──俺にとっちゃ暴れられりゃあ何だって構わねぇ。
だから俺はその日も俺のチームである《サーベルバイパー》の舎弟共とアジトである旧市街のライブハウス──イグニスで適当に過ごしてた。
やることと言っちゃあ適当に駄弁ったり酒を飲んだりケチな賭け事をしたり旧市街を練り歩いたりとそんなとこだ。俺たちは好きに振る舞うし、力を証明した俺には当然の権利だ。ガキの頃から喧嘩に明け暮れていた俺が手に入れたこの場所は俺の物。俺が頭で舎弟共を引き連れる気分はそんなには悪くねぇ。
だが俺の血が最も滾るのはそんなことじゃねぇ。俺の好きなことは喧嘩で、強い奴をこの手でぶちのめせれば何だって構わねぇ。
とはいえ少し前までは俺に敵うような奴は旧市街にゃいなかったし、張り合いがない毎日を過ごしてたもんだが、ここ最近は違う。あの青坊主共──ワジ率いる《テスタメンツ》とかいう俺たちに対抗する不良チームが現れやがったからな。連中との抗争が最近の楽しみだ。あの優男はああ見えて強くて歯応えがあって楽しませてくれるし、他の雑魚共もこっちの舎弟がやるには充分な相手だ。酒や賭け事も悪くはねぇが今はあいつとの決着をつけることにしか興味がねぇ。ワジの野郎を叩きのめして俺の力を証明する。そうしてこの俺が旧市街で1番強い奴になれりゃあそれでいい。先のことなんざどうでもいいし考えもしねぇ。次はどんな風に、どんなきっかけでぶつかるか……なんだって構わねぇ。とにかく連中と喧嘩が出来りゃあな。
──だがまあそのきっかけができるまでは舎弟共と遊んでやるのも悪くはねぇ。だからその日、俺は舎弟共に付き合って適当に酒を飲んで夜の街を練り歩いていた。珍しく外の店に行きたいとかで俺を誘ってきたもんだからな。別にそれくらい付き合うのは構わねぇ。
「なぁヴァルドさん。もう一軒行きやしょうよ~」
「次は可愛い子ちゃんがいる店とかどうっすか?」
「ハッ、仕方ねぇな。付き合ってやるよ」
「よっしゃー! それじゃ次は──お?」
で、だ。そんな時だ。舎弟の1人が何かを見つけやがったんで俺たちも反応して目を向けるとそこには若い女が2人いた。片方の女は酒に酔っていてもう片方の褐色の女はそのもう1人に肩を貸している。飲んだ帰りってところか。それを見つけた舎弟共が色めき立つ。
「なあなあ、あの2人可愛くね~?」
「確かにめちゃくちゃ可愛いじゃん!」
「声かけちまうか?」
「いいっすかヴァルドさん!」
「お前らの好きにしろ」
鼻で笑って許可を与えてやれば馬鹿の舎弟共は挙って女2人に近づいた。俺は少し離れた場所で残った舎弟と一緒にそれを待つことにする。この距離でも会話の内容は充分聞こえた。
「よう、可愛い子ちゃんたち~!」
「飲んでる最中? ならもうちょっとだけ俺たちと飲まない?」
「一緒に楽しい時間を過ごそうぜ~!」
「あはは、ごめんなさーい。ちょっと連れが潰れちゃってるんでもう帰るところなんだよね~」
「そうなの? そりゃ大変だね~」
「それじゃ近くに俺たちの溜まり場があるんでそこで休んでいくのとかどうっすかァ?」
「そうそう! それいいじゃん! それにお姉さんの方はまだいける感じっしょ?」
「いけるけどさすがに今日はちょっと難しいかなぁ。だからまた見かけたら声かけてよ」
「えーいいじゃん。ちょっとだけだからさぁ」
「なんならお酒とか奢っちゃうよ~!」
「気持ちはありがたいんだけど今日は……」
そんな舎弟共と女の会話が聞こえるが、どうやら無理そうだな。帰ってきたら笑ってやろう。あるいは俺も声をかけてやろうかと考え始めた。
「……いい加減に……」
「?」
「今なんて?」
──だがその時だ。酔っ払った女の方が何かをぶつぶつと口にした次の瞬間。
「──うるさいですわ!!」
「おごっ!?」
「がっ!?」
「っ……!?」
「なっ……!?」
──俺の舎弟共をぶん殴り、一瞬でかたを付けちまった。
最初に右ストレートで1人を路地裏の壁まで吹き飛ばし、次に前蹴りでもう1人を文字通り蹴散らし、最後のもう1人も腹に一撃入れて悶絶させ、全員を気絶させちまう。
