──その領域はどこまでも虚無だった。
「……本当に何もありませんね」
「ああ。まさか魔獣すら出てこねぇとはな」
「それどころか形ある物は何もないわね……」
「このまま真っ直ぐ進むだけで終点まで辿り着けそうだね」
──白い砂を踏みしめながらただひたすらに前へ。遠くに微かに見える目的の場所へと歩く。
「ああ。だけど警戒は怠らずに行こう。あの人は暗殺者だ。それだけに急な奇襲を仕掛けて来ないとも限らない」
「そうですね。あの見えてる姿もあるいは蜃気楼……幻のようなものかもしれません」
「それに何をしてくるか予測不能ですしね……」
「準備だけは怠らないようにしよう」
──遠くに姿が見えるとはいえ、相手は伝説の暗殺者。
だからこそ俺たちはこの何もない世界でも警戒を怠らずに前に進んだ。
──だが。
「……」
砂漠を歩く俺たちの視界。遠くであの人が動いたのが見える。
何をしているかは分からない。だけど見えているからこそ警戒してしまう。
だが距離にして100セルジュはあろうという距離。
それだけにあの人の姿は点であり、さすがにこの距離で何かをされるとは思えない。
それに何があろうとも俺たちには進むしかない。
「…………」
──徐々に狭まるあの人との距離。
その中であの人が色々動いているのが見えるが、気にはしない。何やら火起こしのようなことをしているのは見えるが、焚き火でもしているのだろうか。
だがあの人が何をしようとも関係はない。俺たちは先へ進む。
「………………」
──更に近づいていく。
視界の先ではあの人が何やら大きな黒い何かを近くの人形──あの《エクス=マキナ》というローゼンベルク人形を基にした人形兵器だろうか──それから取り出し、焚き火の上に跨るように置いている。
何をしているかは分からないが、何をしていようともこちらから出来ることはない。だから黙って進み続ける。
「……………………」
──また更に距離を詰める。
視界の中ではあの人が取り出した串に肉や野菜を突き刺して先ほど取り出した黒い何か──おそらくは大型のグリルだったのだろう──その上で肉や野菜を焼いている。
そしてそれを食べていた。よく見れば水筒からお茶を注いでいる。なんかマシュマロまで焼き始めた。
だが何をしていようともこちらからアクションを起こすことは出来ない。ひょっとしたら大声でも出せば聞こえるかもしれないが、そんなことをする気は起きない。
「…………………………」
──俺たちはなんとも言えない表情で更に進む。
バーベキューが終わってコンロを片付けたあの人は焚き火の周りで何故か人形と一緒にフォークダンスを踊っていた。
この白の領域に夜はない。明るすぎるほどに明るい。だから雰囲気は出ないと思うのだが、それでも楽しそうだった。
あまりにも意味不明だが、それでもこちらからは何も言えない。それはもっと近づいた時に溜めておく。俺たちはそうして更に進んだ。
「………………………………」
──なんかテントを張って寝始めた。
キャンプ気分なんだろうか。いや、気分というかキャンプをしている。間違いなく。ちょっと前にはドラム缶風呂に入っていたし。
だがやはり何も言えないし、まだ言わない。俺たちは互いに無言のまま進み続ける。
「……………………………………」
──寝たと思っていたら10分も経たずに起きた。
だけど少し昼寝をしてスッキリしたのだろう。そして向こうもこっちに気づいた。いや、最初から気づいていたのかもしれないが、ようやく表情も微かに見える。テントや焚き火の跡を人形と一緒に急いで片付け始めた。
そしてこちらも気づいたのだが、この砂漠は見た目の距離と実際の距離が合致しない。間違いなく先へは進んでいるのに、その進みが遅かった。
それだけに俺たちは焦れったくなる。早く辿り着きたい。そしてこの呑み込み続けた言葉を口にしたいと。
──そして更に進むこと少し……俺たちはようやくその終点に辿り着いた。
