TS不幸少女のゼムリア大陸災難記   作:黒岩

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魔都で酔う不幸

 ──あけましておめでとうございます。アーヤ・サイードです。ファッションショーを終えての年末はエースくんに手打ち蕎麦を打ってもらって年越し蕎麦を皆で食べて年を越しました。ということで今年は七耀暦1204年。そして私の誕生日も来ましたー! 遂に二十歳! 成人だー! 立派な大人の仲間入り! わーいわーい! 

 

 とまあ色々とめでたいことはあったんですが、まずは1203年。これまで起きたことについてちょっと振り返ろうかな。結構色々あったんだよね。リベールの異変で死にかけて学校卒業して《幻焔計画》が始まるからって色んな協力者と出会ったりしてさ。クロスベルでは錬金術師の才能とファッションセンスを等価交換してしまったダサめの錬金術師と手を組んだし、帝国では鉄血宰相絶対殺すサークルこと帝国解放戦線の皆ともお仲間になったし、更にはその鉄血宰相とは個人的な契約まで結んでしまった。特に一番最後については予想外すぎてかなりビビったよね。急に現れて個室で暗殺者として雇いたいって言うんだからさ。

 

 まあでもそれに関しては納得……はしてないけど、一応理解はした。あの軌跡屈指のチート親父は未来を見越しているのだろう。殺す相手は犯罪者やテロリスト相手だって言ってたし、それ以外の仕事に干渉するつもりはないって言ってた。だから結社とか他の協力者相手の仕事は普通に行っていいってことだと思う。帝国解放戦線や貴族連合も含めてね。それ聞いた時はかなり怖かった。やっぱりバレてるんだってなったし受けるかどうかもかなり迷ったけど、受けてくれたらエレボニア帝国内での活動や立場については保証するし、無理のない程度に便宜を図ってくれるらしいので受けることにした。お金もそこそこ貰えるしね。さすが鉄血宰相様! 報酬はケチケチしない! 太っ腹だ! 

 

 ただ条件として個人的な契約なので他に漏らさないようにとは言われたけどね。でもそれくらいは問題ない。守秘義務は基本。特に暗殺って依頼主を漏らすのとかありえないというか絶対しちゃ駄目なこと。基本中の基本だから私もそこは当然弁えてる。一応はプロとしてね。だから全く問題はない。

 

 ただ帝国解放戦線には申し訳ないけど、そこはまあ……悲しい事情というかそこは同情するけどテロリストだし……実のところ鉄血宰相暗殺はそこまで乗り気にはなれないというか、そもそもあの人不死者だから死なないし……なんならその鉄血宰相こそ1番事情があってのことだからなんともやり辛いんだよねー。まあだからといってやったことはやったことと言われたらそれまでなんだけどさ。でもそれいい出したら帝国解放戦線だってそうだし、どっちもどっちになっちゃうんだよね。

 ただ協力関係を結ぶ以上はしっかりと協力してあげるけどね。ただ死なないんだよなぁ……それを伝えるわけにもいかないんで実は結構お労しい。後はヴィータ姉さんには借りがあるから希望には沿いたいし、最終的に《黄昏》を終わらせることには協力したい。……でも黄昏なぁ……そのことを考えると気が重いというか、大変そうすぎて出来れば関わり合いになりたくないんだけどそうも言ってられないんだよね……あれ放っといたら世界滅亡するっぽいし……。

 

 ……ま、まあでもそのことについては後で考えるとして! とにかくまずは当初の目的である《幻焔計画》遂行のお仕事をしっかりやりつつ、その後は流れで! そのうち鉄血宰相に計画が乗っ取られるし、結社も傘下で協力することになるから今の内から鉄血宰相と契約を結んでるのは悪くないかもしれない! 色々と融通がききそうだし! 私の目標的にもやっぱり敵側で隙を窺いながらそれとなく英雄たちに協力してあげる方がなんか良い感じになるかもだしね! まあどうなるかは本当に未知数だけど! 