それを見た俺は驚き、思考を止めちまう。そうしてその強さと舎弟共がやられちまったことを理解するまでに女2人はこちらから去ろうとしていて。
「びっくりした……私が手を出すより早く手を出すなんて……さすが《神速》……」
「うるしぇですわ~……しつこいのが悪い……気持ち悪い……にゃむにゃむ……眠い……」
「それもそうだね。まあ見たところ大した怪我でもないし、別にいっか。それじゃほら帰るよー」
そう言って女2人は俺たちに気付いているのかいないのか、俺を無視して背を向ける。
そうして去っていく2人の背中を見たところで、俺は理解して血が滾っていくのを自覚した。
──面白ぇ。幾ら雑魚の舎弟共とはいえ数人を一瞬で蹴散らすとはあの女、只者じゃねぇな。見たところただの女にしか見えねぇが、相当強ぇと見た。この街に……いや、クロスベルの人間かどうかも分からねぇが、とにかくあんな強い女がいるとはな。これは喧嘩を売らない手はねぇ。
幸運なことにきっかけすらある。しつこいナンパのせいとはいえ俺の舎弟共がやられたんだからな。サーベルバイパーの頭として返しはしなきゃならねぇ。女にのされちまったとあっちゃあ面子が潰れちまうからなァ? 雑魚どもとはいえ俺の顔も潰すことになるわけだ。
だからこそ俺はその女を追いかけて声をかけることにした。角を曲がったところで俺は背中から喧嘩を売る。酔ってるとかそんなことは知ったことじゃねぇ。俺は暴れられりゃあそれでいいんだよ……!!
「クク、待ちやがれ……! 俺の可愛い舎弟を叩きのめしておいてタダで帰れると思うんじゃねぇぞ!!」
俺は待ちきれずに角を曲がる前から声を張り上げた。そうして俺の得物である“鬼砕き“を肩に構える。なんだったらすぐに殴りかかっても構わねぇが、そんな不意打ちじゃ楽しめるもんも楽しめねぇ。まずは名乗りを上げて尋常に勝負と行こうぜ……!
「おい女! 俺はサーベルバイパーの──」
「──だからうるさいって!! デュバリィちゃんがまた吐いちゃうでしょうが!!」
「が──……~~~~~っっっ!!」
──だがその曲がり角で向こうの方から不意打ちの蹴りを股間に食らい、俺は想像を絶する激痛に悶絶し地面をのたうち回った。
そうして激痛で気を失う直前に女の声が俺の頭上は響く。
「まったく……サーバルキャットだかなんだか知らないけど今はそれどころじゃないんだから…………なんか見たことある気がするけど……ま、いいや。早く帰らないと」
「水が欲しいですわ……」
──サーベル……バイパー、だ……。
そしてそれを最後に俺は気を失い、目が覚めたのは朝になってからだった。俺は股間の痛みをじくじくと感じながら、絶対にあの女共に仕返ししてやることを決めた。
──どうもおはようございます。ファッションデザイナーのアーヤ・サイードです。好きな動物は猫です。最近黒猫を飼い始めたのに離れることになって少し寂しいけどイクスとヨルダの話だと元気みたいで、よく外に出て近場の飼い猫や野良猫を従えているんだとか。
まあそんな私のペット事情は置いといて、私はクロスベル市内にある自宅で目を覚まします。高級住宅街にある一軒家で庭付き。お部屋も7つもある。まあまあ高かったけどクロスベル市内の別荘というか邸宅ってことでこれくらいあってもいいかなって。アジトにもなるし。
そして今はその家にデュバリィちゃんと一緒に住んでます。……え? なんでデュバリィちゃんがいるかって? それはなんというか、本人が言うには用事でしばらくここで住むってことなので……まあ何の用事かはわからないけど別にいいかなって! 友達とルームシェアした方が寂しくないしね! これだけ広いと持て余すしさ! なんなら他の人も遊びに来てもらってもいい。
