TS不幸少女のゼムリア大陸災難記   作:黒岩

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共和国で再会する不幸

 

 ──七耀暦1205年。1月。

 

 ゼムリア大陸中央部。カルバード共和国。

 大陸西部における動乱。クロスベル自治州によるエレボニア帝国とカルバード共和国、2つの宗主国に対する資産凍結やガレリア要塞の消滅。

 帝国内で起こっていた内戦、通称《十月戦役》の勃発やクロスベル独立国内における碧の大樹の出現と様々な出来事があった頃。

 カルバード共和国内でもIBCによる資産凍結の影響で経済恐慌を起こし、更にはかねてより社会問題になっていた反移民派によるテロ行為が激化し、国内は大きな混乱状態に陥っていた。

 共和国全土で幾つも暴動が起こり、テロ行為も頻発する。クロスベルでディーター・クロイスが逮捕され、エレボニア帝国では内戦が終結して2週間が経っても未だ共和国はその問題に終止符を打てないでいた。

 そんな最中、エレボニア帝国軍によるクロスベル自治州の電撃占領。たった1日で抵抗もなく占領され、先のディーター元大統領の逮捕によって市長となったヘンリー・マクダエルがエレボニア帝国との条約に調印。これによってクロスベル自治州はエレボニア帝国領クロスベル市となってしまった。

 

 そしてそれを1つの宗主国であるカルバード共和国も座視することは出来ず、速やかに抵抗しなければならないとサミュエル・ロックスミス大統領は議会を招集し、国内における暴動、反移民制作主義によるテロ行為を数日以内に収拾することを決定づけ、それにより共和国軍に首都警察に地方警察。ロックスミス機関から名前を変えたカルバード中央情報省、通称《CID》らの共同による合同作戦を行い、更には遊撃士協会にも協力を要請した。

 全ては西の大国エレボニア帝国にいち早く抵抗するため──共和国はようやく国内の混乱から立ち直ろうとしていた。

 

「おい、こっちだ。早く来い」

 

 ──しかしそれを黙って受け入れる彼らではない。

 

 カルバード共和国内の反移民政策主義に属するテロ組織の中で最も力のある組織──《真なる憂士団》。

 昨年に行われた《西ゼムリア通称会議》においてもエレボニアのテロ組織《帝国解放戦線》と協力して襲撃事件を起こしてみせたその組織に所属する憂士達が首都イーディス郊外のとある工場へと集まっていた。

 彼らは一様に顔を隠し、とある物を運んでは取り付ける。

 

「首尾は?」

 

「問題ない。それで最後の爆弾か?」

 

「ああ。これを仕掛け終わったらすぐに撤収するぞ。夜中とはいえ長居は無用だ」

 

「分かっている。すぐに取り付けよう」

 

 男たちの片方が車で運んできた箱の中身は小型の爆弾──人を殺傷するのに十分な威力を持つものであり、彼らはそれをとある荷物の中に仕掛けていく。

 その荷物。箱に記された名前は《SAID》。

 共和国に本社を置く大企業。サイード社の商品が詰め込まれた箱だった。中には大量の既製服──首都や各都市。国外にもある支店に送るための品が入っている。

 

「これでいい……これで共和国に害をなす移民に鉄槌を下すことが出来る」

 

「個人宛の荷物はどうする?」

 

「そちらにも幾つか仕掛けておけ。その個人が移民でなくとも構わん。中東系移民の興したブランドを喜んで買うような者も同罪だ」

 

「ああ、愚問だったな」

 

 ここ数年で急成長した高級ファッションブランド《SAID》。その創始者にしてデザイナーが中東系の移民であることは分かっている。そのデザイン性や着心地などが認められ、共和国内どころか今では世界的に人気のあるファッションブランドとして名を馳せているが、それが移民の興したものであるというのが彼らには気に入らなかった。

 本来あるべき財や名誉、地位が脅かされている。彼らの認識ではそれは本来の共和国人のものであり、移民のものではない。

 共和国経済が大混乱に陥る中でもそれほど大きな痛手を受けずに業績を伸ばしている移民系の会社を断じて看過することは出来なかった。

 それに共和国における移民の最大組織とも言える《黒月》やその表向きの顔である《九龍グループ》よりもこちらの方が手を出しやすい。

 共和国の裏社会におけるトップと移民の中では比較的権力を握ってる東方系より、マフィアでも何でも無い中東系の方がやりやすく、それでいて彼らも大きな成果を得られる。

 これによってブランドを失墜させ、顧客だけでなく移民の働き口も減らす。

 もっとも大きな会社なだけにこれだけですぐに潰すことは出来ないだろうが、それでもこちらからの警告として、そして崩壊の序章としては十分なもの。

 彼らはいずれ共和国から移民を排斥する。そのために出来ることをやろうとしていた。

 

「──警告します」

 

「!?」

 

 ──だが、彼らは間違っていた。

 

「速やかに爆弾を解除し、当施設より退去してください」

 

「誰だ!?」

 

「女……?」

 

