも匹敵する巨大な黄金の鋏を使って敵を無慈悲に殺してしまう。
その性格や振る舞いに反比例するかのように──その殺しの技術は恐ろしく優れていた。
特に一度見せた標的を暗殺する技術においては神がかっていた。敵意も殺意も憎しみも。殺人に対する忌避すらなく、一瞬にして標的を仕留めてしまう。
その上で標的以外はできるかぎり殺さないように努め、それでいながらマフィアや猟兵相手には容赦がない──どこかチグハグで、しかし彼女なりのルールで動いているような、そんな印象を抱いた。
それは組織の管理人とは違って、悪辣なものは感じない。
だがそれでいて、酷く深い“闇”を感じた。組織によって殺しを強要される子供たち以上に、彼女には何かがある。
そしてその上で明るく振る舞っている。まるで普通の人間のように。普通に生きている。
そのことが酷く恐ろしく感じた。ともすれば皇帝以上に。一見親しみやすく接してくれているが、何か些細なきっかけですぐにでも切り捨てられてしまうような……そんな見通せない怖さがあった。
元よりスリーや妹のこともあって裏切るつもりはない。だが、もしスリーがいずれまた組織から逃げようとした時──この《庭園の主》が立ち塞がるとしたら。
そのことを思えば恐ろしくてたまらない。きっとこの《庭園の主》は実際にそうなれば何の慈悲も遊びもなく、その刃を振り下ろしてしまうだろう。
だけど一方で、必要とされている限りは切り捨てられないのではないかというそんな気もする。
だから俺はこれまで以上に組織に対して従順になり、利用価値を示していく必要があると、そう感じた。俺はもう死んだ人間だが、それでも俺がいなくなったり、裏切ったり、利用価値がなくなればスリーや妹だってどうなるか分からない。
無論、そうでなくとも別の要因で死んでしまう可能性はあるとはいえ……俺のせいで死ぬようなことにはしたくない。
それを防ぐために俺は普通の人間になるという道を捨てて、同じく普通ではない《庭園の主》の元で暗殺者で居続ける覚悟を固めた。
どんなに酷い任務だろうと俺は達成し続ける。この手を汚して──
「あ、エースくん。ぬか漬け終わった? それが終わったら今日は夕飯に手打ちうどんとお寿司作ろうと思うから手伝ってくれるー?」
……何故か物理的に手の汚れる料理ばかり作らされているが、もちろんそういう意味じゃない。
ちなみに昨日はハンバーグを作らされた。いや、殺しの仕事よりはもちろんこっちの方が良いんだけど……とはいえどういうつもりなのかと聞きたくなる気持ちをぐっと堪えながら俺は従順にその頼みを了承することにした。
──はいどーもー。アーヤ・サイードです。最近はまた東方風料理に嵌ってます。ヘルシーでいいよねー。なんだかんだ未だにソウルフードです。
さて、そういうわけで今は七耀暦1203年の7月。本っっっっっ当に色々あったリベール留学。《福音計画》から大体4ヶ月くらい経った。
あれから何があったか軽く振り返るけど、ここ数ヶ月も結構忙しくてね。まずレーヴェに救われながらも迎えに来たオジサンと共に共和国に帰った私はすぐにアラミス高等学校を卒業した。かなりギリギリのタイミングかつ卒業に必要な単位もギリギリで、先生方や友人からはもしかしたら卒業しないつもりなんじゃないかって思われたくらいだけどそこは私。しっかりと担任のパウエル先生に泣きついて必要な分の授業を時間外にやってもらい、卒業式に出られるように頼み込んだ。おかげで私は無事に卒業! ほぼ1年くらいいなかった私だけど友達や後輩、先生方もしっかりと祝ってくれた。
そんで卒業の後は友達皆で卒業おめでとうパーティも行ってそこで皆の進路も聞いた。その中でも注目はやっぱりエレインちゃんだよね。エレインちゃんは卒業後、親の反対を押し切って遊撃士になることを決めたらしく、卒業したらすぐにイーディスの遊撃士教会支部で訓練を受け、遊撃士資格認定試験に合格してまずは準遊撃士となることを目指すらしく、皆にびっくりされていた。私もびっくり──でもないけど一応びっくりしておいた。でもエレインちゃんなら良い遊撃士になれると思うし、応援してるよって言っておいた。他にも音楽をやりたいからプロを目指すって言ってる子やZ1レーサーになるって言ってる子もいて、なんか私の友達は結構な割合で挑戦というか、安定した仕事よりも夢を追いかける人が多かった。なんでだろうと思ったけど、聞いてみたら私を見てやってみようって気になったらしい。なので素直に嬉しかった。卒業しても私たちズッ友だよね!
