TS不幸少女のゼムリア大陸災難記   作:黒岩

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契約を結びまくる不幸

 ──成程。確かにこれは面白い素材ですわね。

 

 その人物──アーヤ・サイードにわたくしは一度お会いしてみたいと思っていましたわ。

 理由か幾つかありますが、やはり1番の理由としては彼女に関する興味深い情報を幾つか知っていたこと。

 数百年以上続く錬金術師の家系クロイス家の者として、傀儡たる《D∴G教団》の情報はある程度入手しております。もっとも、その繋がり自体はとうの昔──わたくしが生まれる以前より切れていましたし、殲滅の際には彼らを見限って作戦に協力も致しました。ですが彼らの至った境地や実験成果自体は悪趣味でも有益に使えるものも多かったので幾つかは取り込まさせて頂きましたが。

 そしてその際にわたくしたちが密かに匿うように誘導した人物の研究に依れば、彼女は数え切れないほど消費されてきた教団の実験体の中で、もっとも異常かつ奇蹟に満ちた子だったそうです。

 それらを勝手に拝見させて頂きましたが、確かに興味深い事象が幾つも起こっていたようで。かのグノーシスを含むあらゆる薬物が効かず、あらゆる実験を行ってもその肉体や精神は健康そのものだった。楽園で行われていた子供を使った接待に関してもなんら気にしていない様子だったと、本当なら信じられない報告が多数載せられていましたわね。

 そしてかの人物はそれに目を付けて彼女について詳細な研究を行い、幾つかの成果を出しながらもとある実験によって彼女は脱走。彼女は教団から《奇蹟の御子》と呼ばれるほどに執着されていましたのでその後も彼女を取り戻そうと画策していたようですが、それも敢えなく返り討ちに遭い続け、そうして手をこまねいている間にかの教団殲滅作戦が行われ、結局彼女を手に入れることが叶わないまま教団は壊滅致しました。

 

 わたくしはその経緯を知った時、愚かな人たちですわねと可哀想に思ったものですが……しかし、こうやって実物を見れば確かに気持ちは分からないでもありませんわね。

 錬金術師として見た時に、彼女ほど面白い素材は存在しないと思わせるほどに彼女は特別です。その上、使うのであればその者の腕前が問われる()()()()()()()()。一度使い道を誤れば全てが台無しになってしまいかねません。わたくしたちが協力関係を結ぶことになった結社の使徒《破戒》の持つ最大の劇薬は恐らく彼女なのではないかと思いますわね。それを上手に扱う《破戒》の手腕は1人の研究者として尊敬致しますし、ちょっと対抗心と言いますか食指が伸びないかと言えば嘘になってしまいますけれど……必要以上の干渉はやめておいた方がいいと釘を差されてしまっていますし、彼女のことは諦めた方が良さそうですわね。

 それに力のない子供でしかなかった昔であればともかく、今の彼女は都市伝説になるほどの暗殺者《切り裂き魔》にして結社の執行者の1人。彼女の嫌がることをして敵対されるようなことがあれば、わたくしたちの計画におけるそれなりのリスクになりえる。ですのでわたくしとしても協力者として良いお付き合いをさせて貰おうと思い、彼女の元を訪ねることにしました──計画達成に際しての個人的な報酬の話を持って。

 

 その報酬とは彼女が欲しているもの──()()()()()()()()()()()

 

 縁は切れているとはいえ教団の後ろ盾であってクロイス家の者としておおよその背景については把握しています。かの《切り裂き魔》は、世間で噂されるような無差別殺人事件を起こすような人物ではなく、その暗殺事件の殆どが教団を壊滅させるために行った計画的なものだったということを。

 いわばそれは《破戒》と《切り裂き魔》が裏で行った教団殲滅作戦の一貫とも言えるものですわね。表にいる教団と繋がった権力者たちを物理的に消すことで、教団打倒のために動くあらゆる組織への圧力も消してしまう。

 利権に眩み、弱みも握られていたとはいえ、いつまでも教団を潰すことの出来ないだらしのない表の組織を動かすためのものだった──と言えば教団殲滅に尽力した表の方々はどんな顔をするのでしょうか。きっと素敵な表情を見せてくれるでしょうね。