 

 ──というわけで今年からは本当に仕事が多いんだけど……まあこれもより良い未来のため仕方のないこと。割り切るしかない。

 

 そして次は表の仕事についても色々と進展というか、ファッションデザイナーとしてはかなり順調にいってる。昨年はリベール王国のボース市に支店を出店したけど、それ以外にも共和国内では煌都ラングポートや旧都オラシオン。遊興都市サルバッドにも支店を出したし、他の都市でも出店を検討してるし、なんなら外国──私の故郷ということになってるヴァリス市国やエルザイム公国にレミフェリア公国。後はなんと言ってもエレボニア帝国にも遂に進出し、先月には帝都ヘイムダル支店と海都オルディス支店も開店した。公都バリアハート支店も検討してるし、鋼都ルーレや旧都セントアークも多分出店する。なんと言っても貴族連合と繋がりが持てたのが大きいよね。貴族連合のトップで帝国一の大貴族のクロワール・ド・カイエンさんにも私の衣装を見てもらって認めてもらった。あの人、性根は多分カスなんだけど一応は大貴族として懐が深い部分がなくもないというか、自分に都合が良ければ平民だろうが外国人だろうが何でもいいって感じっぽいので私相手にもかなり友好的だった。こういうところだけは他の貴族も見習ってほしい。逆にカイエン公と同じ公爵なのにヘルムート・アルバレアの方は明らかに横柄というか、帝国貴族の悪いところを煮詰めたみたいな人なので私相手にも口にはしないけど「中東人風情が」って感じで冷たかった。平民で外国人でしかも貴族連合の主導権を取り合うライバルであるカイエン公が契約を結んだ相手ってことで嫌いなんだろう。まあ別にいいけどね。慣れてるし。あ~共和国旧貴族や反移民政治団体を思い出す~って感じで。こっちも適当にあしらうだけだ。はい、よろこんで~ってね。

 

 とまあ途中から私が知り合った帝国貴族についての人物評みたいになっちゃったけど、そういうことで一応帝国貴族のトップに認められたこともあって私の仕立てる衣装にも更に箔が付いた。とりわけラマール州の貴族にはカイエン公の影響が絶大ですぐに依頼が殺到した。カイエン公の衣装も仕立てたからね。それをパーティなんかで触れ回ってくれたんだろう。金払いも良いし、表の仕事ではめちゃくちゃ良いお客さんなんだよね。野心家のクズだけど。でもまあそれだけなら付き合えなくもないんで関係は割と良好だ。私の服もちゃんと良いものは良いってことで認めてくれるしね。この調子で私の服を着てどんどん宣伝していってほしい。

 

 そんな訳でエレボニア帝国での服飾業については順調過ぎて困るくらいだし、会社の業績もかなり上がってきてる。まあ経営については優秀な部下がいっぱいいるんでそっちに任せつつ、私は相変わらず服を作ったり、営業したりと今まで通りやらせてもらってる──あ、そうそう。遂に今年になって第5世代戦術オーブメント《ENIGMA(エニグマ)》が発売されたし、なんなら同じく第5世代型の《ARCUS(アークス)》も販売はされてないテスト段階ではあるものの一部では実用化されている。なので通信機能が外でも使えるようになったんだよね! 

 

 まあENIGMAの方はクロスベル自治州内でしか今のところ使えないし、ARCUSの方は販売されてないからそこは困ったところだけどね。そして一応この2つの違いについて説明するとENIGMAの方は開発元がエプスタイン財団でARCUSの方はエプスタイン財団とラインフォルト社の共同開発。つまりクロスベルか帝国かってこと。おい共和国のヴェルヌ社。しっかりしろ。《RAMDA(ラムダ)》発売まだー? 

 そして第5世代戦術オーブメントの特徴が携帯通信機能なんだけど、それ以外にも戦闘面でかなり恩恵がある。特にARCUSはマスタークオーツがセットできるようになった上、戦術リンク機能という使用者同士の感覚をある程度共有して高度な連携を可能とする機能が搭載された。つまり集団戦闘の練度が高まるし、アーツも使えるものがかなり増えたどころか能力の強化具合も大きくなったわけだ。

 因みにENIGMAの方は発売が早い代わりにまだマスタークオーツは使えない。なので機能的な意味で第5世代かって言われると疑問が残るけど、割とすぐにアップデート予定らしいのでまあいいかって感じ。そもそも最新機種はロマンだからね。私も並んで買いに行ったよ。戦闘で使うのは博士が改良したARCUSの方にしようと思ってるけどクロスベル自治州で活動するならENIGMAも欠かせない。そもそもARCUSをクロスベルとか他の国で堂々と使ってたら帝国の回し者かと思われちゃうし、なんなら「その戦術オーブメントは一体……!?」って感じであらぬ誤解を与えてしまうかもしれない。なので面倒だけど使い分けよう。まあ複数台持ちも面倒だけどロマンだからね。最新テクノロジー大好きっ子な私です。

 

 ──ってことで話はちょっとズレたけど、そういう仕事の関係や最新技術を体験したいのもあって私は遂にこのクロスベル自治州にやってきました! いえーい! 来たぞ来たぞー! 魔都クロスベルー! 

