──アーヤ教官は結局のところどういう人なのかよくわからないのよね。
9月に入ってから私が通うトールズ士官学院では来月に行われる学院祭の実施が通達され、生徒たちはその学院祭で何を行うかの話で持ち切りだった。
私たちⅦ組でもクラスでどんな出し物をするかの話し合いが持たれたけど一度では決まらず……それぞれが一度案を考えて後日また相談することになった。
それから次の日。自由行動日の夕方にはリィンが去年、トワ先輩やクロウたちが行ったステージの記録結晶を持ってきてまたその次の日には皆でそれを見てⅦ組は音楽のステージを行うことになった。
その際に演奏や歌唱、演出についてはエリオットを中心に調整することになったんだけど……ステージ衣装についてはクロウが調子良く任せてくれと言った直後。
「──話は聞かせてもらった! 衣装なら私に任せろー!」
「あ、アーヤ教官?」
バン、と教室の扉を開けて勢いよく入ってきたのはアーヤ教官だった。どうやらこっそり聞き耳を立てていたみたいで私たちはちょっと面食らったけれど、衣装をアーヤ教官が用意するという申し出はかなりありがたいことだった。
というのも恐らく……いや、多分だけどアーヤ教官はあのサイード社のメインデザイナーなのではないかという噂が私たちの中で密かに持ち上がっていたから。サイード社は共和国に本社を置く高級ファッションブランドで最近は帝国内でも支店が出来たり、貴族でもサイードの高級仕立服を着ることも多い。私やユーシスも知ってたし、よくよく考えたら隠す気がないというか……デザイナーの名前も同じだし、普段から服飾について明るい部分を見せているから絶対そうだと思ってるんだけど、アーヤ教官に聞いたら「ど、どうかなー? そうかもしれないしそうじゃないかもしれないんじゃないかなー……」って、かなり白々しく目を逸らしながら誤魔化していたから99%間違いないと思う。これで本当に諜報員なんてやっていけてるのかしら……って不思議に思うけど、これで隠密行動に関しては超人的なのよね……実力に関してもサラ教官を超える強さみたいだし、本当にこの人は謎が多い。ステージ衣装に関してもアーヤ教官が言うには。
「皆で自主的に決めてほしかったからあえて言い出さなかったけど先生も学生時代にステージの経験あるし、衣装も作ったこといっぱいあるんだよね!」
「そうなんですか?」
「アーヤ教官の学生時代はどんなことを?」
「いっぱいやったよ。えーと、舞台劇でしょ? 音楽ライブでしょ? 自作の衣装を売るお店もやって焼きそばの屋台もやったし、バスケットボールのイベントにも参加して、劇とライブの衣装も全部私が担当して……後はそれから──」
「ってやりすぎだろ!」
「そ、それだけのことを全部こなしたんですか?」
「もちろん友達とかに手伝ってもらったりしたし、私は主に衣装制作担当だったけどね! でもライブは私もステージに立ったし、教えられることならいっぱいあるよ! 今でも私の友達が音楽の道に進んでロックな音楽やってるからその衣装を作ったりすることもあるしね」
「へー……なんかすごいね!」
「学生時代からこの感じだったのかと呆れてしまうがな……」
「デザイナー業についても隠す気はないようだな」
「あ、あはは……でも確かにそれなら衣装制作や他のことについても良いアドバイスをしてもらえそうですね」
「あー……そうだな。一応衣装製作は帝都の適当なブティックにでも頼もうかと思ってたんだが──」
「サイードショップは帝都ヘイムダル支店もあるよ! 私とは何ら関係ないけどね!」
「……ま、確かに近場でより良い衣装が用意出来るならその方がいいか」
アーヤ教官の隠す気がない発言や学生時代のヤバそうなエピソードに皆で呆れながらも衣装に関してはアーヤ教官にお願いすることになった。
そして後日──私たちは毎月恒例の実技テストを行い、サラ教官と戦うことになったんだけど……その際にはアーヤ教官とは戦うことはなかった。サラ教官がその理由を「……悔しいけどあの女の実力はあたしよりも上で今のあなたたちじゃまだ乗り越えられそうにないのよ」とそう言っていた。その時はちょうどアーヤ教官は別の用事か何かでその場にはいなかったし、おそらくそれはサラ教官の本音だと思う。
ただその反応にやっぱり私は気になってしまう。というのもサラ教官とアーヤ教官はどうやら知り合いみたいな、過去のことで何かがあったみたいな反応を見せてるみたいだけど……それはもう1人の私の知人も同じだから。