 もっとも中には感づいている者もいるでしょうけれど、確信にまで至っている者は少ないはずですし、わたくしたちの共犯者でもある《風の剣聖》にもこの情報は共犯者として共有させて頂きましょうか。決して彼の表情と心の機微を愉しみたいというわけではなく、あくまで味方として共有すべき情報を親切として教えるだけですが。うふふ。

 

 そういう訳で、多少話は逸れましたが彼女が欲している教団関係者の情報と引き換えに、より積極的にわたくしたちに協力をしてもらおうという対等な取引ですわね。現時点でも計画の完成度は充分なものですが、都合の悪いものやイレギュラーがないとは限りません。そういう時に暗殺から諜報、純粋な戦力として使える彼女の存在は素直にありがたいものですわ。結社と手を組んだのにはそういう理由も多分にありますし、かの《赤い星座》とも時期が来れば契約を結んで盤石の態勢を整えるつもりです。手駒は幾らあっても困るものではありませんもの。有用であれば全て使わせて頂こうと思っていますわ。

 

 そうして彼女との交渉は実りのあるもので終わりました。どうやら彼女は善良な性格のようでしたので、あまり人の機微を悟ることには興味のないわたくしから見ても少しばかり嫌そうにも見えましたが、納得して動いて頂けるのであればどちらでも構いませんわ。

 

 ──とまあここまで散々計画についての話をさせて頂きましたが、実のところは本題は別にありまして。わたくしは早速それを切り出すことに致しました。

 

「──え、服を作ってほしいの?」

 

「ええ。若き天才ファッションデザイナー……アーヤ・サイード。貴女の仕立てる服を幾つも見させて貰いましたが、どれも心を動かされるような出来前の素晴らしいものです。ですので今回の計画のことがなくてもその内依頼させて頂こうと思っていたところですのよ」

 

「あ、そうなんだ。それは素直に嬉しいかも! ありがとねー!」

 

「はい。わたくし、有り体に言えば貴方のファンでして。昨年のイーディスファッションウィークで出されていた新作も拝見致しましたわ」

 

「そうなんだ。じゃあやっぱりオートクチュールでの依頼を希望かな?」

 

「ええ……! 金の方はそちらの言い値で構いませんので優先して受けて頂けると助かりますわ」

 

「おお、それはさすがに太っ腹だね! さすが天下のIBCなだけはある!」

 

「うふふ。わたくし、優れた芸術品を手に入れるためなら金は惜しみませんの。それで、受けて頂けます?」

 

「まあ本当なら予約はかなり詰まってるけどいいよ! 仕立ててあげる!」

 

「まあ……! 本当ですの?」

 

「うん、いいよ! それじゃ希望とか教えてくれる? 後サイズね。速攻でデザイン描くからさ」

 

「ええ、サイズについては分かりました。そして希望ですが……まずはわたくしの私服を幾つか見てもらってそこからわたくしに合った服を考えて頂けます?」

 

「あーいいね。普段着てる服とか見せてもらうのはすごく助かるよ。良い服でも趣味じゃなかったとか言われると困っちゃうしね」

 

「ええ。ですので早速見て頂けます?」

 

「いいよー。お互い忙しいだろうから早めに済ませよっか」

 

「はい。では少々お待ちを。すぐに着替えてきますわ」

 

 ──そうして、わたくしはファッションデザイナーとしての彼女に服を仕立ててもらう依頼を取り付けました。

 

 そう、ずっとこれが楽しみでしたの。わたくしも1人のうら若き淑女としてファッションには多少こだわっていますし興味もあります。なのでファッションデザイナー、アーヤ・サイードの名はわたくしも以前から存じ上げていましたわ。共和国のファッション界に突如現れた新星として今話題の人物。彼女の仕立てる服はデザイン性から着心地、機能性まで全てが極上の物で、共和国のセレブの間では既に彼女の仕立てる服を持っていることはちょっとしたステータスにすらなっています。

 更に最近は大衆にもその服が行き渡るように既製服を売る自らのブランドショップも起ち上げて支店を増やしているとか。そしてその既製服ですら多くの若者が挙って求める。流行でありながらハイブランドとしての地位を固めている今最も熱いブランド。それが“SAID”ですわ。

