──10月23日。遂にトールズ士官学院・学院祭が始まった。
前日の午後にはクロスベル自治州で国家独立宣言が行われて国際情勢が不安になる中ではあったものの、正直なところ現実味が薄く、どこか遠いものに思えたこともあってそこまで気にすることなく学院祭に意識を向けることが出来た。
俺たちⅦ組の出し物であるステージは明日、2日目の午後に行われるため1日目はそれぞれ部活の出し物の手伝いをしたり、思い思いに過ごすために一度解散となった。俺も生徒会の予備メンバーとしてトワ会長を一度訪ねつつ、特典チケットを貰った俺は学院祭を楽しもうと見て回ることにした。各クラスや部活、有志の出し物。どれに誰を誘うかと迷いながらも知り合いに声をかけたり、Ⅶ組や親しい相手を誘って様々な場所に顔を出した。
そんな限られた時間の中で選んだ仲間たちとの楽しい時間の中で、俺は一度アーヤ教官のことも誘ってみた。
「ほらほらサラちゃん! 早く早く! 早く行かないと全部見て回れないよ! そして私と勝負だ!」
「あんたね……アタシらの仕事は学院祭を楽しむことじゃないんだけど? ちゃんとわかってるの?」
「いやいや、実際に体験しないとわからないこともあるし、全部見て回るのも教官として大事なことだと思うけど? あっ、それとも私に負けるのが嫌? みっしぃパニックとか乗馬レースとかブレード対決とか色々あるみたいだけど……それなら勝負は無しでもいいよ?」
「負けるって決めつけてきてんじゃないわよ! 上等よ! そこまで言うなら勝負よ! 今日こそあんたをぎゃふんと言わせてやるわ!」
「ふふん。その意気だよサラちゃん!」
……ちなみに俺が誘う前のアーヤ教官は相変わらず、そして珍しくサラ教官と学院祭を回っていたようで、そんな風に互いに言い合いを行っていた。なんだかんだ2人とも1番最初に見せていた雰囲気の悪さは緩和され、その言い合いも険しいものはあまりない。口には出さないがサラ教官もアーヤ教官のことを認めているのかもしれないな。
そしてそんなアーヤ教官を誘って俺はⅠ年Ⅳ組の出し物である東方茶屋《雅》に行ってみた。
「おお! 本当に東方風だ! いいねいいねー! しっかりと下調べしてるのがよくわかる!」
「抹茶とお茶菓子を注文出来るみたいです。とりあえず適当に空いてる席に座りましょう」
そうして俺とアーヤ教官は空いてる席に座り、程なくして届いたお茶菓子と抹茶を堪能したが、アーヤ教官はかなり美味しそうにしていて。
「うん! 味も良い感じ! 飾り付けもちゃんとしてるし、まさか帝国で東方風の味わいが楽しめるなんて思わなかったね」
「教官は東方の文化の造詣が深いみたいですけど……?」
「生まれは中東だけど育ちは殆ど共和国だからねー。共和国は東方系の移民も多いし東方風の街なんかもあるから向こうにいた頃は東方系のお店もよく利用してたよ」
「なるほど……やっぱりお詳しいんですね」
「そういうリィンくんも結構詳しそうに見えるけど?」
「俺は老師に教えられましたから。そのおかげで故郷のユミルでも東方系の文化も少し根付いてて」
「老師……《剣仙》ユン・カーファイだね。あの人かぁ……」
「? もしかしてご存知なんですか?」
「ああ、いや別に知り合いってわけじゃないんだけどね。ただ八葉一刀流には結構苦い思い出が……斬られたり斬られたり斬られたり……なんなら私の友達にも八葉……では一応ないけど東方のすっごい強い剣士がいて、その子にも斬られまくって大変だったなぁ……」
「き、斬られてばかりですが……」
遠い目をしながら薄く笑みを浮かべて斬られたことを口にするアーヤ教官はどうやらかなり苦労してきたようだ。ただ斬られたと言いながらもアーヤ教官がこうして無事でいる辺り実際は殆ど斬られなかったんだろうというのは想像がつく。アーヤ教官の硬さは既に俺たちⅦ組にとっても知るところだからな。実力もあのアルゼイド子爵から1本取って認められるほどだし……もしかしたらユン老師とも良い勝負が出来るのかもしれないな。
「えっと、突然ですが“おみくじ”を引いてみませんか?」
「おみくじっていうと確か……」
「女神様に祈願して吉凶を占う東方の文化なの。チケットを使ってくれたお客様だけのサービスよ」
「おみくじか~。こっちも懐かしくていいね!」
「せっかくですし引いてみましょうか」
そうして話し込んでいると店員をしている姉妹のリンデとヴィヴィがおみくじを持ってやってきたので俺とアーヤ教官はそれを引いてみることにした。
おみくじには様々な吉凶を占う開運おみくじと恋愛や相性を占う縁結びおみくじが引けるようになっていたので、俺は迷いながらも開運おみくじの方を引いてみたが……。
「俺の方は……《末吉》か。『──大小様々な出来事に巻き込まれ、振り回される気配。へこたれずに対応していけば知り合いの信頼を得られる』」