「私が誰かというのは重要ではありません。当施設は()()()()()()()()()()()。不法侵入に爆発物の設置はご遠慮ください」

 

「弊社だと……? 貴様、ここの職員か?」

 

「見たところ移民のようだな。まあどちらでも構わないが。我らの大義を邪魔するものはたとえ同胞であっても排除するのみ……!」

 

「見られた以上、ただで帰す訳にはいかん。捕らえるぞ」

 

 彼らは突如として闇夜の中から現れた白い女を見て驚きながらもすぐに銃口を向ける。

 白いマントと包帯に覆われたような個性的なファッションをした女だったが、オートクチュールのファッションブランドで仕立てられるファッションには余人に理解出来ないデザインの服も多く存在するため、この程度は気にならなかった。その会社の敷地内で相手がその会社の人間だと言うのであれば尚更。

 それ以外にもその冷静さ。無機質な声色も気になりはしたものの、彼らにとって重要なのはこの場を見られてしまったこと。であればすぐに捕らえて始末するのみだ。《真なる憂士団》は大義のためなら手段は選ばない。複数人で女を囲んでいく。

 

「……重ねて申し上げます。貴方がたの主義主張には興味はありません。ですがここは弊社の私有地になります。そこに不法侵入し、あまつさえ爆発物を設置するなどして攻撃を行うというのであれば──我々も相応の手段を持って対処に当たらせて頂きます」

 

「ハッ、何を言うかと思えば……相応の対処だと? 貴様のような丸腰の女に何が出来ると言うのだ?」

 

「警告を無視した、と判断します。──イシュタンティ」

 

「!? なっ……!」

 

「白い……天使……!?」

 

「──!」

 

「っ……うわあああああ!?」

 

 ──だが女が彼らが言うことを聞かないと見切りをつけた瞬間、上から白い人形の天使が現れ、彼らに襲いかかる。

 その天使の動きは、当然だが明らかに常軌を逸している。人間ではない。材質も硬く、そして手足や翼も鋭く重い。天使が動く度に彼らは肉体を切り裂かれ、あるいは串刺しにされ、内臓が破裂するほどに重い打撃を受けて死滅していく。

 

「共和国の反移民系テロ組織の最大勢力《真なる憂士団》。想定していた練度を大幅に下回っていますね。これならば態々管理人である私が出向く必要もなかったかもしれません」

 

「な、なんなんだ貴様はぁ!?」

 

「馬鹿な……こんな……こんなことが……!」

 

「……いや、どうやら来て正解だったようですね。お久しぶりですね──庭園の主(ガーデンマスター)

 

「!?」

 

 そうして辛うじてまだ生き残っていたテロリストたちは、女がふと視線を自分たちの背後に向けるのを見た。言葉として紡がれる謎の単語の1つ1つを気にしている余裕もなかった。

 何しろ彼らは──

 

「うわっ、誰かもうやってると思ったらオランピアちゃんだ! 久し振り! ……じゃなくて、なんでここにいるの!?」

 

「見ての通りテロが行われるという情報を入手しましたのでそれを阻止しにやって来ましたが、何か問題でも?」

 

「問題あるよ! いや、やってくれたのはありがたいんだけど! それは本当にありがとう! でも血とか出したら商品が汚れるかもしれないでしょ!」

 

「勿論それについては気を付けています。現場に証拠を残すような失態を犯しては管理人失格ですから。一応この後構成員を動かして爆弾の解除も含めて痕跡を念入りに消す予定です」

 

「あ、そうなの? まあそれならいいけど……それじゃあもう終わったし、一緒に夜食でも食べに行かない?」

 

 その会話を聞いた彼らは一様に思った。「もう終わった……?」と。

 だが続けてそれぞれが声を口にしようとして、声が出ないことに気づく。なんなら視界もズレていた。あるいは何も見えない。あるいは呼吸すら出来ずに意識を徐々に消していき。

 

 ──いつの間にか切断されていた。あるいは、何らかの毒を受けたのかバタッと床に倒れていた彼らはそれに気づくことなく意識を永遠に失うことになる。

 

「申し訳ありませんがこの後も仕事がありますので」

 

「えー。……でもさ、上司からの誘いも仕事の内って言うじゃない? 別に強制はしないけど付き合ってくれてもいいと思うんだけどなー?」

 

「なるほど。いわゆるパワハラ。飲みニケーションというものですか」

 

「お酒は飲まないしパワハラはしてないっ! ただの方便だよ! 友達とご飯に行きたいだけ!」

 

「ではお断りします。仕事でないなら付き合う必要はありません」

 

「じゃあ仕事でいいから来て! お代も経費にしとくから!」

 

「分かりました。それではこの場の引き継ぎを済ませた後で同行しますのでしばらくお待ちを」

 

「あ、《LAMDA》だ。もう販売されてるんだっけ」

 

「一般流通はまだしていません。軍からの横流し品を入手して《庭園》の構成員に配備しています。《ENIGMA》や《ARCUS》もありますが、共和国内ではこちらの方が使い勝手が良いとメルキオルやエンペラーが判断したのでその都度使い分けるようにと」

 