 そしてわたくしもそんな彼女の仕立てる服に魅了された1人。なのでこうして縁ができたのはまさしく僥倖と言っていいでしょう。あのアーヤ・サイードに衣服を仕立ててもらえるのは素直に嬉しいことです。

 もっとも仕事が忙しく普段は特注のスーツばかり着ていますが、それでも良い私服を得られたのであればお出かけの良い機会にもなるでしょう。そうしてその衣服を身に付けてエリィと一緒にお出かけなんてするのも悪くありませんわね。

 ああ、それと現代のファッションリーダーでもあるアーヤさんにわたくしの服を見てもらうというのも楽しみの1つです。彼女ほどの芸術家かつお洒落な人であればわたくしの服だけでなくローゼンベルク人形などの趣味も理解してくれるでしょうし、ここからは仕事ではなくプライベートとして忌憚なくわたくしとファッションについての話に花を咲かせ、互いのセンスを称え合いま──

 

「──あははは! ()()()()()()!! この服ださーい! これマリアベルには似合ってないって! もしかしてウケ狙いで持ってきたの? ちょ、ほんとに面白いんだけど! あはははは!」

 

 ──もしもしお父様? わたくしがいつも贔屓にしてるブランドの融資をすぐさま打ち切ってくださる? わたくしの顔色を窺い、わたくしに似合わない服を売りつけて恥辱を味わわせた罰ですわ。──何ですの? その程度でやりすぎ? お父様は何も分かっていませんのね! いいですこと!? 人にダサいと思われるのがどれほど屈辱的なものか──

 

 そうしてその日、わたくしはすぐ様お父様に最新の携帯導力通信機で連絡して夜通し口論した結果、経済的な制裁を与えることができずにわたくしは酷く屈辱的な気持ちになりました。そしてとりあえずアーヤさんに新しい衣服を幾つか見繕ってもらう約束を取り付けることに。別にわたくしが選んだ服じゃありませんし、わたくし自身のセンスが悪いわけじゃありませんわ、とわたくしは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()これまで買った私服を全て捨てることに致しました。

 

 

 

 

 

 ──どうもーファッションデザイナーのアーヤ・サイードでーす。最近髪を切りました。ロングからショートにね。ボブな感じで。私って顔が超絶可愛い系かつ活発な感じだから結局短い方が似合う気がするんだよなー。ロングも色々弄れて悪くないけど、気分を変えるためにも短めで整えてきました。カラーは地毛の銀白色を活かしつつインナーカラーはパステルピンクで。贔屓にしてる美容師にお願いして完璧にしてもらう。うんうん。可愛いお姉さんって感じでいいね! 毎日見てる顔だけど毎日見ても可愛い。学校も卒業してもうじき成人も控えてることだし、大人としてできる感じを演出していこう。ファッションデザイナーは自分のお洒落も大事なのだ。

 

 ってことで最近はまたデザイナーとして忙しくしてる私だけど、この間はね。アポ無しでマリアベル・クロイスがやってきて大変だった……いや、いきなりラスボスに出てこられても困るっていうかね。正直会うにしてももう少し後だと思ってたし、心の準備ができてなかったからビビった。オジサンのこういうところ嫌い。まあオジサンじゃなくてマリアベルの方の希望かもしれないけど。

 で何のために来たのって聞いたら挨拶とちょっとした交渉というか仕事を頼むから引き受けてねってことらしく、報酬に教団の関係者の情報を差し出してくれるんだってさ。まあそれは嬉しいし、ついでだから引き受けるのは良いんだけど、ぶっちゃけそんなことよりヨアヒムくん殺させてくれない? まだ駄目? ──駄目かー。それじゃあヨアヒムくんを匿ってるハルトマンとかマルコーニかな。その2人もまだ駄目? もう少しだけ泳がせた方が面白くなる? ──駄目かー。別に面白さとかいらないんだけどなー。生きてる時間が長いほど増えるような連中だから早めにやったほうが良いんだけど駄目って言うなら仕方ない。確かに原作的に影響もあるだろうから私ももうちょっと様子を見ても良いかもしれないし。……でもハルトマンとかマルコーニとかやっぱり必要なくない? うーん……ま、いいや。とりあえず今は機会があったらってことでね。私もまだ忙しいし。クロスベルでのお仕事はまだ先ってことで。

 