そしてこの間は酒で潰れたデュバリィちゃんを連れてこの家に帰ってきて水を飲ませながら寝かせた。……途中なんか不良がしつこくナンパをしてきた上に、なんか背後から敵意剥き出しで襲いかかろうとしてきた気配を感じたので私とデュバリィちゃんで叩きのめしちゃったけどそれはまあ良しとしよう。めちゃくちゃ見覚えある顔だった気がしたけどね。ヴァル……まあサーヴァルちゃんとしておこう。旧市街の方じゃそれなりに幅を利かせてる2つの不良チームがあるんだけどそこは別にあんまり関わらないだろうからね。そんなに興味もないかな。
それよりもクロスベルにやってきたことで私はまた色々行動中だ。表の仕事としてはお店も開店したし、あのアルカンシェルにも衣装を提供することになった。うん、さらっと言うことじゃない大仕事だけど、それくらいさらっと決まっちゃったからしょうがない。どれくらいさらっと決まったかと言うと、開店初日のお店にやってきたイリア・プラティエが私の顔を見て。
「貴方がファッションデザイナーのアーヤ・サイードね」
「あ、はい。そうだけど貴方は……」
「イリア・プラティエよ。アルカンシェルのアーティストをしているわ」
「あ、あー……これはどうも。ファッションデザイナーのアーヤ・サイードです。本日はどんなご用件ですか?」
「ここってオーダーメイドの依頼も受けてるんでしょ? だからあたしの──正確に言うとアルカンシェルで使う舞台衣装を仕立てて欲しいんだけどいけるかしら?」
「──もちろんいいですよ! 予約はいっぱいだけどね! あのアルカンシェルの衣装に関われるなら特別に受けます!」
「それなら助かるわ。こっちも本当は公演までギリギリなんだけど貴方のデザインした衣装を見たらビビッと来たの。より良い舞台のためには仕方ないわよね?」
「うん、仕方ないね!」
──とまあこれくらいさらっと決まった。声掛け。自己紹介。仕事の依頼。その三工程だけ。ややこしい商談とか条件はなしでね。その後でウチの社員が予約大丈夫なんですかと心配して声を掛けてきたり、アルカンシェルの劇団長がやってきてなんかすごい困ってたけどね。でもアルカンシェルの衣装を仕立てられる滅多にない機会だし、お金とかの話は部下に丸投げしてすぐにイリアさんと一緒にその場でデザインについての希望やら舞台のイメージやらを共有してデザインを描くことにしたんだけどさ。これがもう乗るわ乗るわ。話がめちゃくちゃ合うし、デザインがどんどん湧き出てくるんでもうすごかった。夜までかかったからね。途中からイリアさんを見て人が集まってきたんでアルカンシェルまで行って、その道中でもデザインについて色々話して、アルカンシェルについたらもう早速採寸して私は色んな意味で興奮して、衣装のデザインを更に膨らませるために演技や踊りを見せてもらってそれを見たらまた衣装のデザインが浮かんだんでそれでまたどのデザインがいいかで悩んだりして、途中向こうから私も舞台に出てみないかってスカウトもされたけどさすがに今は無理だから泣く泣く断ったりもした。舞台公演でこっちにずっと関わるとかは無理なんだよね。残念なことに。だから舞台衣装だけを提供することにして私はイリアさんとの面談を終えて、ついでに夕食も一緒に取ってから自宅に帰った。さすがはアルカンシェルの看板女優って感じだったね。《炎の舞姫》と呼ばれてるだけはあるし、私の衣装の良さもめちゃくちゃ理解してくれたし、仕事というか好きなことに対する情熱というかそういう部分でも結構話が合ったんでまた今度お話させてもらおう──あ、それとリーシャちゃんは今日は別の用事みたいでいなかった。一度会って見たかったんだけどなー。私とは色んな意味で近しいものも感じるしね。
でもまあそのうち会う機会は幾らでもあるでしょうってことでその日は型紙を起こすことに集中したけど、ありがたいことに私には他にもやることが沢山あるので次の日にはまた色々と行動することに。まずは家の導力ネットの整備だね。クロスベル市内は導力ネットが使えるようになったので端末を用意して有線で接続して端末やネットのテストなんかを行った。デュバリィちゃんがちんぷんかんぷんな感じだったけど私にとっては割と簡単だった。博士からも使い方も聞いてるしね。タイピングも問題ないし、エプスタイン財団が開発したばかりの《ポムっと!》というぷよ◯よみたいな落ち物パズルゲームのデータもジオフロントに忍び込んで引きこもりナード少年の端末から直接ぶっこ抜いてきたし、テストがてらデュバリィちゃんと一緒に遊ぶことに。その時の一部始終がこちら。
