──あれから2ヶ月が経った。
帝国における内戦が終結し、年明けから1週間程で国内の混乱をある程度収拾した帝国政府は、直ぐ様正規軍を動かしてクロスベル自治州へ侵攻。僅か1日での電撃的な侵攻で同自治州を占領し、マクダエル市長に条約を調印させたことでクロスベル自治州は帝国領クロスベル市となった。
だがそんな中でもう1つの宗主国であるカルバード共和国も動き出し、空挺機甲師団をクロスベルへと向かわせた。
そしてそれを帝国の最新導力戦車や機甲兵が迎え撃つ──それだけでも帝国の勝利はほぼ確実だっただろう。
だがその防衛戦の中にはただの機甲兵だけじゃない。──《灰の騎神》ヴァリマールの姿とそれに乗り共和国軍を撃退する自分の姿もあった。
「さすがは《灰色の騎士》殿……!」
「内戦を終結させた帝国の若き英雄……!」
共和国の導力飛空艇を最低限の破壊で撃墜し、共和国軍を追い返す。
それがこの俺……クロスベル総督府の臨時武官。《灰色の騎士》という渾名で知られるようになってしまった帝国の英雄役としての務めだった。
帝国政府の要請で再開したトールズを休学し、前線で戦う日々。
そんな俺に対する周囲の声は称賛しかない。
断ることも当然考えたが、俺が断った場合、帝国と共和国の争いは激化するだろう。
そうなれば双方の兵士の被害はもちろんのこと、クロスベルの人達も危険な目に遭うことは避けられない。
ゆえにこうなった以上、俺に出来ることは騎神という絶大な力を以て速やかに争いを収めることしかなかった。
それがこの状況で俺に出来ること……前に進む方法だと信じ、俺は仲間たちとも離れ、1人戦っていた。
……いや、正確には1人ではない。俺のサポートを行うためにと付いて回るようになったアルティナ・オライオン。《黒の工房》出身で現在は帝国軍情報局に所属する彼女が俺と共に任務を行っていた。
とはいえ前線に出るのは俺とヴァリマールだけであるため、今はそのアルティナも近くにはいないが。
俺に求められるのは英雄的な行動。
力を以って帝国に利益を与え、帝国の人々の期待に応え、無用な被害を防ぐこと。
そのために戦いを続けていて……そしてある時、ふと気づいた。
「……ああ。そういうことだったのか……」
前線でふと俺は学院祭の夜。後夜祭での教官の言葉を思い出す。
『それもあるけどそれだけじゃなくてねー。リィンくんも……まあリィンくんならきっと乗り越えられるとは思うけど気をつけてね。世の中……特に
『まあ要はしがらみに囚われるって言うのかな? 特にリィンくんやこの士官学院の生徒は力を付けて将来軍人になる可能性もあるわけだし。国や上司に命令されて仕方なく他者を傷つけて、時に命を奪うことだってありえるんじゃないかな』
俺たちトールズⅦ組の副担任。2人いる教官の内の1人であるアーヤ教官から聞いたその言葉。
その時はまだ重く受け止めることはできても本当の意味で理解はできていなかったその言葉を、今になって理解する。
力のある者が囚われるしがらみ。宿命。使命。今まさに、俺を縛っているものだった。
そしてそれを自覚し、悩みながらも結局は進むしかない。明確な答えのないまま、それでも何もしないよりはマシだと信じて。
「アーヤ教官……貴方ももしかして、似たような気持ちだったんですか?」
この場にいない教官に独り言として問いを投げかける。
アーヤ教官は常に明るく前向きだったが、それでいてどこか諦めにも似た言葉を口にすることもあった。
結社の執行者であり、情報局に所属し、俺たちトールズⅦ組の教官にもなったアーヤ教官。
それだけの立場があって動いていたアーヤ教官は、
犠牲を減らすように動いていたこともわかっている。
ユミルでもパンタグリュエルでもケルディックでも。そしてあの煌魔城でもアーヤ教官は貴族連合に与しながらも俺たちを助けてくれた。
それはおそらく……俺の実の父である《鉄血宰相》ギリアス・オズボーンとの何らかの契約。仕事によるものでもあっただろう。
結社の執行者という立場がありながらその契約を結んだ理由は分からない。
しかしアーヤ教官は間違いなく自分たちを導いて助けてくれた。
悩みが全くないわけじゃなかっただろう。それでも、前に進んで常に動いていた。
……ならその生徒である俺も、それを見習うべきなのかもしれない。
クロウの最期の言葉もある。今はまだ具体的にどうするべきかまでは見えないが、それでも前に進み続けるべきだろう。