「──よくここまで来たね、特務支援課の皆。さて、それじゃ早速──」
「何をしてるんだ!?」「何をしてるの!?」「何故こんなところでキャンプなんかしてやがる!?」「呑気ですか!? それとも馬鹿なんですか!?」「意味不明すぎてなんてツッコミを入れようか迷ったんだけど?」「私たちのことには気づいてたのに何で1度眠ったんです!?」「途中で踊っていた理由が私にはよく分かりません……」
「うぇっ!? あ、い、いや、だって暇だったから……えっと、お肉余ってるけど良かったらまた焼こっか?」
「いりませんよ!」
──俺たちは一斉にそこで待っていたこの領域の主……アーヤさんに言いたいことをぶつけた。
……ツッコミの言葉はまるで揃わなかったが。
──そうして俺たちは弛緩した空気をどうにか引き締めようと努力しながらアーヤさんと対峙した。
──おはようございまーす、アーヤ・サイードです。キャンプの時はバーベキュー派。締めに鉄板で焼きそばとか焼きたい。カレーやお鍋もいいけどね。バーベキューは家とかじゃやりにくいからさ。
ということで碧の大樹の内部で待ち構え続けていた私はようやく特務支援課と対峙することになった。……いやぁ、長かったー。なんか私の領域がなんにもない白い砂漠になっちゃって困ってたんだよね。
まあでも何もないなら何もないで色々やっとこうとここでキャンプすることにした。のんびりソロキャン。一応マキナがいるのでちょいちょい呼び出して一緒に盛り上がったりフォークダンス踊ったりしたけどね。こうやってのんびり出来る時間は貴重だからリラックス出来た。デザインも思い浮かんだし、待ってる間に服も何着か仕上げた。
そして領域にロイドくんたちが入ってきた時点で気づいてはいたけど、ここに来るまでちょっと時間はあるかなって思ってご飯食べたりお風呂に入ったり昼寝したりして準備を整えた。そしてテントとか焚き火とかキャンプの痕跡はしっかりと片してからロイドくんたちを待ち構えたんだけど、そこですっごいツッコまれた。そこまで言うことかなぁ。
「それはともかく……いやー、やっぱりロイドくんたちは来てくれたね」
「!」
「それは……どういう意味ですか?」
「? どういう意味って言葉通りだよ。一時は皆散り散りばらばらになったみたいだしここまで辿り着くまでも簡単な道のりじゃなかっただろうけど……ロイドくんたちなら絶対大丈夫だって私は思ってたからね!」
ってことで何故か聞き返してきたロイドくんたちにここまで辿り着いたことを純粋に称賛する。あの特務支援課なら当然ここまで来て当然だし、どんな壁だって乗り越えるであろうことはわかってた。
「皆ならあのシグムントさんとかアリオスみたいな化け物でも乗り越えるだろうし、キーアちゃんだってきっと救い出すでしょ?」
「……もちろんそのつもりではあります」
「だよね。なら私なんて大したことのない前座でしかないし、さっさと私のこと適度に痛めつけてクリアしてくれるかな?」
「なっ……!?」
「もちろん殺すつもりもないから安心していいよ。一応仕事としてはある程度ちゃんと戦うけどねー」
なので私的にはさっさとこの場を終わらせるためにそう提案しておく。またしても何故かちょっと驚いてたけど、いや本当に。私なんて路傍の石みたいなもんでいてもいなくても変わらない存在なんだからさっさと乗り越えてキーアちゃんを救ってほしいよね。私にかかった時間や労力だけロイドくんたちが苦労することになるんだしさ。
「さ、始めよ? 私は別に話すこととかないし」
「……あなたにはなくても、俺たちにはあります」
「そうなの? うーん……あんまり時間かけない方がいいと思うけどなぁ……」
ロイドくんたちが真面目かつ真剣な表情でこっちを見てくるけど、ぶっちゃけあんまり気乗りしない。別にロイドくんたちとレスバしたくもないし、別にロイドくんたちを否定したいわけでもない。特務支援課の頑張りは応援してるし、私も期待してる。だから話と言われてもって感じなんだよね。
