──久しぶりに会ったアーヤさんは相変わらずでした。
どういう風に相変わらずかと言うと。
「行きたまえピ◯チュウ! 10万──「うわああああああ!? よくないよくない! 食らえグリムシザアアアアア!!」──さて、この連携を凌ぎ切れるかな?」
──と、なぜか執行者No.Ⅶ《幻想使い》シメオンの言葉を遮りつつ外の雷獣と呼ばれる謎の生き物と一緒に物凄い勢いで攻撃してくるアーヤさんはなんというか……すごい必死でした。まるで何かに駆り立てられるような……あるいは何かを防ごうとするかのような、そんな感じで。
とはいえ意味がよくわからなくてケビンなんかは「どういうことやねん!?」と相変わらずツッコミを入れてたけど……ただアーヤさんの言動に何か言いたくなる気持ちはわかるけど正直、そんな余裕はない。
結社最強の暗殺者であるアーヤさんの腕前は以前よりも上がっているし、突然現れた《幻想使い》もまたルフィナ姉さんから名指しで警戒されていた要注意人物。執行者の中でもとりわけ厄介な2人が連携して襲いかかってきたことで私とケビンは防戦を強いられた。あの雷の幻獣も最初は見た目が愛らしくて油断してしまいそうになったが、小柄ですばしっこく、それでいて雷を放出してくるのだからそこいらの魔獣よりも遥かに強い。見た目も攻撃することを躊躇させるので少しズルくもある。みっしぃを上回るポテンシャルを感じてしまった。
──そして結局はケビンの判断で撤退することになった。向こうの任務はクロスベルから私たち聖杯騎士団の人間を追い出すことみたいなので逃げれば追っては来ない。そもそもメルカバに乗って逃げればそれ以上は物理的に追っては来れないはず。
そうして一時撤退を行いながらやはり厄介なだけでなく、謎めいた部分が多い2人だと私は思考を巡らせる。
結社には異能使いが何人もいるが、その中でもあの2人は特に謎めいた存在として語られている。教会の中でも《幻想使い》とアーヤさんの異能はどういったものなのか、いや、あの2人がどういう存在なのかそもそもよくわかっていないのだとか。
総長や副長も警戒していたし、バルクホルンさんも注意するように皆に言付けていた。アーヤさんの方は出自や経緯もあって対応は保留中。レッドリスト入りを辛うじて免れているが、中にはそれでも狩るべきだと主張する人もいる。だけどアーヤさん自体は悪事を積極的に行うわけではないのと、殺してきた人間が教団に属する人間やその関係者。猟兵やマフィアなどが殆どということもあって現実的な脅威はそこまでだという意見が殆どである。その上、アーヤさんは特に教会の法術や聖痕と相性が悪く、守護騎士が聖痕を解放してもそこまで優位は取れない。おまけに教会関係者と出くわしたらすぐに逃げてしまうから追いかけるだけでも苦労する相手だとオルテシア卿やバルタザール卿は言っていた。2人は以前アーヤさんと出くわした際にかなりしてやられてしまったらしい。
かといってアーヤさんが社長を務めるサイード社やその拠点を狙うのは影響が大きすぎる。共和国や中東諸国、ノーザンブリアやモルジア諸島。北部辺境に大陸東部。それらの地域に影響が出るだろうし、何よりアーヤさん自身がより闇に潜りかねない危険性もあれば、唯一所在を感知出来るルートを潰されては困ると当の共和国政府からも極秘に法国に対して釘を刺されてもいた。