「なんかリィンくんらしいね。めちゃくちゃ当たってそう」
「今までも色々と巻き込まれてますけどね。アーヤ教官の方はなんて書いてあったんですか?」
「私は《大凶》だね。『──向かう先向かう先で災いあり。災難が起こっても慌てず落ち着いて対応すれば被害を軽減できるだろう』と、そんな感じかな」
「だ、大凶って……俺より酷いこと書かれてるじゃないですか」
「うん、まあこれくらいよくあることだから大したことないんじゃない? 私って人よりちょっとだけ運が悪かったりするし。でも知り合いの占い師の占いだと未来は明るいっぽいし、これまでもなんだかんだ落ち着いて対応してきたからなんとかなるなる! ……多分!」
「はは……あんまり気にしてないみたいですね」
「当たるも八卦。当たらぬも八卦だからね! 占いは好きだし信じる方だけど酷い結果の時は信じないくらいがちょうどいいかな! だからリィンくんもあんまり気にせず頑張ろうね!」
「……ええ、そうですね」
そうして互いのおみくじについての感想を言い合った後はおみくじをみくじ掛けにかけ、アーヤ教官と別れて互いに別の場所へ向かうことにした。
──その後、俺たちが学院祭の1日目を存分に楽しみ、寮に戻ってからは最後の調整を行いつつクロスベル国際銀行が国外資産を凍結するということに対しても皆で話し合ったがすぐに帝国に影響が出るものではないとされて明日の学院祭も予定通り行われることになった。
だがそんな中で突如起こった旧校舎の異変に、ヴァンダイク学院長の判断で学院祭が中止の方向で進められることになると聞いた。
だがここで終わりなんて認めたくない。
俺たちがここにいた証を残すためにも、旧校舎の異変を解決して俺たちが明日を掴む──そのことを俺たちは学院長や教官、先輩方にもお願いした。
そして俺たちⅦ組のメンバーなら光の障壁で包まれた旧校舎の中に入ることが出来る。そのことを理解すると教官たちも24時までの調査を認めて背中を押してくれた。
「アーヤちゃんのアドバイス! ラストダンジョンなんだから出し惜しみはしないこと! ってことでみんな頑張ってね!」
──アーヤ教官もそんな相変わらず少しおかしな言い方だけど俺たちを激励してくれた。
そして俺たちは旧校舎の第7層……今までとは違ったその空間の探索を開始した。
俺たちがトールズにやってきてから培ってきた全てを出し切る。そうして数多の魔獣や仕掛けを踏破して最奥に辿り着いた時──再び謎の声が聞こえた。
──《起動者》候補ニ告ゲル──コレナルハ“巨イナルチカラ”ノ欠片──手ニスル資格ガ汝ニアリシカ『最後ノ試シ』ヲ執行スル──
……そんな言葉と共に謎の空間……幾つもの剣が刺さった戦場……灰色の空間に飛ばされた俺たちはそこに現れた巨大な影を相手に戦った。
激戦の末に辛くもその影を撃破し、最後の試しとやらをクリアした俺たちに……再び謎の意味深めいた声が届く。
コレニテ『最後ノ試シ』を終了スル──《起動者》ヨ、心セヨ──コレナルハ“巨イナルチカラ”ノ欠片──世界ヲ呑ミ込ム“焔”ニシテ“顎”ナリ──
その言葉と共に俺の目の前には一連の文字列……いや、名前のようなものが浮かび上がり……それから俺たちは再び旧校舎へと戻された。
サラ教官にアーヤ教官。トワ会長やジョルジュ先輩が待っていたそこで、最後に扉が開いて謎の“灰色の騎士人形”を目撃した俺たちは気にはなりつつも明日の学院祭に備えるために調査はジョルジュ先輩たちに任せて寮に戻って睡眠を取り、無事学院祭2日目を迎えたのだった。
そして午後には予定通りに俺たちのステージ──アーヤ教官に仕立ててもらった衣装に身を包み、俺たちは練習の成果を全力で観客に披露した。
そのステージは大盛況で出し物としてもⅠ組を上回って最も得票数を得たものとなった。
その際にアーヤ教官は諸事情によりステージを見られなかったのが少し残念だが、記録結晶に残してあるので後で見てもらうことになり、俺たちは学院祭最後のイベントである後夜祭を楽しむことにした。
俺はステージのために特に尽力してくれたエリオットとクロウに感謝を述べ、クロウからはこれで同じクラスでいられるのも最後という話と共に以前貸していた50ミラを利子もなく返してもらった。
そのことに確かな絆を感じつつも、周囲は思い思いの相手を誘って踊り始める。俺もエリゼを誘ってみたが、エリゼから気になる人を誘ってはと促されたこともあって俺はエリゼをアルフィン殿下に任せ、気になる相手を誘って後夜祭の時間を2人きりで過ごすことにした。
そうして気になった相手との時間を過ごした直後──俺は突如背後から声をかけられた。
「ふっふっふ……見ちゃった。さすがはリィンくん。隅に置けないねー」
「! アーヤ教官……! 戻ってたんですか?」
