──こんにちは、アーヤ・サイードです。最近髪を切ってミディアムショートボブにしてみました。毛先を切りそろえて全体的に丸っこい印象。前髪を少しだけぱっつん。まだまだロリなので可愛さ重視のコーディネートです。
将来の夢は服飾関係のお仕事か農業関係の仕事につくことで、理想はデザイナーと園芸家のどちらか。そして華々しく働いた後は田舎に別荘でも建てていずれはのんびりとした生活を送ることが目標です。長所や趣味に沿った仕事をすることは幸福への近道だと私は思ってるので。
反対に自分に向いてない仕事をするのはあんまりよくないかなって私は思う。まあ仕事は仕事なのでいざやるとなったら諦めはつくけど、出来れば自分の好きなことをやった方がいいというのが私の持論です。
──だから私が暗殺者をしているのはなにかの間違いなはずだ。
いやまあ私が暗殺の天才とかなら百歩譲ってそれでもいいし、立派な暗殺者になって幸せになれそうならそれを受け入れても良いんだけど、生憎と今はそうじゃないから普通に困ってるし面倒くさいことこの上ない。
だからさっさとやめるか暗殺スキルを学ぶかの二択を早急に選ばないといけないんだけど前者は選べそうにないので仕方なく後者を選んでます。なので、私は今日も訓練に励む。
ただ完全に嫌々というわけでもなくて。その理由はゼムリア大陸だと戦闘は必須スキル──というわけでもないけど、いつ何時危険に陥るか分からないので戦えるに越したことはないよねってことだ。そもそも現在進行形で危険な環境に身を置いてるから強くならないと死ぬんじゃ。だから励むしかない。そしてその私の修行に付き合ってくれるのが今度こそ私の癒やしである人物だ。
「──さあ、今日も特訓しよう、クルーガーちゃん!」
「……なぜそのようなことを私がしなければならないのですか?」
「私がクルーガーちゃんと特訓したいからね!」
「そのような理由であればお断り致します」
「ええー。じゃあレティ姉さん頼んでー。お願ーい」
「しゃーないなぁ。今は旦さんもおらへんし……クルーガー。ちょっとだけ付き合ってあげるのもええんやない?」
「……了解致しました。これより訓練を開始します」
「わーい。ありがとうクルーガーちゃん。レティ姉さんも」
まず1人は常に死んだ目をした美少女ロリアサシン! シャロン……じゃなくて、《死線》のクルーガーちゃん!
とっても可愛いんだけど今はまだ感情のない殺人マシーンだね。メイド服も着てない。アサシンらしい機能性の高い薄着を身につけてる。まあそれはそれで可愛いけど。私より3つ年上のお姉さんだ。13歳で《月光木馬團》で2番目に強い使い手とかいうクソ強少女。そして糸使いであり戦闘では鋼糸と短剣を用いて戦う。私の訓練を手伝ってくれる1人だ。
……まあ組織の上の命令しか聞かないから自主的には絶対に手伝ってくれないけどね。今もレティ姉さんに言われたからやっと鋼糸と短剣を取り出して向き合ってくれた。歳も近いし可愛いし良い子なのは分かってるから積極的に絡みにいってるんだけどいつまで経っても素っ気ない。友人としてよく贈り物もしてるんだけどあんまり効果ないんだよねぇ……ま、でも感情取り戻すまで我慢か。今は私どころか誰に対してもこんな感じだし。確か後から名前を与えられるはずだから、その時にはきっとお友達になってくれるはず!
「では行きます──お覚悟を」
「あっ、でもちょっとは手加減して……あーっ! 困ります困りますお客様! 糸が絡んで……! あーっ!」
「……私はお客様ではありません」
──だけど今は色々と容赦がない! 糸を使って割と殺意高めの攻撃を容赦なくしてくる有様! それにあっさりと捕まって肌に切り傷を作る私! 頑張ってこっちも糸を飛ばしてみるも当然練度が違うので当たらない! そして気づけば簀巻きにされる私! 気付けないくらいの溜息と共に呆れられて解放される私! そしてまたしても糸を使って割と殺意高めな攻撃を……! (これを何回も繰り返す)
と、訓練は大体こんな感じだ。私も毎日毎日訓練してそこそこは慣れてきたし糸の扱いならお裁縫でも慣れてるんだけどさすがに糸メインで戦うと全く敵わない。まあクルーガーちゃんはそれこそ物心つく頃から《死線》を継ぐために訓練してきたみたいだし。
一応糸をメインにしなければ勝てないにしろ訓練も形にはなるんだけどオジサンからクルーガーちゃんと訓練する時は糸を習った方がいいだろうと至極真っ当な正論を言われているためそうするしかない。
「……そろそろ終わりでいいでしょう」
「お疲れ様~……はぁ、今日もめちゃくちゃ糸で切られちゃったなぁ……痛てて……」
「…………」
──なので私は今日もクルーガーちゃんに散々簀巻きにされて転がされて訓練を終えるのだ。沢山の傷を作って痛がる私をクルーガーちゃんが眉間に皺を少しだけ寄せて無感情に見下ろしてくるけど結局は何もされない。なんかこう……なんかない? すっと手を差し伸べてきながら「成長しましたね」と褒めてくれる展開とか激アツだと思うんだけど……いつまで待ってもそんな展開は来ない。そこになければありませんねって感じだ。ロリ同士の友情ルート欲しいなぁ。
「──お疲れ様やねぇ。今日も仰山傷負ってはったみたいやけど大丈夫なん?」
「あ、レティ姉さん。もちろん大丈夫ですよー! えへへー」
「うふふ、相変わらずめんこいのに丈夫な子やねぇ。ほんなら平気そうやし始めよか?」
「はーい! よろしくお願いしまーす!」
「死なへん程度に頑張ってなぁ。──まあそう簡単には死なへんやろけど」
──と、そうこう思考している内に次の訓練相手にして私の癒やし2人目! 《黄金蝶》ルクレツィア・イスレことレティ姉さんが勝負をしかけてきた!
