──オレはその日、《影の国》って異空間に入り込むことになった。
《聖杯騎士団》の第五位《外法狩り》として、総長の指示でリベール王国に向かったオレはそこでかの浮遊都市リベル=アークから回収されたある古代遺物を確認しに行った。古代遺物の回収は聖杯騎士団の基本任務の1つ。せやからオレはその方石と名付けたその謎の古代遺物をすぐに回収し、従騎士となって派遣された幼馴染のリース・アルジェントと共に法国へ帰還するつもりやったんやけど……そこで尾行してきた《身喰らう蛇》の構成員のおかしな奴を軽く叩いたその直後──謎の仮面の男が現れ、オレたちは隠者の庭園と呼ばれる異空間へと囚われることとなった。
リースと2人で調べた結果、そこは1200年前に封印された異空間であり、魔獣──いや、魔物も蔓延っとるみたいやった。上位属性も働いてるし、謎の回廊を進むと封印石があってそれを庭園でかざすと封印石から以前出会ったティータちゃんが現れた。どうやらオレたちと同じように突如として気付いたらこの場所に転送されたらしい。
それもまたとんでもなく不可解やが、ここから脱出するために一緒に行動することにしたオレたちは更にその先で謎の扉を発見した。どうやらこの扉は扉が指定する人物が中に入るとその人物の記憶の断片をその人自身に見せるらしい。何故そんなことが起きるのかはよく分からんが、一先ずそれを確認し終えたオレたちは更に先に進み、そこでどういうわけかリベールの高速巡洋艦アルセイユを発見し、そこで更に手に入れた封印石からユリア大尉が出現した。やはり状況はオレたちと一緒で、一緒に奥へと進むことになったが……その回廊の最奥に辿り着いたところで聖典に記された77の悪魔の内の一体が突然召喚され、オレたちはそれを倒すことになった──が、そのすぐ後にオレたちの前にあの謎の仮面の男が現れた。
そいつはリースの法剣を容易く弾き、この場所を《影の国》と呼び、自分は《王》に仕える守護者だと言った。そう、その去り際に──
「……挨拶代わりに一つだけ教えておこう。我が名は《黒騎士》。偉大なる《王》に仕える《影の国》の守護者なり──「あ、レーヴェ! お肉焼けたよー! 早く戻ってきて一緒に食べ──あ」……………………」
「あ…………」
「……………………」
「……………………あ、あー……ふっふっふ……よくぞここまで来た。我が名は同じく《王》に仕える……えーと、白騎士! そう《白騎士》だよ! 黒騎士よ、そろそろ宴の時間だ。そろそろ戻ってきてもらおうか」
──奥から能天気に現れた白い仮面の暗殺者風の女に全員が呆気に取られた。レーヴェって呼ばれた《黒騎士》も同様に。
「…………帰るぞ」
「あっ、うん。それじゃあ皆、また会うことを楽しみにしてるよー」
「お、おう……」
──そうしてオレたちはその2人の謎の人物……黒騎士と白騎士を見送った。いや、あれはどう見てもアーヤちゃんやったし、言われてみればもう片方はどう見ても《剣帝》レオンハルトやったけど……ここは空気を読んで聞かなかったことにした。
──《影の国》に巻き込まれてまた少し。
第二層となる異界化した王都グランセルを進み、ヨシュアくんを仲間に加えたオレたちはかつての王都地下の封印機構の最奥にたどり着き……そこで黒幕と思われる《影の王》と対面した。
そしてオレたちはこの場所が全て虚構──作り出されたものだと気付いた。
「僕たちが先ほどまでいたグランセルは全て偽物……いや、《影の国》の中に再現された構造物ですね?」
「な……!」
「そんなことって……」
「そうなの!?」
「……しかし、それで一通りのことが説明できる。漆黒の大門に無人の街角……昔に巻き戻った部屋に構造すら変化している遺跡……そうやな、ヨシュア君?」
「ええ、その通りです」
「はえーそうだったんだ。じゃあ何しても良いってことだね!」
「クク……やれやれ。そなたは優等生すぎる。もう少し、ゲホッ、可愛気があった方が、ケホッ、私としては──「やっぱり秋刀魚は塩焼きに限るよねー」──って貴様は先ほどから何をしている!?」
「えっ、何って秋刀魚食べようと思って……七輪で焼くの嫌だった? 秋刀魚苦手?」
「私の横で焼くな! 大人しくしていろ白騎士!」
──いや、そもそもその七輪と秋刀魚どっから出したんや。どう考えてもおかしいやろ。
オレはアーヤ……やなくて、白騎士が影の王を振り回している場面を頭の中でツッコミながら気を取り直して召喚された悪魔を倒すことにした。
そして悪魔を倒した後は、影の王から封印石を受け取りつつ、オレはその目的を問い質してみることにした。
