TS不幸少女のゼムリア大陸災難記   作:黒岩

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幻獣調査をする不幸

 ──正直なところ私は彼女をあまり信用していません。

 

 今年になって情報局に入ったばかりの特務少尉。アーヤ・サイード。

 彼女の正体は元々情報局からマークされている人物であり、大陸各地で活動する暗殺者《切り裂き魔》と思われる。

 その上で結社の執行者であることも確認は取れています。情報局による脅威度評定は最大評定の『LV5』分類。元々謎の多い相手でもあり、同じLV5分類の《剣聖》カシウス・ブライトと帝都で小競り合いを起こしたこともある危険人物。

 そんな彼女をなぜ閣下は雇い入れることになったのか……その理由は私には分かりかねます。

 ですが閣下は国益のために動いていることは確か。であればこれも高度な政治的判断によるものでしょう。鉄道憲兵隊の一大尉でしかない私の領分ではない。《鉄血の子供たち》の一員だとしてもそれは変わらない。多少の疑問を口にすることはしても閣下が決めた方針に逆らいはしませんでした。

 幸いだったのは彼女の性格が思ったよりも善良で話が分かる人物であったこと。レクターさんやミリアムちゃんも普通に仲良くはしていますし、私も信用できないからと無用に疑うようなことはしません。

 とはいえ怪しいことは事実ですのでそれとなく警戒し、注意して彼女の動向を見ていましたが……都市伝説になるほどの暗殺者を追跡し続けることは容易ではなく、時折姿が見えなくなったり、動向が分からなくなったりしてしまいます。おそらく結社の執行者として何かの行動を行っているのでしょうが……それが何かは結局分かりません。

 閣下は彼女を信用して様々な任務を任せているようですが……確かに、彼女がもたらす情報やその仕事振りは有益なものではあります。多少異質と言いますか、おかしな言動を行うこともありますが……それは彼女が変人であることに起因するもので、悪気があるわけではないようです。

《帝国解放戦線》の動向についてもしっかりと情報局に共有し、成果を上げているようですし……結局のところ怪しくても今は閣下の言う通り彼女と有益な関係を築くしかないのでしょう。それに国で雇っているわけではありませんが、結社の執行者が帝国内で活動しているケースは他にもあります。ラインフォルト社に雇われている彼女などがそうでしょう。

 ですのでそちらと同じように注視はしつつ、協力できるところは協力や情報提供を頼むことにしましょう。そもそも現在の情勢では事も起こしていない結社の動向を注視している余裕はありません。《帝国解放戦線》やその裏にいる貴族派の動向やクロスベルでの独立宣言。移民問題で揺れる共和国など、治安維持を行うためにはそれらについても注視して何かあればすぐに動けるようなネットワークを作ることが求められます。

 そして今の私の仕事は《帝国解放戦線》とそれと繋がる貴族にラインフォルト社における貴族派に属するグループを査察すること。

 

 ……そして現在、このルーレにはオリヴァルト皇子殿下肝いりのトールズ士官学院Ⅶ組が特別実習にやってきています。

 彼らを危険な目に遭わせないためにも私はⅦ組の中心人物とも言えるリィンさんを夜にバーに呼び出してそれらの伝えられる情報を伝えることにしました。

 その際にもう1人、Ⅶ組の一員である元《西風》の子も一緒について来ましたが、それについても問題はありません。

 ですから私は目立たないように奥の席に移動した上でリィンさんとフィーさんに対して質問に答えながらも情報を伝えようとしたのですが──その際にイレギュラーな人物がその場に現れました。

 

「──随分と興味深い話をしているようだな」

 

「! え……?」

 

「! あなたは……!」

 

「! (気配に気付けなかった……!)」

 

 私とリィンさんたちは突然かけられた声に振り返り、そして一気に警戒を跳ね上げます。そこにいた1人に関しては理解に及びますし、そこまで警戒する必要はありませんでしたが、そこにもう1人がいるとなれば話は別。それもその1人は現在帝国内で潜伏している脅威度LV5の指名手配犯。

 

「あれ? リィンくんにフィーちゃんにクレア大尉じゃん! こんなところで奇遇だねー」

 

「トールズ士官学院Ⅶ組の生徒2人に鉄道憲兵隊の若きホープ《氷の乙女》がこのような場所で密会とはな」

 

「……あなたの……いえ、あなた達の方こそ何をしに来たのですか?」

 