……とまあそんな訳で無事に卒業した私だけど、正直なところ学校を卒業できるかどうかも怪しく、会社というかデザイナー業もどうなるかなって不安だったんだよね。なので心配してたんだけどどういうわけか何も問題なく会社もどんどん軌道に乗ってるし、リベールや各方面からの追求もなんか来てないっぽかった。いや、私が気付いてないだけかもしれないけどね。それにしても反応がなかったため、もしかしたら皆私のこと死んだと思ってるか、気を使って正体をバラさないでいてくれたのかもしれないね! やっぱりリベール組は皆良い人だ! 共和国に来ると余計にそう思う! こっちは反移民団体が鬱陶しかったり、マフィアが相変わらず跋扈してたりと混沌としてるからね! 本当に改めて民度が良い国だなって感じた。
なのでまあ無事に卒業後も表の仕事は続けられたので今も服を定期的に仕立ててるんだけど……そればっかりやってるわけにもいかなくてね。
というのもオジサンからは新たに《オルフェウス最終計画》の第二段階──《幻焔計画》に参加するようにって軽く言われた。それはもう本当に軽く。コンビニで弁当を温めるくらい軽く「よろしくゥ!」って感じで。いや、そんな軽く参加するもんじゃないんだけどね。減塩計画なら良いけど。塩分取りすぎには注意。ちょうど教授も塩になって消えたしね。
と、そんな小粋なジョークを挟みながらも参加を要請され、オジサンに借りがありまくる私はそれを受諾するしかなかった。……というかなんならヴィータ姉さんにも借りというか弱みがあるので参加するしかない。なんならリアンヌママにも協力してあげたいしね。博士は……まあどうでもいいけど一応また実験やら何やら依頼が色々来てるんでしょうがなく頼まれてあげてる。
という訳で次に行われる《幻焔計画》を主導する3人の使徒──第二柱《蒼の深淵》ヴィータ・クロチルダに第六柱F・ノバルティスに第七柱《鋼》のアリアンロードと関わりやら何やらがある私は参加せざるを得なくてちょっぴり憂鬱になった。
なんでかってこの《幻焔計画》が《福音計画》以上にややこしいというか、規模がありえないくらい大きくてね……もう私如きの頭じゃどうなるか予想がつかないというか、なんなら原作であったことすらややこしすぎて大まかな流れとか印象深いところ以外はうろ覚えすぎて手に負えないんだよね。もう敵も味方もしっちゃかめっちゃかというか……まあ至宝が2つ……いや、3つも関わってるからそりゃそうかって感じなんだけどさ。その分結社やそれに関係してくる組織もかなり気合を入れてくる。それこそゼムリア大陸が破滅するかもしれないってくらいにはね。大陸規模の大事件になるのだ。
正直なところ私みたいなちょっと強いくらいのパンピー……とは言えないけど、元一般人が出る幕じゃないし、大陸の隅っこの方で服でも仕立てながら大人しく引きこもりたいのは山々なんだけど頼まれちゃったし、しょうがなく参加することにした。まあ世界滅んでもらっても困るしね。割り切ってそれを防ぐためにぼちぼち頑張ることにしようと思う。一応1つだけ目的というかやりたいことはあったし、一応参加しておいた方が都合はいいしね。
なので私もまた計画の準備のために色々とやる必要があるため、予定が立て込んでるんだけど……もうそれが本当に忙しいのでどうしたものかなって思ってたらオジサンがこんなことを言ってきた。
「そんな忙しいお前にオジサンから1つアドバイスだ。これからはお前1人じゃなくて部下も上手く使うんだな。そうすりゃお前の忙しさも少しは改善されるだろうぜ」
──とのことで……まあ早い話が「お前最近《庭園》のこと忘れてねぇよな? せっかくボスにしてやったんだからしっかりやれよ」ってことだ。