これも全部アーヤさんの狙い通り……とまでは思えないけど、どちらにせよ教会にとってアーヤさんは《幻想使い》と並んで色んな意味で警戒される存在だった。結社の計画にも常に関与していることもある。今回のクロスベルでの一連の事件にも帝国側の勢力と共に関わっているのは今回こうして現れたことからもよく分かる。もしかしたら教団事件の対処に動いていた時からディーター・クロイスに雇われていたのかもしれない。ケビンが少し前に拘置所から脱獄したロイドさんから情報交換をしたみたいだけど、そういう話もチラッと出ていたとか。それと、拘置所で同じ部屋にいたガルシア・ロッシが蜂蜜中毒になっていたらしい。意味不明過ぎてそれを話すケビンをじっと見つめてしまったが、ちゃんと話を聞けば一応、ジャンキーと言っても大好物になったくらいで拘置所の部屋には蜂蜜の瓶があったのと、拘置所から無事脱獄したロイドさんに「アルモリカ産の蜂蜜を差し入れてくれや」と言っていたとか。以前に飲まされたアーヤさんの成分が入ったグノーシスが原因らしいけど……その程度の副作用なら大したことなさそう。蜂蜜は美味しいから。
そしてそれ以外にも身体が以前よりも活力に溢れてるとか健康になったとか結果的にそういう効果もあったみたいで私はちょっと羨ましくなった。
それと……当たり前だけど《影の国》でのことを覚えていないのは少し残念だった。各国の美味しい料理やお店の情報なんかで仲良くなったんだけど。向こうはコピーされた存在だったから仕方ない。食べ放題のお店に一緒に行こうと約束もしたんだけど……。
「──あ! リースちゃん! どうせ帰るなら帝国と共和国の美味しいお店リストあげるから行ってくるといいよ! 食べ放題のお店もあるから機会があったら今度一緒に行こうね!」
「ほう、食べ放題か。そのような店があるとは初耳だが……そういえば君から教えてもらった幻獣にもかなりの食いしん坊がいたね。暴食にして怠惰なる災厄の獣。名前は確か、カビ──」
「ストップ! ここでは言わないで! せめて2人が逃げてから言って! ……でも見たいから後で召喚しびびびびびび!」
──ですがアーヤさんがどういうわけか私にそのリストを投げ渡してきました。初対面で敵対しているはずなのに……どうして私の趣味が食べ歩きなのがわかったのかはわからないけど……もしかしたら少しだけ覚えてる? もしくは誰かから聞いた?
それか初対面でもそれを見抜いて仲良くなろうとしてくれたのかもしれません。やっぱり執行者で暗殺者にしては憎めないし、いい人なんですよね。私もこの情勢じゃ難しいけど、機会があれば一緒に行ってみたいと素直に思います。
それはそれとしてなぜかアーヤさんはまたしても《幻想使い》の言葉を遮っていましたが……それについては教会に報告を持っていって真面目に考えないといけませんね。外の獣……
あと私も雷の獣を抱きしめてみたいですが、それにはアーヤさんみたいに雷に耐性がないと無理そうですね……と会話中に雷の獣に嫌がられて電気を浴びて痺れているアーヤさんを見ながらそう思いました。
──ポ◯モンゲットだぜ! 私、戦争と教団のせいで綺麗さっぱりなくなったまっさらタウンのアーヤ! こっちは相棒のビガジュウ(私命名)! ちなみに手持ちはエクス=マキナ、イシュニャルガ、ノルドバクシンオーの4体。幻獣博士のシメオンもいるよ!
……とまあ冗談は置いといて、なんとかネギとリースちゃんとの戦いを乗り越えました……正直強敵だけどシメオンが加勢したおかげで思ったよりは楽だった……楽だったけど……そもそも追い返していいのかって話なんだけどね! こっちが優勢だったから向こうから撤退しちゃったんだけど! これ原作に影響出たりするんじゃない!?