 私は警戒しながら質問を返す。あの元執行者──《剣帝》レオンハルトが目の前に現れたこと以上に注意するべきことは他にない。本来であれば拘束するべき相手だが……単独でそれが叶うような相手でないことは理解しています。それにこの場には民間人やリィンさんにフィーさんもいる。向こうも何か事を起こすつもりではないと判断してまずは話をするしかありません。

 

「大したことではない。街の郊外で手合わせを行った帰りに食事を取ろうとアーヤに付いて来たら偶然にもお前たちがこの場にいただけのことだ」

 

「そうそう。ちょっともう1人と遊んでてね……その子とは一旦別れちゃったんだけど……いやー大変だったよほんと……久し振りにかなり疲れた……」

 

「……………………」

 

「偶然とは思えないという顔だが……そう警戒する必要はない。本当にただ店に立ち寄っただけだ。──だがせっかくだ。互いの持つ情報を共有するというのはどうだ?」

 

「……そうすることに何のメリットが?」

 

「お前たちの掴んでいない情報を聞くことが出来るだろう。それと……そちらのⅦ組へより多角的な視線で危機を察知する……その経験を積ませることにも繋がるだろう」

 

(俺たちへの経験……?)

 

(……なんか只者じゃないっぽいね)

 

 私はその言葉を聞いて更に内心で脅威度を上げます。《剣帝》は結社の確認できるメンバーの中でも一、二を争う戦闘力の持ち主だと聞いていましたが、それだけではなく物事を見抜く目も持ち合わせているようです。

 やはり結社を抜けたからといって油断できる相手ではない。そう警戒しながらも、その申し出についても計算を行います。申し出を受けるメリットとデメリット。それらについて思考した結果、私はゆっくりと。

 

「……わかりました。しかし、何かありましたらすぐにでも捕らえさせて頂きますので」

 

「ああ、それでいい」

 

「あっ、じゃあ私たちもドリンク頼もう! それとフードもね! リィンくんにフィーちゃんも何か食べる?」

 

「ああ、いえ、俺たちはもう食べてきたので……」

 

「というかこの空気の中で食欲なんて湧かない」

 

 ──それは本当にフィーさんの言う通りですねと、私はそう思いながら反対に乾いた喉を潤すためにノンアルコールカクテルを傾けました。

 そしてリィンさんやフィーさんだけでなく、アーヤさんに《剣帝》を交えた話の場が設けられたのですが……。

 

「改めて名乗らせてもらおう──レオンハルトだ。アーヤとは昔からの知り合いでお前たちのこともよく聞いている。リィン・シュバルツァー。そちらはノルドで一度会っているな」

 

「あっ、はい。あの時は助けてもらってありがとうございました」

 

「気にする必要はない。俺にとっても止めなければならないことだったからな」

 

「レオンハルト……どっかで聞いたような……」

 

「……そちらは元《西風》のフィー・クラウゼルだったか。俺のことをどこかで聞いている可能性は大いにあるだろうが、それを思い出したとしてもこの場では口にしない方が賢明だろう」

 

「そっちもわたしのこと知ってるんだ……ってことはやっぱり……」

 

「──さて、では話の続きといきましょう。些か不本意ではありますが……」

 

 ──《剣帝》レオンハルトはその元所属を明かさないままにリィンさんたちに改めて名乗りました。フィーさんなどはその経歴から彼について心当たりがあるようですが……そこについて深堀りするには少し場が適していません。ですので本来の道筋に戻り、《帝国解放戦線》や貴族派。そしてリィンさんたちが疑問視する私たち鉄道憲兵隊や情報局。引いては閣下の行動についても話し合いを再開することにしました。

 

「……《帝国解放戦線》の背後には貴族派がついている。そしてラインフォルト社にも貴族派を通じてテロリストに加担している者がいること。それは間違いないだろう。──だが、《鉄血宰相》が誠実に行動し、一線を超えたことをしていないというのは疑問を呈さざるを得ないな」

 

「! ……あなたは閣下がテロリストと通じているとでも? 何の証拠があってそんなことを──」

 

「《帝国解放戦線》と繋がっていないからと言って他の組織と繋がっていない保証はないだろう。それに以前──《鉄血宰相》はある組織と繋がりを持ち、互いに利用しあっていた。一線を越えたことをしないと言うならそのことはどう説明するつもりだ?」

 

「っ……それは……」

 

 ──ですがやはり《剣帝》は私たちの痛いところを突いてきました。

 以前閣下が結社《身喰らう蛇》と契約を結び、リベールの異変や他の様々な事象について有利に立ち回っていたという事実。そのことを元執行者である彼が知らないはずはありません。