「……でも、ま、いっか。ロイドくんたちが話をしたいなら聞いてあげるよ」
「ありがとうございます」
そうしてロイドくんは礼を言ってから話を始める。茶々を入れすぎると長引いちゃうから私も真面目に黙って聞こうかな。相槌はしつつ、発言は抑え気味に。
「……あの時、太陽の砦の地下で……あなたに話を聞いてから俺はずっと考えてきました。教団事件の被害者であるあなたに……正当な手段で救うことが出来なかったあなたに、俺は迷ってしまいました」
あーあの時ね。やっぱその話か。別に考える必要も迷う必要もないと思うけど……ロイドくんはロイドくんの道を進めばいいだけだし。私がなんかちょっとレスバっぽくしちゃったから悩んじゃったのかな。反省。私の意見なんかを押し通そうとしたのが間違いだね。
「救えなかった俺たちに何かを言う権利があるのか。正当な手段じゃなかったとしても救われる人がいるならそれでいいのかもしれない。……そんな葛藤を抱えてきた」
さすがはロイドくん。軌跡主人公の中でもめちゃくちゃ正義というか善性がすごい。クロスベル問題を解決に導くだけあってそこら辺の悩みへの対応というか、答えの出し方がすごいよね。別に私に発揮しなくてもいいとは思うけど。
「だけどここに来るまでに考えましたが……やっぱり、何も変わらなかったみたいです」
「ん?」
え? どういうこと? なんでロイドくん希望に満ち溢れたというか、前向きな笑みになってるの? いやまあロイドくんなら落ち込むことはないだろうけどさ。
「アーヤさん。あなたは──紛れもない被害者であり、加害者でもある」
「あー……それはまあそうだね。別に誤魔化すつもりはないよ」
まあそれはそう。被害者扱いされるとちょっと困っちゃうけど被害者であることには変わりないし、私が犯罪組織に属する暗殺者で人を殺してきてるのは間違いないし、別にそこから逃げるつもりもない。
なので普通に認めるけど、ロイドくんのはっきりとした様子が気になる。何を言うつもりなんだろうね。
「教団関係者を暗殺すること。殺人を容認するわけにはいかないのはもちろんだけど……何よりもこれ以上、やりたくもない殺人を無理に行おうとしてる人を止めないわけにはいかない」
「ロイドさん……」
「そいつは……」
……? あれ? 答え変わってなくない? それだと前の……って、ああ。だから答えは変わらなかったってことね。
結局悩みはしたけど私を止めるってことには変わりないわけだ。うん、まあ、それでいいんじゃないかな? ロイドくんの行動を私が止める権利はないからね。──まあ私もやめる気はないんだけど。
さて、一応発言しておこうかな。だんまりがすぎるのも良くないし。
「やりたくないって言われるとまあ……でもそこまでやりたくないかって言われるとそうでもないよ? 一応自分の意思で決めてることだからね。だからそこまで気を使ってくれなくてもいいかな」
「ええ、自分でやることを決めたのはそうでしょう。ですがその判断。暗殺の動機には、やらざるを得ないという意味が含まれている。あの時俺たちに言ったように、そうするしか対処のしようがないから」
「事実だからね。──ただまあロイドくんたちがそんなに嫌がるならクロスベル内での事件に関しては今後一切触れなくてもいいかもね」
「それは……」
「そうしてくれるなら願ったり叶ったりだけど……」
なので私は譲歩してみせる。ロイドくんたちはこの一件も解決してクロスベルの英雄になるからね。絶対壁乗り越えるマンになった特務支援課なら今後何があっても手の届く範囲の事件なら未然に防いでくれる期待が高い。
私も大陸中を回るわけにはいかないし、分担してくれるならそれはそれでヨシって感じだ。我ながら良い提案かもしれない。これで意見の相違もなくなる。争う理由もあんまりなくなるね!