まあもちろんその時はその時なんだけど考えちゃうよね。私は別に原作通りじゃないと気がすまない原作厨ってわけでもないからいいんだけど、ちゃんとハッピーエンドにはなってほしいからここでケビンたちが撤退するのは影響が大きそうでちょっと困るようで……困らないかな? ケビンたちの出番ってメルカバ使っての突入とかそんな感じだったっけ。それなら撤退してもなんとかなるかな? 多分。あんまり覚えてないけど大丈夫かもしれない。
まあいつも上手くいく保証なんてないからね。心の中のオジサンも「そりゃそうだ」って言ってる。私の思い通りにいかないのが世界ってやつ。なのでこれはしょうがないってことで割り切って次の場所に向かおう。
「それではハーウッドさんからの届け物も渡したし、私はお暇させてもらうよ」
「あーうん。加勢してくれてありがとねー。で、次はどこ行くの? このままクロスベルに留まる感じ?」
「そうだね。もう少し高みの見物はしようと思っているが。計画に積極的に関与するつもりはないから博士と聖女殿にはよろしく言っておいてくれないかな? 私も他にやることがあるのでね」
「見ていくつもりなら挨拶くらいすればいいのに。でもわかった。いいよ。その代わりにまた今度色々見せてね!」
「やれやれ、簡単に言ってくれる。これでも呼び出すのには結構苦労するのだがね。しかしまあ、私としても君のイメージには興味があるし、できる限りは応えようかな」
「やったー! それじゃまたねーシメオン! ビガジュウもバイバイ!」
『ビガー!』
「あびゃー!? 電気ビリビリー! これがいつも見てたあの感覚ー! 感動するー!」
『ビ……ビガ……!?』
「……幻獣を困惑させるとはさすがの耐性と言うべきかな」
ということでそんな感じでシメオンとは別れた。相変わらず胡散臭いけど接しやすいし良い人でもないけど良い人なんだよね。幻獣も見てる分には面白いし。ポ◯モン召喚してくれるのは世界観的にはアレだけど個人的にはテンション上がるし。それに一緒に戦ったり任務を行うにあたって私みたいな前衛とも相性良いんだよね。後衛に徹するシメオンはかなりインチキ性能してるというか、想片とかいうの飛ばしたり色んなもの具現化したりで結構メチャクチャだ。味方としてはやりやすい。敵の立場になると同情するけどね。レーヴェも似たようなことを言ってたのを思い出す。
「忘れてた……レーヴェにも連絡しないと……でも先に仕事だよね……」
はぁ、とため息を吐きながらも仕方ないと切り替える。出来ればレーヴェにもプレゼントを渡しがてら手伝ってほしいことがあったけど今は忙しいし、余裕がない。それとちょっとまだ恥ずかしい気もするし、もう少し落ち着かせてもらおう。
なので私がやることと言えば星見の塔で特務支援課を迎え撃つこととか、ケルディックの焼き討ちを止めることかな。前者はお仕事で後者は私用。でも後者の方を優先したいって感じだ。
他にも《黒月》の相手とか帝国正規軍の相手とかもあるけどね。やることが……やることが多い……! とりあえずオジサンからの荷物は放置して先にケルディックにでも行こうかな。そこで正規軍を相手にしつつ監視してたらいつ焼き討ちが起こっても対処出来るし。正確な時期を覚えてないし、そもそも覚えてたとしてもきっちり同じ日に起こるとも限らないから見張ってるしかない。
なので湿地帯を抜けた後はもう一度帝国にとんぼ返りした。そして求められてた正規軍相手の撹乱をついでに行っておくことにした……んだけど今までより遥かにやり辛かった。さすがは帝国正規軍の中で最高の打撃力を誇ると言われる第四機甲師団。確か司令官はエリオットくんのお父さんのオーラフ・クレイグ。《紅毛》のクレイグと呼ばれる猛将で指揮も当然長けてるし、個人の強さでも確か正規軍だと五本の指には入るくらいかな? 理に至った達人ほどじゃないけどめちゃくちゃ強いらしい。おまけに部下には元同僚で正規軍の若手の双璧と呼ばれるナイトハルト少佐までいるし。そりゃ強いわけだよね。最初の撹乱は上手くいったけど2回目からは成功はしてても対応が早くて大きな被害を与えることは出来てない。
ってかだからさ! 何度も言うけど私じゃ無理なんだよ! あのアルバレア公とかいうアホ! 珍しく私を呼び出したかと思ったら「オーラフ・クレイグ中将を暗殺してこい」ってバカじゃないの!? 「伝説の暗殺者なら簡単だろう」って簡単じゃないわ! めっちゃ警備厳重だし本人も強いしそもそもエリオットくんのお父さんとか絶対殺したくないんだけど! 仮に成功したら色んな人が曇っちゃうし! ユーシスくんが病んじゃうでしょうが!