「──さあアリサちゃん! 衣装制作のためには何が必要かわかるよね! そう、採寸だよ! ということで身体の色んなところのサイズを図るから服を脱いで──」
「──お嬢様に何をしているんですか?」
「ウッ゛!?」
──実技テストを終えて次の特別実習の行き先がカイエン公のお膝元であるオルディスと私の実家もあるルーレに決まって少し複雑な気持ちになった放課後。アーヤ教官が私の元にやってきてそう言うと、どこからともなくシャロンが現れてアーヤ教官に腹パンをお見舞いしていた。
その突然の暴力に私は面食らうも、アーヤ教官は効いた様子もなくすぐに騒ぎ出す。
「ちょ、ちょっとクルーガーちゃん! 私は衣装製作担当として至極当然のことを言ってるだけでそこに断じて邪な気持ちはないよ!」
「採寸に関してはわたくしがデータを提供致しますので必要ありません。そのくらいのことは理解していると思っていたのですが、違いますか?」
「で、でも成長してるかもしれないじゃん! 直接測った方が正確な数字が分かるし、着心地なんかもよくなるんだよ!」
「問題ありません。お嬢様の成長はわたくしが全て把握しております」
「ちょ、ちょっとシャロン!? 何言ってるのよ!?」
「申し訳ございませんお嬢様。ですが主の成長を把握するのはメイドの当然の嗜みですわ。──それにどうしても採寸が必要ならわたくしが行いますので貴方は近づかないように。いいですね?」
「良くない良くない! 私が測った方が──」
「──いいですね?」
「はいぃ……」
そうしてシャロンとアーヤ教官の言い合いはアーヤ教官がシャロンの圧を感じる笑顔に負けて諦めることになった。……というか、なんでそんなに採寸如きに本気なのよ……シャロンもそこまで拒否しなくてもいいのに、なぜかアーヤ教官が私に近づくとどこからともなく現れてアーヤ教官を容赦のない言動で追い払うことが多い。おかげで私はあまりアーヤ教官とは一対一で喋ったことがないのだけれど……せっかくだ。この際聞いてみようと私は口を開いた。
「……前々から気になってたんだけど……シャロンにアーヤ教官ってやっぱり昔からの知り合いなの?」
「……それは……」
私がそう尋ねるとシャロンは困った表情になり、少し目を瞑った後、ややあって困った笑顔を浮かべる。
「……はい、お嬢様。私と彼女は確かに知り合いですが……」
「私とクルーガーちゃんは幼馴染なんだよ!」
「幼馴染って……そうだったんですか?」
「! アーヤさん……!」
シャロンは私からの質問を、多分だけど部分的には認めつつもはぐらかそうとしたのだろう。だけどアーヤ教官は笑顔でまっすぐにそう答えた。何ら恥じることはないという様子で。
アーヤ教官がそう答えるとシャロンは短くアーヤ教官を止めようとしたが、アーヤ教官はそれも自然な様子で返す。
「まーまー。このくらい別にいいじゃん。知り合いだってことはバレてるだしさ。私とクルーガーちゃんが昔っからのお友達だってことくらい喋っても」
「……ですが」
「大丈夫大丈夫! クルーガーちゃんの黒歴史については絶対口にしないからさ。──ってことでね、アリサちゃん。私とクルーガーちゃんは子供の頃からのお友達だったんだよね」
「友達……ですか」
「うん! 大親友だったよ! ね、クルーガーちゃん!」
「──いえ、別に大親友というほどではありませんが」
「あれ? ちょっとクルーガーちゃん? そこは否定しなくてもいいじゃん。なんでそんなきっぱり否定したの? さすがの私もちょっと傷つくんだけど?」
と、そう言うアーヤ教官はいつも通りだが、そのシャロンとの掛け合いは……なんというか、慣れたものを感じる。アーヤ教官のことを様付けで呼ばなかったさっきのことといい、遠慮ない言動や暴力といい……シャロンは否定してるけど実際のところはかなり親しかったんじゃないかと思うような関係性が見て取れた。その後の話からしても。
「あはは……それじゃ聞きたいんですけど……シャロンって昔はどんな子供だったんですか?」
「そりゃもうすっごい可愛い子供だったよ! あ、でも今みたいに笑顔が得意じゃなくてもっと無愛想だったけどね! それに私よりも……」
「──アーヤさん?」
