TS不幸少女のゼムリア大陸災難記   作:黒岩

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生徒に闇を教える不幸

 ──オーロックス峡谷道にてリィンとの勝負に負けた後。

 

 俺はⅦ組と共に新たな道を往くことにした。

 もっとも、こうなるだろうという予感はあった。勝負という体裁は取ったもののリィンやⅦ組の仲間であればこの俺の迷いを踏み越えて手を差し伸ばしてくるだろうと半年余りで培ってきた信頼があったからだ。

 ゆえにこそ俺はここに来る前に既に父上に宛てた置き手紙ととある保険をかけてやってきたのだが……勝負が終わってやってきた相手は貴族連合に協力している結社《身喰らう蛇》の面々でそこにはアーヤ教官もいた。

 やはり教官は正規軍やこちら側ではなく結社として、貴族連合に協力する立場として動いていることを再認識し、尋常ならざる使い手と思われるマクバーンとデュバリィという者たちと共に俺たちに襲いかかってきた。

 

 そしてその強さは──分かっていたことではあるが、俺たちの遥か上をいっていた。

 

「はい! そこで攻撃! いいよいいよ! あっ、危ない! やばいやばい避けて! マクバーンの焔は直撃したら大変なことになるから回避推奨! 無理な時は最低でもガード! 食らってもすぐ回復するように!」

 

「貴方どっちの味方ですの!?」

 

「だって教官だし……」

 

「そこまで注意しなくても殺すまでやるつもりはねぇがな」

 

 相手が全員がこちらより格上の3人でなおかつかなりの手加減をしているように見えた。アリサのメイドで元執行者であるシャロンを相手にする時は多少力を出しているためそれがよくわかる。

 そして業腹ではあるものの、俺たちは手加減した3人を相手にほとんど歯が立たなかった。《神速》のデュバリィという言動が妙な甲冑の女はその二つ名の通り、手加減した状態でもかなり素早く、捉えることが難しい。

 アーヤ教官はやはり攻撃を察知し辛いのとそのガードの硬さが厄介だった。攻撃の方はかなり手心を加えてくれているのか、傷つけないように武器やガード出来る時を狙って攻撃してくるため、その巨大な鋏と裁縫針と糸の殺傷能力の高い得物を使っていることを差し引いてもギリギリ対処出来る。だが防御の方はこちらの全力の攻撃を食らっても「痛あっ!?」と無駄にオーバーなリアクションを取るだけで全く効いてる様子はない。戦う前に言ったように実技テストを行っているようだった。

 そして《劫炎》のマクバーンと呼ばれた男は、確かに異常な強さだった。身のこなしも然ることながら駆動も何もなく発生する焔が厄介だ。攻撃にも防御にも使われるその焔は火力も規模も何もかもが桁違い。それでいてあまり力を出しているようには見えない。

 

「──っと、もう終わりか?」

 

「そ、そんな……」

 

「……ここまでとは……」

 

「……くっ、強すぎる……今までに見た中でも……ケタ違いなくらいに……」

 

「No.Ⅰ──正面からでは分が悪すぎますわね……それに貴方も……随分と腕を上げたようで……」

 

「あの女騎士はなんとか捉えたが……」

 

「アーヤ教官にも結構攻撃は与えたのに……全然効いた感じがしない……」

 

 それだけ実力差があれば屈辱ではあるが早々に膝を突いてしまうのも必然だったかもしれない。戦いを始めて数分。マクバーンという者が告げた一分という時間は超えられたものの、10分と経たずに決着はついてしまった。デュバリィという者とアーヤ教官にはなんとか膝を突かせたものの、それでも相手はかなり手加減した上でまだまだ余力を残している。その証拠に2人ともすぐに立ち上がっていた。

 

「うん──皆かなり強くなってるね。環境が良かったのかな? あれからまだ1ヶ月くらいしか経ってないのに個人の練度も連携もかなり向上しちゃってさ。今は敵とはいえ教官として嬉しい限りだよ」

 

「くっ、まさか学生ごときに不覚を取るとは……しかもアルゼイド家の娘相手になんたる屈辱……!」

 

「おいおい、手を抜きすぎだろ。たしかレーヴェの阿呆から一本くらいは取ってなかったか?」

 

「ま、まあ百本中一本くらいでしたけど……」

 

「強いけど凡ミスするところがデュバリィちゃんの可愛いところだからね」

 

「──貴方にだけは言われたくありません! 凡ミスするのは貴方も同じでしょう!?」

 

「そういえばレーヴェとちょっと前に会ったけどリベールで一緒の時よりかなり強くなってる感じがしたなー」

 

「へえ……? そいつは楽しみだな。ならあいつが敵として立ち塞がるのを期待しとくとするか。どうやら結社の方は完全に抜けちまったようだしな」

 

「って、聞きなさいな!」

 

 ……かなり緊張感のないやり取りを行っているが、それに文句をつける余裕はない。アーヤ教官にデュバリィという騎士の間抜け具合とマクバーンという者の気怠い様子も余裕の表れだ。向こうはその気になればこちらを如何様にも出来る。

 

「ん……? ひょっとしてお前──“混じって”やがるな?」

 

「……何のことだ?」

 

「……いや。気付いてないなら別にいい。その程度だったら高が知れてるだろうしな」

 

「……?」

 

「一体何を……」

 

「…………」

 