 

 まあ正確にはクロスベル市内なんだけどね。クロスベル自治州自体はローゼンベルク工房とかもあるんでたまに来てたし、教団ぶち殺し大作戦のため何度か来てる。でもちゃんと市内を回ったことはなかったのでめちゃくちゃ新鮮だ。

 なんと言っても街並みが綺麗というか、それこそ最新って感じ。まあイーディスも綺麗だけど今の段階だとこっちの方が最新技術の塊かつ色んな意味で大陸の中心だ。エレボニア帝国とカルバード共和国に挟まれた緩衝地であり、何度も領土を争ってきた歴史があり、色々あって自治州として成立した後も両国の干渉によってその自治州法や政治には色々と問題がありまくってね……全部説明するとややこしいので簡単にとても平たく説明すると──帝国と共和国に自治権を承認されてるだけだから軍隊も持っちゃ駄目。あくまで警備隊だけね? 戦車や飛空艇も禁止ね? それと帝国人と共和国人には色々と便宜を図るように。犯罪とか犯してもある程度は見逃してね? 後お前ら国家じゃねーから条約とかも当然結べないよ? 因みに帝国(共和国)側に与したら許さんからね? そもそもここって本来は我が国の領土だから。まあでも貿易とか経済的に都合が良いから今は認めてあげるね? え、何? 治安が最悪? いや知らんし。それは自治州内の警察とか警備隊の管轄でしょ? 我が国関係ねーから。でも自分たちで治安維持できないようならいつでも征服するから。そこのとこをちゃんと弁えた上で経済発展するようによろしく! よーしここを舞台に帝国(共和国)との競争で有利に立つぞー! あ、それと後でお金ちょうだいね──と、こんな感じだ。なんだこれは……たまげたなぁ……いや本当に。びっくりだよね。経済的には恵まれてるけど政治的に問題だらけ。まるで前世の我が国みたいだ……(直喩)。

 

 なのであれだね。クロスベル自治州の民間人は経済的に豊かに暮らせるんで満足度は高いんだけど、治安は終わってるし、治安組織や全うな政治家や正義感の強い人達にとってはとても可哀想な有り様になってる。国としてはすっごく可哀想。そのせいで警察は無能って評判だ。実際は有能すぎて不思議なくらい有能なんだけど。でも結局犯罪者の取り締まりに制限もあるし、治安が終わってるせいで行き届かないから遊撃士の方が信頼されてる。やっぱり可哀想。

 

 でもこの色んな意味で《壁》があるクロスベルだからこそ主人公である特務支援課が映えるんだよね……この街並みを見てるとちょっと感動する。久しぶりに聖地巡礼気分だ。当然ゲームで見た時より行ける場所も多ければ思ったよりも広いんで見てるだけで楽しい! お、アルカンシェルだ! 後で見に行かなきゃね! それと試験運用されてる導力ネットも色々と試したい! インターネットだインターネット! ネットに精通した人間として大儲けしてやる! 学生時代の導力技術に強い友達と相談して色々開発すれば大儲け間違いなしだ! もしくは博士に交換条件を出して何か開発してもらおう! 掲示板とかゲームとか! 個人的にも色々と楽しみたいからね! 

 

 ってことで私はクロスベル市内の中央通りに開店予定の私のお店や購入したお家なんかを下見して見て回った後──私はマインツ山道の外れにやってきてそこで約束通りお友達と訓練をすることにした。

 

「せいっ!!」

 

「甘いよデュバリィちゃん! その技はもう見切った!」

 

「っ! やりますわね……! なら……最後の最後……! 更に全開で行きますわよ!!」

 

「うわー!? 速い速いって! 速さ足りすぎてるよデュバリィちゃん! 危ないっ!」

 

 私は高速で動き回るいつもの訓練相手を何とか目で追いながら攻撃を防御し、何とか反撃をする──ということでその相手は私の友達。鉄機隊筆頭隊士の《神速》のデュバリィちゃんだ! 

