TS不幸少女のゼムリア大陸災難記   作:黒岩

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太陽の砦に突入する不幸

 ──被検体『アーヤ・サイード』について。

 

 アーヤ・サイードは僕がこれまで見てきた子供たちの中で最も《御子》に近い存在である。

 そう結論付けるまでにかなりの時間がかかってしまったが、彼女の特異的な体質やその身に秘めた力を精査した結果、教団は彼女を《奇蹟の御子》と称することになった。

 しかし彼女を再び捕らえて研究を行おうにも教団から脱走して久しい。教団は幾度となく彼女を捕らえるべく手段を講じたが、彼女は他の組織を隠れ蓑にして我らの手から逃れてしまった。遂には教団が壊滅状態に陥ってしまったことや、彼女自身が強くなってしまったことで彼女を捕らえることは実質的に不可能になってしまった。少なくとも現時点で彼女に手を出すことは不可能だろう。

 それどころか彼女は教団の残党や関わった人間を積極的に殺害しているという噂もある。それが事実であるならば僕の身も危ない。僕は早急に対策を講じる必要があった。僕の目的である《グノーシス》の完成を急がねばならないだろうと在りし日の僕は思った。

 

 そうしてしばらく研究を続けた僕は遂に《グノーシス》の完成に漕ぎ着けることに成功するが、そこから更に発展させるべくアーヤ・サイードの血液を使うことにした。

 彼女の力は普通ではない。生まれた時から女神の枷が外れており、あらゆるものに耐性を得てしまうその肉体は新人類と呼ぶべき頑強さであり、その力は古代遺物(アーティファクト)の干渉すら受け付けない。

 それどころか逆に干渉して異常をきたしてしまう。まさに異能と呼ぶべき力であるが、我々教団の信徒からすればこれほど魅力的な力はない。何しろ女神の枷を()()()()()()()()()()()()()()()

《グノーシス》という後天的に潜在能力を開花させ、力を得る薬を使わなくても彼女は生まれた時から特別で、女神の存在などまるで信じていない。

 女神が存在しないことを常識的に理解している彼女はある意味で我ら教団の目指すべき姿であり到達点だ。それゆえに教団の中には彼女を新たな御子に据えようとする一派までもが存在した。僕はそうは思わないが、それでも彼女には利用価値がある。その証拠に彼女の血液によって作った薬は既存のどの薬品にも当て嵌まらない凄まじい効果を発揮するのだ。

 そしてそれは《グノーシス》もまた同じ。彼女の血液を用いて調整して作り上げた《黄金の叡智(グノーシス)》は蒼はおろか紅よりも更に優れている。潜在能力の強化は紅以上で、治癒能力もついてくるというおまけ付きだ。

 だが代わりにこれを飲んだ人間は二度と正気に戻ることはできない。純度を抑えたものであっても理性を失った獣のようになってしまうのだから扱いには注意が必要だ。もっともグノーシスの服用に慣れた者や純度を抑えたものであればその限りではないが、それでも一度でも服用すれば元に戻ることができないことに変わりはない。制作者の僕ですら治療の方法は発見できなかった。

 だがそもそも元に戻る必要がないのだからそのデメリットはデメリットにならない。服用した者を操ることができることには変わりない上、僕自身が服用することで実質的な不死になることもできた。生半可な怪我はすぐに回復してしまう。制御してしまえば魔人化すら自在に行えるのだ。

 ゆえにこの《黄金の叡智(グノーシス)》を完成させた時点で僕に怖いものはなくなった。仮にアーヤ・サイードが僕を殺しに来たところで僕のことを殺すことはできないだろう。

 無論、今しばらく準備も必要であるため露見するようなリスクは取らない。動かすのもあくまで操った駒のみだが、それでもいざという時の備えがあるのとないのとでは大きく違う。

 もはや僕を止められるものなど存在しない。キーア様が奪われたことなども些細なことだ。すぐに取り返してしまえばいい。キーア様を目覚めさせるためにアーヤを使った研究を再開しようともしていたが、それすらももう必要ないのだ。