「あー……それは良い判断だね。で、誰に連絡してるの? 構成員?」

 

「いえ、そちらはもう終わりました。10分もすればこの場に《黄金の園》に所属する構成員が後始末に到着するでしょう。そうではなく、食事と偽装した上での会議のため管理人を全員招集しています」

 

「えっ」

 

「報告します。メルキオル……『すぐに行くから待っててねアーヤ姉♡』。エンペラー……『了解した。話したいこともある故、招集に応じさせて頂こう』。アリオッチ……『あー? 飯か? 別に構わねぇがどこに集まりゃいいんだ?』──とのこと。場所の指定を続けてお願いします」

 

「……………………あー、うん……まあ、それじゃあ隠れ家のレストランにしよっか……個室があるところの……」

 

「承りました。それではそちらについても連絡しておきます」

 

「うん、お願いね……はぁ……せっかく新しい良いお店見つけたのになぁ……」

 

「? 何か言いましたか?」

 

「──いや、なんでもないよ! そうと決まったら早く行こう! こうなったらヤケ食いだ!」

 

「暴飲暴食は健康に悪くおすすめし──失礼しました。貴方は身体の不調とは無縁でしたね」

 

「複雑だけどそれはそうだね!」

 

 ──そうして天使を引き連れた白い女と途中から現れた中東人の女は闇に消えていく。

 

 その日《真なる憂士団》の部隊の1つが人知れず行方不明になった。

 彼らの間違いは、彼らが狙いをつけたサイード社が共和国内で密かに勢力を台頭させる闇の暗殺組織──《庭園(ガーデン)》の息がかかった組織であることだった。

 

 

 

 

 

 ──ハッピーニューイヤー! そしてハッピーバースデートゥーミー! アーヤ・サイードです! 七耀暦1205年! 新たな年の幕開けと私の21歳の誕生日を迎えました! わーい! ぱちぱちぱちー! 

 

 ってことで去年はず~~~~~~っとクロスベルとエレボニア帝国を行き来してずっと出張して働いてた私だけど──カルバード共和国! 私が帰ってきたぞー! ただいまー! お待たせー! 待ったー? 

 いやー久し振りに共和国に帰ってきたので色々と懐かしい。きっと共和国も私の帰りを待ち望んでたことだろう。いや知らないけどね。

 ただ家の家族も同然なイクスとヨルダとエースくんは私の帰りを温かく出迎えてくれた。正月に家に帰ったら皆驚いて感動してたよ。こんな感じで。

 

『うげっ!? 帰ってきてたのかよ! って、抱きついてきてんじゃねぇよ、うぜぇ!』

 

『ふーん……帰ってきたんだ。で、お土産は?』

 

『不在の間、幾つか仕事を受けた。その報告書だ。確認してくれ』

 

 …………うん! 皆私がいなくて寂しかったんだね! よーし、現実逃避しよっと。これからまた絆イベントをこなして絆ランクを上げればいいだけだからね。短い間だけど付き合ってあげなきゃ。

 それにしてもイクスとヨルダも今年で11歳になる。大きくなったなぁ……出会った時はこんなに小さかったのに。今じゃ立派な反抗期。立派な暗殺者。私の言いつけ通りに日曜学校に通いながらたまに仕事をしてるけどそれ以外の時はイーディス市内で遊び歩いてる都会っ子だ。私がいない間お世話をしてくれたエースくんの報告だとイクスはものすっごいマイナーな音楽をよく聞いててライブハウスに出入りしてるんだとか。ブラックメタルとかそういうやつらしい。へえー。でもまあいいんじゃない? 夜中に出歩いちゃうのは良くないけど趣味が出来るのは。イクスは気難しい性格してるからね。結構黒歴史作りそうな感じというか……まあ若いうちはそういうのもいいんじゃない? 

 そしてヨルダの方は甘いものの食べ歩きを密かにやってたり普通にファッションに興味があったり普通に映画を見たり普通の音楽を聞いたり……なんというか広く浅く緩く遊んでる。今どきのダウナーでおませな女の子って感じだ。まあイクスと同じでちょっと不良気味というか夜出歩いたりするのはあれだけど、そもそも暗殺者やってる時点で今更というかしょうがないというかそっちの方がよっぽど酷いし、それくらいなら可愛いものだ。どっちも思春期で私がベタベタすると鬱陶しがられるけどそういうとこも可愛いよね。

 後2人よりちょっと年上のエースくんは相変わらず静かで大人しい。仕事もそうだけど2人のお世話なんかもまるでお手伝いさんかのようにしっかりやってくれたらしい。料理もなんか上手くなってた。ただ趣味とか遊んだりとかどうこうってのはない。うーん、もうちょっと色々と楽しんでくれていいんだけどなぁ。やっぱりスウィンくんとかナーディアちゃんが気になるのかな。それは私も気になるから気持ちも分かるけど……でも2人に手を出すのはちょっとエンペラーが怖いし……やっぱり自然にいなくなるのを待った方が良いんじゃないかって思う。その方が確実だしね。

 それとイシュニャルガも元気だった。なんなら1番私に懐いてる。お土産で持ってきた帝国産のマタタビとかキャットフードに飛びついていた。

 そういうわけで家の子達は皆元気だったし、順調に育ってた。本当に私がいない間もすくすく育ってて偉い。偉いし私も時間を作りたいからご褒美も兼ねて旅行でも計画しようかな? 龍來とか行く? でもせっかくだから国外の方がいいかな。エルザイムとかヴァリスとか……後は南のモルジア諸島とか? やっぱ温かいところがいいよね。お金はいつの間にかものすっっごい貯まってるから割とどこにでも行ける。最高級リゾートを楽しめるぞ! 私も休みたい! 