 そんな中、マクバーンという者がリィンに向けて意味深なことを告げていたが……その意味はやはり不明だ。実は魔女の一族とその使い魔だったというエマとセリーヌでも理解出来ないものだったらしい。アーヤ教官の方も無言で何かを考えている様子だったが、結局は何も分からない。

 

「そんじゃ、後は任せたぜ。フン捕まえて公爵に渡すのは2人だけで十分だろ」

 

「任せたぜ!」

 

「ちょ、ちょっと待ってください! さすがにこの数は……少しは手伝ってくださいな!?」

 

「だから面倒くせぇんだって。そもそもアーヤがいるだろうが」

 

「生徒を相手にするのは気が乗らなくって。まして捕まえるのはなぁ……いっそのこと見なかったことにして逃がしちゃわない?」

 

「いいわけないでしょう!」

 

 そして3人は俺たちを捕まえる段取りを話し合っている。アーヤ教官はどういうわけか、逃がしてしまおうなどと口にしているが……このままでは捕縛されて父の元に戻ることになるだろう。それだけは避けたい。俺たちでどうにかするか、あるいは保険がやってくれば──

 

「──だったらお次はあたしが相手をしましょうか?」

 

「あん……?」

 

「こ、この声……」

 

「──やっと来たか」

 

 聞き覚えのある声が突如俺たちの耳に届いたため、俺は確信を持って言葉にする。俺がかけていた保険──助けが来たのだ。

 

「っと……?」

 

「なっ、なんですの!?」

 

「痛っ!? ちょっと痺れた!」

 

 その助けは紫電と共に現れる。結社の3人はさすがにそれを避けて──アーヤ教官はちょっと当たっていた気もしたが──それはともかく、奇襲はそれでは終わらず、頭上から斬りかかって俺たちを守るように連中の前に立ち塞がる。

 

「──ふう、やれやれ。急いだ甲斐があったわね。アーヤも含めて、ここまで化け物じみた相手が来ていたなんて」

 

「アンタは──」

 

「サ、サラ教官!?」

 

「遅くなったわね。あたしが来たからには君たちに指一本触れさせないわ。──《Ⅶ組》の担任教官としてね」

 

「教官……!」

 

「A級遊撃士──《紫電》のバレスタイン……!」

 

「へえ、聞く名前だな」

 

「サラちゃんなら来ると思ってたよ!」

 

 そう、その助けとは俺たちの担任教官であるサラ・バレスタイン。

 予めあるルートから極秘裏に連絡が取れたため、万が一を考えて保険をかけていたことを仲間たちにも伝える。

 そしてサラ教官が加わったことで僅かだがこちらにも対抗する術が生まれた。俺たちは立ち上がり、再び得物を構える。

 

「くっ……まだやる気ですの!? 遊撃士風情が加わったくらいで状況は変わりませんわよ!?」

 

「それはそう。怪我したら危ないし、戦うのはやめて逃げることを私的にはおすすめするよ?」

 

「クク、だがまあやっと面白くなって来たぜ。……人里もなさそうだし、本気を出しても良さそうだな」

 

「!」

 

「ひぃ……!?」

 

 ──だがそこでマクバーンという者から発せられた黒い焔……その圧倒的な暴威に俺たちは本能的に構えてしまう。向こうの仲間であるはずのアーヤ教官すら怯えていた。

 

「ちょ、待ってください! さすがにそれは──ってわたくしまで巻き込むつもりですのっ!?」

 

「あっ、そういえば私今日泰斗流の稽古があるんだった! ってことでもう帰るね!」

 

「って帰ろうとするんじゃありません! 泰斗流なんて貴方習ってないでしょう!」

 

「ちょ、ちょっとは習ったもん! ヴァルターから! それに明日のお店で出すチリトマトまぜそばの仕込みもしないといけないから……」

 

「あなたの表の仕事はファッションデザイナーでしょう!! 理由を付けるならもっとマシな理由があるでしょう!?」

 

「──貴様ら、何をしている!!」

 

「……ああ?」

 

「この声──」

 

「あれは……アルバレア公爵!?」

 

 ──そうして再び勝負の火蓋が落とされようとしていたその時……峡谷道に車で現れたのは俺の父上と執事のアルノーであった。

 おそらくは俺を連れ戻しに……いや、俺を怒鳴りつけに来たのだろう。父上は拡声器越しに俺を名指しで呼びつける。

 

「ユーシス、貴様……! 一体、どういう了見だ!? あんな置き手紙を残して……気でも狂ったか!?」

 

「お、置き手紙……?」

 

「……おいおい、公爵さん。邪魔してくれるなよ。せっかく点きかけた火が湿気っちまうだろうが」

 

「そうだそうだー! 邪魔するなー! 狂ってるのはお前だろー!」

 

「ええい……部外者は黙っているがいい! ユーシス──貴様は私の言う事だけを聞いていればよいのだ! 下らぬ真似をして家名に泥を塗るつもりか!?」

 

「家名に泥を塗ってるのはお前だろー! ()()()()()()()()()! バーカバーカ!」

 

「いや、貴方……よく分かりませんが文句を言うなら小声で言わず堂々と言った方が……いえ、まあ一応協力者なのであまりよくはありませんが……」

 

「じゃあデュバリィちゃんの声真似で言っていい? こほん──バーカバーカ! アルバレア公のバーカですわー!