 だから僕はクロスベル市内で特務支援課を含む警察や《風の剣聖》。アーヤとそのお仲間の結社の人間が現れても動じることはなかった。多少苛立ちはしたものの、すぐに落ち着きを取り戻してこの《太陽の砦》でのこのことやってくる特務支援課に遊撃士を迎え撃つことにした。

 

 ……まあそもそもここまで辿り着くことはできないだろうがな。僕がいる最奥に来るまでに紅のグノーシスを渡したアーネスト君が待ち構えている上、仮にそれを乗り越えたとしても黄金のグノーシスで強化したガルシア・ロッシを倒すことはできないだろう。

 あるいは死んでしまうかもしれないがそれも仕方のない犠牲だ。キーア様さえ大人しく渡せばそのような危険な目には遭わなかったものの……クク……さて、意識を適当な人物に切り替えて少しばかり覗き見てみるとしようか。彼らの苦しむ姿を──

 

「食らえ──!!」

 

「──んぐっ!?」

 

 ──だがそうして意識を切り替えたその瞬間、呼吸を止められてその人物は意識を失った。

 

 僕はすぐに意識を自分の肉体に戻し、そしてその現象について考察する──どういうことだ? 

 今一瞬見えたのはアーヤ・サイードだった。だがそれ以上のことは何も分からない。偶然、切り替えた瞬間に攻撃されたのか……いや、だとしても意識を失い、制御を離れるのはありえない。《黄金の叡智(グノーシス)》を服用した者は並大抵のことでは倒れることはなく傷も一瞬で再生するはずだが──

 

「いや、まさか……」

 

 ──だが僕はそこである可能性を1つ思いつく。

 アーヤ・サイードは昔とは違う。彼女は優れた暗殺者になっている。

 ならば警察や遊撃士とは違い、躊躇いなく()()()()()()()()()()()()()()()()()()。傷が再生するといっても脳や心臓などの急所を一撃で断たれた場合、そこから回復することはできないはずだ。《黄金の叡智(グノーシス)》の治療方法が存在しない以上、僕が操った者を止めるには殺害するしかない……か。なるほど。相手は警察や遊撃士などの表の人間ばかりと高を括っていたが、裏の人間にはそういう手段を用いることもできる。必ずしも突破できないとも限らないか……。

 とはいえ、だ。並の者なら殺害することも容易いだろうが、ガルシア・ロッシのような怪物を即死させるのは至難の業。如何に優れた暗殺者とはいえ魔人化したガルシアを殺すには相当な労力が必要となるだろう。あるいはそれを止めるために最低でもアーヤ・サイードを始めとする裏の人間が注力する必要がある。特務支援課や遊撃士程度ならアーネスト君や僕でも容易く返り討ちにすることができるだろう。

 

 そう思い、僕はほくそ笑んだ。アーヤ・サイード……君は昔から優れた被検体だったけれど、君のおかげで完成した《黄金の叡智(グノーシス)》は君でもどうにもできないほどに優れた薬なのだ。だから精々足掻くといい。彼らを始末した後は君すらも僕は返り討ちにしてみせよう。

 

 

 

 

 

 ──こんばんは! アーヤ・サイードです! 絶賛春のパン祭り中! ベーカリー《モルジュ》で購入したパンをグノーシス服用者に無料でプレゼント! 白いお皿は上げられないけど、あんまりしつこいとバゲットで成敗するぞ! 