 実力は執行者級! 私と同い年! よく一緒に遊びに行くし訓練もする! 仲良し! その相手と今日は思うところがあっての試合形式で訓練! それも100戦だ! 

 ちなみに私とデュバリィちゃんの実力はほぼ互角……かな? いや、試合だと割と負けることが多いからどうか分かんないけど、今日は今のところ49対50で完全に互角だ! これで私が勝てば引き分け! 負ければデュバリィちゃんの勝ち! スタミナ的とパワー的には私が有利だけどスピードは全然デュバリィちゃんの方が速いからかなり大変だ。でも必死の訓練の甲斐もあってようやく私の方もそこそこ追いつけるようになってきた。これならやっと、あの技が使えるかも……! よし、行けー!! 

 

「すぅぅ……えいっ!!」

 

「っ!? これは……!!」

 

 その名の通り神速で。しかも全方向から3体の分け身と共に斬りかかってくるデュバリィちゃんに、私はこれまで強引に受けていたのをやめて素早く動くことを意識し──そして気力を一気に消費して踏み込んだ。

 その瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()──そして分かれた私がデュバリィちゃんの分け身の攻撃を防いだ。本体のデュバリィちゃんが動揺している。その隙を狙って……! 

 

「とりゃあ!!」

 

「っ……しまっ──」

 

 私はデュバリィちゃんに思い切り《ゾルフシャマール》を叩きつける! そうしてデュバリィちゃんのガードをこじ開け、そしてそのまま刃をデュバリィちゃんの首元に刃を突きつけた。もちろん寸止めで。すると少しの間静寂が訪れ──

 

「……参りましたわ」

 

「よっしゃー! 私の勝ちー! これで50対50ー!」

 

 デュバリィちゃんが敗北宣言を行ったところで試合終了。そして組手も終了だ。

 私は勝負が引き分けに終わり、嬉しくなって声に出す。最後に勝ったことも嬉しいけど、それ以上にできるようになったことが嬉しかった。そのことをデュバリィちゃんも口に出す。

 

「……驚きましたわ。最後の技はまさしく“分け身”の戦技(クラフト)。遂に貴方も習得したようですわね」

 

「うん! 1体だけしか出せなかったけど分け身できたよ! ありがとねデュバリィちゃん!」

 

「礼を言う必要などありませんわ。それができるようになったのは貴方の努力の賜物であってわたくしは関係ありませんし。それにわたくしの方も久しぶりに良い汗を流せましたから」

 

「それでもありがと!」

 

「っ……まったく……貴方は相変わらずですわね」

 

「お、もしかして照れてる? 素直にお礼言われるのが恥ずかしいの?」

 

「べ、別に照れてなどいません!!」

 

「顔赤くなってるよー。うわー照れてるんだー。デュバリィちゃん可愛いー。ひゅーひゅー」

 

「っ……! 照れてないと言っているでしょう!! あ、貴方って人は……! 本っ当に人を苛立たせるのがお上手ですわね……!」

 

「苛立ってるんじゃなくて照れてるんでしょ?」

 

「そうだよ。あれも照れ隠しなんだよねー」

 

「って、分け身を使ってまで戯けたことを言うんじゃないですわ! 今すぐそれをやめなさい!」

 

「「えー」」

 

 そうして勝負を終えた後、私の言葉に照れたデュバリィちゃんがぷんぷん怒り始めたので私は“分け身”を解除する──と、言うことで……ななななんと! 私も遂にあのチート戦技! “分け身”を習得しましたー! いえいいえーい! 