「え、えーっと……そう! すごい頭が悪くてさ! もうほんとおバカでおバカで! 私にテストでは負けるし、負けたことを認めずに私に関節技を仕掛けてくるような子供だったんだよ! もうそれは馬鹿力で脳筋でそのせいで友達も私以外はいないぼっちで人気者の私はいつも遊んであげてたんだけどクルーガーちゃんはもう本当に陰キャで私が遊びに誘っても部屋の隅でカブトムシとセミの抜け殻を並べておままごとをして『私はお人形さんだポン☆ こっちは私の愛馬のムーンライト号! さあ、月に代わっておしおきよ♪』とか意味不明なことを言ってるようなそんな不思議ちゃんかつちょっと痛い子でええええええええ!!? こんな風に私に関節技を仕掛けてじゃれ合ってきたりしてたんだよね────!! 痛────い!!」
「私の過去を捏造しないでもらえますか? でないと昔のように、バカなあなたにお仕置きをする羽目になりますが……」
「してるしてる! もうしてる! 嘘嘘! 冗談だってば! ジョーク! このエピソードはフィクションです! 実際は無愛想だけど頼れるお姉さんでした──!!」
「シャ、シャロン? それは少しやりすぎなんじゃ……」
「問題ありません、お嬢様。彼女はこの程度で痛がるような柔な子ではないので。むしろ昔馴染みの私とスキンシップが取れることを喜んでいるかと」
「普通に痛いんですけどー!?」
──と、アーヤ教官はシャロンに関節技をかけられながら叫んだ。シャロンって関節技が得意だったんだと私はそこで知る。……というか、シャロンが手加減してるのよね? アーヤ教官の身体が柔らかいのはわかるんだけど、結構本気で力入れてるように見えるし……お、折れるギリギリに見えるんだけど気のせいよね?
「ということでクルーガーちゃんは良い子だったよ……」
「いや、ということでと言われてもよくわからなかったんですけど……」
「……ふぅ。全くあなたはいつまで経っても変わりませんね。こんなところで遊んでいる暇があるのですか? 仕事が忙しいのでは?」
「っと、そうだった! それじゃありがとアリサちゃんにクルーガーちゃん! 衣装は絶対良いの仕立てるから楽しみに待っててねー!」
「あ、はい。よろしくお願いします」
そうして呆れたようなため息を吐いたシャロンの言葉を聞くと思い出したかのようにその場から駆け出して手を振ってくるアーヤ教官はまるで子供のようでいつものことながら慌ただしいというか騒がしいというか……。
結局のところアーヤ教官のことはあまりわからないし、シャロンのことも昔のことはよくわからない。シャロンがどこで生まれ育ったのかとかメイドになる前は何をしていたのかとかそういうことは聞いてほしくなさそうな気がしたから聞かなかった。
ただ1つだけ言えるのは──アーヤ教官とシャロンは、きっと本当に友達だったのだろう。呆れながらもアーヤ教官に付き合うシャロンの振る舞いには遠慮がなかった。だから私はそういう意味でもアーヤ教官を信頼できると思ってる。シャロンが信頼してる相手なら大丈夫だと、そう感じた。
──おはようございます。トールズ士官学院教官のアーヤ・サイードです。実は身体がめっちゃ柔らかいです。I字バランスとか余裕で出来ます。
とまあどうでもいい小ネタを紹介したところで季節は秋。8月末に行われたクロスベルでの《西ゼムリア通商会議》無事にディーターさんがクロスベルの独立宣言を行うことで不穏に終わりました。ミッションコンプリート。会議を襲ったテロリストたちは全員が女神の下に召され、しかも一部不審死した者達もいたので関係者の中で地味に話題にはなったが、追い詰められたテロリストが毒ガスか何かを使おうとして自滅したということになったので特に問題視されてない。ふぅ、危ない危ない……私がやったってバレなくてよかった。一部の勘の良い人たちは私がやったのを見抜いて地味に意味深な質問をしてきたりもあったけどね。オズボーン閣下とか帰り道で会ったオルランド親子とか。でもそれも知らぬ存ぜぬでなんとか通した。そんでなぜかシャーリィちゃんとお友達になったけどそれはまあいい。物騒なところがある以外には割と話せるし何より可愛いし。結社とか裏の人間には普通に異常者が多いからそれらとのコミュニケーションに慣れてる私は割と大丈夫。それに将来的には後輩だし長い付き合いになりそうだからね。懐いてくれるなら割り切って可愛がって洋服とかプレゼントしようかな。年頃の女の子なことには変わりないし。
とまあクロスベルでは結構国際的に問題になってかなり不穏な情勢だけど、今の私は教師。トールズ士官学院は9月になってテロがあっても平常運転。今月の特別実習も無事に行われることになったし、なんなら来月に行われる学院祭の開催が発表されたのでいつもより活気がある! 私もテンション上がる! お祭り大好き! 特に学校のお祭りっていいよね!