 

 ……と、思ったけどその前にさすがにやるべきことがある。長い間お休みしてた表の仕事──すなわち、ファッションデザイナーのお仕事だ! 

 まあ休んでたと言っても服は仕立てて納品してたんだけど、それでもペースはどうしたってちょっと落ちたし、毎年年末に行われるファッションショーも国際情勢が不安ってことで延期になった。まあやるみたいだけどね。その準備もしないといけない。

 なので私は久し振りに出社した。本社は2区のサイデン地区に移転した。ちなみに本店となる第1号店は相変わらずの4区のタイレル地区にあるけど、私のアトリエはなんか私が結構有名になったとか防犯上の名目云々で3区トリオンタワーの高層マンションの最上階。その2階分が丸々私の家とアトリエになっていた。え……転居届とか代わりに出してくれたの……? 優しい……諸々の手続きとかも終わってるんだ……しゅごい……しかも前に住んでたリバーサイドの家もまだ所有しててそこは若いデザイナーの卵を住まわせてる。若手の育成も完璧だ! 

 

 そしてそれを行ってくれたのが私の会社の敏腕秘書! 私の彼女の1人でもあるセラフィーネ・アロンちゃんだ! うわーい! 

 

『あぁ……アーヤちゃん……久し振り……元気だった……? もしかして……また新しい型紙を……?』

 

『次は……次はどれの何を縫えばいいの……?』

 

 …………ヨシ! 全員元気だな! もう1人の彼女で縫製チーフを務めてるシーナちゃんも無事に床で転がってる! というか私の衣装の制作スタッフは皆床で転がってる! なんで!? 

 

『えっと……どうしたの? 皆死にそうな顔してるけど……』

 

『君が大量のデザインを送ってくるから……』

 

『えっ』

 

『まあそれだけじゃないんだけどね……今年は諸外国でも大幅に支店も増やしたし、君の営業のおかげで帝国や他の国でも顧客が増えて……それだけ君が送ってきたデザインを形にするために僕たちもフル稼働して……まあIBCの資産凍結は君のおかげで免れたんだけど、それでもクロスベルや帝国の方じゃ影響がでかくて……しかも共和国内の経済恐慌の影響も無視できないからその対応も……しかも入ってきた新人の教育が……』

 

『別に何も問題は起こしてないですが。喧嘩を売っていやがるんですか?』

 

『あ、ミコトちゃん。この間は鎧と兜作ってくれてありがとね』

 

『構わないです。それより次どこかへ行くなら自分も連れて行ってください。自分はボスの手伝いをしてその技術を学ぶためにここに来たのでそうしてくれないと困ります』

 

『あはは……考えとくね。それじゃあまずは……』

 

 …………なるほどね! つまり皆私と同じで忙殺されてるわけだ! それは申し訳ない。いやほんと……まさかこんな状態になってるとは思わなかった。新入りの彫金師、つまりジュエリーデザイナーとして私の服作りを手伝ってくれたりこの間は鉄機隊の鎧と兜も作ってくれた東方系の美少女のミコト・ムツキちゃん(ちょっとオランピアちゃんに雰囲気が似てて可愛い)は元気そうだけどそれ以外は死屍累々。すまぬ。

 ただ言い訳すると私的には服作りは癒やしというか、私にとって楽しい仕事だから空いてる時間を見つけてはやりまくってたというか……色んな超常的なものを見たのでイマジネーションが刺激されて新しい服の着想もどんどん生まれちゃってね。それで時間が足りない時はデザインだけを送って型紙とか裁縫は本社の皆に任せてたから……そして私のペースに付いてきたのと他の仕事も合わさってこうなったと。うん、完全に理解した。

 

『……とりあえず全員休暇を取るように!』

 

『だ、だけどまだ工程が……』

 

『へーきへーき! 型紙も裁縫も全部私1人でしばらくやるから! 少なくとも1か月はこっちにいる予定だしね!』

 

『アーヤちゃん……』

 

『社長……』

 

 ということで社長権限で一旦全員に休みを与えることにした。後は……休暇とは別に社員旅行でも企画しようかな? さっきも考えたけどモルジア諸島とか行く? 私も行きたいし。世間が大変な中、南の島でバカンスってのも乙なものだよね。さーて、そうと決まれば今日のところは皆を帰らせてと。それから私1人で──

 

『──よーう、アーヤちゃん♡ 邪魔するぜー』

 

『本当に邪魔になりそうだから帰ってくれる? オジサン』

 