 そして時期が来たら色々と動くことを約束しつつ、その後はなんか私のファンだとかいうマリアベルに不覚にも嬉しくなりつつも服を仕立ててほしいというので快諾した。お金も欲しいしね。別に問題ない。衣服に関してはどんな相手の依頼からでも受けるようにしてる。単純に皆に着て欲しいからね。善人だろうが悪人だろうが金持ちだろうが貧乏人だろうが誰でも。まあ予定とか順番とか希望とか予算とか条件はそりゃあるんで実際は誰でもってわけにはいかないだろうけど私の気持ちとしてはあんまり断らないようにしてる。なんなら教団の人間から頼まれても作ってあげないこともないよ。立派な死装束を仕立ててあげる。いやまあ実際はやっぱ先に殺すだろうけどね。

 なので地味に私の表の仕事は私の裏の知り合いにも好評というか、結社の人達からの依頼も受けたりしてる。女性陣はほぼ全員お得意様だし、それ以外も割と。最近は忙しいからそこまで頻繁じゃないけど最低1回は服を仕立てて贈ってるはずだ。一部の人以外はね。

 だからマリアベルからの依頼も私的に全然問題ない。この人に関しては悩ましいところだし、どっちにしろ今はどうにもできないからね。今は仲良くしておこうと思う。

 

 だから私服を見てほしいって提案も受けたんだけどさ──その私服がすごくダサくてめちゃくちゃ笑ってしまった。ウケ狙いで出したのかなって思うくらい。マリアベルも私がそう言ったらすっごい笑顔で肯定した後どこかに電話をかけてたし、多分ウケ狙いだったんだと思う。で、その後に似合う服を仕立ててほしいって言うから了承しておいた。納品は次にクロスベルに行った時で。

 

 まあでも服は悪くないよ。私、どんな服も誰かには似合うし、シチュエーションによってはピッタリハマると思ってるからね。ただそれがズレてるとダサくなるだけで。なので服がダサいんじゃなくて単にマリアベルのセンスが終わってる可能性があってちょっと怖かったけどそうじゃないようなので安心した。ローゼンベルク人形を好むくらいだしセンスが悪いはずないよね──なぜか後でその話を聞いたオジサンが大笑いしてたけど……まあ今回は信じよう。うん。本気だったとしたらすごい悪口言ったみたいになるし、そういうことにしておこうかな。

 

 ──そしてダサめの錬金術師との挨拶を終わった後は再びお仕事で出張に。次に向かった先はエレボニア帝国だ。《幻焔計画》の舞台の1つ。このゼムリア大陸における覇権国家の1つであるこの大国に再びやってきた私は西部ラマール州の外れのとある駐屯地までやって来た。目的は裏の仕事だね。この後に表の仕事もあるけどまずは裏での挨拶だ。

 

「──そこだっ!」

 

「──うっ……まだだ……まだ終わらんよ! とりゃああー!!」

 

 ──そこで行われるのは巨大な人型によるぶつかり合いだ。

 もっと詳細に言うなら、蒼い巨大な人型の専用機とプロトタイプの量産機が互いの武装をぶつけ合うという、急に世界観が変わったかのような光景がここでは繰り広げられている。何も知らない人がこれを見れば、え、何? 急にロボット物始まった? 世界観壊れてない? って思うかもしれないが、別に壊れてはいない。この時代。このエレボニア帝国ではなんと──ロボット物が始まるのだ。

 

 正確に言うならばそれは《騎神》であり、それを模して造られた《機甲兵(パンツァーゾルダ)》となる。騎神というのはこれまたややこしいんだけど……実はこれが至宝なんだよね。焔の至宝と大地の至宝がぶつかりあって出来た鋼の至宝《巨イナル一》。それが更に別れて7つになった器こそがこの《七の騎神(デウス=エクセリオン)》であり、私の目の前にある《蒼の騎神》オルディーネもその1つである。そして現在、私が乗っているのはその騎神を模してあの三高弟のG・シュミット博士が作り上げた機甲兵であり、この駐屯地は帝国の《四大名門》という貴族のトップ。カイエン公爵家が管理する領邦軍とテロリストの極秘の実験施設であり、ここでは機甲兵の開発とテスト。そして機甲兵を乗りこなすための訓練が行われることになるのだ。