ってことでやりたくはないけど一応は貴族連合軍の2大巨頭の1人からのオーダー。義理くらいは果たさないと面目が立たない。どうしたものかと悩んでたら横から「《赤毛》のクレイグってのは相当強いらしいな。俺にやらせてくれよ」と地味に貴族連合軍に暗殺者として参加してたアリオッチが言ってきたので余計に悩んだ。いや、成功させるだけならそりゃ2人がかりでいけばワンチャンあるかもしれないけど成功したらダメなんだって! かといってやろうとしたポーズは見せないといけないし……。
「──よし! とりあえず戦車を狙おう!」
「あん? 暗殺はしなくていいのか?」
「オーダーは暗殺だけど要は正規軍に打撃を与えて撤退させればいいんだし、主力戦車を壊しまくった方が手っ取り早いでしょ! クレイグ中将を殺したところで止まるとは限らないんだし!」
「まーそれも一理あるか。そんじゃやって構わねぇんだな?」
「戦車だけね! あんまり人はやらないように! やるとしても半殺しで!」
「そりゃ中々キツイ仕事だな。向こうさんからしたらただ殺すよりも面倒だろうが、ともあれ俺はボスの命令に従うぜ」
「行けアリオッチ! 乱れ斬り!」
「別にいいがその命令の仕方ハマってんのか?」
──ということで第四機甲師団の戦車を狙って攻撃だ! 文句を言われてもクレイグ中将を狙うにはまず戦車を破壊しないと無理って言い訳できる! そしてよくよく考えたらうろ覚えだけど焼き討ちが起こるのは第四機甲師団がケルディックを制圧したからだった気もするし、頑張って抵抗すれば焼き討ちが起こらないかもしれない! その代わりに正規軍の人たちは痛い目を見る羽目になるけど民間人が犠牲になるよりはマシだからごめんだけど我慢して!
「1両撃破したぜ」
「こっちも1両撃破! 最初は無茶かと思ったけど思ったよりもいけるかも!」
「ハハ、なら特攻するとすっか」
「よーし! パンツァー・フォー! 「撃てー!」──ぎゃー!?」
「おっと。さすがに戦車に一斉に狙われたらちっと難しいか」
「て……撤退ー!」
……ってことでなんかいける気もしたけどダメでした。いや、そりゃあね。基地内とか夜間とか遊兵相手ならともかく、平地で歩兵も含む大量の戦車部隊を相手にしたら奇襲で数両はやれてもすぐに追い返されるし気づかれる。個人で戦況をひっくり返せるなら苦労しない。戦車の主砲痛い……後やっぱり指揮のせいかな……指揮がへっぽこだと同士討ちを注意して手をこまねいている間に結構やれたりするんだけど……第四機甲師団強い……2人じゃ足止めが限界かな……。
「こうなったらアリオッチを盾にしてその間に……」
「おいおい……別にやれと言われりゃやるが、俺なんかよりボスが囮になった方が上手く行くんじゃねぇか? 俺よりもタフだしよ」
「私不死身じゃないんですけど!?」
「でも集中砲火を受けても死なねぇじゃねぇか」
「めちゃくちゃ痛いし死にそうになってますー! 死んでないのはギリギリで逃げてるし運が良いだけだから!」
「まだまだ余裕がありそうに見えたがなぁ」
「うっさい! くっそー……こうなったら……!」
「お、なんか良い手が思いついたのか?」
「多分ね! これなら行けるはず!」
──ということで次の日は再び正規軍の侵攻に合わせて作戦を発動。
『ぎゃー!? だからってなんで私が囮にー!?』
「な……なんだあれは!?」
「人形……?」
「落ち着け! 報告にあった戦術殻のようなものだろう! 落ち着いて照準を合わせろ!」
「──落ち着くなー!」
「──隙を見せたら鏖にされても文句は言えねぇぜ?」
「なっ……!? いつの間に……!」
よしよし、今度はちょっとだけ上手くいった! 正規軍と領邦軍の戦いに合わせて空中にマキナを漂わせて囮にしつつの奇襲! ぶっちゃけマキナの囮はついでで領邦軍に集中してる間に奇襲するというごく真っ当な作戦だけどとにかくヨシ! それなりに戦車を撃破できたぞ!