 

 ……とまあそういうことで何が起こってるかと言うと変態幹部司祭ヨアヒムが遂に動き出した。前々からわかっていたこととはいえちょっとだけ申し訳ないよね。私がさっさとぶっ殺してればこんなことにはなってないわけだし。まあ死人や重傷者は私たちが出した相手以外は出てないからいいけど。やったのもマフィアくらいだし。

 というか怒涛の1日だった。黒月襲撃したらキマってるルバーチェや熊さんがやってきて今代の《(イン)》ことリーシャちゃんと戦って、面倒だから一旦撤退して気がついたらメルキオルもエンペラーもいないし、今朝になってデュバリィちゃんが帰ってきたから一緒に買ってきた大量のパンを食べて教団が動き出したっぽいことを話して色々と今のうちに準備(主にパンを買い足したり)して……。

 そしてなんやかんやしてるうちに次の日の夜にはもう襲撃を受けてね。なんか私の家にもやってきたから大量のパンを持って迎撃した。殺すのが楽だけどさすがに操られてる警備隊をやっちゃうのはよくないからね。そして私を材料に使ったグノーシスならパンで解除できるからパンを使って次々に気絶させた。デュバリィちゃんはそれを聞いた時真顔だった。

 ただ逆に蒼とか紅のグノーシスの場合はパンで解除できないから面倒だったよね。その場合は普通に倒したんだけど……そんな中でもクマさんは中々厄介なんだよねぇ……殺すのも中々難しい上に解除も難しい。出来なくはないかもだけど怖いしちょっと苦戦中。だからもういっそ後回しにして逃げていたら──そこにはキーアちゃんに《風の剣聖》の娘さんであるシズクちゃんを連れた特務支援課が! 助けなきゃ! ってことで普通に操られてる警備隊をデュバリィちゃんと一緒にボコし、再びクマさんが出てきたので逃げ……でもかといってIBCビルとかに行くわけにも行かないんだよね。というか気まずい。なんか特務支援課の皆も色々と知っちゃった風だし……やっぱり推理したんだろうね。よくよく思い返してみるとヨアヒムの研究室ってなんか教団の情報が載ったファイルとかがあった気がするし……そこに私の情報とか書かれてたら普通にバレそう。まあいいけどね。それは仕方ないから割り切るとしても根掘り葉掘り取り調べを受けるのは嫌だし、クロイス家の2人とは裏で繋がってる者同士でちょっと面倒。なんならアリオスもいるし……もし私を捕らえるってなったらどうするつもりなんだろう。というかあの人よく普通に頼れる味方ポジションでいられるよね。結構特務支援課に色んなことを教えてた覚えがあるけど、黒幕と繋がってることを思うとどの口が言うんだってなることも……まあそれを言い出したら私もヤバいんで黒幕仲間としてもし責められたら擁護してあげよう。

 

 とまあそういうことなので私とデュバリィちゃんはクマさんを振り切って一足先にアルモリカ古戦場へ。そこに教団のロッジである《太陽の砦》があるのだ。私は古戦場から逃げないぞ! ヨアヒムは私がぶっ殺すんだからな! 

 

「それじゃ中に入ろうかデュバリィちゃん」

 

「ええ。──! ちょっと待ちなさい。誰か来ますわ」

 

「ん? ──あ、エステルちゃんにヨシュアくんに特務支援課」

 

 そしていざ零のラストダンジョンへ行くぞと意気込んだところ、普通に人がやってきたので私とデュバリィは隠れる。砦の方からはエステルちゃんにヨシュアくん。古戦場に車でやってきたのはロイドくんたち特務支援課。

 あー……そりゃ追いつくよね。向こうは車だし。私やデュバリィちゃんの足が速いといってもさすがに車を使われたら追いつくのは……いやまあ短距離なら絶対に無理ってほどでもないけど常に全速力で走るわけじゃないからそりゃ追いつかれる。

 そして聞き耳を立ててるとやっぱり6人で突入するみたいだった。あー……ちょっと遅かったかな。ぶっちゃけいざとなったら砦にオジサン特製BC兵器でも使って確実にやりに行こうと思ったんだけど。どうせ中にいるのってマフィアとかアーネストとかヨアヒムくらいでしょ? なら全員やっても問題ないし、その方が楽かと思ったんだけど特務支援課にエステルちゃんとヨシュアくんが突入するならその手段は使えないね。