「単刀直入に聞く──あんたの狙いはなんや? オレたちに何を望んでる!?」
「はは、ケビン・グラハム。あまり私を「発情」させないで欲しいものだ。我が名は「プリ◯ュア」。なればその「ワカメ」もまた「長ネギ」の中にのみ「存在するかもしれないししないかもしれない。やっぱり味噌汁の具はワカメとネギと豆腐だよね」──私の後ろでフザケたことを言うのをやめろ!! 言葉をかき消すな!!」
「ふっふっふ、分かるかな、この意味が……?」
「「分かるか!!」」」
──アカン。影の王とツッコミが被ってしもた。あのアーヤちゃん……いや、白騎士が意味不明過ぎて……。
とりあえず仕切り直しや。改めて言葉を告げた影の王にオレは言い返す。
「……フン、戯れ言を」
「本当に戯れ言だったね」
「黙れ」
「……思わせぶりなことを言って茶を濁そうとしても無駄やで」
「そう、我が言の葉はすべて戯れで出来ている……」
「確かにあのやり取りそのものが戯れというか茶番ですね……それとあの秋刀魚と味噌汁の定食、美味しそうですね……」
「リース。ちょっと黙っててんか」
「……そなたがそう思うのならば私はそういうものなのだろう」
「ざけんな……」
「二尾目焦げてた……」
「──アーヤ。今は真剣な話の最中だからあっちで僕と鬼ごっこでもして遊んでようか」
「お、食後の運動だね。じゃあ待ってて。すぐ片付けるから」
「フフ、そうだな。いっそ《影の王》改め、「《LOVE☆トロピカ~ナDX王》」と名乗るとしようか「そうと決まれば役所に書類を提出しに行くとしようか」──だから私の後ろで訳の分からない言葉を被せるんじゃあない!!」
「ざけんな言うてるやろ!?」
「ヨシュアくん。やっぱり野球しよ。チーム名はキセキバスターズで」
「いいけど、するなら邪魔にならないように離れていようか。──じゃあ行くよ」
「よし来い! ──来た! 狙い玉! カッキーン! 真芯で捉えたー!」
「ウボァ!?」
「あ」
「あ」
──オレのボウガンを空蝉で躱した《影の王》だったが、アーヤ……白騎士の打ったボールにどうやら直撃したようで空間に《影の王》の痛そうな声が響き渡った。
「フ……フフ……よ、よくぞ見破った……」
「それは
「リース。これ以上茶々入れるとほんまに話進まんから……」
「とにかくこの《第二星層》におけるそなたらの役目は終わりだ! いざ、白き翼を手にいれさらなる深淵へと挑むがいい……! はは……次なる邂逅を楽しみにしているぞ……!」
「あ、うん。またねー」
「貴様も帰るんだ!!」
「なんで普通におる気でいるねん!!」
──そうしてオレたちは《第二星層》とやらを突破することになった……が、さすがに疲れたわ……色んな意味で……でもまあこれでしばらく《影の王》もアーヤ……白騎士も現れんやろうし……庭園に戻って休むとしよか──
「──あ、おかえりー。晩御飯出来てるよー」
──いや、なんでおるねん!!! お前一応敵やろ!! 帰ったんとちゃうんかい!!
──どうやらこの《影の国》では色んなものが人によって再現されるらしい。
そのことにちゃんと気付いたのは結構後の方やったけど……そういうわけで拠点に現れたアーヤ……いや、白騎士もどうやら本物やないようやった。
「あ、私本物じゃないからね。役目を与えられただけの偽物なんで」
と、本人がそう言ってた。……いや、役目を与えられとるならなんでここにおるねんってツッコミを入れたけど、そう言ったらアーヤちゃん……白騎士は「与えられたのは守護者になることだけだし。それ以外の行動は自由でしょ? せっかく何しても大丈夫な世界にいるんだから楽しまないとね! なんか影の王からめちゃくちゃ命令されてるけど掟は破るもの!」……とか言っとった。色んな意味でめちゃくちゃというか規格外すぎる……なのにヨシュアくんとか殿下とかはもう慣れっこみたいで普通に受け入れて再会を喜んどった。生死不明やったけどちゃんと現実でも生きとるようやし、それは嬉しいわな。オレとしてもそれはええねんけど……実際に接してみるとツッコミ疲れるというか……異空間だからか余計にはっちゃけとるみたいで変に気を揉んでしまう。未だ白騎士の格好のまま拠点で寛いどるし……オレたちが4人で探索に出かけてる間に皆で野球したり食事会したりピアノを弾いて皇子とセッションしたりしとったわ。
まあそれだけじゃなくてオレたちの装備を作ってくれたり、衣服なんかも調整してくれたけどな。特にアネラスちゃんとはかなり意気投合しとった。主に可愛いものやファッション系の話題で。特に女性陣のウケは良かったし、男性陣も色々と会話して理解を深めた。