……ただそれでも領邦軍は蹴散らされて後退。クロイツェン州における支配地域を更に失ってしまった。クロイツェン領邦軍弱い……だからクレイグ中将の暗殺を依頼してきてるんだろうなって変に納得してしまった。
もっとも防衛線をしっかり築いているうちは第四機甲師団も突破に時間はかかるけど、変に攻めっけを出すとすぐに負けるんだよねぇ……おまけに機甲兵があってこれだからなんとも言えない。兵器の質と量で勝ってるのに負けるってことは兵と将がへっぽこってことだと思う。まあ第四機甲師団が強すぎるせいでもあるけど。
とまあそんなこんなでここ数日はクロイツェン州で猟兵みたいに戦争をした。暗殺は嫌だけどケルディックの焼き討ちは防ぎたい苦肉の策。でも領邦軍を勝たせるのは難しいからやっぱり《北の猟兵》を狙った方が手っ取り早いかなと思った。アリオッチにも伝えとこうかな。鏖殺しはアリオッチの得意分野だし、北の猟兵を見かけたらやってもらうように頼んどけばどうにか……。
「アリオッチー。ちょっと良い?」
「! ああ、ボス。ちょうどいい。今クロスベルにいる連中から連絡が来てるぜ」
「え?」
『やあ、姉さん♡』
『久方振りだな、我らが《庭園の主》よ』
って、メルキオルとエンペラーだ──!! うわああああああ──って、そんな驚くほど衝撃的なことじゃないけどちょっと嫌な2人とアリオッチが連絡を取ってるところだった。専用の導力通信機を持ってきてたんだよね。庭園の管理人同士で連絡が取り合えるように。もうちょっと戦術オーブメントの世代が進めば持ってくる必要もないんだけどさ。
「あー……うん。久しぶり」
『そっちはアリオッチと随分と愉しく仕事をしてるみたいだねぇ。すっごく羨ましいよ♡』
「ああ、中々刺激的だぜ。帝国正規軍ってのも思ったよりも手強いしなァ」
『早々に決着がつくと思っていたが、正規軍も中々粘るものだ。あるいは、かのⅦ組とやらのおかげかな?』
『ああ、姉さんが見てたって言う軍人の卵だったっけ。姉さんは昔から子どもの面倒を見るのが上手だったからねぇ。そっちも羨ましいよ。僕も年齢的にはいい感じだし、トールズに入学しておけば良かったかな?』
「い……いやいや、それはちょっと合わないと思うけど……それよりそっちはどうなってるの? 何か報告があって連絡したんじゃ?」
『そうそう! 聞いてよ姉さん! こっちの仕事、すごく退屈でさー。議長閣下とそのお孫さんが万が一にも逃げ出さないように元議長邸に詰めてたんだけど……そこになんか来るっぽいんだよねぇ。例の特務支援課って人たちがさ♡』
「へぇ、そうなんだ。特務支援課が…………え?」
──ん? 特務支援課が来る?
ってことは何? メルキオルがハルトマン議長邸にいるってこと? マクダエル議長とエリィちゃんに見張りで?