 ──しばらく楽しい服作りをしようと思ったら玄関から《破戒》のオジサンが入ってきた。うわぁ……久し振りに会ったけど全く変わってない……相変わらずやんちゃで嫌な予感しか感じない毒々しいオジサンだぁ……。

 

『聞いたぜ。クロスベルと帝国の顛末とお前の活躍。随分と大変だったみたいだなぁ』

 

『そうそう。本当に大変だったんだよ。だからしばらく休みたいから帰ってもらっていい? それとこれから旅行に行くからしばらく仕事は受けれないよ?』

 

『休暇ねぇ。どこに行くのか知らねぇが、結社の仕事なら大陸各地にあるぜ? 絶賛激動中の帝国から荒野化が進む大陸東部に遥か南のモルジア諸島まで使徒か執行者の誰かしらはいるしなぁ。休暇がてら誰かしらと組んで仕事をこなすってのも良いんじゃねぇか?』

 

『えー……でも本当に休暇も含めて忙しいんだけど……一応聞くけど何の仕事があるの?』

 

『使徒からの仕事なら大陸東部で第五柱がお前に来てほしそうだったぜ』

 

 私はいつものオジサンからの仕事依頼を聞いてなんとも言えない気分になる。暇なら別に良いんだけど今言ったように暇じゃないからなぁ……特に東部は広いし遠いしでちょっと面倒くさい。現地にいる第五柱とか他の執行者に任せればいいのに……執行者として結構な先輩とか私とほぼ同期の子もいるんだよね。具体的にはNo.ⅤとNo.Ⅻ。どっちも面識は当然あるし、東部で仕事をする時はヴァルターも含めて一緒になりやすいんだよね。

 

『んー、やっぱ厳しいよ。他に仕事あるし。それに1か月もしたら多分帝国にとんぼ返りすることになるしさ。《鉄血宰相》にも呼ばれてるし、他の仕事もあるし……休んでる間は出来れば服作りに集中したい──』

 

『ああ、そういや帝国に関係する仕事もあるぜ。しかも近場で、おまけにお前にも関係ある仕事がな』

 

 私はそのオジサンの語り口を見て嫌な顔を浮かべてしまいながら確信する。──うわ出た。これが本命だ。オジサンがこういうもったいぶった言い方をする時はなんか私的に酷いこととか断ることが出来ないような厄介事が起こるし任される。

 しかもそれが私の為になるようなことがあったりでそれが本当に厄介なんだよね。鞭だけじゃない。飴もくれるから断れない。よりによってこんなオジサンに恩もあるしね。ぐすん……今更だけど私可哀想では? 

 

『聞きたくないけど聞くしかなさそうだ……』

 

『クク、よく分かってるじゃあねぇか。それじゃ簡単に説明するが……近頃共和国じゃあ反移民派のテロが頻発しててなぁ』

 

『あー、共和国特有のやつね。それがどうかしたの? まさかそれに便乗して犯罪でも起こす気じゃ……』

 

『むしろその逆だな。さっさと共和国内の混乱を鎮めるために、反移民派の組織を程よく潰してほしいって依頼だ』

 

『……え?』

 

 オジサンから仕事の内容を受けて私はきょとんとする。反移民派の組織を潰せって……え? どういうこと? 

 

『オジサンが急に良いことをやろうとしてる……これは逆《破戒》パターンだ……怖い……』

 

『おいおい、別に敢えてそうしようとしてるわけじゃないぜ? ただ今回のは、連中のやんちゃしてる期間がちょいと長過ぎるんでなぁ。このままじゃ犯罪をしようにも結社関連の仕事を進めようにも色々と支障が出る。帝国と共和国がクロスベルを求めてドンパチするのも、出来れば早めに見てみたいしな』

 

 そうしてオジサンはそんな普通に最低な理由を口にする。いつものオジサン節だ。要するに、反移民派のテロやら共和国内の混沌とした状況も最初は面白かったし楽しんでたけどもう飽きたし蛇足だからさっさと終わらせて次に行きたいってことだろう。帝国と共和国の戦争も早く見たいって言ってる。最低だ! 

 

『ま、結果は分かりきってるがな。機甲兵に騎神……帝国の新兵器の前じゃ共和国だろうとどこの軍だろうと太刀打ちは出来ねぇだろう』

 

『まさかちょっかいかける気じゃないよね?』

 

()()()まだ大人しくしてるつもりだ。色々と興味があるのは確かだがなぁ』

 

 そう言ってオジサンは葉巻を吹かす。やめてほしい。だから服に匂いがついちゃうじゃん。もー。

 

『というわけで、たまには慈善事業に手を出すとしようぜ。共和国内を混乱させる悪党共を壊滅、殲滅、一網打尽ってな』

 

『1番の悪党がなんか言ってるよ……』

 

『褒めてもお年玉くらいしか出ないぜ? ──ああ、それとお前の会社も狙われまくってるから気をつけるんだな』

 

『え? そうなの?』

 