 

「どうやら彼らも突入するようですわね。どうしますの?」

 

「そうだねー。それじゃこっそりついて行こっか。ヨシュアくんもいるから結構距離を取ってね。仕掛けとか解除してくれたり魔獣とか倒してくれるならその方が楽だし」

 

「……そうですわね。少々姑息ではありますが、露払いをしてくれるのなら我々も体力を温存出来ますし」

 

「ずっと戦いっぱなしでここまで走ってきてちょっと疲れたもんね。──それじゃお夜食でも食べよっか! はいこれ! デュバリィちゃんの分!」

 

「用意がいいですわね……しかしまあ、疲れているのは事実ですし頂きますわ」

 

「召し上がれ! 私もいただきまーす! ──はむっ。う~ん! さすが私! 激辛麻婆豆腐弁当最高~♪」

 

「…………あなた、確か嵌っている食べ物が薬物の解毒薬になると仰っていましたわよね?」

 

「うん。そうだよ。だからこうしてパンを持ってきて──あ」

 

 あれ……? もしかして……? 

 今私麻婆豆腐食べちゃったけど……。

 

「…………いやいやいや。ただ食べただけだからね。別に嵌ってないし、これだけで変わったりしないよ」

 

「そ、そうですわよね。ただ食べただけで切り替わるなら……それもオカルトすぎて理解に苦しみますけれど……そんなはずありませんわよね」

 

「そうそう! ないない! ──あ、ロイドくんたちが魔獣を倒して先に進むよ! 私たちも追いかけよう!」

 

「ええ、そうしましょう」

 

 私とデュバリィちゃんは弁当を一旦しまってロイドくんたちの後をつける。道中はやっぱり操られて魔人化したマフィアと戦ったり、教団の情報を閲覧したり、捕まってる人を助けたり……って捕まってる人いたの!? 危な……BC兵器使ってたら大変なことになってたよ……使わなくて良かったー。

 そしてアーネストとかいうキマってる元秘書とも戦ったりしてた。しかも結構強い感じ。やっぱりグノーシスってヤバいよね。私はなぜか効かないけど。そもそも魔人化ってどういうこと? マクバーンじゃあるまいし人間が変身するのおかしいよね。

 

 ──と、そんなことを考えているうちに特務支援課と遊撃士2人はどんどん先に進んでいく。さすが主人公。攻略がスムーズだ。この調子ならもうそろそろヨアヒムの元まで辿りつくんじゃないかな……って。

 

「ガルシア・ロッシ……!」

 

「フン……ここに居たかよ」

 

 あ、やばい。クマさんも戻ってきてるじゃん。

 原作と違って更に強くなってるっぽいクマさんに特務支援課勝てる? エステルちゃんとヨシュアくんがいるとはいえ結構キツくない? 

 

「元《西風の旅団》部隊長にして《ルバーチェ商会》の若頭……戦闘力は折り紙つきだろう」

 

「グ……グオオオオオ!!!」

 

「! ──魔人化……! この人まで……!」

 

「チッ……薬に操られちまうとは、キリングベアの名が泣くぜ……! こいつは全力で……《闘神の息子》としての力を存分に振るう必要がありそうだな……!」

 

「ガアアアアアアッ!!!」

 

 そうして魔人化したガルシア・ロッシ──黄金の毛並みを持つ巨大な熊男のような見た目になったガルシアが特務支援課とエステルちゃんとヨシュアくんに襲いかかる。

 グノーシスで強化されてるからシンプルに速いし強いし硬いしで面倒な相手だ。おまけに傷を負っても徐々に回復してしまう。……化け物かな? これどうやって勝つの? 隙を見てハニートーストでも口にぶち込むしかないんじゃない? 