「聞いてないんだけど……?」
『ごめんごめん! 姉さん、すごく忙しそうだったし、仕事自体も大したことなかったからさ。許してよ。こうやってちゃんと連絡もしたんだからさ』
『報告というのはそのことでな。おそらく特務支援課がお嬢さんと議長閣下を助けに来るであろう。その際に、どこまでやってしまっていいものかとお伺いをしようと思った次第だ』
『ちょうどエンペラーと話し合っててさ。雇い主からは一応特務支援課は殺さないように言われてるけどそれ以外は何も言われてないでしょ? かといってそれ以外を巻き込んで盛大に暴れるにしても僕らもまだ表に出るには時期尚早な気もするし、どうしたものかと思ってね』
『姿を隠しながらの暗殺……我らの本分を徹底するのも面白いと思ったのだがね。あるいは適当な人材をけしかけるか……希望に奮い立ったばかりの彼らにはさぞ味わい深いものとなるだろう』
『姉さんはどう思う? ここらで存在感を出してみるのもそれはそれで面白いと思わない?』
「…………ああ、うん。そうだね……」
どうやら一緒にいるらしいメルキオルとエンペラーの不穏な言葉を聞いて、私は平静を保ちながら静かに告げた──内心で叫び散らかしながら。
「──特務支援課は私が相手にする。だから関係者も含めて殺しはなしで2人は待機で。もし私が行くまでにやってきたら適当に相手してから撤退するように」
──うわあああああああああああん!!? 早く、早くクロスベル帰らないとー!! メルキオルとエンペラーはヤバいー! 特務支援課や周りの人が死んじゃうかもしれない! こんなところで戦争してる場合じゃない! ケルディックの焼き討ちはまだしばらく起こらなそうだし、ここはアリオッチに任せて私はすぐさま転移と飛行艇でクロスベルのミシュラム保養地に向かって──
『──ボス。どうやら《北の猟兵》とやらが動いてるみたいだがどうする? ケルディックとかいう街に向かってるみたいだが』
──今すぐ戻るううううー!! 特務支援課はメルキオルとエンペラーに任せるしかない──!! 関係者は誰も殺さないようにね! ああもう、身体が2つあったらいいのにー!! 忙しすぎる! 手が足りないよー!! うわあああああああああん!!
──その時。俺は《赤い星座》を突破してようやく辿り着いたハルトマン議長邸でそれを目撃した。
「ヨナ!?」
「マクダエル議長!」
「た、助け──」
「逃げるんだ! 彼らは──」
「──はい。ドッカーン♡」
「!?」
「! 伏せろ!!」
──凄まじい衝撃と光。轟音が玄関ホールを揺るがす。
俺たちはランディの声に従って身を守ったが……その起こった爆発を
「ヨナ……?」
「嘘……」
「マクダエル議長……」
そう、それは……ここに囚われていたマクダエル議長とヨナ・セイクリッドで。
その2人はたった今俺たちの目の前で爆発し、その身体の破片が玄関ホールに、俺たちの目の前に散らばってきて。
「アハハ! 狙い通りって感じだねぇ♡」
「ふむ、
そうして俺たちの前に外套で姿を隠した二人組──おそらく1人は前に見たことのある男でもう1人は少年が現れた。
その2人はどこか引っかかるやり口でバラバラになった2人と衝撃を受ける俺達の前に真っ直ぐ対峙して。
「うん、そっちは良いとして──それで、どうだったかな?
「っ……貴様ァァァッ!!」
「アハハ!! そうそうその顔が見たかったんだよ!」
「相変わらず期待通りの表情を見せてくれるではないか! さあ、せっかくだ! このまま共に踊るとしよう!」
「そうだね。僕ら2人にどこまでやれるか……見せてもらおうかな?」
「ッ……許さない……!」
「チッ……ふざけやがって……! くるぞ! 悲しんでる余裕はねぇ!」
「な、なんて酷いことを……!」
「誰かは知らないけど……やっちゃいけないことをしてくれたね……!」
「ッ、ああ……! 迎え撃つ!」
そして俺が怒りに吠えた直後──謎の二人組は突然俺たちに襲いかかってきた。ヨナとマクダエル議長が爆発物によってバラバラになった……その心の整理がつかない状態で、俺たちは戦いを強いられるのだった。
今回はこんなところで。庭園はアーヤちゃんのおかげでまだまだおとなしいです。なので安心してね。
次回はロイドたち視点や焼き討ちやら色々。まだまだアーヤちゃんは忙しいです。次回もお楽しみに。
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