 

 まあ今はまだ領邦軍は全然いなくて訓練も限られた人がやってるだけなんだけどここに私がいて、しかも機甲兵に乗らせてもらっている理由は単純だ。《幻焔計画》における帝国での協力者がその《四大名門》率いる貴族連合軍であり、ひいては《鉄血宰相》に恨みを持ったテロリスト集団《帝国解放戦線》であるからだ。

 なのでまあ当然ながらその準備は結構前から進められていて、計画を主導するヴィータ姉さんが騎神の導き手だったりすることもあり、私も先んじて挨拶ついでにやってくれば──なんとそこに機甲兵が! しかもそれに乗って訓練する相手を探してる!? はいはいはい!! 私やる! 乗りたい乗りたい乗りたい! って他の人達を押しのけてめちゃくちゃ手を上げて、開発者であるシュミット博士にも乗せてー! って何度も言ったら乗せてくれた。気難しそうかと思ったけど結構優しいおじいちゃんだった。ヨルグおじいちゃんくらい優しそう。

 ってことで私は機甲兵《ドラッケン》のプロトタイプに搭乗してそれを動かし、しばらく遊んだ後で勝負だー! ってことでその《蒼の騎神》オルディーネに、ひいてはそれに乗る騎神の起動者(ライザー)と戦ってみて──まあ無事負けるんですけどね! 

 

「──へえ、やるじゃねぇか。まさか初めてでそこまで動かせるなんてな」

 

「わかんないけどなんか感覚でいけちゃった! 最近免許取りたくて教習所通ってるからかな?」

 

「おいおい……導力車の免許と一緒にされちゃあこいつも形無しだな」

 

「機甲兵って思ったより簡単だね。これなら皆すぐに乗れるようになるんじゃない? ──ってことで残ってるプロトタイプにも皆で乗り込んでケイドロとかしようよ!」

 

「そんなわけねぇしやらねぇよ! おいヴィータ。こいつはいつもこうなのか!?」

 

「フフ、諦めなさいクロウ。アーヤはいつもこうだから」

 

「そう! いつも元気で明るくがモットー! ひゃっほー!」

 

「何をしておる馬鹿者が!? 無茶な機動をするんじゃない! ええい、さっさと降りろ小娘!」

 

「えー。じゃあ最後に後方宙返り3回ひねり試してみていい?」

 

「いい訳なかろう……! 今すぐ降りろ……!」

 

「はーい」

 

 よいしょっと。ということで──じゃじゃーん! エレボニア帝国における現在の結社の協力者の愉快なメンバーでーす! まずはこのG・シュミット博士! 三高弟の1人で機甲兵の開発者のおじいちゃん! まあ協力と言っても機甲兵の開発をしただけで計画に協力する訳じゃないけど! 

 そして視察に来てるカイエン公爵! フルネームは忘れた! 帝国の貴族のトップ! なので鉄血宰相大嫌い! あんまり覚えてないけど覇道のお時間ですぞとかいうキモい台詞だけなんか覚えてる! なのであんまり関わりたくないけど、表のビジネスに帝国の貴族は欠かせないからそんなわけにもいかない! なんか遠くで私の動きと機甲兵にご満悦な様子! 

 そして更に忘れちゃならないのがこの人! これまた鉄血宰相絶対殺すが信条のテロリスト集団《帝国解放戦線》のリーダーにして後のトールズ士官学院特科クラス《Ⅶ組》の一員(留年)のクロウ・アームブラストだー!! 《蒼の騎神》オルディーネの起動者! 皆の頼れるお兄さん! 50ミラ返せー! 声がかっこいいぞー! ひゅーひゅー! 正直男キャラの中だとレーヴェの次に付き合いたいぞー! きゃーきゃー! 