 

「ガルシアかぁ……これはキツそうだし、いざとなったら隙を見て口にハニートーストでも押し込もうかな」

 

「……ならわたくしがやりますわ」

 

「え、いいの?」

 

「わたくしの方が速いですから。わたくしがやった方が確実にやれますわ」

 

「そっか。それじゃハニートーストと……一応蜂蜜も渡しておくね」

 

「ええ。……それと一応、さっきあなたが食べていた弁当も渡しておいてください」

 

「あ、うん。一応ね、一応……まさかそんなことはないとは思うけど」

 

「え、ええ。そんなことはないはずですわ。……正直もう既に嫌な予感がしますが……」

 

 そう言われると私もそんな気がしてきたけど……いやさすがにないでしょ! そんな急に切り替わるなんて……幾ら私とリンク? してるからってさ。確かに今日の麻婆豆腐はクロスベルで手に入れたレシピを使って作ったもので今まで作ったものの中でも傑作だったけど……激辛麻婆豆腐《朱雀》ってところかな。確かにめちゃくちゃ美味しく出来たし明日もまた食べたいし、なんなら材料も揃ってるから今すぐ作って食べたいくらいだけど別に嵌ってはないから、多分大丈夫だと思う──

 

「くっ……やったか!?」

 

「いや……まだだ……!」

 

「グオオオオオオ!!!」

 

「傷が回復している……!」

 

「そんなのあり!?」

 

「これでは幾ら戦っても……!」

 

「こんなのどうすれば……!」

 

「──フン。まあ及第点と言ったところですわね」

 

「!」

 

 ──そしてある程度ダメージを与えてガルシアに膝を突かせた特務支援課だが、与えた傷が治っていく魔人化ガルシアを前に動揺している。

 だけどそんなところでその名の通り《神速》で現れたのはデュバリィちゃんだ! デュバリィは隙を突いてガルシアに剣で攻撃し、仰け反らせた後──すぐに手持ちの蜂蜜を更に増量したハニートーストを口の中に入れる。

 

「あ、あなたは……! デュバリィさん……!?」

 

「どうして……いや、それよりも今食べさせたのは……」

 

「──この方の服用している薬物は普通のものではありませんわ。治療しない限りいつまでも戦い続ける……ですからそれを治すための特効薬を口に放り込んだんです」

 

 ──おお! さすがデュバリィちゃん! 物は言いようだ! どう見てもパンにしか見えなかったけどそう言われればそう思うよね! それを聞いたロイドくんたちも、「そんなものが……」と驚いてる。「ならこれでガルシアのオッサンも……」とランディくんも少し安堵している様子で──

 

「──マ……」

 

「……あ……」

 

 ──そこで不意に動きを止めていたガルシアが天を仰ぐ。そして魔人化したまま、雄叫びを上げた。血に飢えた熊のように。

 

「──マァァァァボォォォォォ!!!」

 

「や……やっぱり違いましたわ──!!?」

 

「え、ええ!!?」

 

「違うってどういうことだよ!?」

 

「というかなんか麻婆って言ってませんか……?」

 

「ええ、不思議ね……私もそう聞こえるわ……」

 

「──どうやら彼は麻婆豆腐を欲しがっているようだ。おそらくそれが薬の解除に必要なものなのかもしれない」

 

「ヨシュア? 理解が早くて助かるけどその理解は早すぎない? それとこのノリはなんか既視感があるんだけど……」

 

「くっ……やはり正解はこっちでしたか……! なら改めてこれを口にぶち込んでやるだけですわ!!」

 

 ……………………うん。なんか違ったね? 