クルーガーちゃんもヤバいけどレティ姉さんはそれ以上にヤバい。こっちも年齢はまだ16歳なのに既に《月光木馬團》随一の使い手という化け物オブ化け物だ。刃物の扱いは天才的で見ていて惚れ惚れするくらい。後、蝶が綺麗。原理がよく分からないけど綺麗だし強いしなんだっていいよね!
だがそんな強さよりも私にとってはその美貌と優しさが重要だ。強さは頭おかしいくらいだけどこれで闇の住人にしては割と優しい。というか普通に可愛いものとか好きで情もある方だから可愛い子供の私をかなり可愛がってくれる。出会う度に撫でてくれるし、抱きしめてきたり、膝に乗せて可愛がったりおやつとか物を貰ったりとまさに猫可愛がりだ。私だけじゃなくてクルーガーちゃんにもそんな感じで。だけどクルーガーちゃんとか他の子はちょっぴり嫌がってる。可愛がりすぎって感じで。あと香水が好きで匂いが甘ったるいのが蠱惑的で16歳にして色気を漂わせてる。それで魅力はあるけど分かる人間なら危険な感じがプンプンするから手を出したり親密になろうとはしないとはオジサンの談。
まあ私もそれは分かるけど私はあまり気にならない。だって汚いおっさんに可愛がられるよりは全然マシだし。じょりじょりのヒゲを擦り付けられ弛んだ身体に組み伏せられて臭い匂いを嗅がせられるのに比べたらレティ姉さんのすべすべで柔らかくて温かい甘い匂いがする身体に抱きしめられようが撫でられようが全然気持ちよさしか感じないのだ。私が普通に喜ぶ物とかも結構買い与えてくれるし、何より話も通じるから私は懐いてる。オジサンとは大違いだ。オジサンの場合は連れて行く場所は大体犯罪の現場だし与えてくれる物も結構な確率で物騒なものだったりするし何より毒ガスは臭いとかそういう次元の問題じゃない。というかいい加減BC兵器を私で実験するのはやめろ! 実験しなくてもどれくらい効果があるかなんて分かってるくせに! あれは絶対面白がってやってるだけだ。くそう、いつか仕返ししてやる……。
「今日はこの辺でお開きにしよかぁ」
「うぐぐ……やっと終わったぁ……」
──と、まあそれはそれとして、オジサンよりは圧倒的に接しやすいレティ姉さんと訓練という名の可愛がりをされてしばらく。身体の色んなところに赤い線を作りながらも生き残った私は気を抜いてその場にへたり込んだ。
「お疲れ様やねぇ。今日も仰山切ってしもうたし、痛かったやろ?」
「い、いやぁ……それほどでもあるようなないような……」
訓練が終わって声を掛けてくるレティ姉さんに私は曖昧な返答をする。実際痛いは痛いけどこれくらいならまだ許容範囲だ。なんだかんだレティ姉さんは殺さないようにしてくれてるし腕とか足を落とさないように、致命傷を与えないように気を使ってくれているっぽいしね。それが分かるから痛いは痛いけどあんまり怖くないし平気だ。
「ほんまに? でもそれなりに疲れたんと違う? 汗も流さなあかんしクルーガーも誘って一緒にお風呂にでもいかへん?」
「行きます! 行きましょう!」
そしてレティ姉さんからの訓練終わりのお風呂のお誘いが来たので私はしゅたっと元気よく立ち上がる。わーい。レティ姉さんとクルーガーちゃんとお風呂だ。みんなですべすべの肌の洗いっこが出来る! そうと決まればレティ姉さんと一緒にクルーガーちゃんを誘いに行って──
「──よう、レティ。アーヤ。ちょうど訓練が終わったところみたいだな」
──空気読め。今は《破戒》のオジサンはお呼びじゃないんですけど! 今はというかいつもお呼びじゃないけどね!