いやまあ確かにね。《庭園》についてはイクスとヨルダのこと以外は殆どノータッチでやって来た。だって関わることなんてないし、なんなら別に関わりたくもない。オランピアちゃん以外は皆怖いし。そりゃ言うことはある程度聞いてくれるだろうけどさ……メルキオルとかエンペラーとかメルキオルとか何しでかすか分かんないんで素直に何かを任せたくないんだよね。ド◯リッチ……じゃない。アリオッチはなんかまだ上の言うことは絶対って感じはあるんだけど他が怖すぎる。なので殺されないように大人しくお飾りのボスで居続けてるわけだ。
……だけどオジサンからそうせっつかれたので私も考えた。考えて考えて考えて……まあ仕方なくある程度は動かす必要があるのかなぁ……ってことで納得した。まあ上手くいけば原作よりもなんかマシになってなんか上手いこと行くかもしれないしね。
なので久し振りに管理人を集めて「動かせる人員ちょーだい」って言ってみた。いや、管理人を通じて命令するのも良いんだけど、そもそも私の《血の庭園》に未だにイクスとヨルダしかいないからやりにくいなって思ったのでもうちょっと大人の戦力が欲しいかなってことで。
そしたらすぐにエンペラーからちょうどいい道具がいるとか言い出したんで不安になりながら待ってたんだけど、そうして連れて来られたのが元“ソードの1”で、私は「え、エース!? あ、そういえば忘れてた! エースがいるじゃん! エースも救わなきゃ!」って内心で思いながらも彼が生きてることに感動した。はえー、これが原作崩壊かー。私の知らないところでこういうこともあるんだなーってちょっとうれしくなったよね。これでスウィンくんとナーディアちゃんも未来で喜んでくれる! 今はまだ助け出せないけどそのうち頑張って組織から逃げて新生帝国ピクニック隊結成できるように頑張ってね!
ってことで何故か髪が真っ白なエースくん(イメチェンかな?)を新たな《血の庭園》の構成員として迎え入れた私はご機嫌になって一緒に歓迎パーティとしてピクニックに行くことにした。ちょうどレンも帰ってこなくなったから寂しかったんだよね──レンのことも気になるけどそっちはエスヨシュがなんとかしてくれるだろうし、レンのためにも私は関わらない方がいいかもしれないので自重してる──ってことでちょうど表と裏の仕事の両方があったため、私は煌都ラングポートに4人でやってきた。
ちなみに何があるかってラングポートにも私のブランドショップを出店したのでそこを視察しつつ、オートクチュールで私の服を欲しがってる人にも軽く面談というか採寸とか希望をしつつ、裏ではちょっと殺したい人間を殺しに行くことにした……と、この言い方だとちょっと語弊があるかな? どっちかっていうと殺しとかないといけない人で殺した方がいい人たちだ。私がそうカテゴライズするのは、教団の人間しかいない。後は教団に関わりのある人間だね。正直なところ暗殺者なんてさっさとやめたいのは山々なんだけど、この教団を根絶やしにしないと世の中も私の周りもややこしくてしょうがない。なので被害者とか一部の人は除いて教団関係者を全員殺してからすぱっと辞めたい。逆に言うと教団関係者を殺すことだけは、暗殺者という仕事や執行者という立場が役に立つので甘んじて続けないといけないなーって思ってる。
なのでそういう人たちの情報は今でもちょっとずつ集めてるし、見つけたら地味にやることにしてる。私が暗殺者という仕事の中で唯一自主的に進めてることだね。猟兵とかマフィアとかテロリストなんかよりもぶっちぎりで私の中の殺すTierトップが教団関係者だ。なんなら教団しかいない。生きてるとロクなことにならないのは私が1番よく知ってるからね。民間人にとっても迷惑だろうし、割り切ってしっかりとやることにしてる。