「どうかな? 結構な譲歩だと思うんだけど」
「……ええ、そうかもしれませんね。あなたは話の分かる人物だ。セルゲイ課長の件も、目覚めたセルゲイ課長が言うには襲ったのは別の人物だったという話ですし……知る限りでは民間人を殺したことはないと聞いてます。譲歩してくれるなら手を取り合うことも出来るかもしれません」
「でしょ? ならそれでいいかな──」
「──その発言に矛盾がなければ、ですが」
……ん? 矛盾?
私はちょっと意味がよく分からなくて固まる。どういう意味だろう。今の話に矛盾なんてあったっけ?
「? どういうこと? 私なにかおかしなこと言った?」
「……ええ。アーヤさん、あなたは俺たちに、ありがたいことに期待をかけてくれている。この後に待ち構えている《赤の戦鬼》や《風の剣聖》すら乗り越え、キーアを救い出せると認めてくれるくらいには」
「え? あ、うん、まあそうだね。ロイドくんたちも強くなったみたいだし」
あれ? もしかして……そこちょっとやばかった? 原作知識でロイドくんたちがこの事件を解決するっていう信頼が怪しまれた?
そ、それはちょっとマズい。確かに怪しかったかもしれない……確かにシグムントさんやアリオスに今のロイドくんたちが絶対に勝てるって言うのは……まあ信頼関係があるならともかく、私が言うのはちょっと変かもしれない。
で、でもそこまでおかしくないよね? ただ信頼してるってだけだし……言い逃れは出来るはず! ロイドくんの推理力はヤバいけど、それに関しては信頼の元がアレってだけで信頼してることに変わりはないわけだし!
「そんなにそれがおかしかった? 私はこれでもロイドくんたちを信頼してるんだよね。ここまでの動きを見てれば乗り越えられる可能性は十分にあると思ってるよ」
「そうですか。──ではなぜ、
……て、手加減?
……え、よく分からない。つまり……どういうことだってばよ?
「あなたは俺たちのことを、アリオスさんを乗り越えられると思うほど信頼しているのに、自分が本気を出してしまったら殺してしまうと思っているし、教団に関する事件も解決出来ないと思っている」
「……そうですね。確かにそこは矛盾しています」
「私たちに期待していると言いながらも、期待していない……」
「そこに何か意味があるんですか?」
「……アーヤさんの俺たちに対する信頼。その差が、何によって分けられているか。それは──」
特務支援課の仲間たちが頷きながらも疑問している。私もよく分からない。教えてロイド先生! いやほんと。よく分からなすぎる。それがどういうことになるんだろうか。今選択肢を選んでいるところだろうけどちゃんと正解の選択肢選んでね! 正解は『深いことは何もないし、特に何も気にしてない』だよ!
「それは──
「……それってつまり……」
「……なるほど。自分自身に関係すること。その差ってことか……」
「……ああ。アーヤさんは自分自身が関わらない事件については俺たちに信頼を置いてくれている。だが一方で、アーヤさんが関わる教団に関することやアーヤさんのことについては、
──ロイド・バニングスがこっちを見た。
「そしてこの白い砂以外は何もない心象世界……俺が感じた印象は、哀しいまでの絶望感と虚無。そして
──ロイド・バニングスは告げてくる。
「アーヤさん。あなたは俺たちのことも何もかも……あるいは
──自らの推理を。
「本当は
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…………え? なにそれ? 全然違うんだけど。何言ってるの?