 いやー長かった。ちょっと前からどうにか習得できないかなーってリベールに行く前から練習してたんだけどようやくできるようになった。これもリアンヌママやレーヴェやデュバリィちゃんのおかげだね。ちなみに習得を目指した理由は色々あるけど……まあそれはまた今度かな。ただ1つ言えるのはこれで戦闘は格段にやりやすくなるし、私的にはかなり助かる。1体だけでも使えるのと使えないのとじゃ段違いだからね。なのでデュバリィちゃんには本当に感謝だ。

 

「中々見応えのある試合だったな」

 

「2人共お疲れ様。お水飲む?」

 

「あ! アイネスちゃんにエンネアちゃんもありがとー」

 

「ええ、いただきますわ」

 

 ──と、デュバリィちゃんと一緒に健闘を称え合うフェイズに入っていると少し離れた位置で見ていた鉄機隊のお仲間。《剛毅》のアイネスに《魔弓》のエンネアが近寄って水とタオルを持ってきてくれた。この2人もリアンヌママ直属の鉄機隊で2人ともリアンヌママに助けられた過去を持つ美人さん2人。

 アイネスちゃんはハルバードを使った武術の使い手で身長180リジュ以上もある凛々しい武人お姉さんでかっこいい。パワーもかなりあって性格も武人って感じだけど普通に良い人だ。腕の筋肉とかお腹とか触らせてって言ったら普通に触らせてくれる。ちなみに元遊撃士っていう結社の人間にしては珍しい経歴の人である。

 エンネアちゃんの方は弓使いの妖艶なお姉さん。あらあら系だね。包容力があるし、からかい上手でもあるからかなりえっちだ。弓使いって銃とかがある時代に強いの? って思うかもしれないけど強いです。特にエンネアちゃんは魔弓の能力。百発百中かつ放った後に軌道を変えることすらできるとんでも能力を持ってる上にめちゃくちゃ連射してくるからちょっとびびる。後は私と一緒で教団の被害者って共通点があるんだよね。あまりそのことについて話したことはないけど割と仲良くさせてもらってる。アイネスちゃんも含めてね。2人ともデュバリィちゃん程遊びには行かないけど普通に友達だ。

 

「はぁー。生き返るー。さすがに100戦もすると疲れるねー」

 

「ええ。さすがに疲労が溜まりますわね……」

 

「あれだけ動いたのだ。無理もない」

 

「そうね。特にデュバリィはアーヤに付きあったのだからいつもの稽古よりかなりハードだったんじゃないかしら?」

 

「あ、そうなの? もっと休憩取った方が良かった?」

 

「ぐ……い、いらない心配ですわ。わたくしは平気です。やろうと思えばまだまだ……」

 

「じゃあもう100戦する? 私はまだいけるけど」

 

「っ……え、ええ! 上等ですわ! 貴方がその気ならわたくしの方はまったく問題ありません! その気になれば100──いえ、後200はいけますわ!!」

 

「……意地を張ってあまり無理をするな」

 

「ふふ、仕方ないわよ。ライバルがまだ体力が有り余ってるのに自分だけ動けないんじゃ対抗心も湧くわよね? この間だって、強くなったアーヤに勝つためにマスターにも言わずに1人で訓練して──」

 

「え、エンネア!! それは言わない約束ですわよ!?」

 

「そういえばそんなことも言っていたな。アーヤなら“分け身”を習得するのも時間の問題だと。だから友人として恥ずかしくないよう自分もまた新たな境地をと──」

 

「アイネスまで!? だから何を言っていますの!?」

 

「そうそう。この間なんて私の誕生日が近いことを知って何か贈り物を渡そうかって店先で2時間ほど悩んでたりもしてたし──」

 

「アーヤまで何を──って、なんで貴方がそれを知っているんですの!!?」

 

「見てたからね」

 

「見てたならなんで声をかけないんですのっ!?」

 

「かけたけどなんかぶつぶつしてて気づかなかったから邪魔したら悪いかなーって思って……」

 

「ぐぬっ!? ぐ……そ、それなら仕方ありませんわね……!」

 

 おっと。デュバリィちゃんが歯噛みしてる。でもデュバリィちゃんって一度考え込むと周りが結構見えなくなったりするというか、ポンコツだからね。そうやって変な失敗をすることも多い。

 

「やれやれ、デュバリィちゃんはドジだなー。もうちょっと周りに気を配った方がいいよ?」

 

「あ──貴方にだけは言われたくありませんわ!! 喧嘩売ってるんですの!?