「さっき戻ってきたところだよ。ちょっと仕事関係で色々あってね。いやー本当に大変だった……」
声をかけてきた相手はアーヤ教官で、アーヤ教官は俺が二人きりで過ごしていた相手のことを思っているのか、少しニヤリとした表情で俺をからかってきた。とはいえ特に何かあったわけではないが、それでも少し気恥ずかしさはある。だから抗議したい気持ちはあったが……それよりもアーヤ教官の様子が気になった。どうにも疲れている様子だったので俺はそのことを尋ねる。
「えっと……お疲れみたいですね?」
「まあね。体力的にはそこまででもないんだけどちょっと精神的に面倒で。だからせめて学院祭でも見届けてストレス軽減しようと思ったんだけど……もう終わりみたいだね。こうなったらⅦ組のステージの記録結晶でも見て夜通し盛り上がるしかないかなー」
「はは……ええ、是非見てください。アーヤ教官も衣装を仕立ててもらってありがとうございました」
「ステージ衣装作るのは楽しかったし、教え子に協力出来たんなら教師冥利に尽きるから全然問題なし! リィンくんこそありがとね! 気遣ってくれて先生嬉しいよ!」
「いえ……サラ教官もそうですけどアーヤ教官にも色々と教えてもらいましたから。──Ⅶ組の仲間として当然のことをしただけです」
「…………え?」
俺がそう言うとアーヤ教官はどうしてかきょとんと呆気に取られたような表情を浮かべた。
「……? どうかしたんですか?」
「……ああ、いや、なんでもないよ。──でも、そっかぁ……うん、そう言ってもらえると嬉しいよ!」
なぜ驚いているのかわからなかったが、アーヤ教官は自己完結したようで再びいつもの明るく何の悩みもなさそうな笑みを浮かべる。そして何を思ったのか、ひとりでに小声で呟き始め──
「うん……そうだね。せっかくだし……よし! リィンくん!」
「は、はい! なんでしょうか?」
「ちょっとこっち来て」
「ええ……いいですけど……」
そうしてアーヤ教官は俺について来るように言い、俺を先導してある場所へ向かう。その場所は──
「……旧校舎? 教官、ここで何を……」
「よし、構えて! そして力を解放してみよう!」
「──え?」
──と、アーヤ教官はそこで突然振り返り、空間から巨大な鋏のような獲物を取り出すと俺にそう告げた。
俺はわけがわからずに聞き返す。
「ど……どういうことですか? なぜいきなりそんな……」
「いきなりだけどあんまり時間がないからね。この機会にちょっとだけ力の制御を練習させてあげようと思って。だからやってみよう! 先生なら大丈夫だから!」
「ですが……」
「大丈夫。先生結構強いからね! それに先生も──リィンくんほどじゃないと思うけど異能持ってるから。安心していいよ」
「! それは……」
どうやらアーヤ教官は俺に授業を──いや、稽古をつけてくれるらしい。それに俺の中にある力の制御の練習……それも兼ねた。
何も今この時、後夜祭の中で行わなくてもいいとは思うが……アーヤ教官も今行いたくなった理由があるのだろう。時間がないという意味が俺にはわからないが──。
「……わかりました。教官のご厚意に甘えさせて頂きます」
「その意気だよ! さあ、かかってきなさい!」
──俺はアーヤ教官の申し出を受け、太刀を構えた。
そして力を引き出して全力で、アルゼイド子爵に受け止めてもらったように、アーヤ教官に俺の全力を受け止めてもらった。
だがそれでもアーヤ教官はいつも通り余裕綽々──「うわああああ!? 危なっ!? 思ったより速いし強いね!?」……とまではいかないが、それでもまだ余裕がある様子であり、俺の攻撃は何一つとして通じなかった。アーヤ教官は巧みにその特殊な獲物を使いこなして俺の攻撃を防ぐ。大剣に双剣。そして鋏としても使うアーヤ教官の戦闘は中々に捉えがたかった。
だがそれでも以前よりも更に手応えのある戦いが出来ただろう。俺はアーヤ教官に一太刀をなんとか浴びせたところで力尽き、膝を突く。
「はぁ……はぁ……」
「うん、以前よりは使いこなせてる気がする! ちょっとだけびびったところもあったし、強くなってるね! ……正直普通に斬られるかと思った……」
「……ありがとうございます。これも教官たちの教えのおかげです」
俺はなんとか呼吸を整え、刀を収めると最後アーヤ教官に礼を言う。仲間たちやこれまで関わってきた人たちが俺の成長の糧になってくれたように、アーヤ教官からも様々なことを教わってきた。これからもまだ色んなことを教えてもらうことになるだろう。その意味でも改めてよろしくお願いしますと俺は礼をして……。
「……ま、社会人や異能持ちの先輩として言えるのは……変な力があるからってあんまり人と違うって悩みすぎないこと! 世の中思ったより異能持ちは多いんだから」
「そ、そうなんですか?」