なので態々出張やピクニックも兼ねてやってきた訳だけど、この仕事の報酬がまた良くてね。この仕事はオジサン経由で回ってきたんだけど、なんでも報酬として教団関係者の情報を沢山くれるらしい。
──そういうことで私はイクスとヨルダ。それに新たに仲間になったエースくんと一緒に夜まで待ってたんだけど……そんな時にちょっと事件が起こってねー……もうそれは面倒というか大変だったよ。そろそろ変装して待機しようかなーって思って《切り裂き魔》衣装に着替えたところでなんか急に私のいたホテルが襲撃されてさ。誰かと思ったら《
因みに私の殺しの条件五箇条は──1、避けられずに受けてしまった仕事の場合は割り切って仕方なく殺す。2、身の危険を感じたり、私や私の大事なものを害そうとした場合は正当防衛としてやむを得ずに殺すこと
……なんかこうやって見ると私がとんでもなく殺したがり殺人鬼みたいに見えるけど……べ、別にそういうわけじゃないんだからね! 私の基本方針は平和! 殺さなくて済むならそれに越したことはない。殺したいのは教団関係者くらいでそれ以外は仕方なく、仕事とか殺し合いの時とか相手も同業とか時と場合によるってだけだから! そもそも数年前の教団全盛期ならともかく最近は全然やってないし! 基本的に命は大切に。この何となくの自己分析ルールもパターンを上げただけであって大抵はやってないし! 殺しを仕事にしてるからこそ滅多なことでやっちゃいけないんだよ!
なので仕事も基本的には2から5の条件に合致する相手だけにしてほしいし、それ以外はできるかぎり受けないようにしてる。その甲斐あってか《月光木馬團》時代や結社に入ってすぐの頃みたいな何の罪もなく戦いを生業にしてる訳でもない一般人を殺すことはなくなってかなりありがたい。今回も殺したのは教団関係者と襲ってきた《黒月》の凶手とか構成員だけだしね。最近の私は暗殺者なのに全然人殺してないから偉いと思う。リベールでも不殺を貫いたしね。ふふん。ちょっとずつ真人間に近づいてる気がする。
ってことで謎に《
──と、そう思っていたら夜に来客が来たんで本社の応接室で私はそれを迎えた。
「──初めまして。マリアベル・クロイスと申しますわ」
「──よう、アーヤ。せっかくだから挨拶に連れて来てやったぜ。今回の《幻焔計画》における結社の協力者の1人……悪名高いクロスベルの錬金術師をな」
「うふふ、悪名の高さで言うなら貴方がたには到底及びませんわ。犯罪の天才とまで謳われる《千の破戒者》に都市伝説の暗殺者《
──なんか《破戒》のやべーオジサンがやべー女を連れてきた。
私はそれを受けて笑顔で固まりながらもすぐにいつも通り応対し、そして内心だけで叫んだ──うわあああああ!!? やべーオジサンがやべー女連れてきたああ!!? マリアベル・クロイスだー!!? 零の軌跡と碧の軌跡の黒幕だー!!? 性悪レズ女だー!! 美人だけど怖いよー!! なんだったら教団を作った黒幕の一族でもあるし!! そういえば《幻焔計画》に関わるならこの女とも関わるんだったー!! シンプルにいやだー!! うわああああん!!
ということでアーヤちゃんの物語第二章が開幕です。クロスベルやら帝国でどったんばったん敵も味方も巻き込んで大騒ぎする予定ですのでお楽しみに。次回は帝国側で色々あります。
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