 

「落ち着けデュバリィ。気持ちは察するが」

 

「そうよ。これくらいいつものことじゃない」

 

「ぐっ……そ、そうですわね。これくらいはいつものことですし……真に受ける必要は──」

 

「大丈夫。ぽんこつでもデュバリィちゃんは私の大事な友達だから。何かあっても私がカバーしてあげるね」

 

「──クッソムカつきますわ!!」

 

「落ち着けデュバリィ」

 

「怒りのあまり言葉遣いが汚くなってるわよ?」

 

 おっと。なぜかデュバリィちゃんが怒ってる。これはあれかな。もしかして私の方がポンコツだって思ってるのかもしれない。でも絶対デュバリィちゃんの方がポンコツだと思うんだよね。まあそういうところが可愛いんだけどさ。割とこのじゃれ合いは日常茶飯事だから私もそんなに気にしてないし、デュバリィちゃんも多分そんなに気にしてないと思う。だから今日も遊びに誘う。

 

「それじゃデュバリィちゃん。今日はこの後一緒にお酒飲みに行こうよ」

 

「はぁ? 何を言ってますの? 貴方は──って、ああ。そういえばもう成人でしたわね」

 

「そう! だからようやくお酒解禁! ってことでデュバリィちゃん、お酒の先輩として付き合って!」

 

「む……し、仕方ないですわね。確かに、初めての飲酒ということであれば誰かしらが付き添う方が良いのは確かですし……今日はオフでもありますから付き合ってあげますわ」

 

「やったー。それじゃアイネスちゃんとエンネアちゃんも大丈夫?」

 

「すまない。今日はこの後別途やることがあってな」

 

「ごめんなさいね。2人だけだと心配だから付き合いたいのは山々なんだけど、私たちの方は別の用事があるの」

 

「そっかー。それなら仕方ないね。デュバリィちゃん行こっ!」

 

「構いませんけれど、私も明日は早いですから程々に切り上げますわよ。……それにお酒は私もまだあまり……」

 

「……? それじゃ一旦シャワー浴びて着替えてから行こうか」

 

 そういうことなので私とデュバリィちゃんはアイネスちゃんとエンネアちゃんに別れを告げてからクロスベル市内に入る。因みに2人の用事はリアンヌママ絡みではないだろう。そうだったらデュバリィちゃんがオフなわけないし、オフだったとしてもついて行くからね。ただ《幻焔計画》遂行に当たって別行動も取ることもあるから絶対ではないけども。新しく買った家もねぐらの1つとしてデュバリィちゃんに提供することになってるし。なので遅くなっても問題ないのだ! いやー二十歳になってお酒を飲むの、ずっと楽しみにしてたんだよね! 1人で飲んでも良かったしその予定もあったけどせっかくデュバリィちゃんがいるので成人になって日が浅い者同士で適当なお店に入ることに。食事を摂りつつお酒が飲めるってことでまずは普通の酒場。居酒屋っぽいレストランに入って適当に注文。やっぱり最初は──

 

「とりあえずビールだよね!」

 

「何がとりあえずなんですの?」

 

「知らないの? 酒の席なんかだととりあえずビールってのが通例らしいよ?」

 

「なんですのその謎のルールは……まあいいですけど」

 

「それじゃかんぱーい!」

 

「乾杯ですわ」

 

 ってことでデュバリィちゃんと乾杯してビールをごくごく一気飲み! 二人きりの飲み会開催だ! 

 

「うーん……苦い! でも美味しい気がする!」

 

「成程……確かに苦みの中にアルコールを感じて不思議な味わいですわね」

 

「アルコール飲んでるって感じするね! ──ってことでもう一杯! 次はハイボールで!」

 

「ってもう飲み終わりましたの!?」

 

「そういうデュバリィちゃんは飲むの遅くない? もしかして飲み慣れてない感じ?」

 

「む……別にそんなことありませんわ! ──んっ!」

 

「おお……一気に……!」

 

「──ふぅ……ど、どうですの? これが一気飲みという奴ですわ」

 

「おおーすごいね! それじゃハイボール2杯お願いしまーす!」

 

 2人のグラスが空になったところでまた別の酒を注文。この調子でどんどん飲んでいこう。私もなんとなくアルコールが入って気分が良くなってきた気がするし! もっと気分良くなりたいよね! 