 私は再び暴れ出すガルシアと戦闘を開始するデュバリィちゃんを見て現実逃避をする。そっかぁ……そんなすぐに変わるんだね。なんて面倒なんだ……ヨアヒムってやっぱり頭おかしいよ。そんな頭おかしい薬作るなんて……そのせいでせっかくのデュバリィちゃんのかっこいいシーンが台無しだよ。

 でも仕方ない。こうなったら私も麻婆豆腐を作ってサポートしよう。大丈夫。材料も調理器具もある。デュバリィちゃんはロイドくんたちに「ここはわたくしに任せて先に行きなさい!」って麻婆弁当片手にかっこよく決めてるし、私も頑張らないとね! ロイドくんたちと会うとなんか聞かれそうで面倒とか言ってる場合じゃない! 10分クッキングだ! それを終えてから──

 

「デュバリィちゃん! すぐ戻って来るから少しの間足止め頼んだよ! ──あ、ここに麻婆豆腐置いとくね!」

 

「はあっ!? いやちょっとは手伝って──」

 

「ヨアヒムやった方が多分早いから! デュバリィちゃんなら持ち堪えられると信じてるよ!」

 

「っ……! 仕方ありませんわね……! それならさっさと行ってきなさい! ──まあ戻って来るより前に倒してしまうかもしれませんが!」

 

「うんっ! ありがとう!」

 

 ──そして私はものすごいフラグを立てるデュバリィちゃんにこの場を任せるとロイドくんたちを追いかけ急いで最奥の祭壇へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──《太陽の砦》の最奥に辿り着いた私たちはそこでキーアちゃんの写真に写っていた祭壇を発見した。

 

「──ようこそ。我らの起源にして聖地へ。特務支援課の諸君、そして遊撃士協会のお客人……歓迎させてもらうよ」

 

「っ……」

 

「……あなたは……」

 

「随分と余裕じゃねぇか……」

 

「……………………」

 

 そしてその祭壇から現れたのは《D∴G教団》幹部司祭にして一連の事件の黒幕であるヨアヒム・ギュンターだった。

 彼が現れたことで私たちは警戒を強くすると同時に、ロイドから要求を口にした。

 

「──ヨアヒム・ギュンター。単刀直入に行かせてもらう。《グノーシス》を投与して操っている人々を今すぐ解放しろ。どんな方法かは知らないが……あんたが操ってるのは判っている」

 

「ああ、別に構わないよ」

 

「え……」

 

「IBCビルでも言っただろう──キーア様を引き渡せばいくらでも手を引こうと」

 

「ふ、ふざけるな……!」

 

「まだそんな世迷言を……!」

 

「てめぇ……喧嘩売ってんのか?」

 

「……最低の犯罪者ですね」

 

 だけどヨアヒムはそんなふざけた提案を私たちに告げた上で、呆れた様子を見せた。

 そして私たちは遺憾ではあるものの、彼からキーアちゃんについての話を遂に聞くことができると──

 

「やれやれ……これでは話にならな──」

 

「──話をする必要もないよ」

 

「!? な──ガハッ……!」

 

「え……」

 

 ──だがヨアヒムが呆れながら言葉を口にしようとした瞬間……どこからともなく現れたその刃が、ヨアヒムに突き刺さった。

 そしてそれを行ったのは──

 

「ふー……よし! 勝った! 第三部完!」

 

「なっ……!?」

 

「あなたは……!」

 

「──アーヤさん……!」

 

「アーヤ!」

 

「あ、やっほやっほー。ロイドくんたちさっきぶりー。エステルちゃんたちも久し振りー。元気だった? ヨアヒムくんの注意引いてくれてありがとねー。

 

──おかげで無事に殺すことができたよ!」

 

 ──《切り裂き魔》の正体と思われるファッション・デザイナー……あの写真のように満面の笑みを浮かべる……アーヤさんだった。

 




今回はここまで。ヨアヒムくんが死にました! これでハッピーエンドだな! 零の軌跡完! ちなみに別ルートでもアーヤちゃんの奇襲はほぼ回避できませんし、回避した場合はアーヤちゃんが来ないルートなので特務支援課は全滅します。
次回予告「ヨアヒムがまごころ込めて作ったグノーシスからメルヘンチックに復活したヨアヒムだが、それはアーヤちゃんになっていた」
こんな感じでお願いします。それでは次回をお楽しみに。

感想、評価、良ければよろしくお願いします。
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