「先輩。何で連絡してくれないんですか?」
「あっ、いや、それはその……し、仕事が忙しくて……それと私は先輩じゃなくて……」
「それでも生きてるなら生きてるって連絡くらい入れられますよね? 手紙でも導力通信でも幾らでも方法はあると思うんですけどなんで連絡してくれなかったんですか?」
「そ、それはぁ……本当にやることがいっぱいあって……あと私は白騎士だから……」
「そうですか。なら倒すべき敵としてこのままここで袋叩きにしても構いませんか?」
「私が先輩です!」
──と、後はこんな感じで殿下に問い詰められてタジタジになっとったり……後は殿下がカシウスさんから剣を習っとるって聞いてビビりまくとったな。まあオレらもそれについては驚いたけどな……なんや《八葉一刀流》にトラウマがあるみたいやったな。
後はレン……執行者の嬢ちゃんが現れた時もちょっと一悶着あったというか……レンは戸惑っとったな。なんでも今まで一緒に暮らしてたそうやがあの一件以降は家にも帰らず、かといってエステルちゃんたちにも会わずに各地を彷徨っとるらしい。だから改めて「レンの好きにしていい」と告げとったが、レンの方はむしろそれを聞いて迷ってるように見えた。……オレには気持ちが分からんでもない。大事な姉貴分が1人戦っとったら追いかけたくなる気持ちはな。それがあんまり良くないことやったとしても1人だけ抜けるなんて選択肢は選びにくいやろ。
かといって結社に戻ることも出来んくて迷ってる。そんな状態みたいやが、少なくともここにいる間だけは立ち止まって考えることも許されるやろうからな。レンもアーヤと話ができて嬉しそうに見えた。
「Cry for me~♪ 君の~声が聞こえてる叫んでる~♪ 僕の名前を~♪ ちゃ~ちゃらら、ちゃ~ら~ら~♪ ちゃ~らっらっらっら~♪ ちゃららら~ら~ら~♪」
……とはいえアーヤちゃんははしゃぎ過ぎやけどな! そのピアノどこから持ってきてん! 後なんやその妙に胸がざわつく歌は! 妙にええ曲やけど! なんか知らんけどめっちゃ心に響くわ!
──《影の国》と《影の王》の正体に薄々気づき初めた頃。
《第六星層》の攻略を開始し、オレたちが知っている知人らのコピーが立ち塞がるその場所で、遂にオレたちは最後の守護者の元に辿り着いた。
そこに居ったのはやはり黒騎士と白騎士。影の王が見出したという最初にして最後の。そして最強の守護者2人やった。
そこにオレたちはいつかそうしたように全員で挑んだ。
圧倒的な剣技を誇る黒騎士に恐ろしい程の暗殺技術と硬さを誇る白騎士。この2人の強さはあの時のまま。異常な強さでオレたちは苦戦を強いられた。勝てたのはあの時と同じ、皆で協力したからできた奇跡みたいなものやろう。
そうして明かされた仮面の下は──
「見事……俺の顔を曝け出したか」
「ということで黒騎士と白騎士の正体は──レーヴェとアーヤちゃんでしたー!」
──いや、もう分かってたけどな……なんとなく空気読んで黙っとっただけで。
とはいえそうやって顔を曝け出されればしっかりと突っ込んだ話ができるし、一応は驚いたのも事実。なのでオレたちは改めてその2人と話をした。あの時のようにオレたちの背中を押すような言葉を授けて。
その時にオレもレーヴェ。そしてアーヤから言葉を貰った。
「ケビンはあんまり思い詰めすぎない方がいいよ? 人生ある程度割り切るのも大事だからさ」
「……あんたは……悩むことはないんか?」
「過去のことで? あーうん。全く悩まないってこともないけど、別に悩みすぎもしないかな。前向きに生きた方が幸せになれるからねー」
「……つまり、もう答えを出しとるってことか」
「答えってほど大袈裟なものじゃないけどねー。
「…………そうか」
「……………………」
オレは、いや、オレたちはその言葉を聞いて難しい顔を浮かべたりする。
ここにいる面々は大なり小なりその事情を察しとる。そしてその上で、悪い奴でもないアーヤのことをどうにかならないのかと思ってしまってるし、実際に殿下を含めてどうにかしようとしとる人も多いやろうが、少なくともそれはまだ難しそうやな。かといって諦めてもないみたいやが。
そしてこれからももしかしたら敵として立ち塞がることもあるかもしれんが、そこに悪意や敵意、ましてや憎しみなんてものはない。お互いに。だからオレとしてもつい苦笑いを浮かべてしまった。拠点にいる時に明るく話しかけられたり励まされたりもしてもうたしな。