 

「何!? 今馬鹿と言ったのは誰だ!? そこの甲冑の小娘か!?」

 

「ええっ!? いやわたくしでは……ちょっとアーヤ! 背中越しにわたくしの声を真似して何を言ってますの!?」

 

「ご、ごめん。ちょっとユーシスくんが責められてるのが許せなくてつい……」

 

 ……何やらアーヤ教官が向こうの騎士と相変わらず馬鹿みたいに騒いでいるが……そういえばアーヤ教官は学院では妙に俺に気を使っていたな……授業中に声をかけてはやれ“部屋に引きこもっていても親にバレないような気配の消し方”を教えてきたり、馬術部に顔を出しては馬で勝負をして「この乗馬センスならいつ家を出て騎手になっても生計を立てれるね!」だの、夜に部屋を訪ねてきては「いざという時に相手を必要以上に傷つけず、それでいてかなり痛い顔面の殴り方を教えてあげる!」だのやけに具体的な上にふざけたことを幾つも行ってきて……その様は狂人と見紛うほどではあったが……とはいえ生徒想いではあるのは一応わかっている。今もふざけているようで父上に文句を付けたのは俺が理由のようだしな。雇われている身であのような罵倒を行うのは普通は出来まい。敵にはなってしまったものの……やはり相応の事情があるのだろうな。

 だが今はそちらを気にかけている余裕はない。Ⅶ組の仲間も見ている中、俺は父上に自らの意志をはっきりと告げた。

 

「……手紙に記した通りです。自分は、Ⅶ組の仲間と共に自分自身の“道”を往きます。あくまで父上や兄上とは別に、“アルバレア”の在り方を見極めるためにも」

 

 俺がそう言えば父は言うことを聞かない息子にうんざりしたのだろう。導力戦車と共に新型の機甲兵を呼び出した。

 

「……白けちまった。あとは好きにやってくれ」

 

「あ、あなたはもう……!」

 

 そして結社の面々はその場から転移していなくなった。──が、その直前にアーヤ教官だけはこちらに向き直った。

 

「あ、そうだ。《北の猟兵》には気をつけてね」

 

「何……?」

 

「それは……」

 

 その言葉はⅦ組や俺だけではなく、サラ教官に向けられた言葉のようだった。《北の猟兵》と言えば確か、父が雇っている……。

 

「……どういうつもり? あたしの前でその名前を出すなんて……しかもよりにもよってあんたが……!」

 

「あー……ま、ちょっとね。とにかく気をつけといてよ。アルバレア公に《北の猟兵》の組み合わせだと何が起きても不思議じゃないからね」

 

「……………………」

 

「父上と《北の猟兵》の組み合わせ……」

 

「それじゃ皆また会おうねー。ばいばーい」

 

 ……そうしてアーヤ教官は最後に意味深な言葉を残して同じようにその場から転移でいなくなってしまった。

 その後、俺たちはリィンの駆る《灰の騎神》ヴァリマールをサポートして父上の差し向けた機甲兵ヘクトルや戦車を撃破し、転移によってその地を離れ、ユミルへと辿り着くのだった。

 数ヶ月振りに訪れたユミルは思ったよりも綺麗で俺は安堵しながらもユミルの領主であるリィンの父親、テオ・シュバルツァーへ改めて謝罪も行ったが、気にする必要はないと言われた。何でもアーヤ教官が襲ってきた猟兵たちにトマトを投げつけて気絶させて無用な被害を防いでくれたらしい。トマトのくだりはよく分からないが……そういえばユミルでトマト祭りがどうとか訳の分からない報告が上がってきていたような……それがアーヤ教官によるものだとするとやはり意味不明ではあるが、それでも感謝しなければならないだろう。俺の父が雇った猟兵によってユミルの民やリィンの家族にもし何かが起こっていれば……尚更俺は顔向け出来ず、合流することすら難しかったかもしれないのだから。

 それにしても気になることも言っていたが……だが確かに、父上が更なる暴挙を行わないとも限らない。俺たちⅦ組が正規軍につくでもなく貴族連合につくでもなく、これからどうするのかも含めて話し合って決めなければならないだろう。

 

 ──だが3日後。これからどうしていくかを話し合っている最中に、貴族連合の飛行戦艦《パンタグリュエル》と共に結社の使徒であるヴィータ・クロチルダに《蒼の騎士》として騎神に乗るクロウ。結社の面々や話に聞いていた《西風の旅団》や黒衣の少女──そして。

 

「君たちの相手は私がさせてもらうとしよう」

 

「兄上……!!」

 

「邪魔する気?」

 

「フフ、あまり大げさに騒いでは郷にも迷惑だろうからね」

 

 ──そう。俺の兄であるルーファス・アルバレアもまた俺たちの前に立ち塞がった。

 

「ユーシス、そなたにも久々に稽古をつけてやろう」

 

「これは……!」

 

「全然隙がない……!」

 

「気を抜くな──兄上は帝国に伝わる“宮廷剣術”の達人だ! 全力で行かねば軽くあしらわれるだけだ!」

 

「心得た……! ゆくぞ、みんな!!」

 

 俺に剣を教えてくれた宮廷剣術の達人である兄上の強さは俺がよく知っている。全力で行かねばこの面々であっても容易に打ち崩されるだろう。それを何としても防ぐために俺は率先して兄上の剣を受け止めるべく前に出た。全く隙が見えない兄上の──

 

「フフ……全力でかかってきたま──むぐっ!?