《帝国解放戦線》を貴族派のように支援した事実はなくても、裏組織と契約を結んだ前科はある。それがあるから、彼は閣下を信用していないのでしょう。

 ……いえ、そもそもハーメルでの一件から彼は閣下を含む帝国政府を信用していないはず。それを思えば、信用されないことも致し方ないことではありますが……。

 

「……もっとも、《鉄血宰相》は良くも悪くも行動が一貫しているように見えなくもない。その意味では奴が国益のために何もかもを利用して動いていることを否定できる要素もないが……俺にはどうも引っかかる」

 

「……閣下は国のため、民のために動いておられます。確かに時には強引な手法を取ることもありますが……それだけは間違いありません」

 

「フッ、どうだかな。それが“欺瞞”でなければいいが……だが一先ずはこの辺りでやめておこう。このエレボニアという土地で何が起ころうとしているのか……それを見極めるには《帝国解放戦線》に貴族派から辿るのが近いだろうからな」

 

 ──そうして《剣帝》レオンハルトは笑みを見せることなくそんな意味深な、私たちに考えさせるような発言をすると彼が知り得たという情報……領邦軍の怪しい動きや国内に出入りする猟兵の動きについての情報を共有して頂きました。

 実際その中には情報局でも掴めていない情報があって……いえ、もしかしたらアーヤさんが意図的に伏せていた可能性もありますからそこについてはやはり警戒が必要ですが……しかし情報だけで見れば有益であることは確か。

 そしてそれらを単独で指名手配された身でありながら集めてきたことに彼の能力の高さを感じます。リィンさんとフィーさんも彼の能力の高さについては色々感じ取ったところがあるようでしたが……やはり最も驚いたのは彼がアーヤさんと手合わせをして勝利したこと──

 

「──さーて! それじゃドリンクも来たし乾杯でもする? 一応お酒の席みたいなもんだし、自己紹介から初めてなんかゲームでも──」

 

「アーヤ。まずは喉を潤すといい。久し振りの手合わせで疲れただろう。疲労回復にも効くドリンクを頼んでおいた。俺の奢りだから好きなだけ飲むといい」

 

「えっ、ほんと!? ありがとうレーヴェ! それじゃいただきまーす!」

 

 ──ではなく。

 

「あ、共和国の移民問題で思い出したんだけどこの間暑中見舞いでお菓子が届いたんだよね! クインシー社のお菓子! なんだかんだ美味しいから買っちゃうんだよねー! 持ってきてるから皆で──」

 

「アーヤ。食事が来たぞ。スープパスタを頼んでおいた。俺の奢りだ。早く食べないと冷めてしまう上に伸びてしまう。温かい内に食べるのがいいだろう」

 

「あっ! やった! ちょうど体動かした後だから麺類の気分だったんだよね! ありがとーレーヴェ!」

 

 ──話の途中でアーヤさんにこんな感じで。

 

「あ、そういえばラインフォルト社と言えば──」

 

「アーヤ。衣服の修繕を頼みたいんだが構わないか? 出来れば急ぎで頼む」

 

「えっ、レーヴェの服? やるやる! なんなら今すぐやるよ! 裁縫道具は持ってきてるからね! よーし任せて!」

 

「ああ、頼む」

 

(アーヤ教官に対応しきってる……!)

 

(かなり出来るね……! この人……!)

 

(アーヤさんが茶々を入れる暇すら与えないなんて……!)

 

 ──そう、アーヤさんを完全にコントロールしていることです。

 

 話に茶々が入りそうになるタイミングでアーヤさんを静かにする行動を取り続ける《剣帝》の動きは私にとっても非常に参考になるものでしたが……かといってすぐにそれが出来るかどうかは難しいところです。

《剣帝》レオンハルト……戦闘力だけでなく知力や隠密。そしてアーヤさんの掌握にも優れているとは……やはり恐ろしい人物ですね……。

 

 

 

 

 

 ──どうもー! レーヴェと付き合いたい執行者のアーヤ・サイードでーす! 久し振りにレーヴェと手合わせしたらくっそ強くてヤバかったけどなんだかんだで怪我はさせないようにしてくれたし、終わった後はかなり褒めてくれたから良かった良かった! アルティナちゃんはかなり疲労困憊だったから回復のために戻っちゃったけどアルティナちゃんも経験を積めたっぽいよね! まだまだ連れ回す必要はあるかもしれないけど1回目の顔合わせは良い感じで終わった! 