「よっ。ほいっと。メテオ! タキオン! ブラックホール! クエーサー! ビッグバン! ビッグバン! ビッグバン! ビッグバン! ビッグバン!」
「ちょっと!? いきなりゲームオーバーになってしまいましたけど!? 一体今何をしたんですの!?」
「え? 普通に10連鎖くらいしただけだよ?」
「さも簡単なことのように言うんじゃありません! す、少しくらい手心を加えようという気はないんですの?」
「仕方ないなぁ。それじゃ手加減してあげるね。そっちが積み終わるまで攻撃しないから頑張って」
「ぐっ……屈辱ですわ……ですが仕方ありません。ここは先程のアーヤを真似て……確かこうして……………………で、出来ましたわ! これでいわゆる4連鎖ですわね!」
「えいっ。ふぁいやー。あいすすとーむ。だいあきゅーと。ぶれいんだむどー。じゅげむ。ばよえ~ん。ばよえ~ん。ばよえ~ん。ばよえ~ん。ばよえ~ん。ばよえ~ん。ばよえ~ん。ばよえ~ん。ばよえ~ん──あ、死んだね」
「私の魂の4連鎖がいとも容易く!? ず、ずるいですわ!」
「あはは、ずるくないって。デュバリィちゃんも練習すればこれくらい簡単にできると思うよ」
「最初から上手い貴方に言われても全然説得力がありませんけれど……ですが負けっぱなしでは終われません! たかがゲームと言えど鉄機隊の筆頭隊士として、必ずや土をつけて差し上げ──」
「ヤァ! イックヨー! フレイム! サイクロワール! アクティーナ! フェアリーフェア! バッヨエ~ン! バッヨエ~ン! バッヨエ~ン! バッヨエ~ン! バッヨエ~ン! バッヨエ~ン! ──はいまた私の勝ち~! デュバリィちゃんよわよわ~♪」
「ああああああああああっ!! その妙に高い謎の言葉をやめなさいっ!! めちゃくちゃ腹立たしいですわ!!」
「デュバリィちゃんどうどう。台パンは駄目だよ。端末は繊細なんだからさ」
「ぐぬぬ……! ならもう一度ですわ! 絶対に……せめて一太刀は浴びせて──」
「グゥ! グーウッ! グッググーグ! ググッグゥーグゥ! グゥググゥグゥ! グググーグゥ! グッググ~! グッググ~! グッググ~! グッググ~! グッググ~! グッググ~! グッググ~! グッググ~! グッググ~! グッググ~! グッググ~! グッググ~! グッググ~! グッググ~!」
「あああああああああああああああああ!! 頭おかしくなりそうですわッ!!」
「ぐっぐぐーぐー!」
「意味不明な言語を口にしながら肩に手を置くんじゃありませんわ! そのぐーぐー言うのをやめなさい!!」
──とまあこんな感じで楽しい休日を過ごした。いやもうデュバリィちゃんが全然離してくれなくてね。夕飯を出前にしてまで遊び続けたんだけど最後まで全力で叩きのめしたよ! 手を抜くなんて失礼だからね! 最後の方はデュバリィちゃんも結構上手くなってたし、またリベンジすることを誓ってくれたから次が楽しみだね! 他の導力ゲームも完成したら一緒に遊んでもらおっと。
そしてそのまた次の日には朝からデュバリィちゃんと手合わせしたり、先日も潜ったジオフロントで頭の中でジオフロントのBGM流しながら再び博士手製の記憶結晶を差し込んでデータをぶっこ抜きつつ、博士からの依頼を完了させ、その後はちょっと市内で買い物をしてからお家でデュバリィちゃんと夕飯を作って食べた。で、その時にクロスベルタイムズを買って見たんだけど──そこにはなんと! あの特務支援課の活躍が載ってる! 遊撃士には手柄をかっさらわれたりもしたけど旧市街の不良の喧嘩を止めたりとか色々頑張ってるみたいだね!