 

 ──何やら遠方から飛んできた赤い液体……おそらくトマトソースが顔面に当たり、同時に足元にもトマトが転がってそれを踏みつけて転ぶ隙だらけの兄上を俺は間近で見てしまった。

 

 あまりの事態に俺は動揺して追撃をすることが出来ない。代わりに少し離れた場所から声がかけられた。

 

「ごめーん! 攻撃されて持ってたトマト料理吹っ飛んじゃった! わざとじゃないから許してー!」

 

 ……ああ、なるほど……やはりアーヤ教官の仕業だったか……相変わらずありえないミラクルを起こしてしまったようだな……兄上の顔面がトマトソース塗れになってしまっている。お労しいな、兄上……兄上は貴族連合の総参謀。アーヤ教官の手綱も握らなければならないのだから苦労していることだろう。

 

「フ……フフ……これが()()()()()()アーヤ君の持ち味、か……」

 

 そして兄上は小声でそのような独り言を呟いて笑っていたが……父も経験した、か。確かに父上もアーヤ教官に間接的にではあるがトマトによって目論見を阻止されている。それは俺にとっては助かったことではあるが……兄上ですらアーヤ教官の予測不能の行動を読み切ることは出来ないということか……。

 

 ──そうして何事もなかったかのように立ち上がった兄上はアーヤ教官に気にしないでいいと声をかけた後、仕切り直しで再び俺たちと対峙して難なく俺たちを制するのだった。くっ、トマト塗れとはいえさすがは兄上。この程度では届かないか……! 

 

 結局俺たちはここにやってきたカイエン公の目論見通り、リィンを招待し、リィンもユミルに今後一切干渉しないという条件を呑んで自ら貴族連合の旗艦《パンタグリュエル》と共に飛び去っていってしまった。兄上もまた俺にアルバレアの気骨を見せろと言葉を残し、転移によって去っていった……トマト塗れで格好はついていなかったが……それはともかく俺たちは再びリィンと別れることになってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 ──こんにちはー。結社の執行者No.ⅩⅢ《血染の裁縫師》のアーヤ・サイードでーす。今は貴族連合に雇われてまーす。よいしょっと。あ、今は料理中なんだよね。助けた村の人から貰った大量のトマトを消費するために。これでいつでもHPやCPが回復したり状態異常を解除出来るしお腹も満たせる! まあお弁当で持っていった結果、落としちゃってルーファスの顔面にぶっかかったのはもったいないことをしたけど……まあルーファスだしいっか。なんといってもあのルーファス・アルバレアだしね。

 

 ってことで私は結社の人間として貴族連合に協力してるから仕方なく色々とお仕事を行った。オーロックス峡谷道ではⅦ組やクルーガーちゃんとも戦ったけど……Ⅶ組はかなり強くなってたね。連携が良いとも言える。やっぱARCUSの戦術リンク機能を使いこなしてるからかな? 仲間同士の絆が深まってるからかなり戦い方が上手になってた。教官としては嬉しい限りだよね。ほんと。

 ただそれでもこっちが私とデュバリィちゃんとマクバーンだからなぁ……これは相手が悪い。多分私やデュバリィちゃん1人だけならまだ良い勝負は出来てそれなりに長引かせることは出来たかもしれないけどマクバーンがどうしようもない。焔の火力が頭おかしいし、普通に身のこなしとか焔の使い方とかも達人だから隙が全然ないんだよね。1分は持ったけど数分で終わってしまった。デュバリィちゃんは手加減しすぎてラウラちゃんの奥義1回食らってたけどまあそういうこともあるよね。わかるわかる。私の方は最近手加減が上手くなってきたかもしれない。間違って殺しちゃわないようにいつも気をつけてるからそのおかげかも。

 

 で、そのあとはⅦ組に怪我してほしくないから逃げた方がいいって言いつつマクバーンがちょっとだけ本気を出しそうになって過去のトラウマを思い出して逃げようとしつつ、貴族の悪いところの煮凝りみたいなヘルムート・アルバレアが現れたんでデュバリィちゃんの背中に隠れつつ小声で文句を言っておいた。ユーシスくんが可哀想だよね。これだからアルバレア家は……と内心でため息を付きつつも《北の猟兵》のことを思い出したので去り際に気をつけるようにサラ教官やⅦ組に匂わせしておく。言い方どうすればいいんだろうって感じで悩みまくったけどこれで良かったかな……? まあ私も一応止めるために動くんだけどもしかしたら他のことをやってて間に合わないかもしれないし、止めるための手は多いほうがいい。ケルディックは私も好きな場所だし、関係ない人間が死にまくるのは本当に良くないしね。いっそのことアルバレア公をどうにかするのも考えなくもないけどあれでも雇い主なんだよね……雇い主じゃなければなー。

 

 でもそれはしょうがない。割り切って事が起こった時に防ぐことに注力しよう。サラちゃんにも睨まれたけど伝えられたし大丈夫だと思いたい。

 

 ──そしてその3日後。今後はカイエン公の要請もあってみんなでユミルを襲撃。リィンくんとクロウがそれぞれ騎神に乗ってバトル! おお! ロボットものだ! かっこいい! とそっちを見てたらクレアちゃんに導力銃撃たれて懐に持ってたお弁当とトマトを弾き飛ばされた。そしてそれがルーファスの顔と足元に落ちて見事にルーファスがトマト塗れになったけどそれはさっきも言ったけど別にいい。ちょっとびびったけどルーファスさんも許してくれたし、結局適当にクルーガーちゃんやクレアちゃんをみんなであしらってからリィンくんを艦にご招待。ユミルに干渉しないって約束は良いよね。私としても気にかけなくて良くなるし。