 

 で、それからルーレに戻ったら結構遅い時間で。良い感じのレストランでご飯でも食べようと思ってレーヴェを誘ったんだけど、せっかくだから雰囲気の良いバーとかにしようとバーに入ったらなんとそこにはえっちな格好をしたクレアちゃんにリィンくんにフィーちゃんがいた。あ、そういえばこんなイベントもあったような気がするとそこで思い出した。こういう細かいところはあんまり覚えてないからね。というかこのめちゃくちゃ広い街で偶然入ったバーでイベントが起きてるとかどんな偶然だよって話で。なのでしょうがない。レーヴェが興味を持って話し合いに参加することになったんだけど……まあせっかくだし、あんまり険悪にならないように私は潤滑油として皆の間を取り持つことにした。レーヴェとクレアちゃんが特にバチバチしてる気がしたからね。

 でまあ、頑張った結果、割と和やかに情報の共有は終わった。レーヴェが奢ってくれたドリンクもスープパスタも美味しかったし、おまけにレーヴェから服の修繕を頼まれたんで気合いを入れて修繕した。ついでにもっと効果が良くなるように特殊な素材も使って強化しといた。頼まれてないけどレーヴェには特別にね。親しい人にはこういうサービスもする。特に戦闘とかに参加する人なら状態異常に耐性はあった方がいいし、丈夫であることに越したことはないからねー。いやーレーヴェの着てるコートに手を加えさせてもらうなんて普通に嬉しかった。やっぱりかっこいいよねー。

 

 ……でまあその後は普通にリィンくんたちとも別れたんだけど……レーヴェとも別れてね。結局やることが互いにあるのでしょうがない感じだった。私としてはレーヴェともうちょっと一緒にいたかったけど実際仕事があるからしょうがない。でもまた連絡することは伝えといた。……でも連絡手段がなぁ……やっぱりレーヴェにもARCUS渡さないと。博士に頼んで用意してもらうしかないかな。連絡しとこーっと。

 

 ──ってことでその日は普通に就寝して特別実習2日目になったんだけど……ぶっちゃけこの日も私はあんまりやることがないっていうか……何もやらないことが仕事というか……。

 なんでそうなったかって言うとクロウから頼まれたんだよね。《帝国解放戦線》は壊滅したことにするからスパイとしてそれを報告してくれって。だから私が向こうに味方して変にこじれたり普通に逃げれたりしても困るらしい。それを聞いて私はなるほどって納得した。そういえばここで死んだことになったからこそオズボーン狙撃が叶うんだったよね。本当に見抜けなかったかどうかは怪しいところだけど、一応称賛はしてたから狙撃されることは想定外だったのかな? どっちみち内戦は起きるだろうからそこはあんまり関係ないから問題なかっただけで。

 

 なので仕方なく私は理由を付けてお留守番。まあ危ないことしなくて良いのは助かるけど、仲間外れにされるのはそれはそれでちょっぴり寂しくなるジレンマ。ザクセン鉄鉱山を巡って色々と争った挙げ句に偽装工作を行って《帝国解放戦線》は飛空艇毎爆破されてほぼ壊滅しました。チャンチャン。めでたしめでたし~ってな感じでⅦ組は《帝国解放戦線》壊滅に尽力したとして後日、バルフレイム宮に招かれて皇帝ユーゲントⅢ世に謁見することになったんだよね。その際には当然オズボーン宰相もいればレーグニッツ帝都知事もいたし、《四大名門》の当主たちも全員集合してたらしい。カイエン公にアルバレア公爵。ログナー侯にハイアームズ侯の4人だね。ちなみに私は全員面識はある。とはいえハイアームズ侯だけは表の仕事で領地であるセントアークに支店を立てるのと営業をしただけで、貴族連合に協力する人員としては会ってない。セントアークは芸術の都って呼ばれてて帝国内でここの貴族に認められるのは芸術家として1個のステータスなので私もしっかりそこは通らせて頂きました。

 

 ただ裏的にはハイアームズ侯は若干貴族連合とも距離を置いた強かな立ち回りをしてるので深く関わってないんだよね。大貴族ってのは皆色々考えることがあって大変そうだし、権謀術数が常に動いてそうで怖いなーと思いました。まる。

 

 そして四大名門率いる貴族派と宰相閣下率いる革新派がバチバチなところを見せられるなんて不幸がⅦ組にはあったわけだけど、悪いことばかりではない。《帝国解放戦線》壊滅に尽力したことで休暇を取り、Ⅶ組は帝国北方。ノルティア州のアイゼンガルド連峰にある山間部の温泉郷ユミルへ小旅行することになった。ここはリィンくんの実家、シュバルツァー男爵家の領地だね。その名の通り温泉が有名な観光地でスキーや新鮮な山の幸も楽しめる良いところ。私もずっと楽しみにしてた! 温泉も好きだし、ご飯も好き! スキーはまだちょっと難しいかもだけど普通にやりたい! 