「あら旦さん。帰ってきはったん?」
「ようやく仕込みが終わったんでなぁ」
「それはご苦労さまやねぇ。ということは……そろそろ始まるん?」
「ああ。今日はそれをお前たちにも改めて伝えとこうと思ってな」
「え? なんの話?」
レティ姉さんはオジサンが何をしてきたか理解しているみたいだが私はよく分からず疑問符を頭に浮かべる。
するとオジサンは葉巻の煙を吐き出し、そして無駄に良い声と悪い笑みで告げた。
「前にも話しただろう。──
あっ……(察し)。なら私の出番はないですね。ということで私はお暇させていただこう。ゆっくりと私は後退るが、それを引き止めるようにオジサンが軽い調子で咎めてきた。
「おいおい、逃げるんじゃねぇよ。まだ何をしろとも言ってねぇだろうが」
「これから絶対言うじゃん!」
「信用あるねぇ。だが分かんねぇだろ。俺だってたまには逆の逆を突くことだってあるんだぜ? そういうのもまた《破戒》ってヤツだからなぁ」
「え……じゃあもしかして……命令なし? 何もないってこと?」
私はその予想外のオジサンの言葉に期待する。もしかして……やっぱり戦わなくていいってこと!?
「そりゃあもちろん──あるんだけどな」
「結局あるんじゃん!!」
──そんなわけなかった。勿体ぶって期待させておいて裏切られる。またからかったな!?
「ほんにしょうのない人やねぇ。旦さん、あんまりアーヤを虐めたらあかんよ? 虐めすぎて家出でもしはったらどうするつもりなん?」
「そうだそうだー! レティ姉さんの言う通りだー!」
レティ姉さん……! やっぱり私の味方はレティ姉さんとクルーガーちゃんだけだ。私は感動しつつレティ姉さんの横で野次を飛ばす。
「おいおい、人聞きが悪いこと言うんじゃねえよレティ。こいつはただのじゃれ合いだ。虐めてなんかねえさ。なあ、アーヤ?」
「嘘つくなー! 虐めてるだろー!」
「──ま、それはともかくだ。近い内にアジトに《蛇》の連中が攻めてくるから若いモンは張り切って迎撃頼むぜ」
「置いとくなー!」
私の野次を無視してオジサンはその重要事項を伝えてくる。私は更に抗議はしたがこれ以上何を言っても聞いてくれる気がしないので悔しいが黙ることにする。
それに私としても結社──《身喰らう蛇》のことは色々と聞いておきたい。
何しろこの世界に幾つもある闇の組織の中で最重要とも言える組織だし。
「結社《身喰らう蛇》なぁ。まだ立ち上げからそれほど経ってないって話やけど、それにしてはええ評判をよう聞くなぁ」
「新興勢力なのは間違いねえがな。だがそれにしちゃあ……かなり闇の深い面白そうな組織みたいだぜ?」
「そやなぁ。《劫炎》やら《剣帝》やら《鋼》やら、結構な強者が揃ってはるようやし、やり合うとなると相当愉しい見世物になりそうやねぇ」
《破戒》のオジサンとレティ姉さんの話を耳にしながら私も《身喰らう蛇》について考える。闇の組織の中じゃ新興勢力だけどかなり未知数でヤバい組織っぽいというのは共通認識のようで……いや、オジサンとかレティ姉さんの見立てがすごいだけかも? 正直今の結社がどのくらいの認知度でどれくらいの組織なのかとかよく知らない。なんなら誰がいて誰がいないとかもよく分からない。だって知らないし。頭の中にウィ◯ペディアが欲しい。細かい時系列とか知ってるわけないんだよなぁ……だから2人が色々話してくれるのはありがたい。情報は生き残るために必要不可欠だ。
一先ずは今聞いた3人の情報でも聞きたいけど……《劫炎》に《剣帝》に《鋼》って……やっぱその最強軍団は既にいるのね……まあそりゃそうかぁ……うーん……。
「……やっぱ私だけ隠れてていい?」
「おう、オジサンに任せとけ。当日はちゃんとギリギリ、お前でも生き残れるくらいの持ち場を用意してやるからよ」
「鬼! 悪魔! 破戒!」
「ククク、そんなに褒めても何も出ないぜ?」
クソ! やっぱりダメだった! 悪口も通じない! というかこのオジサン、結社が攻めてくる日にちとかどう攻めてくるかとかもまさか読んでるのか……やっぱり化け物すぎるよオジサン。頭が良すぎる。その能力だけは信用出来るんだけど……。
「もうダメだ……今度こそ死んだ……」
「……貴方程丈夫なら多少やられたくらいでは死なないのでは?」
「そんなの分かんないじゃん! そりゃクルーガーちゃんくらい強かったら返り討ちに出来るかもだけど私まだ弱いんだから!」
「アーヤ姉さんがまた可笑しく苦しむ姿が見れそうで僕も嬉しいよ」
「うるさいメルキオル! 人の不幸を笑うな!」
いつの間にかクルーガーちゃんやメルキオルまでその場にいて絶望して膝を突く私に無責任な言葉を掛けてきていた。お気楽な強者連中はこれだから……。
「そんなに気落ちしなくてもええんやない?」
「レティ姉さん……」
「危なそうなのはウチが相手するやろし、余裕が出来たら適当にフォローするからそんな落ち込まんと。あんまり後ろ向きやとほんまに死んでしまうかもしれへんよ?」
レティ姉さんにそう声を掛けられれば確かにそうかもしれないと希望が湧いてくる。そうだ。あんまり後ろ向きなのはよくない! そしてレティ姉さんがフォローしてくれるなら百人力だ!