「うん。私が知ってる限りでも2、30人……いや、なんなら3桁くらいはいただろうからね」
「そんなに……世界は思ったより広いんですね」
「そうそう。それを思えば異能持ちなんて全然普通の人の範疇でしょ? 私に言わせれば理に至ったような達人の方がよっぽど人外だよ」
「じ、人外は言い過ぎじゃないですか?」
アーヤ教官の言葉を聞いて、俺は考える。確かに……アーヤ教官の言う通りかもしれない。
それをすぐに受け止めることは出来ないし、今だ迷いもあるが……それでもアーヤ教官が俺を励ましてくれようとしていること。他にもアーヤ教官のように俺と同じような謎の力を持っている人がいることは理解できた。
「……アーヤ教官は悩まなかったんですか?」
「私? 私は別に……考えても仕方ないことだし、今でもよくわかってないからあんまりそういうのはないかな。強いて言うなら仕事のことで悩むことはあるけどね」
「仕事での悩み、ですか……それはやっぱり情報局の?」
「それもあるけどそれだけじゃなくてねー。リィンくんも……まあリィンくんならきっと乗り越えられるとは思うけど気をつけてね。世の中……特に
「自分の意志だけじゃ動けなくなる……」
「まあ要はしがらみに囚われるって言うのかな? 特にリィンくんやこの士官学院の生徒は力を付けて将来軍人になる可能性もあるわけだし。国や上司に命令されて仕方なく他者を傷つけて、時に命を奪うことだってありえるんじゃないかな」
俺はアーヤ教官のその言葉を聞いて、自然と重く受け止める。
アーヤ教官のその言葉には普段のおちゃらけている時と違って、実感を伴った説得力のあるものに聞こえたからだ。
「そう、ですね。肝に銘じておきます。この先どんな道を選ぶにしても」
「うん、頑張ってね! 柄にもなく色々言っちゃったけど、もしなんか違うなってなったら全然忘れてもいいから!」
「……はい。わかりました。そういうところも含めてこれからもよろしくお願いします」
「──
そうしてアーヤ教官からまた新たな教えを授かってから俺はグラウンドに戻ることにした。アーヤ教官は気遣い上手で、サラ教官のこともそうだが、俺や他の生徒に対してもアドバイスをしながらも気にしすぎないように慮ってくれている。常に楽しそうに生きてる様子も悩みを忘れさせてくれるし、自然と元気が出るものだ。そういう部分も見習うべきなのかもしれないな。俺はそう思い、再びエリゼと合流した。
──だが俺はアーヤ教官の言葉を本当の意味で理解出来てなかったのだろう。
力を持っているものが囚われる宿命……それをようやく。ほんの僅かだが理解出来たのは10月30日。
東部国境にあるガレリア要塞がクロスベル独立国の謎の兵器により消滅させられ、《鉄血宰相》ギリアス・オズボーンがクロスベルへの侵攻を行う演説を行った日──そしてオズボーン宰相が狙撃された日のことだ。
俺たちⅦ組は教室で導力ラジオ越しにその様子を聞いて、そして見ることになる──他ならぬミスティさんの手によって。
『なら──士官学院の皆さんには学院祭で愉しませてくれた“お礼”をしちゃおうかしら?』
そんな俺たちに語りかけてくるような声と続いた唄によって、俺たちの前には帝都の広場を──いや、帝都を映し出される。
「《蒼の深淵》の秘術──『幻想の唄』!」
その不思議な導力魔法ではない術の正体をエマが口にして──俺たちはそこで起こった出来事を目の当たりにした。
帝都の空に浮かぶ巨大な飛空艇にそこから降り立った巨大な騎士人形。それらが帝都の守備隊を蹂躙し、見覚えのある人たちが映し出され──最後にはその術を使った者の正体……ミスティさんではなく帝都歌劇場のオペラ歌手のヴィータ・クロチルダではない。別の顔を持つヴィータさんが──
「──ヴィータ! はい! 可愛い可愛い! ヴィータ! はいはいはい! 永遠の17歳! 世界一可愛いよー! ふっふー!」
「──アーヤ? 雰囲気が壊れるからふざけたコールはやめてくれるかしら?」
「すみませんでした……」
「君も懲りないな……」
──何やらアーヤ教官がヴィータさんに睨まれ詰められてる光景が映ったが……それはともかくとしても以前出会った怪盗Bこと《怪盗紳士》ブルブランと共にいるヴィータさんは結社の使徒第二柱《蒼の深淵》ヴィータ・クロチルダと言うことがわかり……更に彼女と一緒にいるアーヤ教官の正体は、サラ教官が教えてくれた。
「アーヤは……あいつは、結社の執行者No.ⅩⅢ。《血染の裁縫師》と呼ばれる──大陸最強の暗殺者よ」
俺たちはその事実にショックを受け……しかしすぐに更なる衝撃と事態に見舞われることになった。
学院を襲撃する機甲兵と教官陣の助け。そしてシャロンさんの助けもあってなんとか勝機が見え──「こら──!! 私の生徒たちを虐めるなー!!」──なんでアーヤ教官がこっち側で戦ってるんですか?