『中東人のお前が立てたブランドなんて狙われるに決まってんだろ? ま、これまでのテロはお前の部下によって未然に防がれてはいるが……今後どうなるかまでは分かんないぜ?』

 

 私はオジサンの言葉に驚き、手渡された書類──おそらくテロ組織から手に入れたのか、そのテロの標的の書かれたリストを見てそこに私の会社があることを確認する。

 しかもなんか爆破テロを起こすつもりらしい。ひ、酷い! 人でなし! 私だけを狙うならともかく、従業員や顧客まで狙おうとするなんて! 許さんぞー! 私は立ち上がって宣言する。

 

()()! ちょっと行ってくるね!』

 

『あんまりやりすぎんなよ? さっきは殲滅とは言ったが、反移民派を根こそぎやっちまえばそれこそ国内は混乱に陥るからな』

 

『じゃあやっていいところとダメなところの指示ちょーだい!』

 

『オーケー♪ クク、それじゃいっちょ、クロスベルと帝国で幾つもの不幸を乗り越えたお前の成長を見せてもらうとするか』

 

 そうして私は休暇の前にまずは反移民派テロ組織を適度に潰しに行くことにした。オジサンの指示のもとでね。

 そして前々から動いてたっぽい《庭園》も使った。オランピアちゃんとかとも偶然合流して他の管理人とも会議することになってエンペラーやメルキオルからは『近々会わせたい者がいる』とか言われたけど今は一旦保留にしてテロ組織をぶっ潰すことに専念だ! 軍や警察やギルドも動いてるっぽいし、私もそれを見習って頑張るぞー! うおおおおおおおおおおおおお!! 

 

 

 

 

 

 ──長かったような短かったような……そんな心持ちだった。

 

 当てもなく彷徨い、良いことも悪いこともあった数年。最初は老師と再会し、龍來で崑崙流を習った半年間。

 それからまた自分が何をするべきか迷った末に──《裏解決屋》という道を進むことに決めた1年。

 それからは多くの失敗を繰り返してきた。どっかから流れてきた子猫を別の場所に送り届けたり、頼りになる兄貴分と出会ったり、油断のならない《黒月》の眼鏡に抗争の後始末を頼まれちまってラングポートで2ヶ月の下積み生活を送り、そこでも情報屋の二人組と出会ったり。

 とにかく色々あった4年間だった。最初は俺の未熟さが招いた失敗だらけだった裏解決屋の業務もようやく慣れてきた。

 最近じゃどこから噂を聞きつけたのか、オレド自治州に本社を構える民間警備会社《マルドゥック社》から新装備のテスターをしてみないかと相談があり、俺は悩みながらもそれを受けることを決意した。

 そして昨年から続く共和国内の混乱で仕事が激増していた俺は、ようやく求めるものを手に入れた。それが──

 

「ああ……最高だ……なんという素晴らしい乗り心地……!」

 

 そう──それこそが今俺が運転する、念願の新車。

 共和国4大ライセンシーの1つ。インゲルト社製ピックアップトラック《ナイトブレイカー》1204年モデル。

 見た目のフォルムも仕事で出張や荷運びをすることも多い俺にはピッタリ。オフロードでの走行も問題なく行える足回り。ステアリングもイカしてる。

 それでもエトワスやレッドスター製のスポーツカーには加速や最高速度は劣るが、その辺りはこれから自分でカスタムすればいい。完璧じゃねぇからこそその楽しみがあるってもんだ。

 俺は仕事で首都郊外を転がしながら自慢の愛車の乗り心地に感動する。マルドゥック社との契約金が入ることやここ最近の仕事で貯めてきた金を使った甲斐があった。

 まあ共和国内はかなり混沌としてやがるし、西じゃ帝国で内戦が起こってクロスベルじゃ常軌を逸した現象が起こった挙げ句、遂に帝国がクロスベルを占領しちまってと色々と大変な世情だ。こうやって新車を購入して喜んでる場合じゃないかもしれないが……。

 

「いや、でもこの時だけは……喜ぶべきだろう……! 喜ばないとこの俺の愛車……いや、相棒に失礼だ……!」

 

 俺は車内で1人、高らかに謳い上げる。人間には息抜きが必要だ。仕事終わりのサウナと甘味が俺にとって必要不可欠であるように、この車だって俺にとっては必要なもの。

 だからこそそこで喜ぶことは何らおかしくない。むしろ喜ばないのは失礼だ。

 

 ──なんなら今だけはこの間、すれ違ったかつての幼馴染2人のことも忘れられる。

 

 本当にただすれ違っただけ。首都で活動する反移民派テロ組織の摘発を行うために捜査を行っていたのだろう。CIDに入ったばかりだが若手の有望株として期待されているあいつと遊撃士協会でD級の正遊撃士。近々C級に昇格するんじゃないかと噂されてるあいつも捜査を行ってやがった。