 

 それでまあ、貴族連合の旗艦であるパンタグリュエルに招待した理由はカイエン公がリィンくんこと《灰の騎士》を味方に引き入れたいからだね。クロウの駆る《蒼の騎神》オルディーネに加えてリィンくんの《灰の騎神》ヴァリマールがあれば貴族連合が正規軍を蹴散らして余裕で勝てるっていうのもそんなには間違ってない。正規軍も頑張ってるけど第三、第四、第七機甲師団辺りを2人やオーレリア、ウォレスの将軍2人辺りと一緒にやっちゃえば割と詰みだと思う。思うけど……もし仮に本当にリィンくんが味方になっちゃったらどうするつもりなんだろ? 結社の《幻焔計画》というかヴィータ姉さん的には擬似的な相克を行わないと計画は完了しないわけで……そっから適当な理由でも付けて茶番でもする気なのか、それともリィンくんたちを信頼していて絶対に味方にはならないと思ってるのかその辺のところがよくわからない。実はオズボーンの回し者のルーファスも味方になった方がいいよって真摯に声をかけてたけど本当になったらなったで困るんじゃないの? 頭の良い人たちのやることは回りくどくてよくわからない。ま、まあ私も頭は良い方だけどね! さて、とりあえずリィンくんをこの艦から逃げる方向に誘導するために私は部屋に籠もって服でも仕立てて──「アーヤ殿。少々頼みがあるのだが構わないかね? 我々が艦を留守にする間《灰の騎士》殿についていてやってほしい。君とは教官と生徒ということで彼も君がついていた方が安心できるだろう」──あ、はい。駄目でした。遠回しに監視しててねってカイエン公に言われたんで私は仕方なくリィンくんの部屋に向かう。でも何かしら適当な理由を付けて逃げられるようにしないと……えーと、今はクロウくんが中でランチをしながら過去を教えてるみたいだね。それも終わったみたいだし、私も声かけよっと。

 

「ま、わざわざ見張りは付けねぇから脱出したけりゃ勝手にするといい。ただし──オレはもちろんだが、結社に西風の連中、ヴァルカンにスカーレットまでいる。全員を振り切れればの話だがな」

 

「くっ……」

 

「──後半はその通りなんだけど前半はそうはいかないみたいだけどねー」

 

「! アーヤか」

 

「アーヤ教官……!」

 

「カイエン公からそれとなくリィンくんに付いててあげるように頼まれちゃったんだよね。見張りとか気が進まないし、私も忙しいんだけどなー」

 

「また仕事を押し付けられちまったのか。そりゃご愁傷さまだ」

 

 私は部屋に入りながら2人に事情を説明するとクロウは私に同情しつつも2階にゲストがいることを教えて部屋を出ていった。リィンくんは私を見てちょっと複雑そうではある。一応リィンくんは艦の中で自由に見て回ってもいいって言われてるからここからは会話パートかな。ってことで。

 

「それじゃどうする?」

 

「どうするって……」

 

「好きに見て回っていいって言われてるんでしょ? それならこの無駄に豪奢な艦を見て回ったり走り回ったりかくれんぼしてもいいんじゃない? 他の皆も誘ってさ」

 

「いや、さすがにそれは……」

 

「冗談冗談。でもみんな話はしてくれるだろうし、私もリィンくんのやることに口出ししたりはしないから自由にしていいよ」

 

「…………わかりました」

 

「よーし、それじゃ艦内見学にレッツゴー!」

 

 ってことで戸惑うリィンくんを納得させてアーヤちゃんがパーティに入った! いや、同行者になったくらいかな? ゲーム的には。別にこのあと戦闘とかがあるわけでもないしね。ってことで艦内を見て回るリィンくんに付いていく。話にも混ざる……ってほどでもないけど相槌とか補足説明くらいはさせてもらおうかな。

 でもヴァルカンやスカーレットとはそこまで親交があるわけじゃないので本当に合いの手くらいしか入れられないし、精々部屋を出たあとに感想会をするくらいだ。その2人に関しては「どっちも憑き物が落ちたみたいになってたね。やっぱり目的を達成しちゃって色々思うところがあるんだろうねー」って言ったらリィンくんもそうですねって同意してた。

 

 そしてホールで紅茶を楽しんでいたブルブランはリィンくんにオリビエとの因縁を話してリベールでの一件も話してた。空中都市を見せてやりたかったって言うから私写真持ってるよ! ほら見て見て! ってリィンくんに見せてあげた。写真撮っといてよかったー。リィンくんも驚いてたし、良い思い出話になったね。

 

 で次の《西風の旅団》のゼノとレオニダスに関してはフィーちゃんのことを話した。私も結構授業で色々と教えたよ! って言ったら2人とも「なんかそこはかとなく不安なんやが……」とか「変なことを覚えてないといいが……」って失礼なことを言ってた。私ちゃんと良い教官してたんですけど! リィンくんもフォローしてくれたし、やっぱり良い教師だよね! あとは同じ中東出身のレオニダスとカバディもした。ゼノとリィンくんが途中でツッコミながら止めてきたけどもっとやりたかったなー。

 