それに危ない人も多分3人だけだとして……《劫炎》と《剣帝》と《鋼》なら3分の2で多分許してくれるだろう。《剣帝》と《鋼》のお姉様は割といい人だしね!
それに《劫炎》ことぜんぶさんも割と良識人だった覚えがあるし、すぐに降参でもすればきっと許してくれるはず! あの焔ってかなりヤバかったはずだから食らったらさすがの私でも死にそうだけどぜんぶさんは子供をいきなり燃やすような人じゃないはず!
──うん。なんか大丈夫な気がしてきた。モブの強化猟兵相手はなんとかして名有りのヤバい人達と出くわしたら投降しよう! 幾ら《破戒》オジサンでもそこと戦わせるような計算はしてないはずだし!
「──よし! なんとかなる! いや、なんとかする!」
「あらまあ、なんや急にやる気が出たみたいやねぇ」
「ええ! レティ姉さん! 私はやってやりますよ! 《身喰らう蛇》相手でも生き残ってみせます!」
「──ま、実際よっぽどのことがなけりゃ死ぬことはねえだろう。だから今回も頑張って死地を乗り越えてみな」
「なんかめちゃくちゃ矛盾してる言葉を掛けられてる気がするけどやってやりますよ!」
──後はその日まで頑張って強くなって生き残る確率を上げるのみだ! よーし、頑張るぞー! おー!
──七耀暦1194年。
旦さんが言ってた日にちに、ほんまに結社は攻めて来はった。相変わらずあの人は味方ながらおっかない人やねぇ。
せやからウチらは予定通り結社を迎撃しとるけど……なんや意外と歯ごたえないなぁ。これならアーヤを態々隠し通路に配置せんでも良かったんやない?
「──女か」
「へぇ……これはえらい男前が来はったなぁ」
──そう思ったんやけど銀色の髪をしたえらい男前の剣士と対峙して、やっぱりこの場におらんで良かったと思ってしもたわ。
「あんさんが《剣帝》はん? 確かに噂通りの達人みたいやねぇ」
「ああ。お前こそ、かなりの使い手のようだな」
何しろこの場におったら守りきれるか分からんしねぇ。
それにウチとしてもせっかくの愉しみやから思う存分愉しませて貰わんとなぁ。
──ただウチでこの分やと多分團は終わりやなぁ。ダメ元で聞いてみよか。
「新興組織や言うから甘く見とったけどほんま、随分な戦力やなぁ。あんさんみたいな達人が少なくとも後2人もおるんやろ?」
「……《鋼》に《劫炎》のことならどちらも俺以上の強者だ。もし味方が生き残れるかもしれないと希望を抱いているなら、その希望は捨てた方が賢明だぞ」
あらまあ、読まれてしもたわ。これはあかんなぁ。ウチはともかく、組織の方は本格的に終わりみたいやねぇ。
──ま、組織が詰んでも旦さんのことやから何か生き残りの算段でもついとるんやろうけど。ウチや旦さん。クルーガーは問題なさそうやし、アーヤもこの分なら生き残れそうやねぇ。
なにせウチが手加減しとるとはいえ、
「隠し通路についても調べはついている。だからもしそちらから逃げようとしている者がいたとしても、そこに《劫炎》がいる以上逃れられる道理はない」
──なんであの子、すぐ貧乏くじ引いてしまうん? 呪われとるんやろか?
今回はこんなところで。というわけでVS身喰らう蛇です。次回は最初のボス戦です。最初のボス戦だし、そんなに強くないんやろなぁ……なのですぐ終わります。お楽しみに。
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