いやーまさかトールズの士官学院祭にも参加出来るなんてね。これでも私はこの手のお祭りには何度も参加してる言わばお祭りのプロ。アラミスの学藝祭やジェニスの学園祭も参加したし、これで作中有名校のお祭りには全参加だ! 今回は何しようかな? 心ウッキウキだぜ!
……でも一応は今の私は教師だし、主役は生徒たちなので自重することにした。悩んでたⅦ組の生徒に学生時代に何をやったか教えてあげようと思ったけど、それは出し物がライブに決まった後で口にしつつ邪魔にならないように。でも衣装製作だけは譲れないのでⅦ組のステージ衣装は私が仕立てることに。よーし、良い衣装作るぞー。おかげでまたかなり忙しいけど衣装を作るのは楽しいから問題ないね!
ただその前に特別実習が待ってるんだよねー。次の行き先はA班はノルティア州の《黒鉄の鋼都》ルーレでB班はラマール州の《紺碧の海都》オルディス。どっちも帝国の五大都市の1つで《四大名門》のお膝元だね。私的にはカイエン公が治めるオルディスが馴染み深い。ログナー侯爵家が治めるルーレの方はまだあんまりだね。今までは帝国に行くのを控えてたし、なんならラインフォルト社があるのでクルーガーちゃんに気を使ってあんまり訪れないようにしてた。本当は会いたかったけどお仕事の邪魔になっちゃったらいけないしね。
ってことでルーレに行くのは普通に楽しみだ。帝国の都市の中じゃ1番近代的な街なんだよね。リベールのツァイスやカルバードのバーゼルと並べられる導力技術が発展した街だ。シュミット博士も普段はここにいるし、機甲兵の開発なんかも実は普通にノルティア州で行われてたりする。……そう考えるとログナー侯も四大名門の中じゃ常識人っぽく振る舞ってるけどちゃんと貴族連合の中核を担ってるよね。兵器開発をバリバリに促進して導入してるし、内戦が激しくなるのもやむ無しといった感じだ。
とまあそんな裏事情を考えつつも私も教官としてルーレに着いたら何しようかなーってリストを作って考えてた。最新の導力製品とか爆買いしようかな。ちょうど新しい掃除機が欲しかったんだよね~! ふんふ~ん! 楽しみだなー!
「──久し振りだな。アーヤ・サイード。此度は我らが工房の招きに応じて頂き感謝する」
「アッハイ。こちらこそお招き頂きありがとうございます……」
──と思ってたんだけどね……9月の25日。Ⅶ組の下に遂にあの《カレイジャス》がやってきてお披露目となったので私もテンション上がって乗艦してルーレにやってきてすぐ……私の《エクス=マキナ》に搭載してる導力通信に連絡が入り、私はルーレの外れで《黒の工房》のアルベリヒさんと久し振りに会うことになってしまいました……はぁ……またこの人かぁ……そういえばノルティア州って《黒の工房》もあるんだよね……《黒の工房》ってどうしても背後にいる怨霊が気になるからあんまり関わり合いになりたくないんだけどなぁ……でも私の《エクス=マキナ》を作ってくれたり調整してるのはこのアルベリヒだし、宰相閣下と協力関係というか、実質配下なので呼び出しを無下にすることもできない。なんなら今はまだ結社の傘下だしね。《十三工房》の一角として。なので仕事は断れない。今日の私は執行者として動くことになりそうです……はぁ。とりあえず割り切って事務的にこなしちゃおっと。
「それで、今回はどんな用件ですかー?」
「ちょっとしたお使いを頼みたくてね」
「どんなお使いですか?」
『初めてのお使いですか?』
「何、大したことではない。我が工房が現在、
「はぁ、仕事を一緒に……って、ホムンクルスですか?」
「ああ。そのホムンクルスには最低限の知識は学習させたのだが今少し経験が足りなくてね。その経験を君の下で積ませてやってほしいのだよ。こちらのことは伏せた上でね」
アルベリヒのいやらしい声でそんな風に依頼される。いや、仕事をするのは別に全然良いんだけどホムンクルスって……ひょっとしてひょっとする?