 そしてアルティナちゃんに関しては気配を消して観察した。リィンくんは寝てるアルティナちゃんに近づいてしばらく眺めてたけどアルティナちゃんが起きたら不埒なことをしようとしていたと勘違いされ、「あ、アーヤ教官だってここに……!」って私も一緒にいることを理由に何もしてないと言ってたけど私は気配も姿も消して隠れてその様子を眺める。せっかくの可愛いイベントだし、邪魔しないようにね。一応アルティナちゃんが納得したあとで出ていって軽く談笑したし、問題はないだろう。《黒の工房》という名前も教えてアルティナちゃんの頭をリィンくんが撫でて良い感じに締め。でも頭を急に撫でるのは私も不埒だと思う。

 

 そして次のデュバリィちゃんに関してはお友達なのでこんな感じで結構沢山喋った。

 

「ふう、さすがにクロスベルとの行き来は結構大変ですわね……」

 

「ねー。なんだったらもうちょっと仕事減らしてもらうよう頼んでみる?」

 

「そんなことするわけないでしょう! これもマスターのため! マスターから頼まれた仕事──いえ、使命を断るなどありえませんわ!」

 

「えっと……」

 

「って……アーヤいつの間に──って、《灰の騎神》の乗り手まで!?」

 

「その口調……《身喰らう蛇》の──たしか《神速》だったか」

 

「くっ……アーヤの教え子なだけはありますわね……! 気配を断って部屋に忍び込むとは……! アルゼイドの娘といい、未熟者のくせに生意気ですわ!」

 

「いや、普通に入ってきただけなんだが……ノックしなかったことはその、申し訳ない」

 

 ──と、そこでお色直し。デュバリィちゃんが甲冑姿に着替えたので私も。

 

「──そ、それでいったい何の用ですの?」

 

「何の用ですの?」

 

「って、だからどこからその甲冑を!? なぜ貴方まで《鉄機隊》と同じデザインのものを身に着けているんですか!?」

 

「まあまあ、いいじゃん。私もちょっと着てみたかったし、今くらいは許してよ」

 

「また貴方は勝手なことを……幾らマスターが許してるからといってそんな気軽に身に着けられても困りますわ!」

 

「えーと……仲が良いんですね?」

 

「親友だからね!」

 

「っ……ま、まあ仲は悪くありませんが……しかしこの流れでそれを認めるのは抵抗がありますわね……ですが、ええ、強敵であることは確かですわ」

 

「なるほど……ですが貴女たち《結社》はともかく、貴族連合とはそこまで仲良くはないみたいですね?」

 

「ええ。それはそうですわね。《第二柱》──クロチルダ様の思惑はともかく、わたくしには義理もありませんし。あくまで計画に必要と言われたので協力しているだけですわ」

 

「私の方は表の仕事で結構親交があるけどねー。カイエン公のおかげで私の仕立てた服が帝国でも着てもらえるようになったし、そこだけは感謝してるかな」

 

「表の仕事……ファッションデザイナーの仕事ですか」

 

「ああ、そういえば貴女の方は親交がありましたわね。帝国内でも支店が沢山出ているだけでなく、貴族のお得意様も多いとか」

 

「……なら貴女のマスターというのはクロチルダさんじゃないんだな?」

 

「ええ、同じ使徒ではありますが《第七柱》になりますわね。わたくしたち《鉄機隊》の主にして偉大なる導き手──」

 

「すっごい威厳があってキラキラしてる人なんだよ!」

 

「麗しくも凛々しく、誇り高くも慈悲深き御方……」

 

「すっごい美人で綺麗でそれでいて可愛いところもあるし優しいし! まさに理想のママ!」

 

「“武”の頂点を極めし超絶、素晴らしい方ですわっ!」

 

「ほんっっっと~~~に強くてすごいんだよね! 使徒一の人格者! 結社の上司にしたい使徒ランキング毎年1位なんだよ!」

 

「……す、凄い人なんですね……というかその人も女性なんですね?」

 

「ええ、そうですけど……貴方程度の剣士など百人束になっても足元にも及びませんわよ? いいえ千人──ううん、一万人でも無理ですわねっ!」

 

「まあ結社最強の1人だからね! 武術の腕前なら間違いなく1番強いよ!」

 

「そうなんですか……」

 

「フフン、考え込んでますわね? ちなみにマスターの“渾名”を改めて教えて差し上げ──「《鋼の聖女》って言われてるんだよ!」──って、わたくしより先に言わないでくださいな!?」

 

「えー。でも結局教える気だったし、どっちから教えてもよくない?」

 

「くっ、それはそうですが……」

 

「《鋼の聖女》……アーヤ教官の上司……マスターもその人なんですか?」

 

「そうだったらよかったんだけどね」

 

「そもそも使徒の方々は《執行者》より上位ではありますが命令権があるわけではありませんわ。……ですがアーヤの上司は強いて言うなら……マスターとは真逆な人ですわね」

 

「そうなんだよねー。《破戒》って呼ばれてるんだけどさ。結社の中でも特にヤバい人だから絶対に関わらない方がいいし、その名前を聞いたらすぐに逃げた方がいいよ」

 

「そ、そんなに危険な人なんですか? そんな人までもしかして帝国に……」

 

「ああ、それは大丈夫。オジサンは今はアリアン……聖女様の仕事を頼まれて帝国外でめちゃくちゃやってるから。帝国には来てないよ」

 

「そうですか……」

 

「まあ来てなくてよかったよね。もし来てたらもっと酷いことになってただろうし」

 

「……それは同感ですわね」

 