 なので超ウッキウキで旅行に向かおうとしてたんだけど……。

 

『──やあ、アーヤ。早速だが頼まれていたものを受け取りに来たまえ。ついでに仕事もお願いするよ。ちょうど休暇だと聞いたからねぇ。そろそろスポンサーである彼らにとっても重要な事柄が幾つか起こる上、彼らからも君に協力の要請が来ているからちょうど良いだろう?』

 

『あっ、了解デース……すぐ向かいまーす……』

 

 相変わらずいやらしい声で端末越しにそんなことを博士が言ってきた。なので──

 

「ではアーヤ。君には我々の護衛をお願いするよ」

 

「はいはーい。りょーかいりょーかーい」

 

「一応《鉄機隊》が周囲を見回っています。ですのであまり気負う必要はありませんよ」

 

「はい! 了解ですアリアンロード様! 全身全霊をかけてお手を煩わせないように警護します!」

 

「……君、博士と聖女様で対応が違いすぎない?」

 

「……その反応は解せないが、まあ良いだろう。仕事を手伝ってもらうのは実際助かるからねぇ」

 

 ──そりゃ違うに決まってんでしょ! ってことでやってきましたクロスベル! 割り切って切り替えて鉄道でうわああああん!! って感じでやけくそでやってきたけどそういえばクロスベルはリアンヌ様が担当だった! なのでリアンヌ様に会えた! やったー! わーいわーい! あ、それとカンパネルラも久し振りー。デュバリィちゃんとアイネスちゃんとエンネアちゃんもこの間ぶりだね! でも3人は周囲の警戒担当だから遠巻きに互いに気配を感じるだけだ。若干デュバリィちゃんが私とリアンヌ様の絡みを見てぐぬぬってしてる気がするけど私は執行者だからね! 鉄機隊も結社の中じゃリアンヌ様直属で立場は相応に高いとはいえ扱いが違うのだよ扱いが! 執行者は自由! だからリアンヌ様にベタベタするのも自由ってわけ! いえいいえーい! 

 

 あ、ちなみに仕事は言った通り見届けに来ただけなんだけど……問題はこの後なんだよね。博士が事前に言ってたようにそろそろスポンサー兼協力者のクロイス家が事を起こすんでそのために色々やらないといけないことがある。それも考えないとだけど……とりあえずはこの湿地帯で調査だ。今このクロスベルの土地では七耀脈が活性化して各地で幻獣が出現しててんやわんや。ドッタンバッタン大騒ぎらしい。なんなら昨日は大陸横断鉄道が脱線する大事故も起きたしね。それを起こしたのはあのサーヴァルドくんで、しかもグノーシスで魔人化して行った。まあ分かってたけどまーたグノーシス使ってるのかーってちょっと私的には微妙な気分だけどスポンサーのやることだからしゃーない。切り替えていこう。各地で幻獣が出てるらしいのでついでに写真でも撮っておこうかな。パシャリと。するとカンパネルラが話しかけてきた。

 

「君、幻獣なんて写真に撮って何をしてるんだい?」

 

「珍しい幻獣とか生き物は写真に撮って記録しておくと幻獣博士から報酬が貰えるんだよ? 知らないの?」

 

「は? 何言ってんの? 幻獣博士って……ああ、もしかして《幻想使い》のこと言ってる?」

 

「そうそう。ほら、私って何故か珍しい生き物とか魔獣とか幻獣に遭遇しやすいからさ。もし暇と余裕があれば記録に収めたり見たものを教えてほしいって頼まれてるんだよね。で、結構報酬が良いから最近は本当に暇な時とかは写真を撮ってるんだよ。目指せ151匹! 幻獣のためならたとえ火の中水の中ってね!」

 

「ああ、そういうことか……なるほどね。タイミング的に頼まれたのは《福音計画》の時かな? 教授に法国で暴れてこいって頼まれてたもんね」

 