ってことで特務支援課の説明をすると……要は警察による市民の人気取りの部署であり、それでいながらかつてこの街にいたガイ・バニングスっていう捜査官の意志によりセルゲイ・ロウによって設立された部署だ。民間からの依頼を請け負ってそれを解決するという──まあ言ってしまえば遊撃士の真似事をする部署だね! なので各方面から懐疑的に見られている部署ではあるけど、この特務支援課がまたパーティ感というか仲間感が強くてね。特に設立時の最初の4人が色んな壁にぶち当たりながら少しずつ事件を解決に導き、このクロスベル自治州を取り巻く様々な諸問題に挑んでいくという激熱ストーリーなのだ。なので私はすごい期待している。しているけど──残念ながら私は反社会的勢力の一員だからクロスベル警察には若干の怖さがある。実は有能の集まりだし……一般市民なら素直に応援できるんだけどなぁ。
後は遊撃士だけど《風の剣聖》みたいな化け物もいる。まあアリオスに関しては実はこっちの味方だから心配しなくてもいいんだけどね。後はエステルちゃんとヨシュアくんもこっちに来るだろうし……後はレンも滞在してるだろうから色々と気苦労が絶えない。まあ出会っても別に、まだ結社として動いてるわけじゃないから普通に話せると思うけどね。実際なにか事件を起こそうとしてるわけじゃないし。
だから特務支援課についても出会っても問題ない……はず。メンバーの1人であるランディとは昔会ったことがあるから心配っちゃ心配だけどそこは互いに空気を読もう。別に何かする気もないんだしさ。向こうが気付いたとしても良い感じにやっていけるはずだ。
というか特務支援課には頑張って貰わないと困るから何かあれば私は裏から助力してあげようかなと思ってる。ループになったら怖いし……特務支援課って、特に序盤はあんまり強くないから危なっかしいんだよね。いつ潰されてもおかしくないって言うかさ。
なので結社の計画としても……まあ必要ないかもしれないけどちゃんと存続してもらわないと困るだろうし、私としても彼らがしっかりやってくれると仕事もやりやすくて助かる。ヨアヒムやらハルトマンやらマルコーニやら殺すためにもね。
まあぶっちゃけやろうと思えば元西風の熊さんがいるマルコーニ以外は特に苦労もなくやれるだろうし、マルコーニもぶっちゃけ熊さんがいない時を狙えばいけるだろうけどそれはそれとして楽に済ますに越したことはないというか、できれば殺してもバレないようなタイミングでやりたい。クロスベル警察は優秀だから特に慎重にやろうと思ってる。
──ただそれもマリアベルからのストップがなければオジサン特製のBC兵器でも仕掛けて完全犯罪が成立しそうなんだけどなぁ。特に《ルバーチェ商会》相手なら巻き込んでも問題ないから熊さん含めて余裕で殺せそうだし……。
でもあんまり良い手段じゃないし、私でも使うのはちょっと怖いから今はまだマリアベルの言う通りに様子を見つつ、表の仕事に精を出しながら特務支援課の活躍を高みから見物させてもらおうと思ってる。なのでしばらくは本当にデュバリィちゃんと一緒に細々とした仕事を行ったり手合わせをしたり遊んだりして日常を楽しもう。ふんふ~ん。楽しみだな~。
「デュバリィちゃん。今日はアルモリカ村まで訓練がてら遊びに行かない? 蜂蜜がすごい美味しいらしくてさ。朝ご飯のホットケーキに使ったら最高だと思うんだよね!」
「それは構いませんけれど……それよりも貴方、噂になってますわよ」
「え、何が? もしかしてファッションデザイナーとして? アルカンシェルに衣装提供してることが噂になっちゃった?」
「そちらではなくて裏の噂ですわ。偶然耳にしたのですが、なんでも──《ルバーチェ商会》が《切り裂き魔》を雇ったとかで」
「へえ、それはそれは………………………………は?」
──えっ、何? どういうこと?
「それで一応聞きますけれど、ルバーチェ商会から仕事を頼まれたりしてませんわよね?」
「うん。してないね」
「だと思いましたわ。ならこれは何らかの目的のために流された偽情報ですわね。ただその真偽を見抜くことが他の組織にできない以上、対抗組織である《黒月》や警察組織からは警戒されるでしょう。これは少々厄介なことになりましたわね……」
「……あーなるほど。そういう感じね」
──つまりルバーチェ商会が戦力拡充までの間、黒月を牽制して攻勢を躊躇させるために私の暗殺者としての名前を使った……って感じかな? うん、割と良い線行ってると思うし、なるほど。納得した。確かに黒月って前にかち合ったせいでちょっと敵対関係っぽくなっちゃってるしね。強い暗殺者手に入れたぞー手出してきたら差し向けちゃうぞーって感じで威嚇してるわけだ。人の名前勝手に使ってね。まあもしかしたらこの推理間違っててそれ以外の理由があるかもしれないけどね。そしてその手を取ったのはルバーチェ商会会長のマルコーニだ。おかげで黒月と警察に、しかも特務支援課も含めて警戒されちゃうかもしれなくて……でも私のことなんて信じてないか、いても勝手に名前使うくらい問題ないとか思ってるのかな。ふーん。へえー…………。
──あのハゲ親父殺そうかなぁ……。
ということで零の軌跡編始まりです。零は空と違ってアーヤちゃんの怖い面が出るかもしれない。でもやっぱり可笑しくなるかもしれません。ってことで次回は零の軌跡二章の暗殺未遂事件の話から。特務支援課が出てきますのでお楽しみに。
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