「どうかね。受けてもらえるだろうか?」
「……いいですけど……えっと、そのホムンクルスはどういう子なんですか?」
「君も知っているOz73……ミリアム・オライオンのひとつ下に当たるOz74だ。名前はアルティナ・オライオンということになっている」
──アルティナたんキタ──!! やっぱアルティナちゃんだー! いえいいえーい! クール系ロリキャラだー! わーい! この手の新しい出会いにしてはかなりいいぞ! アルティナちゃんと交流できるなら喜んでやるやる! この頃はまだかなりホムンクルスらしいというか、感情があまりない感じでめちゃくちゃ冷淡だけどそれもまた良いよね! よーし! 仕事なら任せろー! アルティナちゃんにちゃんと経験を積ませてしっかりと新Ⅶ組に送り込むぞ! ──で、仕事は……っと。何々……? えーっと、アルティナちゃんと合流した後に貴族連合の駐屯地を調べようとノルティア州内で潜伏してる不穏分子の撃退……なるほどなるほど。要は不審者を追い払えってことだね! オッケーオッケー! 簡単簡単! よーし、アルティナちゃんにお姉ちゃんの頼れるとこ見せちゃうぞー!
──その日の午後。私はその不審者と対面していた。
「──まさかここでお前が来るとはな。アーヤ」
「あ、あー……えーっと、その……できれば引いてもらえると助かるんですが……だ、ダメ?」
「……悪いが引くつもりはない。お前の頼みを聞いてやりたいのは山々だがな」
「──当地域内はノルティア領邦軍の管轄です。速やかに退去頂かない場合、実力行使を取らせて頂きます」
「ちょっと! アルティナちゃん!?」
「ほう……見たところ普通の少女ではないようだが……それは俺との実力差を理解した上での発言か?」
「はい。私に与えられた任務に従い、不穏分子の排除と経験の蓄積を行います」
「……なるほどな。おおよそ人間らしくない答えだ」
「アルティナちゃん! 相手を見て言って! さすがに相手が──「いいだろう」──え? 今なんて?」
「確か《戦術殻》だったか。《黒の工房》製と思われる機械仕掛けの人形を操るおおよそ人間らしくない少女とアーヤ。今のお前の実力を確かめるためにも少しばかり手合わせをさせてもらおうか」
「え……い、いやいやいや! そんなこと言われても困るんですけど!?」
「フッ、安心しろ。必要以上に傷つけるつもりはない。あくまでお前たちの実力を見定めるだけだ。お前たちが立ち塞がった時点で
「な、ならもうお開きにしてもよくない?」
「そう言うな。ノルドで会った時は剣を合わせることは叶わなかったが、あの時からお前の強さを身を持って確かめたいと思っていた。──今のお前がこの《剣帝》を前にどこまでやれるのか、見せてもらおう。行くぞ、アーヤ!」
そう言って帝国内で指名手配されてる元執行者で私の師匠の1人で男の人の中では1番好きな相手の《剣帝》レオンハルトことレーヴェは魔剣《ケルンバイター》を構えて私に向かってきた。私は《ゾルフシャマール》を構え、《クラウ=ソラス》を出現させたアルティナちゃんと共にそれに立ち向かい──って、こらこらこらー!! 聞いてない! 相手がレーヴェなんて聞いてないよ! それに突然すぎる! 確かに軌跡シリーズ、特に閃の軌跡ってちょっと格上の相手の胸を借りてのバトルイベントみたいなのよくあるけどさ! そういうの私にはいらないから! 幾ら相手がレーヴェでそこまで怖くないし、傷つけられないって安心はあるけど私はそもそも強い人と戦うのは苦手で──ってうわあああああああ!!? やっぱりレーヴェ強いー! 久し振りに稽古してるけどなんか前より強くなってる気がするー!? 剣技が冴え渡りすぎー!! そしてやっぱりかっこいいー! 久し振りに戦ってる姿見たからキュンとくるー!! 私とアルティナちゃんじゃ勝てるわけないよー!! でもこうなったらレーヴェの期待に応えられないのは嫌だしやけくそで戦うしかないー! 頭の中で久し振りに銀の意思流すぞー! それでもかなりヤバいけどー! うわああああああああん!!?
今回はここまで。時系列がね、整理してたら勘違いしてることに気付いて先にルーレに行くことになりました。9月25~26日が特別実習で9月30日が帝都で謁見。10月1日にⅦ組がユミルでクロスベルでは大陸横断鉄道事故。10月2日にクロスベルで赤い星座が山道占拠で10月3日にクロスベル市襲撃事件。って感じの日程です。そろそろ零の至宝誕生と内戦勃発が近づいてるねってことで次回はレーヴェとアーヤちゃんにリィンくんのイベントです。お楽しみに。
感想、評価、良ければよろしくお願いします。