 そうそう。そんなこともあったなー……教会絡みの仕事は基本的に大変だしあんまり良い思い出はないけどね。ただ教会に目を付けられまくってる()()()()()私にその仕事というかサブクエみたいなのを頼んできたのもその時だった。前々から絡んではいたけどね。私が子供の時にこういうのを召喚してほしいってポ◯モンとかデ◯モンとかのイメージを伝えたら興味深そうに話を聞いてくれたりしてね。執行者だからアレなのは変わりないけどお世話にはなっている。洋服の注文もちょいちょい受けるからね。お得意様ではある。

 なので幻獣が絡むとなればこっちに来ていてもおかしくはないんだけど……まあ原作だと登場してない人だから出ないのもしょうがないか! (メタ話)

 

 なので気にせずプレロマ草が咲き誇る湿地帯を進んで奥地に辿り着いて調査する。途中でなんか遊撃士が何名かやってきたけどデュバリィちゃんたちや私でささっと無力化しておいた。プレロマ草かー。これもあんまり良い思い出ないけど見た目は好きなんだよね。衣装の装飾とかに使ったら良い感じになりそうって思ってる。……ちょっとだけ摘んでいく? でもなぁ、昔実験としてサラダとして食べた、文字通り苦かった思い出があるんだよね。ってことであんまり美味しくないから皆食べないようにね! 私以外が食べると大変なことになるぞ! 

 

「ウフフ……これは物凄い場所だね。ここまで活性化しているのならそろそろ準備は出来ているのかな?」

 

「フフ、そういう事なんだろう」

 

 ──とかなんとか私が考えている間にカンパネルラと博士が黒幕立ちトークを始めていた。あーまたそういう感じね。結社で過ごしてるとこういうトークが頻繁に起こるから私も慣れてる。よし、私も良い感じでトークに混ざるぞ! 

 

「うんうん、さぞかし面白い見世物になってくれそうだ。《白面》殿が生きていればさぞ愉しんでくれただろうに」

 

「えー……クロスベルにあの変態がいたらいたいけな少年少女が食い物にされそうだから想像するだけで嫌なんだけど……」

 

「アハハ、間違いないだろうね。でも、博士に加えて教授までクロスベルに来てたら収拾が付かなくならないかな?」

 

「どっちも変態だもんね」

 

「プッ……そういうことじゃなくて……《方舟》まで持ち出して2大国に喧嘩を売ったりするんじゃないかなって思ったんだけど……」

 

「ハハ、それはそれでなかなか面白そうじゃないか。……アーヤ、君の冗談はさすがに取り消しを要求するよ。《白面》殿と一緒にされるのはさすがに不愉快だからねぇ」

 

「でも博士は最初に会った時は教授と同じで私の身体を色々と調べてたし……」

 

「………………………………」

 

「せ、聖女殿の誤解を招くような発言はやめたまえ! 確かに調べはしたがいかがわしいことは断じてしていない! 盟主殿に誓って!」

 

「……なら良いのですが」

 

「まあまあ。抑えて抑えて。貴女も、やっぱりこの程度の簡単な使命は気乗りしない?」

 

「──全てはあの方の意志。異存などあるはずもありません」

 

「私もアリアンロード様の意志なので異存などあるはずもありません!」

 

「いや君、博士たちと合流する前はめっちゃ文句言ってた気がするけど……」

 

「博士、カンパネルラ。アーヤも、お喋りはそのくらいで。どうやら客人のようです」

 

「ちょっと男子ー。静かにしなさいよー」

 

「1番うるさいのは君だけどね?」

 

 ええー、そんなことないけどな──って、うわあああああああああああ!!? ロイドくんたちだ──!!? 特務支援課だよ!! 全員集合──は、してないけどほぼ全員いるー!! しかも《銀》ことリーシャちゃんもいるー!! そういえばここで顔合わせするんだったー!! しまったー!! 変装してくれば良かったー!! うわああああああああ!!? 

 

「アーヤさん……!」

 

「……あ、貴方たちは……」

 

「……どうやら予想以上の化物どもが揃っていたようだな」

 

 こらー! リーシャちゃん! リアンヌ様に化物なんて失礼でしょ! 中身はリーシャちゃんと同じで美人なんだからそういうこと言わない! 博士には言っていいよ! 後カンパネルラも! 私は化物要素ないから私のことは言ってないだろうからリアンヌ様の化物扱いだけは撤回を要求する! 