敵になったとショックを受けてる最中だったのにも関わらず加勢してきたアーヤ教官に困惑しつつも、俺は《C》の正体であったクロウとの戦いの果てに──俺は呼び出した《灰の騎神》ヴァリマールと共に仲間たちを置いてどこかへ去ってしまうことになった……。
──おはようございます。結社《身喰らう蛇》の執行者No.ⅩⅢ《血染の裁縫師》アーヤ・サイードです。
ということで教官でいられるのも最後。私は最後の時間までしっかりと教師として生徒たちに色々と技術を教えつつも学院祭の準備に協力したり、最高の衣装を仕立ててあげて、そして学院祭当日はサラちゃんやリィンくん。他の生徒と一緒に楽しく過ごした。
いやー本当に楽しかった。学院祭もそうだけどこの半年くらいはなんだかんだ充実してたね。教師生活も悪くない。なんだかんだ生徒と仲良くなったので普通に皆可愛く見えるよね。大変だったけど来て良かった。
とはいえ結果的には離れなきゃいけないのは心苦しくはあるけど、それもしょうがない。元々ここに来たのはお仕事のためだからね。オズボーン宰相の依頼だったし、結社の仕事もある。地味にリィンくんたちがちゃんとラストダンジョンをクリアして《灰の騎神》を目覚めさせたのは確認出来たのは良かった。クロウから報告は行くと思うけど私からもヴィータ姉さんに伝えつつ、私はそれからすぐにクロスベルへ。あー忙し。謎ワープがあってもめんどい。でも仕事だからしょうがないと割り切って私はすぐに結社の面々と合流した。リアンヌ様にデュバリィちゃんたち鉄機隊の面々にカンパネルラ。それと博士。それぞれ別れて鐘を起動させないといけないんだよね。それじゃあ私はリアンヌ様と一緒に──
「なんで博士なのかなぁ……はぁ……私もリアンヌ様と一緒が良かった……」
「戦力バランスを考えるとこうなるのだから仕方あるまい。希望に添えずすまなかったな」
「ううん、アイネスちゃんと一緒なのはいいよ。でも博士がついてくる必要はないと思うんだけどなぁ」
「実際にご覧になりたいと言うのだ。仕方あるまい。我慢する他ないだろう」
「そうだね。我慢するよ」
「──君たち、よく本人の前でそう文句が言えるね? まあ構わないが。ようやく《至宝》の誕生をこの目で見届けることが出来るのだから……!」
──ってことで私の担当はアイネスちゃんと共に博士を守りつつ一箇所の鐘を担当。リアンヌ様とデュバリィちゃん。カンパネルラとエンネアちゃんがまた別の場所だ。いやまあアイネスちゃんが言うように戦力バランスではそうなるよねって感じの配置だから仕方ないんだけどため息が出る。せっかくまたリアンヌ様と一緒にいれると思ったんだけどなぁ……というか博士以外ならどこの組でも良かったんだけどね。デュバリィちゃんは親友だしアイネスちゃんにエンネアちゃんも友達。カンパネルラとも仲良いし。博士だけは約束の日が間近に迫ってることもあってテンション高いからコミュニケーション取りづらいし嫌なんだよね。はーあ。仕方ない。さっさと攻略しよ。といっても道中の魔獣を蹴散らしてしばらく守ってるだけでいいんだけどね。別に苦もない。なんなら私とアイネスちゃんの2人もいらない。……やっぱり私リアンヌ様の方に行っても良かったのでは? というか私いる? 本当は学院祭の2日目も楽しみたかったんですけど! 特務支援課がキーアちゃんが攫われてマリアベルが裏切っててアリオスにボコボコにされて絶望するところとか別に見たくないんですけど! ゲーム的には面白くても現実として見ると心苦しいし!
でもまあやることはやらないといけないんだよね。今はやることないけどこの後はちょっとだけ、クロスベル市内の不穏分子を排除しないといけないし……仕方ないからさっさと済ませてトールズに帰ろう。学院祭で癒やされたい。イベント見守るかー。
私は気持ちを切り替えつつミシュラムの鏡の城の奥にいるマリアベルとアリオス。そしてキーアちゃんの元にたどり着く特務支援課をリアルタイムの映像越しで眺めた。可哀想にキーアちゃん。特務支援課も。まさかキーアちゃんみたいな子供が仕方ないとはいえ狙われるなんて──ダッッッッッッッサ! え、マリアベル嘘でしょ? 何その格好? ニチアサに出てくる悪の組織の女幹部みたいな格好してる!? って、そういえば原作でもこんな格好だったっけ……うわぁ……似合ってない、こともない……ようで、やっぱり似合わない……なんだろう。ミスマッチって言えばいいのかな。衣装が悪いわけでもなければ、そういうシチュエーションで着るならいいんだけど、このシリアスな場で普通に出てくるにはそぐわないというか……そういうのはコスプレとか実際に魔法少女モノを撮影する時に着るのが良いのであって……いやまあ好きで着てるなら出来る限り否定したくないデザイナーの私ではあるけどセンスの悪さと間の悪さはどうにも……ううん……とりあえず改善策として本当にニチアサっぽい魔法少女モノ撮影しない? 共和国の知り合いの映画スタッフに連絡して実際に悪役として起用してもらおう。そうして見るなら……なんかマシに見えてくる気がする。作品内の格好として見ればむしろテンション上がるまであるからね。よし、そうしよう。一見して微妙なファッションも演出によってはお洒落に見えるもの。ファッションデザイナーとして新たな境地に挑戦だ! もしかしたらマリアベルの今の格好がお洒落の最先端と言われる時代になるかもしれない!
『ウフフ……盛り上がってるじゃない?』
『《
『アーヤまで……!』
『やはり彼らと繋がりが……』
『フフ、お互い協力関係を結んでいるだけですけど……──皆さん。もう準備は宜しいのかしら?』
「フフ、もちろんだとも。満足して貰える性能に仕上がっていると思うよ?」
『《鐘》の準備も出来ています。あとはそちらの《鍵》を回すだけ』
「え、何? ごめん聞いてなかった。マリアベルの服装がダサいから今度知り合いの映画監督に紹介しようと思ってたんだけどどうかな?」
『君はまたものすごい意味不明だね? なんで服がダサいから映画監督に紹介することになるのさ』
『だ、ダサいですって!? くっ……ですがこの格好はクロイス家の錬金術の秘術をより効果的に発揮するための──』
『どうどう。落ち着いて。そろそろ時間切れなんだからさ』
あ、やばい。全然話聞いてなくてイベント見逃した。でもようするに、マリアベルは至宝を受け継いたクロイス家の末裔としてそれを復活させるために動いていたというネタバラシだ。クロスベルを巨大な《式》に見立てて造り、《星見の塔》も建造して教団に技術提供していた錬金術師も実はクロイス家で教団はクロイス家の傀儡。目的を達成するための駒でしたという話だ。──って、全部聞いてるじゃん! さすが私!