 俺もまた仕事で捜査を行っていて、遠目に見ただけ。目が互いに合っただけだが……それでも気になって2人のことを調べてしまった。

 だが後悔はしてない。むしろ少し安心に近い気持ちが生まれる。俺がいなくてもあいつらは当然のように上手くやっているらしい。

 ま、優等生のあいつらならそうだろうとは思ってたけどな。

 声をかけることも考えないわけじゃなかったが、その必要もねぇだろう。CIDにギルド。表の世界でよくやっているあいつらと違って俺は表と裏の狭間にいるちっぽけな裏解決屋。互いに首都にいると認識してるくらいの距離感がちょうどいい。……今更俺に声をかけられても困るだろうしな。

 

 ──と、そろそろ切り替えねぇとな。確か依頼にあった魔獣がいるのはこの道の外れで……。

 

 首都の郊外。段々と車も少なくなってきた辺りで俺は地図を見比べながら辺りを見渡す。

 そしてもう少し先かとアクセルを強めに踏み直したその直後──右の横合いから突然何かが飛び出してきた。

 

「うわあああああああああん!!」

 

「うおおっ!?」

 

 一瞬の出来事。飛び出してきたのは人で女で中東人のようだった。注視する余裕はない。まるで何かに吹き飛ばされたかのように車道へ転がってきたその女。

 俺はそれを躱そうとハンドルを思い切り右に切るも、どういうわけか女もまた一旦車道で体勢を立て直し、もう1度右へと戻ってしまい──

 

「っっっ!?」

 

 ──車体から伝わる何かにぶつかった振動。

 前方へ跳ねて転がっていったその女の姿。動きを止める俺の車。絶句する俺。そして俺は思った。

 

 やっちまった……! 

 

 車で人を轢いちまった。そのことに俺は酷い焦りを覚える。

 車道に飛び出してきたのは向こうだが、そんなことは関係ない。車と人間の交通事故はおおよそ車側に責任がある。人身事故を起こしたとなれば免停は免れない。

 いや、そんなことよりも相手を怪我させちまったのが問題だ。あるいは……相手が死んでしまった可能性も考えないといけない。

 

 もしそうなったら……それこそ俺は、やっぱり──。

 

 いや、今はそんな場合じゃねぇだろ! とにかく今は車から降りて安否の確認を……! 

 俺は我に返って車から降りようとした。まずは女の状態を確かめる必要があると、そう思って──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いったーい……何? なにかにぶつかった?」

 

「なっ……!?」

 

 ──だがありえないことに、その女は起き上がった。何事もなかったかのように。

 

 いや、実際に、何事にもなっていない。出血している様子も見られない。普通に起き上がって周囲の様子を確認していた。

 そしてこちらと目が合う。俺はまだ状況を理解出来ない中で、女は俺を見ると突然声をあげた。

 

「あー、車にぶつかっちゃったんだ。それは運が悪いね……って、あれ? もしかして……」

 

「…………(パクパク)」

 

「あーっ! ヴァンじゃーん! 久し振りー! 元気だったー!?」

 

「…………あ……?」

 

 口をあんぐり開けて絶句していた俺だが、向こうが突然俺を見て笑顔になって名前を呼んできたことで再び我に返る。

 ……俺の名前を知っている? 知り合いか? いや、というか確かに見覚えがあるような……って、こいつは……。

 そこで俺は初めてそいつの容姿をまじまじと見る。銀白色の髪に赤のインナーカラー。金色の丸い瞳。どちらかと言えば幼い可愛い系の顔立ち。褐色の肌。背丈は普通くらいでスタイルは良いが、どことなく色気を感じない明るくてアホっぽい言動。中東系と共和国系のファッションを組み合わせたと思われるそのハイセンスさ。おしゃれな格好。車に轢かれても平然としてるその異常性。俺の中で該当する人物は1人しかいない。

 

「アーヤ、か……?」

 

 俺は運転席に座ったまま、聞こえるはずのない名前を口にする。

 そう、俺の中で該当する人物は──アーヤ・サイード。

 アラミスの同級生で在学中に自身のブランドを立ち上げて大成功を収めてしまった《アラミスの狂人》。色んな意味で、幼馴染2人とはまた別で思い出深すぎるその人物がそこにいた。

 

 ……いや、そりゃ首都にはいるだろうし、出くわさない可能性も0じゃないだろうが……。

 

 俺はこんなところでアーヤと再会したことに困惑する。

 つーかこいつなんでここにいやがるんだ? いや、それよりも「よいしょっと」──なんか助手席に乗り込んできやがった。降りろ。シートベルト締めるな。勝手にドア開けて入ってくるな。

 

「それじゃどこ行く?」

 

「いや、どこ行く? じゃねぇよ! 車に轢かれたってのに普通に乗り込んでくるやつがあるか!」

 

「あ、こことか良さそうじゃない? 高級ステーキハウス! ここにしよう!」

 

「勝手に目的地を決めてんじゃねぇよ!? 行くとしてもまず行くのは病院だろうが!? つーか数年ぶりに再会したばかりなのに距離が近ぇ!」

 

「えー病院はちょっと。別にどこも怪我してないし。それよりもお腹空いたし、ご飯食ってから映画でも見に行こうよ。その後はクラブで朝までどんちゃん騒ぎでいいかな?」

 