「なるほど。《破戒》か……」

 

「さあ、この位でいいでしょう。貴方が軍門に下らぬ限り、わたくし達は敵同士──これ以上は馴れ合うべきではありませんわ」

 

「えー!? せっかくトランプとブレードと試作品の《VM》と《ポムっと!》の入った導力端末とお菓子とジュース持ってきたのに!? 一緒に遊ばないの!?」

 

「持ってきすぎですわっ! どんだけ遊ぶつもりですの貴方は!?」

 

「いや、デュバリィちゃんも次会った時はリベンジするって言ってたじゃん。特に《ポムっと!》はボロ負けしてたし。昨日やったブレードも私の方が勝ち越したし……」

 

「あれは貴方の引きが良かったからでしょう! それに《ポムっと!》の方は確かにリベンジすると言いましたが……わたくしもあれから練習に練習を重ね、アイネスとエンネアにも安定して勝てるようになり、積み方も勉強致しました。もうあの時のわたくしじゃありませんわよ!」

 

「ふーん? それじゃ後でまた勝負する? 勝った方がご飯奢りね!」

 

「上等ですわ! 今度こそぎゃふんと言わせてみせます!」

 

「はは……(本当に仲がいいんだな……)そういえば聞きたかったんですが、貴方はアーヤ教官やシャロンさんと同じ“執行者”ではないんですね?」

 

「むぐっ……答えにくいことを」

 

「《執行者》になるには条件があるからね」

 

「条件……ですか?」

 

「ええ。《執行者》とは結社の長である《盟主》様が見出した者たち──何らかの“闇”を抱えた者しかNoは与えられないとか。べ、別にわたくしが武でアーヤや他の執行者に劣るわけじゃありませんからねっ!?」

 

「そんな事は思ってないですが……」

 

「デュバリィちゃんは強いからね。実力的には全然執行者クラスだよ!」

 

「ふんっ……わかっているのなら構いませんわ」

 

「……はは、でも確かに貴女は“闇”とは無縁そうだ。真っ直ぐというか──曲がったことは嫌いそうだし」

 

「え──って、何をしれっと歯の浮くようなことを……!」

 

「おー。よくわかってるねリィンくん。確かにデュバリィちゃんは真っ直ぐですっごい良い子だよ。私も結社の中で1番良い子って聞かれたらデュバリィちゃんを挙げるしね」

 

「あ、貴女まで唐突にそういうことを……! 普段は全く言わないくせに……!」

 

「はは……(だが“闇”か……)」

 

「? どうしたの?」

 

「……いえ、なんでもありません」

 

「そう? ならそろそろ行こっか。デュバリィちゃんも怒っちゃったし」

 

「誰のせいですかっ! いいからとっとと出ていきやがれですわっ!」

 

 ──と、こんな感じで楽しい時間を過ごした。私の中の絆ポイントが上がった! なんか最後の方でリィンくんが私の方をじっと見てたのは気になったけど問題はないだろう。

 

 そして最後にマクバーンの部屋にも行った。これはすっごい覚えてる。マクバーンがリィンくんの“鬼の力”に言及してあの名言を口にするシーンだからね! 混じってるという言葉の意味をマクバーンが言葉にしてくれる。なんか途中で私も混ざってるとか「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()」とか言ってたけどそんなことはどうでもいい! 早く聞かせてー! 

 

「そういえば、あんたは……どれだけ“混じってる”んだ?」

 

「ああ……」

 

 あ、来る来る来る! マクバーンさんの名言! そう、どれだけ混じってるかと言うとー!? はい、せーの! 

 

「──ぜんぶだ」

 

 ──キター!! マクバーンさんの名言だー! ぜんぶ混じってるマクバーンさんの意味深な決め台詞だー! よっ! 執行者No.Ⅰ! 《火焔魔人》! 異界の王! メアなんちゃらかんちゃらでマクバーン! かっこいいぞー! 強いぞー! 最強だぞ「アーヤ教官」──え、何? 今マクバーンの名言が聞けてテンション上がってるところなんだけど。

 

「どうしたの?」

 

「……その、ここまで色々と話を聞きましたけど……アーヤ教官の話も聞かせてくれますか?」

 

「私の話?」

 

「ええ。アーヤ教官は……正直、こうやって敵対した今でも悪い人とは思えません。裏の世界で生きてきたことはなんとなく聞いてましたけど……それでも俺やⅦ組のことを気にかけて、猟兵からユミルを守ってくれたり、各地で犠牲を減らすように動いているとも聞きます。そんなあなたがどうして──《結社》に所属して貴族連合に協力しているのか。それを教えてはくれませんか?」

 

 リィンくんは私の方を真っ直ぐに見て質問してくる。あー……そういう感じ? 私との会話パートのターン? うーん……どうしよう。答えることは簡単だけど答えた結果リィンくんが悩んでも嫌だからなぁ。過去の話なんかしたら前にクローゼちゃんに話した時みたいに嫌な気持ちにさせちゃうかもだし、言い方には気をつけないと。

 

「……うーん。別にいいけど、そんな大した話はないよ?」

 

「それでも構いません。アーヤ教官がどんな事情を抱えているのか、教えてください」

 

「事情って言ってもなぁ。フリじゃなくて本当にそんなないんだけど。帝国に関わるゴタゴタに私の事情は全然掠ってないしね」

 

「……そうなんですか?」

 