──俺がその自らの推理を告げても、アーヤさんは困惑するのみで全く核心を突かれたような動揺は見られなかった。
「……って、全然違──────う!!」
それどころか、いつもの明るい気の抜けるような大声でのツッコミ。それを持って俺の言葉を否定してくる。
「いやいや、なんでそうなるの!? びっくりしたー……すっごい真面目な感じで言うから本当に秘密でも暴露でもされるのかと思ったよ!」
「……ロイド……」
「全然そうは見えませんが……」
ランディやノエルが判断に迷って俺に声をかけてくる。
もちろん、俺だってそれが本当か嘘かは判断がつかない。
いや、むしろ本当にしか見えない。
アーヤさんの言動はいつも通りで、的外れなことを言った俺に素直に反応しているように見える。
──だけど、これまでの言動がそれを否定する。
アーヤさんが俺たちに、自分自身に関することで信頼を置いていないのは今までの発言や行動を見ているとそうである可能性が高い。
だからこそ俺は自分の推理に自信を持つ。
「……確証があるわけじゃない。だけどアーヤさんが周囲に全く期待していなくて、それを理由に自分に関係することは全部自分で解決しようとしているのなら……アーヤさんが教団関係者を暗殺するのは先ほども言ったように、本当はやりたくないけど自分でやるしかないと思っているからだと思う」
「いや、だからそれに関しては別にそんなことないない! 私以外の誰かがやってくれるっていうなら全然任せるよ?」
アーヤさんが手を振って俺の言葉を否定するが、構わず俺は続ける。
「……他人にやらせるより、傷つくこともなく既に手を汚している自分がやるのが手っ取り早いし、誰かが傷つかなくてすむ……そんな自己犠牲の表れなんじゃないですか?」
「それも別に……確かに私がやった方が手っ取り早いってのはそうだと思うけど、別に自己犠牲じゃないと思うよ? こう言っちゃなんだけど私って自分が1番可愛いと思ってるからね!」
アーヤさんが笑顔で威張るようなことじゃないことを言うが、それでも構わず俺は続ける。
「……それはアーヤさんの優しさだと思います。だけど本当は傷ついていないわけじゃない筈です。アーヤさんは基本的に殺人を極力犯さないようにしている。そして本当はやりたくないなら……その程度の覚悟で殺人を犯してもアーヤさん自身が苦しむだけです」
「だから別に傷ついてないって……まあこう言うと異常者みたいだからなんかアレだけど……とにかく別に、そんなに気にしてないからロイドくんも気にしなくていいんだって」
アーヤさんが少しげんなりしながら否定してくるが、更に俺は続けた。
「……悪いですがそれは出来ません。表の方法で救えなかった被害者を、これ以上罪を犯す前に今度こそ筋の通った方法で救うこと。俺たち警察が……法というルールに則り、市民に寄り添う形で事件に対して取り組む特務支援課が、理不尽な現実に対してやれるべきこと……
「……そうね」
「だな。いつまでも逃げてちゃ締まらねぇ」
「結局のところ、どれだけ理不尽でも向き合うしかありません」
「ま、そうだね。目の前で泣いてる女の子を放置するなんてことは、僕たちの流儀じゃない」
「警官としてだけじゃなく人として止める必要があります!」
「殺人という手段を持って世の中を正す……それを否定出来るほど私は正しくはありません。ですがアーヤさん。あなたが本当はやりたくないのだとしたら……《銀》としてもリーシャ・マオとしてもそれを見過ごすわけにはいきません」
「……ええ……? なんか熱くなってるところ悪いけど、的外れなんですけど……はぁ……いやもうなんか困ったなぁ……すっごい誤解が起きちゃってるよ……また……」
アーヤさんはため息を吐いて、右手で自らの顔を、鼻から口元の辺りを抑える。軽くうんざりしたような様子だった。
そんなアーヤさんに俺は告げる。
「──アーヤさん。もし、俺の言ってることが正しくてアーヤさんが本当は傷ついていて、殺人を犯したくないと思っていること。それを隠してまで暗殺を行っているのだとしたら……それはただ犯罪というだけじゃない。紛れもない欺瞞です」
「欺瞞じゃないんだけどなぁ……」