 

 それと他にも帝国解放戦線の幹部の3人。スカーレットさんに……えーっと、Vだから……ヴァルカン! と眼鏡の人はGだから……ぎ、ギルバート? 違う。それは愉快な下っ端。ぎ……ギンガナム? なわけない。あーもう忘れた。後でちゃんと自己紹介してもらおう。《G》とか《V》とか《S》とか言われても分かんないよ。でも正体を隠すには良いよね。私もこっちでもし仕事をすることがあったら《A》って名乗ろっと。帝国風衣装作っとかないと。

 

 後はそうだね。他の協力者は来てないかな。さすがに中心人物ばっかり。貴族の方も忙しいのかカイエン公しか来てなくて他の《四大名門》──ログナー侯爵とかハイアームズ侯爵みたいなそこまで乗り気じゃないんだっけ? の人達も来てないし、もう色んな意味で問題児しかいないアルバレア公爵家のどクズ当主のアルバレア公も来てない。後は私的大注目の《黒の工房》のホムンクルス、アルティナちゃんもいない。どのタイミングで来るんだろ。いつ会えるか楽しみだなー。いっぱいお洋服プレゼントしたい。

 

 ──とまあ本当にね。愉快かつ魅力的な人が沢山いる。それがエレボニア帝国。呪い塗れだよ。一度はおいで。……いや本当に良いところではあるよ。呪いがなければね。後強い人が多すぎるのが個人的にはちょっと嫌だけど歴史が長いだけあって街は景観が良くて風情を感じるし、観光名所も沢山あるから本当はいっぱい見て回りたい。ほんと、呪いがなければなぁ……これも全部イシュメルガが悪いんだ! 絶対に許さないぞイシュメルガ! でもここにいる殆どの人が知らないんで狙うのは《鉄血宰相》だ! 鉄血宰相を血で染めてやる! そんな人でいっぱいです!

 

 でもこれからはそうも言ってられないので、どうせ来なきゃならないなら開き直っていっぱい観光しようと思う。支店も建てたいしね。貴族にも営業しなきゃ。まあこっちはこっちで人種差別というか平民差別みたいなのがあるんでちょっと面倒だけどね。既にデザイナーとしてはそれなりに人権を得てるし、まあなんとかなるんじゃないかな。

 

 ってことで機甲兵に乗れて楽しかったー。こんなところで私の夢というかロマンを1つ叶えられるなんてね。本当に乗れて良かったし、なんか上手いこと動かせて良かった。私機甲兵乗りの才能あったのかも。ニュータイプだったかもしれない。ってことで交渉しよっと。機甲兵自体は乗るの楽しいし。ゼムリアの魔女を目指そう。

 

「ねえ、これからも乗りに来ていい? テスト協力するからさ。もしくは売って!」

 

「ふん……断る──と言いたいところだがな。優秀な搭乗者は1人でも多くいた方が良いデータが取れる。それによくよく考えてみれば先ほどのような無茶な動きのデータが取れるのも悪くはないからな」

 

「やったー! それじゃ幾ら?」

 

「……売り物ではない。どうしても欲しければスポンサーにでも頼むがいい」

 

「えー……でもあの人売ってくれなさそうだしなー……貴族のくせになんとなくケチそうだし。ねえクロウ。ちょっと代わりに聞いてきてくれない?」

 

「いや、売れねぇだろ。第一、お前そんな金持ってんのか?」

 

「ふふん。これでもファッションデザイナーとして絶賛大成功中だよ! まあちょっと最近は色々やりすぎて金欠気味だけど、そのうち回収はできるから払えるはず!」

 

「マジかよ。色んな意味で規格外の奴だな……機甲兵に乗っての戦いならともかく生身じゃ敵いそうにもねぇし、出会ったばかりなのになんとなくもうお前がどんな奴なのか分かってきたぜ……」

 

「明るくてお洒落で可愛い美少女でしょ?」

 

「自分で言うんじゃねぇよ……ま、否定はしないけどな」

 

「あら、クロウ? 私よりもアーヤの方が好みかしら? 私にはそんなこと一度も言ってくれたことないのに妬けてしまうわね」

 

「ハッ……思ってもねえくせによく言うぜ。つーかどっちも手を出すには危なすぎんだよ」

 

「え? 私に危ない要素ある?」

 

「自覚がねえのも考えものだな……」

 

「あまり気にしすぎると疲れるから気にしない方が良いわよ」

 

 ──と、こんな感じで和やかに会話をする。うんうん。割と皆接しやすくて良いよね。特にクロウ。でも危険な女扱いされるのは納得いかない。危ない要素ないと思うけどなぁ……あ、もしかして裏の仕事のこと言ってる? でもそれはほら、結婚でもしたら寿退社ってことでやめられるかもだし。そしたらデザイナーだけでやっていくし、お金も稼ぐし料理とかも得意だしえっちなことも得意だからめちゃくちゃ優良物件じゃない? それになんと言っても超可愛いしさ。