でもあれだね。若干不快な話だったから珍しく私も聞きたくなかったのかもしれない。全然聞こえてたけどね。
──そしてそうこう言ってる間に帝国と共和国によるクロスベル侵攻が始まって……あーあー……大変だーこのままクロスベルが戦場になる上に侵略されちゃうよー。こんな時にどうすればいいの!? と、困っているそんなあなたにおすすめなのがこの《零の至宝》! こいつは因果律を操ることが出来る《幻の至宝》の上位互換! 空と時の至宝の力も一部持ってるとかいう正真正銘の奇跡! とんでもないチートだ! それこそがキーアちゃん! キーアちゃんがいればなんでも出来るぞ! 軍事侵攻なんてお茶の子さいさいだ! あ、因みに特務支援課はアリオスにあっさりやられてました。動揺してるせいか、以前よりも弱い気がする。やっぱり連携とか精神的な部分が強みの特務支援課はこういう動揺している時は力が発揮出来ないね。そしてキーアちゃんが変身──かわいい~~~~~~!! ちょっと成長して髪も白くなってファンタジーヒロイン感がすごい! それにこうやって見ると……あれ? もしかしてマリアベルの格好ってキーアちゃんとシナジーある? そういうコンセプトってこと? ならまあ……理解出来なくもないかな? 単体で着てると浮くけどそういうコンセプト同士で並べば見れるものになる。これもファッションの妙だ。なるほど。私の評価は早計だったのかもしれない。それはそれとしてマリアベルの私服はダサいんだけど、零の至宝になったキーアちゃんと一緒にいる分にはそういう世界観のファッションだから良いかもしれないね。
さてさて、ファッションに一考の余地があるのは良かったとして、それはともかく次は私たちもオルキスタワー屋上に移動して見届けないとね。先にディーターにシグムントさんにシャーリィちゃん。そしてヴァルドくんが待ってる。《零の至宝》になったキーアちゃんを見てそれぞれ感心したり驚いたり。そしてディーターは「キーア君──いや、教団にならって《御子》殿と呼ばせてもらおう」なんてことを言ってるけど教団なんかにならう必要ある? 教団にならうとか恥以外の何者でもないと思うんだけどなー。まあ、好きにすればいいけどね。ただやっぱりキーアちゃんは可哀想だなぁ……なので出来る限り気にかけてあげるとしよう。こうするしかなかったって気持ちは私もわからないでもないしねー。どうしようもない時はスパッと諦めてポジティブに考えた方がいいし。キーアちゃんには必要ないかもだけどそういう考え方もあるよって暇な時に教えてあげようかな。お洒落させたり美味しいご飯あげながらね。
──と、そう考えながらも謎ワープで私も移動。リアンヌ様に博士にカンパネルラと一緒にご挨拶。この場でフランクに挨拶するのもなんなので後ろの方で笑顔でちっちゃく手を振っとこう。また後で遊ぼうねー。
そして博士から、というか結社からの献上品。《神機アイオーン》を3体捧げる。ゴルディアス級の最終型で機甲兵とは少し違う大型の決戦兵器だね。私はなんだかんだ博士の実験に協力しまくってるからよく知ってる。基本の技術はゴルディアス級ってついてるようにローゼンベルク工房の、つまりヨルグおじいちゃんの研究をパクったものだけど博士は《統合理論》で色んな技術を結集させて1を100にするような研究が得意だからこの神機もそんな感じで作られてるはずだ。黒の工房とか他の十三工房の技術の粋を集めた結晶って感じだね。戦うと痛いし硬いからやだ。ちなみに動かすには色々と必要なものがあるんだけど、今回に限ってはキーアちゃんが《零の至宝》となったのでキーアちゃんが接続して3体同時に運用出来る。それを使って共和国軍に帝国軍。ついでにガレリア要塞を粉砕! 玉砕! 大喝采! ……うん! 怖ぁ……何あれ……あんなもん食らったら木っ端微塵に消失しちゃうよ……ふぇぇ……。
私はそうしてドン引きするが、この場で私の気持ちを理解出来そうなのはヴァルドくんとキーアちゃんくらいだろう。他は割と大喜びだ。ディーターなんて特に高笑いしてる。今この時からクロスベルは聖地になったんだって。へぇへぇへぇ。3へぇかな。この人、悪い人じゃないんだけど喋っててちょっと困っちゃう時がある。正義論とか付き合わされても「人によって違うと思います」なんて面倒臭い議論が始まりそうなことは言えないし……上手い具合に話を合わせないといけないんだよね。とりあえず
──ということでクロスベル独立国が発足してキーアちゃんは《零の至宝》になって特務支援課は捕まってしまいましたとさ。うーん、絶望感がすごい。特務支援課は散り散りになるし、遊撃士もアリオスがこっち側について
私は一抹の不安を思いながらも、速攻でトールズ士官学院に戻る。学院祭がまだあるからね。もう後夜祭の時間だけど戻れただけ御の字だ。移動もそうだけどクロスベルのイベントは精神的に気が滅入りそうなことばっかりだったし、少しリフレッシュしないとねー。
と、思ってたらリィンくんが女の子と一緒にいるのを見たのでそれをしばらく隠れて眺めてニヤニヤした。ストレスが一瞬で回復した。そっかぁ……リィンくんはあの子を選ぶんだー……へぇ~……ふぅ~ん……?