「アーヤさん……貴女が残したもの……忘れません」
「リースちゃん。作る時はちゃんとレシピを見てね」
「はい……! あの美味しい料理の数々……自分でもどうにか再現したいですし、また是非食べさせてもらいたいです……!」
「表で会ったら一緒に大食いチャレンジしようね」
「はい。一緒に食べ放題のお店に行きましょう」
……そしてリースとアーヤはなんでこんなに意気投合しとるんや……って、わかりきっとるか。拠点にいる時、食べ物のことでめちゃくちゃ盛り上がっとったからなぁ……アーヤの作る珍しい料理とか現実にある美味い店とか完食したら賞金が出る店とかの話もしとったし、なんなら一緒になってフードバトルしとったわ……いやまあ別にええんやけど。お店が可哀想やからちょっとは手加減したりや。
「フフ……ではまたな……ヨシュア……」
「うん……また会おうね、レーヴェ」
「それじゃあ皆またねー!」
そうしてレーヴェとアーヤはその場から消えていった。オレたちは最後の守護者を倒したことで次は第七星層へ向かおうとし──
「おらあああああ!! 死にさらせ《面白》エロ教授ー!!」
「うごああああああ!!? あ、アーヤ!? 貴様、なぜここにィィィ!!?」
「ここに来た時からずっとやり返そうと隙を狙ってたんだよ!! よくもあの時は私を串刺しにしてくれたね!! ってことでくたばれ《面白》!! ピアノアタック!! ピアノアタック!! 塩の刑! 塩漬けの刑! 美少女を傷付けた罪深さを思い知れー!!」
「ぐおおおおおお!!? こ、この痴れ者がぁぁぁッ!!?」
「何をしているの!!? やめろ……!! くっ、何故言う事を聞かない……!! やはり
「……………………」
──色々あって《第七星層》の煉獄門へと辿り着いたオレとリースはそこでボコボコにされて叫んでいるワイスマンとピアノを何度も叩きつけたり大量の塩を浴びせてワイスマンをボコボコにするアーヤと、それを必死に止めようとしている影の王……ルフィナ姉さんを見つけて、オレは思わず声を大にしてツッコミを入れた──
「……いや、何しとんねん!!」
なんでアーヤがおるねん! 消えたんと違うんか! そうはならんやろ! だからそのピアノと塩はどこから持ってきたんや!! どんだけツッコませれば気が済むんや!!
──そうして一通りツッコミを入れた後、オレとリースはすっきりした様子で消えていったアーヤと焦った様子の影の王を見送り、その後にワイスマンが召喚した二体の悪魔と戦い、オレの覚醒した新たな《聖痕》の力で打ち倒すと、そこにやってきた仲間たちと共にこの《影の国》事件の解決へと向かうことになった……ほんま疲れたわ……色んな意味で……いつか現実で会ったら苦情入れたろ……。
──七耀暦1203年。11月末日。
「ふわぁ……今日は珍しく平和だなぁ……もぐもぐ……」
「アーヤ姉……もうお昼なのにだらけすぎだろ……昼飯どうすんだ?」
「ソファーで寝転がりながらポテトチップス食べてる……そんなに暇ならどこか連れてってくれない?」
「今日はゴロゴロしたい日だからだめ。それにもうすぐ疲れそうなイベントも起こりそうだしねー」
「疲れそうなイベント……?」
──そうそう。疲れそうで楽しそうでもあるイベントがね。ってことでアーヤ・サイードです。今日は家でゴロゴロしてます。ソファで寝転がりながらポテチを食べる。そしてこの間の車の事故の時に拾って飼い始めた黒猫を撫でる。名前はイシュニャルガ。勝手について来て家の回りでがめつく餌を狙ってたところが可愛かったので飼うことにした。そのニャルガちゃんを撫でながら今日はお休み。なんでってそろそろ私の予想だと《影の国》の事件が起こりそうだからね! 私も呼ばれるかもしれないし、今のうちに英気を養っておく。ふふ、楽しみだなー。今の内に何を話すか考えとかないとねー。ふわぁ……。
──そうして珍しく平和な1日を過ごしたけどいつまで経っても呼ばれることはなく、私は頭に疑問符を浮かべることになった。……ま、いいや。それならそれで。私がいなくてもきっとシリアスに事件を解決してるんだろうしね。切り替えて私は今年のファッションショーと年越しの準備しよーっと。
いやぁ、空の軌跡3rdは感動的な話でしたね……ってことでこれにて空シリーズ完結です。次回から前準備をしつつ遂にクロスベル入り。そして次は1204年。零の軌跡が始まりますのでお楽しみに。
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