 

「こっちはまた別の味わいがあるね!」

 

「炭酸は正直あまり得意ではありませんけれど……まあ飲めなくはありませんわね」

 

「そう? じゃあ次はワインでも頼んでみる? ワインとかお洒落だし、リアンヌ様も好きそうじゃない?」

 

「! それは確かにそうですわね……なら次はワインに挑戦してみましょう」

 

 また2人のグラスが空になったところでまた別の酒を注文。少しデュバリィちゃんの顔に赤みが差してきた気がする。私も顔赤くなってるかな? 分かんないけど楽しくはある。

 

「おお……これはまた……濃厚だね!」

 

「これが上品な大人の味わいというもの……悪くありませんわね」

 

「デュバリィちゃん気に入った?」

 

「ええ、今までのお酒の中では1番気に入りましたわ」

 

「それじゃ次は白ワインも頼んでみる? 後はウォッカとかよくない? 後はジンも良さそう! 強そうな誰かを思い出すけど!」

 

「ああ、そういえば聞きましたわね……はぁ、なんか少し高揚感を感じてきましたわ」

 

「あれ、もう酔ってきちゃった? もしかしてデュバリィちゃんお酒弱め?」

 

「む……そんなことありませんわ! ──んっ!」

 

「おお! また一気飲み!」

 

「ふふん。これくらいどうってことありませんわ。さあ、じゃんじゃん行きますわよ!」

 

「よーし私も負けないぞー! 次はロックって奴に挑戦だ!」

 

 そしてまたまたグラスが空になり、酒を注文してまた飲む。それを繰り返してどんどん私は酔っ払うのだ。お酒って気持ちよくなるからね! 

 

「うっ……これはまた……中々強烈ですわね……」

 

「そう? 思ったよりも普通というか……案外物足りないというか……あ、もう飲み終わっちゃった」

 

「っ……まあ、確かに。飲めなくはありませんわ……さあ、次も行きますわよ……!」

 

「じゃあ次はストレートで」

 

 そしてまたまたまたグラスが空になり、酒を注文してじゃんじゃん飲む。そうして飲み比べみたいになっていくけど……。

 

「なるほど。これは結構アルコールを感じるね」

 

「ウッ……ま、まあそうですわね……」

 

 ──あれ……なんかおかしいな……? 

 

「わ、わたくしはまだまだいけますわ…………ちゅぎのおしゃけをぉ……」

 

 ──なんか幾ら飲んでも……。

 

「むにゃむにゃ……こ、これは美味しいですわねー……すごくいい気分ですわー……」

 

 ──いや、むしろ()()()()()()()……。

 

「にゃにをしてるんですのアーヤ……もっと、注ぎなさい……わたくしはまだぁ……」

 

「いや、そろそろやめた方が……」

 

「あなたがまだ飲めるのに……わたくしが飲めないわけありません……! ですから飲みましゅわ……」

 

 ………………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──数時間後。

 

「ウッ゛……気持ち悪い……ですわ……」

 

「だから言ったのに……ほら、肩貸してあげるから早く帰ろう。明日早いんでしょ? ……まあもうとっくに日付変わってるけど……」

 

「あ、アーヤ……」

 

「何?」

 

「先に……謝ってぇ……おきますわ……」

 

「え、なんで? 別に謝ることなんて──「おえええええっ……!!」──うわっ!?」

 

 ──でゅ、デュバリィちゃんが路上で吐いたー!!? 

 

「だ、大丈夫デュバリィちゃん!?」

 

「大丈夫じゃ……おろろろ……!」

 

「あー……その、背中擦ってるから……まああんまり良くないけど吐くだけ吐いちゃおっか。その方が楽になるしね……」

 

「こんな、粗相をしてしまうなんて……鉄機隊の名折れですわぁ……」

 

「大丈夫だって。皆には黙ってるから……」

 

「お、お願い、しますわ……お、おろろろっ……!」

 

 ……………………ということで、私はどれだけ飲んでも全然酔えなかったし、デュバリィちゃんは路上で吐いちゃうしでものすごい夜になったけど、一応原作開始です。クロスベル警察の案内に特務支援課って部署が新設されたって聞いたので……なのではい。心の中で歌います、『way of life』──生きてる~その意味~を~探し続ける~……それが~生きることさ~きっと~……♪ ──吐きたく~なった夜は~……涙~枯~れ~るま~で、吐こう~……って、最低の替え歌思いつくのやめない?




ということで今回の終わりから。正確には次回から零の軌跡スタートです。理不尽な壁を乗り越える良い話なので今回もかなりイイ話になります。お楽しみに。

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