私は原作さながらの絆イベントを見れて楽しくなりつつも邪魔はせず、それが終わってから声をかける。まだあの子を選ぶとは限らないけど、一先ずは一歩リードしてるって感じなのかな? うんうん、いいね、青春だねー!
そんで会話を行ったんだけど……なんかリィンくんが途中、私のこともⅦ組の仲間って言ったのでちょっとびっくりした。私も? いや、違うと思ってたんだけど……って。
でもそう言われるのは素直に嬉しかったので、私も仲間と言ってもらえたからには何かしてあげたい。これから裏切るにしても教官でもあることには変わりないし、最後に何かしてあげようとその場で考えた結果……私にしては珍しくリィンくんと戦って経験値になってあげることにした。
なので速攻旧校舎前まで移動して手合わせを行う。鬼の力を制御出来ないとこの先色々と問題だし、強くなってもらわないとどこで躓くかわからない。なので現時点の強さを確かめることも含めて学院からいなくなる前に戦ってもみたんだけど……ふむふむ。なるほど。ら、楽勝だね。ちょっと危なかったり怖かったところもあったけど、終わってみればあっさりと倒せたというかいなすことが出来た。学生にしてはめちゃくちゃ強いと思うけど、さすがにまだ成長途中って感じだね。
で、その後は悩める若者であるリィンくんに先生からのアドバイスを送った。ぶっちゃけ異能持ちなんて幾らでもいるから悩まなくても大丈夫だし、社会人になると面倒だよーって。リィンくんもこの先はすっごく大変だから頑張ってほしい。さすがにノーマルエンドになってもらっちゃ困るし。敵にはなるけどこれからも気にかけてあげないとね。
そしてまあよろしくと言われたのでこちらも同じくよろしくと返す。教師ではいられないけどそれを言うことも出来ない。でも笑顔でね。よろしくしたい気持ちは本当です。
──それから約一週間。10月30日には遂にオズボーン宰相が演説を行い、更には貴族連合が各地で戦端を開き、クロウがオズボーンを狙撃し、結社は《幻焔計画》第2楽章を開始する。正確にはクロスベルで始まってはいるので第二部って感じだ。
なので私は私で朝から帝都ヘイムダルに趣き、最後にオズボーン宰相に会って「しばらくは結社として、貴族連合として動くといい。私への配慮は無用だ」とお言葉を頂いたのでそれを了承する。一旦こっちのお仕事は完了かな。ただⅦ組への配慮は必要だから続けないとね。そのことを口にしなかったのが気になるけど閣下的には別に良いのかな? そんなはずはないと思うけど私の協力はそこまでいらないという判断だろうか。
まあわからないので考えることをやめて、カイエン公の依頼通りに速攻で第一機甲師団の師団長をやっておく。残念だけどこれも戦争。軍人が相手の軍人を殺すことは正当化されてしまうという悲しい現代の倫理だね。一応これで第一機甲師団の犠牲は減りそうだけど、どの道ある程度は機甲兵で蹂躙することになるだろうからあんまり変わらないかもね。
そしてそれが終わればオズボーン宰相は狙撃され……で、空からは貴族連合の旗艦である《パンタグリュエル》が。地上には機甲兵が現れて第一機甲師団の戦車部隊を破壊していく。おーおー……《西風》の2人も頑張ってる。最強の猟兵団はやっぱ練度が違うなー。そうして眺めつつもヴィータ姉さんとブルブランと合流して、ヴィータ姉さんがミスティという小芝居を行ってから唄を歌ってⅦ組にメッセージを送ってたので私もペンライトを振って全力コールした。怒られた。応援したかっただけなのに……。
……でもまあとりあえず帝都でやるべき仕事は終わったし、後は《パンタグリュエル》に乗せてもらって貴族連合や他の結社メンバー……もう来てるっぽいマクバーン辺りと合流すればいいんだけど……領邦軍が戦車と機甲兵の混成部隊でトリスタに向かってるっぽくて……ちょっぴり心配だ。教官陣が化物だらけだから大丈夫だと思うけど一応見に行こうと私はヴィータ姉さんにちょっと離れると断ってからトリスタの街に急行。
するとまあわんさかいること。当然だけど軍隊なのでゲーム上より大量に兵やら戦車やら機甲兵がある。……これを防がなきゃいけないってマジ? 最終的に制圧されるにしても生徒が避難するためにはちょっと頑張らないといけないじゃん。これは見てる場合じゃない! 裏切る前に最後の手助けだ!
「こら──! 私の生徒たちを虐めるなー!」
「何……ぐあっ!?」
機甲兵の殆どがヴァンダイク学院長率いる教官たちに集中していたので私は背後から一気に近づいて強襲。《ゾルフシャマール》を使って機甲兵の足の関節部分を切り裂いて機動力を奪って撃破しておく。──って、よく見たらクルーガーちゃんもいるじゃん!