「その欺瞞を正して真の意味で俺たちを信頼してもらうこと。そしてあなたがこれから行おうとする暗殺事件を未然に防ぐこと。そして──教団事件における最後の被害者を救い出すこと。そのために俺たちはあなたを倒します!!」
そう決意を言葉にして武器を構える。
ここに来た仲間たちも皆同じ気持ちだ。誰もがアーヤさんのことも救い出す対象として見ている。
「…………はぁ…………ロイドくんさぁ……………………」
俺たちの話を聞いたアーヤさんはそこでまた深いため息を吐いて、1度目を閉じた。
そして顔を抑えていた手を取り払い、真っ直ぐに顔をこちらに向けてから目を開く。
「…………その話、
「ッッ……!」
「っ……!? この気は……!」
──だがその目は鋭く、笑みもなく……無表情で
黄金の瞳がこちらを射抜く。それと同時に、とてつもない殺気が俺たちを襲った。
怖気と寒気。そして、初めて感じるアーヤさんの怒り。
それらが全身に走り、俺たちは身を硬くした。
「まったく……人の心の内を勝手に決めつけてさぁ……ほんとよくないよね、そういうところ」
──これ以上その話を続けるようなら殺す、と言外に告げられている。
「シャーリィや叔父貴の纏う猟兵の闘気よりもまた違う……こりゃ暗殺者の放つ闘気って奴か……!」
「ええ……! 酷く仄暗い陰の気……! 裏社会の達人や暗殺者が纏う《修羅》の気です!」
「ああうん、それはもう
目だけが細まった無表情。普段とは違ってどこまでも冷たい表情のアーヤさんが吐き捨てるように告げる。
そしてそれを感じた俺たちは理解した。これがおそらく……アーヤさんの本気だろう、と。
ランディやリーシャが言うように、《理》とは違う《修羅》の闘気。伝説の暗殺者であるアーヤさんが放つそれは、まるで霧のように自然と辺りに浸透してくるような殺気だった。
「そしてちょっとだけ気が変わったよ。ロイドくんたちの言いたいことも理解したしね。──要は、
「っ、ああ……! その通りだ……!」
「だよね。私もロイドくんたちは私なんかが本気を出しても乗り越えられると思ってるし、別に乗り越えられたところでロイドくんたちが思うようなことは何もないけど──ま、それでもいいよね」
そこでアーヤさんは空間から獲物である巨大な魔鋏《ゾルフシャマール》を取り出し、更にあの《エクス=マキナ》という人形兵器を背後に召喚した。
「──執行者No.ⅩⅢ《血染の裁縫師》アーヤ・サイード」
名乗りを上げて得物を構え、そこで殺気はそのままに先ほどまで見せていたのと同じ笑みを復活させた。
「──ロイドくんたちがあんまりにもしつこいから、お望み通り本気は出してあげる。だから、あっさり死んだりしないでね?」
「ええ……! 今度こそ証明してみせます! あなたという《壁》を乗り越えることで!」
「ああ……行くぜ……!」
「死角からの攻撃に注意してください! 私もフォローします!」
『おおっ!』
──そうして俺たちは《白の領域》の最奥でアーヤさんと激突する。
目の前の犠牲者を、今度こそ救い出すために。
──そうして私は特務支援課との戦闘を始めながら思った。
…………よし! 上手く本気で怒れたな! いやー、久し振りにちょっと、本当にちょ~~~~~~~~っとだけイラッとしたから怒ってみたけど良い感じに出来たね! デュバリィちゃんの言う通り、たまには怒った方がいいのかもしれないし、これからはそれも検討しよう。で、後は特務支援課と戦闘──って、よくよく考えなくても普通にキツイ強いめんどい! 強くなって連携力が高まった特務支援課! しかもリーシャちゃんもいるし! 皆ほぼ覚醒というか覚悟決まってるから普通に手強いよー! どっちみち本気で相手しないとじゃん! うわあああああああああん!!
……まあでもちょっとだけとはいえイラッとしたの本当のことだからロイドくんたちを信じて本当に殺すつもりでやろっかな。もし殺しちゃったらごめんね?
今回はここまで。本作は勘違いものです。何が正解で何が間違ってるのか。真実は闇の中。後ろの正面だあれ。ってことで読者も勘違いしないように気をつけてね。
次は本気アーヤちゃんVS特務支援課です。次回で碧の軌跡編は終わりかな? ってことでお楽しみに。伏せ字はグノーシスキメて見るなり好きにしていいけど見たらSin値上がるのでグランドリセットの可能性が高まります。
感想、評価、良ければよろしくお願いします。