 

「ああ、君たちか。遊撃士のお姉さんたちは身動きを取れなくした筈だけど……ウフフ、どうやってこの場所を突き止めたんだい?」

 

「……一応、企業秘密という事で」

 

「わかってないなーカンパネルラは。あの特務支援課だよ? 地道な調査と周りの縁ある隣人との協力。そして推理によって辿り着いたに決まってるじゃん!」

 

「君は特務支援課の何なのかな? いや言いたいことは分かるけどさ」

 

「……しかし、何だか面白ぇことをペラペラ抜かしてたじゃねぇか……」

 

「え、そう? 誰のトークが1番面白かった? やっぱり私が1番でカンパネルラが2番。アリアンロード様が申し訳ないけど3番で博士が4番ってとこ?」

 

「そういうことじゃねぇよ!」

 

「どうでもいいが、ほとんど喋ってない聖女殿に私が負けているのが解せないのだが、一体どういう判断基準なのかね?」

 

「な、何をふざけてるんですか! とにかく、あなた達の企て……見過ごすわけにはいきません!」

 

 ノエルちゃんがちょっとおこだ! でも真面目にやってるんだよね。残念ながら結社はたちの悪い人ばかりだから。私としてもあんまり悪ふざけするのは良くないと思う。皆真面目にやってね。

 

「ふむ……察するにクロスベル警察の新人諸君といったところかな?」

 

「……クロスベル警察、《特務支援課》の者だ。アーヤさんと一緒にいるところから見て結社《身喰らう蛇》の関係者と見受けるが……まずは身分を証明できるものを提示してもらいましょうか?」

 

「身分の証明……? 彼は何を言ってるんだい?」

 

「うーん、警察としての手続きを踏んでいるんじゃないの? ウフフ、ボクたち相手に身分証明って悪い冗談にしか思えないけど」

 

「あ、職質ですね。えーと、運転免許証と保険証と会社の名刺。後はエレボニアの軍歴証明書と……後は結社の証明書は……あー……えーっと、《身喰らう蛇》のシンボルが描かれたハンカチとかどう?」

 

「普通に身分証明しようとしてるアーヤの方が冗談のレベルは高いね」

 

「真っ直ぐな若者ですね」

 

「あ、ほんとですか? ありがとうございます。えへへ」

 

「多分お前のことじゃねぇだろ!?」

 

「絶対君のことじゃないと思うよ?」

 

 うわっ、びっくりした。ランディとカンパネルラから同時にツッコまれた……でもそんなに否定しなくてもいいのに……私のことも言ってくれてるかもしれないじゃん。リアンヌ様優しいし。

 

「要求に応えられないのは心苦しくありますが……」

 

「……駄目だ、ロイド。常識が通用する連中じゃなさそうだぜ」

 

「結社って変な人ばかりだからね」

 

「1番は間違いなく君だけどね」

 

「……《教団》の連中あたりと同じだと考えるべきだろう」

 

「フム、彼らと一緒にされるのはさすがに面白くないねぇ」

 

「ホントだよ! それはさすがにライン超えだよ! 私被害者なんですけど!」

 

「……………………」

 

 あれ、言い返されない。リーシャちゃんがめっちゃ酷いこと言ってきたから言い返してみたんだけど……もしかして本当に失言しちゃった感じ? 《銀》ロールプレイのせいで謝ることも出来ないみたいな? いや、もしくは私のプロレストークに乗り切れなかった? 別にそんなに気にしてないからいいんだけど……被害者なのは確かだけどもう昔のことだしねー。もはや笑い話だ。

 

「フフ……いいだろう。自己紹介くらいはしようじゃないか」

 

 と、そんなわけでここで自己紹介タイムっぽい流れ。なので逆らわずに私も……って私はもう知り合いだから別にいいか。

 

「F・ノバルティスだ。《身喰らう蛇》の第六柱にして、《十三工房》を任されている。フフ、どうか気軽に博士とでも呼んでくれたまえ」

 

「……なるほど。貴方の仕業だったんですね。導力ネットのハッキングに使われた不可解なコードを開発したのは」

 

「ほお……!? あのコードが分かるのかね!? あれは《星振のコード》と言ってね! 結社のネットワークで使われている──」

 

「博士、博士」

 

「うわー、オタクの早口が始まったー」

 

「そういえば教団の被験者でエプスタインの連中が拾った娘というのがいたか……どうだね君!? その才能を《結社》のために活かすつもりはないかね!?」

 

「お断りします」

 

「ガーン!」

 

 おお、いいぞー! ティオちゃん! 博士にショックを与えた! もっと言ってやれ! というか受けるわけないだろ! 才能を活かすってどうせ実験だし! 確かにティオちゃんなら色々出来そうだけど! ゲーム開発の相談とか乗ってほしい! 結社には入らなくてもいいけど連絡先交換しない? ENIGMAⅡやってる? 