「結社《身喰らう蛇》に所属する最高位のエージェント……! 執行者No.Ⅸ──《死線》のクルーガー!」
「そちらの方は休業中です。今のわたくしはラインフォルト家の使用人。彼らの背後に誰がいようとお嬢様の場所を守るだけです」
「ならそのクルーガーちゃんに今だけは助太刀するよ!」
「! ──ふふ、やっぱり貴方も来ましたか」
「……! アーヤ……!」
「アーヤ教官……!」
えいっと。ふぅ、クルーガーちゃんが鋼糸で捕えてたんでそこをばっさりと切ってなんとか一体撃破。機甲兵って当然だけどめっちゃ硬いんだよね。戦車よりは装甲薄いけどそれでも硬い。《ゾルフシャマール》の切れ味がなかったらぶっちゃけ無理ゲーだと思う。そしてクルーガーちゃんやサラちゃん。他の教官陣や遠くにいるⅦ組が声を上げてたけど……あれ? なんでそんな驚いてるんだろう。確かに驚きはするだろうけどそこまでのことはやってない。ここの教官陣なら機甲兵の一体くらい1人で普通に倒せるだろうからそれをやっただけなんだけどな……。
「あんたも来たのね……で、あんたはどっちなの?」
「今はまだ教官だよ。だからこの場では協力できるかな」
「……そう。ならあたしも、この場までは同じ教官として信頼してあげるわ──でもその後は叩きのめして思いっきりぶん殴るから覚悟してなさい!」
「ええ……サラちゃん怖っ……いやまあそれは勘弁してほしいんだけどなぁ……」
「貴方は相変わらずですね。しかし実力の方は私を追い抜いてしまったようで、頼もしい限りですわ」
「そんなことないんじゃない? クルーガーちゃんの方が全然強いでしょ?」
「全く……そういうところも仕方ありませんね。その自己評価は今は無視するとして……今は久方ぶりに《死線》と《血染》の妙技をお見せするとしましょう。貴方に合わせますから一体ずつ削りましょうか」
「おお! やったー! 久し振りにクルーガーちゃんと連携だ! これはテンション上がるね!」
と、そんなサラちゃんとクルーガーちゃんのやり取りを経て、クルーガーちゃんが機甲兵を再び雁字搦めにしてくれたので私はそれを切り裂いていく。うん、楽でいいね! 相手が動かないし! しかもサラちゃんも周囲の攻撃が来ないように高速で動きながら支援攻撃も行ってくれるしで本当に楽。他の化け物教官陣も動き出したし、これが連携の力だね! ちょっと感動だ! 基本的に1人で戦ってばっかりだから本当に楽! よし! この調子でどんどん倒すぞー! うおおお!
「チッ……化け物が……! だからてめぇは信用出来ねぇんだよ……!」
ん? この声は……ヴァルカンかな? 帝国解放戦線の。そういえばいたっけ。トリスタの制圧に態々幹部を駆り出すのって力入れすぎじゃない? クロウが来るんだからそれで十分な気も……って、よく見たらⅦ組がいない!? あれ!? ここで戦うんじゃ……って、反対側──!? そっちにいっちゃった! 気配感じるし!
「反対側行ってくる!」
「ちょっと……! 反対側って……」
私は何体目かの機甲兵を潰してからサラちゃんとクルーガーちゃんに断って一度離脱。間に合えー! 走れー! うおおおおお!
そうして頑張って全力で移動する。だけど──
「やめろ、やめてくれええええッ!」
──あああああああ!? 待って、待ってええええっ! ヴァリマールー! 空飛んでいった! 間に合わなかったー! うわああああああん!? くっそー! でもリィンくんは逃げて他のⅦ組の生徒は残ってる! なら全員逃がすために八つ当たりも兼ねて機甲兵をぶっ飛ばすぞー! どけどけー! 機甲兵の一体や二体、なんぼのもんじゃー!
そうして私はしばらく戦って、そしてⅦ組の生徒たちが逃げたのを確認してようやく一息つく。ふぅ。これでよし。後は貴族連合と合流しよう。なんなら送っていってもらおうかなと──
「──見つけたぞ! あいつだ!」
「機甲兵を何体も撃破した情報局の軍人! 《鉄血宰相》の懐刀の1人だ! 気を抜くなよ!」
「…………え?」
私は領邦軍に合流して休憩しようとして──囲まれる。数十体の機甲兵とそれ以上の戦車の群れに。いや、私は貴族連合に協力してる結社の人間で……。
「一斉にかかれーッ!」
「いや、だから──うわああああああ!? ちょ、ちょっと待ってー!? いやあああああ!?」
「! 逃がすな! 機甲兵! 奴を追え! 戦車部隊も砲撃開始!」
「過剰戦力やめろこらー!!? というか味方だって──うわあああああああああん!! お願いだから話を聞いてー!?」
──数十体の機甲兵が私に向かって剣を振り下ろし、銃を撃ち、戦車が砲撃を行ってくる異常事態! 痛い痛い痛い! 私が味方ってことを誰もわかってない! というか声があんまり聞こえてない! もしくは聞こえても無視されてるー! これだから領邦軍はああああ!! いやああああ!! だからやめてー! 人間1人に回す戦力じゃないってばー! うわあああああああああああああああん!!
そうしてエレボニア帝国内で遂に革新派と貴族派による内戦が勃発するのでした……ぐすん……早く味方と合流させて……味方どこ……? どっちに行っても攻撃されるんですけど……
これにて閃の軌跡は終了。アーヤちゃんのイベントは絆イベント1回とAPが甲零級までいった時にだけの裏イベントかな。そしてリィンくんが誰を選んだのかはご想像にお任せします。なんとか界の軌跡発売前に内戦が始まって次回からは閃の軌跡Ⅱに。そして碧の軌跡は最終章になってアーヤちゃんは東奔西走。色んなところで悲鳴が聞こえる大暴れです。お楽しみに。
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