「フランクすぎんだろ! 4年振りに再会してやることじゃねぇ!」

 

「ってかこれ去年出たばっかりのインゲルト社のピックアップトラックじゃん! 買ったんだ? 結構高かったんじゃない?」

 

「それは……まあな。それなりに良い値段はしたが、インゲルターの俺としちゃかなり満足出来る乗り心地で──」

 

「ま、私はもっと高いエトワス社のスポーツカーとかレノ社のキャンピングカーとかレッドスターの特注限定モデルの車持ってるけどね。これも出たんなら買おうかな。ふふん、私の方がいっぱい車持ってるよ」

 

「会ったばかりでクソみたいなマウント取ってきてんじゃねぇよ! くっ……そういやかなり稼いでんだったか……このブルジョワめ……! 頭の悪い買い方しやがって……!」

 

「いやいや、私よりもヴァンの方が頭悪いでしょ? だってこっちはアラミス卒業生だけどそっちは中退だし。──やーいやーい、低学歴ー。おまけに低収入ー。甲斐性なしー」

 

「くっ……何だろうな。そこらの奴に言われても何も思わねぇが、お前に言われるとめちゃくちゃムカつきやがるのは……!」

 

「まあいいじゃん。そんなにカリカリしないで遊びに行こうよ。ステーキが嫌ならケーキバイキングでも行く? 市内のホテルで期間限定でやってるらしいよ?」

 

「っ……それは確かに捨てがたいが……って、だからどこも行かねぇよ! 今から仕事だ仕事!」

 

「あ、仕事なんだ。へぇー、もしかしてこの手配魔獣?」

 

「そうだよ! だから今は「この魔獣ならもう倒したよ」──は……? お前、今なんて……?」

 

「だから魔獣は倒したって。──はい、これ証拠の魔獣の角ね」

 

 アーヤが懐から取り出した魔獣の角。

 それは確かに俺がとある事情で受けた手配魔獣の一部で……。

 ……もしかするとさっき吹っ飛んできたのは魔獣と戦ってやがったのか? 

 いや、だがそうなるとこいつはその手配魔獣を倒せるくらいには強いってことになる。確かに学生時代から身体能力は馬鹿みたいに強いやつだったが……。

 

「……お前ってファッションデザイナーだったよな? なんだってこんなところで1人で魔獣退治なんか……」

 

「あーうん。ファッションデザイナーなのは確かなんだけどね。……まあヴァンなら言ってもいいかな。誰にも言わないでね? ──私って実は《結社》の執行者なんだよね

 

「ああ、なるほどな。結社の執行者か……それなら納得だ、な……………………」

 

 何度目かになる思考のフリーズ。

 アーヤから告げられた言葉に理解が追いつかない。

 結社。それが意味するのは裏社会では有名なかの《身喰らう蛇》。

 その執行者となると十数人しかいない最高位エージェントだ。全員が特異な能力や達人、化け物ばかりだという。

 

 ──この能天気アホアホ女が結社の執行者? 

 

 いや、だが確かに学生時代から色々おかしかったし、身体能力の高さもそうだとしたら頷け「はい、これ証拠の《ゾルフシャマール》ね」──なんかでっかい鋏出てきた。出すな。今すぐしまえ。よし、それでいい。

 

「って、はあああああああっ!? お前が執行者って……ま、マジで言ってんのかよ……!」

 

「だからマジだってば。それで反移民派のテロ組織を今追っててさー。魔獣を使って色々しようとしてたから懲らしめてきたところなんだよね。──あ、そうだ。ヴァンに“4spg”出していい? ちょっと人手が足りないから追い詰めるの手伝ってよ」

 

「いや、それは──って、ちょっと待て。なんでお前が俺の仕事のこと知ってやがるんだ?」

 

「? イーディスじゃ常識でしょ? それにほら、私って裏社会には結構詳しいし。ヴァンが裏解決屋始めたのなんて何年も前から知ってたよ」

 

「…………マジかよ……」

 

「ってことで仕事受けてくれるよね?」

 

「いや、それは筋が通るかどうか内容を詳しく聞いてからじゃねぇと……それと報酬についても……だから一旦車から──」

 

「私のこと車で轢いたよね? それで何もしないで逃走するの? ひき逃げで通報していい?」

 

「……………………」

 

「あ、勝った。それじゃとりあえず市内まで送ってもらっていい? へい、ヴァンタクシー! 市内まで私を連れてって!」

 

「……………………ハイ、ワカリマシタお客様。頼むから通報はやめてください……」

 

「ふふん、それはヴァンの態度次第だね! それじゃ市内までレッツゴー!」

 

 ……そうして俺は約4年ぶりに学生時代の友人アーヤ・サイードと再会した。そしてこの後めちゃくちゃこき使われ、反移民派テロ組織の壊滅に尽力することになるのだった……ちなみにこいつは本当に執行者で馬鹿みたいに強かった……。

 




ってことでこっからは閃の軌跡Ⅲまでに色んなイベントをこなすターンです。共和国編のキャラも色々と出てきます。
次回はまたヤバい人が出てくるかもしれない。お楽しみに。

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