それでも苦悩は晴れないが、立ち止まるわけにはいかない。皆も苦しい中、きっとそうしている。
だから今日も俺はこのクロスベルの地で帝国政府の要請に応え続け──
「うわああああああああん!! もう仕事なんて嫌だー! 疲れたんもおおおおおお!!」
──と思った矢先に東クロスベル街道を叫びながら爆走するアーヤ教官を発見し、俺は真顔になった。
…………まあ、そうだな。とりあえずアーヤ教官に声をかけて何があったか聞こう。確かアーヤ教官はしばらく仕事や用事で共和国に帰っていたはず。
だからきっと共和国で辛いことがあったんだろう。もしかしたらああ見えて重いものかもしれない。街道の警備をしている機甲兵や戦車に発見されて攻撃される前に──「うわあああああん!?」──遅かった。マズい。
俺は焦り、直ぐに話をつけてアーヤ教官を救出した。そして何があったのかを聞いたが、結局は仕事で色々しんどいことがあったと言うだけで詳細は教えて貰えなかった。合流したアルティナに泣きついて慣れた様子でアルティナがあしらっていたが、あのアーヤ教官がしんどいことがあったと言うなんて……一体共和国で何があったと言うんだ……?
──ボンジュール! 暗殺組織《四の庭園》のリーダーしてます! アーヤ・サイードです! 殺しの依頼は滅多に受けません! 一見さんもお断り! どうしてもやらないと困る仕事だけやってます!
ということでね。最近は仕方なく、本当に仕方なく殺しの仕事をたまにやってます。共和国内で反移民派テロ組織を大人しくさせるために。
まあやってるのは本当に過激派で民間人の犠牲もバンバン出すような酷い人達だけではあるからまだマシかもしれない。だって聞いた話だと共和国最大のマフィア《
それで建前上は私の部下の《庭園》の管理人たちも最近はよく働いてるっぽい。それを止めるだけの力も理由もないから放置してるけど……一応はあんまり派手にやりすぎないようにねって恐る恐る言っておいた。皆頷いてたけど私の言う事なんて聞いてくれないんだろうなぁ……特にメルキオルとエンペラー。オランピアちゃんとアリオッチはなんか割と言う事聞いてくれる気がするけど、それでも組織の運営方針的にメルキオルとエンペラーの言う事を優先するんじゃないかな?
だから私は私で独立して動いてる。幸いにも《破戒》のオジサンが今回はやる気だったのでオジサンの指示通りに潰していい組織や企みは潰して潰したらダメな組織は放置する感じで頑張った。
──そしてそんな矢先に再会したのがヴァンだったんだよね。
ヴァン・アークライド。共和国の首都イーディスの旧市街で裏解決屋を営む黎の軌跡シリーズの主人公であり、私のアラミス高等学校時代の同級生で友達。
ま、ヴァンは2年になってすぐに自主退学しちゃったんだけどね。それからずっと会ってなかったけどアークライド解決事務所が数年前から開業したのは知ってたし聞いてた。ヴァンにはなんで知ってんだって言われたけどそりゃ幾らリベールやらクロスベルやら帝国やら大陸各地を飛び回ってるとはいえ私のホームは共和国かつ首都イーディスだし、裏の情報は普通に入ってくるよね。原作知識なんてなくても知ってるよそりゃあ。
後は仕事を手伝った帰りに久し振りに旧市街の《モンマルト》に行ってビクトルさんやポーレットさんにユメちゃんと挨拶したらヴァンが唖然としてた。そして数秒後にまた「って、全員知り合いかよ!?」ってツッコんでたけど、なんだったら私の方が古い知り合いだよ? ビクトルさんにはかなり昔お世話になったし、モンマルトにはアラミスの1年生の時からずっと通ってる。ポーレットさんとも帰ってきた時から普通に知り合いで仲良しのお姉さんだし、ユメちゃんには赤ん坊の頃から一緒に遊んだりお世話もしたりした。今でも毎年ちゃんとユメちゃん用の服を送ってる。家族ぐるみで仲良しだ──って言ったらまたヴァンが口をパクパクさせてた。なのでマシュマロを投げて口にシュートしたらまた怒ってた。「甘いものを投げるんじゃねぇ!」って。いや、私が言うのもなんだけどそこじゃないと思う。
と、そんなわけで久し振りにヴァンと再会して一緒に仕事をすることに。いやー懐かしいなー。アラミス時代はヴァンに頼まれて仕方なく手伝って私が輝かしい活躍でヴァンのピンチを何度も救ってあげたんだよね。──え? 記憶を捏造してんじゃねぇよって? そうだったっけ?