「うん。貴族派とか革新派とかどっちかの主義に賛同してるってわけでもないし、カイエン公もただのお客さんだし、結社とか貴族連合とか他にも色んな人に頼まれたからこっちに付いてるだけで……一応目的もないこともないんだけどそれもこの内戦はあんまり関係ないんだよね」

 

「……ただ仕事だから……協力しているということですか?」

 

「それだけでもないんだけど……うーん、言葉にするの難しいなぁ。仕事でやってるんだけど完全にそれだけでもないというか……」

 

 教官として生徒の質問にはちゃんと答えたいんだけどなんかはぐらかしてる感じになっちゃう。なんか私も軌跡シリーズ特有に意味深匂わせキャラになってる気がするけどしょうがない。イシュメルガがどうのこうのとかオズボーン宰相がどうのこうのとか喋るわけにはいかないし、結社に協力して計画に参加した方が動きやすいとか結果的に良い方向に転がりそうってのもあるし、私的にも助けやすい。強いて言うならそれが目的でそのために協力してて結社にもいるってことになるんだけど……それも言えないしなー。

 

「……ま、一つ言えるのはちゃんと私が望んでやってるってことかな。別に誰かに強制されてってことでもないよ。昔とは違ってね」

 

「……昔とは違って……?」

 

 あ、やば。昔のこと言っちゃった。これじゃまた過去のことを話してリィンくんに精神ダメージを負わせちゃう! でも生徒から真面目に問われたらはぐらかすのもなんか違う気がする! くっ、どうすれば……やっぱりさらっと流す感じで言うしか……あ、わかった。はぐらかしはしないけどすぐに話を変えよう! 過去のことなんかより今を楽しく生きてるっぽいところを強調する感じでいけばリィンくんも深刻にはなりすぎないはず! ってことで──

 

「まあ昔は私もとある組織に薬漬けにされたり実験されまくって身体弄られまくったり悪い大人に毎日のように性的に傷つけられまくったりしたんだけどね。さっきも言った《破戒》のオジサンに救われてからはなんだかんだ人権は取り戻したし、学校にも通わせてもらったりと結社には恩があってね。そんでまあ今は目的もあるけど楽しく過ごしてるよ!」

 

「っ……そ、それは……」

 

 あー! 危ない! リィンくんが哀しそうな表情に! 楽しい話題を提供しないと! あっ、そうだ! 

 

「こっちからも聞きたいんだけどリィンくん、学院祭の夜は誰かと会ってなかった? もしかして気になる人でもいる? 私は恋愛マスターだからね! リィンくんが良ければアドバイスしてあげるよ!」

 

「アーヤ教官…………」

 

「あー……ちなみに私は気になってる人がいるんだけどね。リィンくんには特別に教えてあげるけど内緒だよ? ほら、前に紹介したレーヴェって人が男性の中では好きなんだけど……これがライバルがいてさー。女の子特有の協定を結んでるから抜け駆けするわけにはいかないし、レーヴェもそういう気はなさそうだから諦めるしかないっていう感じで結構複雑で。デートとかキスとかしてみたいんだけどね。リィンくんはしたことある?」

 

「いえ……」

 

『──マスターと《剣帝》レオンハルトなら以前にキスしてましたが』

 

「へぇー。したことあるんだ。私とレーヴェが……………………」

 

「!? これは……確か教官が使っていた人形……?」

 

 そうそう、《エクス=マキナ》っていうんだけど……あれ? 今なんて言った? 私とレーヴェがキスしてたって……。

 

「──え?」

 

『いや、え、ではなくて。マスターとレオンハルト様の口づけであれば以前確認致しましたが』

 

「は…………い、いやいやいや。何言ってるの? そんなわけないじゃん。私の記憶にはないんだけど? 冗談だよね?」

 

『マスターは気を失っていましたからね。捕捉すると浮遊都市リベル=アーク崩壊時。ヴァレリア湖に墜落し強い衝撃を受けて気絶し、なおかつ大量の水を飲んで死にかけていたマスターはレオンハルト様によって助け出され、湖畔にて人工呼吸を行いました』

 

「い……いやいやいや! その時マキナ壊れてたじゃん! なのになんでそんなこと分かるの!?」

 

『確かに半壊はしておりましたが記録には残っております。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そ、そうなんだ…………ってことは……」

 

『人工呼吸とはいえマスターとレオンハルト様は既に口と口を合わせていますね。それをキスと呼ぶかどうかは受け取り方次第ですが』

 

「……………………」

 

 ……………………………………………………………………………………………………………………………………は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……うわあああああああああん!!?」

 

「!? アーヤ教官!?」

 

 ──私は熱くなった顔を手で抑えながら一目散に駆け出した。背後からリィンくんの呼ぶ声が聞こえるが反応してる余裕はない! 恥ずかし! 恥ずかしい! レーヴェとき、き、キスしてたなんてー!? うわああああ!? うわああああ!? ど、どうしよう……! 人工呼吸とはいえこれって抜け駆けだー!? ヴィータ姉さんになんて言えばー!? というか次レーヴェに会った時になんて言えばいいんだ! というか私のバカ! なんで意識失ってるの!? せっかくキスされたのに覚えてないなんてー! うわああああああん!!




今回はここまで。アーヤちゃんがラブコメ脳になりました。そしてアーヤちゃんが同行者から抜けました(システムメッセージ)
次回はリィンくん脱出。そしてクロスベル方面の話もそろそろやります。お楽しみに。

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