 ……まあでもクロウにはヴィータ姉さんとか同期の誰かとかの方がお似合いかな? というかヴィータ姉さんはどっちが本命なんだろ。レーヴェが本命っぽいかと思いきやクロウとも良い感じに見えるし……ははーん。さてはヴィータ姉さん、面食いだな。それにどっちと付き合っても良いようにキープでもしてるのかもしれない。やっぱりそういうところは悪い女だね。まあでもヴィータ姉さんがそうするなら私は余った方でもいいんで付き合ってほしい。将来の結婚相手候補として熱いからね。というかこの間レーヴェのことでお礼を言われた時に言えば良かったかな。私が助けたかっただけだから全然お礼とか良いよって言っちゃったけど彼氏欲しくなってきたからレーヴェかクロウのどっちか狙ってもいいかって聞けば良かった。聞かないでそういうことすると女は怖いからね。談合は大事。

 

 ──そうして今日の私の裏の仕事は割とあっさりと終わった。また今度会いに来るねってことで私は再び帝都ヘイムダルに向かい、今度は表の商談だ。支店建てたいからね。百貨店のオーナーだったり地主とかと交渉しないと。まあ交渉するのは私じゃないんだけどね! 頼れる社員さん達だ。でも一応下見だったり決定事項を決めたりとかやることはあるので私も控えておく。

 なのでしばらくは適当に平和に過ごすけれど……やっぱ帝都は思ったよりは平和だし、やりやすいかもしれない。警備が行き届いてるし、改革がすごい勢いで進んでるからかな。思ったより貴族も鬱陶しくないし、ビジネスもやりやすい。民度も思ったよりは低くない。案外帝国悪くなくない? というか《鉄血宰相》が私視点だとそんなに悪くないというか、まあ色んな人を巻き込んで強引にやりまくるのはどうかと思うけど、それも事情があるからだし──「失礼。少しいいだろうか?」──あ、はい。どうぞー。なんかホテルのフロントでトマトジュース飲みながらソファで寛いでたらなんか声掛けられた。さすがは《鉄血宰相》。外国の得体の知れない中東人の美少女にも丁寧だね。

 

「フフ、さすがにこの程度では動じないかね?」

 

「あ、はい。別に知らないおじさんにただ声を掛けられただけだしねー。……………………んん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフ、知らないオジサンか。ならば改めて自己紹介させてもらおうか」

 

 ──あっ。この人。

 

「──帝国政府代表。ギリアス・オズボーンだ。とはいえこの場はあくまで非公式な場であり、私と君は偶然通りがかっただけの一般人同士だ。だがせっかく邂逅した幸運をふいにするのは些か勿体ないだろう。良ければ()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 ──トマトジュース吹いた。

 

 私は思わず粗相をしてしまい、必死に取り繕いながら内心でめちゃくちゃに叫ぶ。──う、うわあああああああああああ!!? な、なんで!? なんでここにいるの!? ギリアス・オズボーン!!? て、鉄血宰相ー!? 色んな意味で最強すぎる人!! 武力も頭脳も最強な親父が急に話しかけてきたんだけど!? 怖い怖い怖い! 話って何ですかー!? トマトジュース吹きかけてすみませーん!! ……あ、問題ない? だが良ければ個室で話をって……あ、はい。汚れちゃったしね。タオルで拭いてから──って、問題ありまくるわー!!! ぎゃー!!? でももう逃げられないー!!? ど、どうしよー!! とにかく穏便に済ませて逃げなきゃ!! 契約でも何でも結ぶから許してえええ!! うわああああああああああああん!!! 

 

 ──そしてその日、私はあくまで個人的な暗殺者として《鉄血宰相》に雇われることになった……。




敏腕ビジネスマンのアーヤちゃん。色んな裏組織と契約を結ぶの巻きでした。さすがアラミスの卒業生は違うなー。憧れちゃうなー。
ということで次回はちょっとだけクローゼの話だったりする。クローゼの扉エピソードみたいな感じかなって。お楽しみに。

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