 

「まったく……レンに逃げられたからといってさすがに必死すぎないかい?」

 

「べ、別にレンの話はここでは関係ないだろう?」

 

「いや、絶対関係あるじゃん」

 

「──さて、次は私ですか。我が名はアリアンロード。《身喰らう蛇》の第七柱にして、《鋼》の名を冠されています」

 

「っ……」

 

「なんて澄んだ声……」

 

「ゴツい鎧を着ているが、女みてぇだな……」

 

「し、信じられないほどの威圧感ですけど……」

 

「……貴様が《結社》の最強の使い手というわけか」

 

 そしてどうでもいい博士の次はそう! リアンヌ様! 結社最強の1人! そして最高のママ! 美人! エリィちゃんの言うように声もいいぞ! ノエルちゃんとリーシャちゃんも分かってるね! 結社で1番の武人と言えばリアンヌ様! まあ異能も含めた最強で言うとマクバーンかリアンヌ様かどっちだろうって感じだけど最強には違いない! めっちゃ強いぞすごいぞ! 

 

「確かに身震いするほどの闘気の持ち主のようだが──この《(イン)》を前にしてその余裕、どれだけ保てるかな?」

 

「……………………」

 

「え?」

 

 いや、リーシャちゃん? さすがにそれは……いやでも《(イン)》ロールプレイの最中だから仕方ないのかな。さすがにリーシャちゃんならリアンヌ様には勝てないって分かってそうだけど……どっちも戦ったことある私としては申し訳ないけどリーシャちゃんじゃリアンヌ様には全然及ばないくらいの実力差だし……いや、リーシャちゃんもすっごい強いんだけどね? ただリアンヌ様は最強なので仕方ないというか……だからやめといた方が良くない? 

 

「お、おい《(イン)》……」

 

「どうしてそんな……」

 

「ウフフ、なかなか興味深い対戦カードだとは思うけど……」

 

「ええー……? そうかなぁ……正直やめた方がいいと思うんだけど……」

 

「……貴様、この《(イン)》を愚弄するか」

 

「え? いやいやいや、そんなつもりは全然ないない! 気に触ったならごめんね? ただやめた方がそっちの身のためだなーって思っただけで……」

 

「…………」

 

「フフ、これはこれは。珍しくアーヤもやる気みたいだね。それでも面白そうだけど……その前に、ここのヌシが戻ってきたみたいだねぇ」

 

 ──え? いやいや、全然やる気ないんですけど? ただちょっと疑問に思ったのとリーシャちゃんのためを思ってやめた方がいいって口にしちゃっただけで。気に触ったなら謝るから許してほしい。

 そもそも私としても護衛で来てるから戦うってなるとまず私が前に出る必要もあるし……リーシャちゃんとは戦いたくないんだよなぁ……って、そういえばヌシって……あー、幻獣ね? うわ、本当だ来てる。そういえば特務支援課が幻獣と戦うんだっけ……ってそりゃそうか。そうなるよね。なら私は戦う必要ないし、このままここで眺めてればいっか。特務支援課がんばえー。その調子で──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グオオオオオオオオオオ!!!」

 

「え? ──うわああああああああ!!?」

 

「って、え……?」

 

「これは……」

 

「あらら、またこのパターン? なんか()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「またこのパターン? じゃないっ!! いやー!? 誰か助けてー!! おまわりさーん!!」

 

「こっちに来た!?」

 

「くっ……そうやって俺たちにけしかける気か!?」

 

「そうはさせません……!」

 

「どちらも倒してしまえばいいだけのことだ……! 速やかに()()()()調伏する!」

 

 ちょっとー!? 私は魔獣でも妖怪でも呪霊でもなんでもないんですけどー!? やるなら幻獣だけやれー! くっそー! こうなったらバトルロイヤルだ!! で、良い感じに隠れて逃げてやる! だってどっちも相手にしたくないんだもん! なので幻獣もリーシャちゃんもこっち来ないでー!! うわあああああああん!!




今回はこんなところで。次回はまた特務支援課と色々。クロスベルで赤い星座が大暴れしつつ庭園も暴れます。お楽しみに。

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