まあ言われてみればちょっとだけ問題も起こしちゃった気もするけど、そんなことは置いといてヴァンには仕事の話。反移民派テロ組織を抑えるために細かい仕事を頼むことにした。そしてヴァンも承諾した。ヴァンの良いところはちゃんと話をすれば裏の人間だとしても理解してくれるところというか、筋の通った依頼なら私たち結社の人間の仕事だって受けてくれるんだよね。テロを止めたいってちゃんと言えば脅しがなくても全然普通に受けてくれた。
なので数日間はヴァンと一緒に行動を共にした。ヴァンの車に乗って反移民派テロ組織御一行様をちぎっては投げちぎっては投げ……あ、本当に千切ってはないよ? ただの例えだから。ヴァンも一緒だし、殺すほどの相手じゃないからちゃんと捕まえた。
「ったく、なんつーか化け物みてぇな強さだな……半信半疑だったが、マジで執行者みたいだしよ……」
「いやいやそんな。私なんて普通くらいだよ。──まあそれでもヴァンよりは強いけどね! ふふん」
「くっ……事実だから何も言い返せねぇ……」
「ヴァンは崑崙流と、後は零式剄術を最近になって試してる最中なんだっけ? 一応私も東方の拳法は同じ執行者の人達との組手でちょっとだけ習ったことがあるから教えようか? あちょーあちょーって感じで」
「浅すぎんだろ……そんな奴から教えを受ける気は──って、ちょっと待て。なんで俺が崑崙流をかじってることや零式剄術を試そうとしてることまで知ってやがる!? しかも零式剄術の方はつい昨日武装をテスターとして契約したばっかりだぞ!? まだ練習中で実戦じゃ試してもねぇし!」
「壁に耳あり障子にメアリー。アーヤちゃんは何でも知っている~♪ るーるるー♪」
「歌って誤魔化すんじゃねぇよ! ──って、消えたぁ!? おいどこに行きやがった!? 逃げるんじゃねぇ──!」
──と、そんな感じで愉快に協力プレイで仕事をこなした。ヴァンと一緒に動いたのは学生時代振りだけどコンビネーションは良い感じだったね。
それとヴァンの強さも確認したけど、確かに私の方がはっきり強いって言える感じではあった。筋は良い感じというか器用なんだけどね。戦い方は上手いし色々と工夫してやれることを全部やって戦う感じ……つまり私と同じタイプだね!
あ、それと共和国ヴェルヌ社製の第五世代戦術オーブメントの《LAMDA》も使ってみたけどそこそこ便利だった。ステルス機能は潜入に使えるっちゃ使えるけど……でも別にこの機能使わなくても消えるくらい出来るしなぁ……別に一々使う必要ないんだよね。ステルスくらい自前で出来ないと暗殺者なんてやってられないよ。
ただ空間投影機能なんかは使え──あ、でもこれも分け身でいいじゃん。ううん……地力がついたばっかりに……。
まあでもそれらと合わせて用途によって使い分けることも出来るし、性能は悪くない。戦う手段なんてなんぼあってもいいからね。
──そしてヴァンと一緒に仕事をしたり私の手の回らない場所を頼んだりしてたおかげで結構な数のテロリストを捕まえたんだけど、その人達は全員段ボールに詰めて夜中にCIDの本部に忍び込んでそこで働いてるルネっち先輩のデスクに山積みにしておいたし、人がいる時は『ルネっち先輩へ』という張り紙と共に本部の前に置いておいたのでこれで一安心。ふぅー、良い仕事したー。お世話になった先輩の手柄にもなるし、テロリストも逮捕されるし、良いこと尽くめだ! 表に出るわけにもいかないしね。
それとテロリストを潰した過程でなんと捕まってた民間人を保護したんだけど、それも全員を私が保護するなんてことはさすがに出来ない上に民間人に見つかるのはマズいので、その時だけヘルメットで顔を隠してブロンドのウィッグを付けて肌の色も服で隠して騎士剣を装備して「おい、私の名前を言ってみろ」と民間人に問いかけて知らない分からないって答えが返ってきたら「私は正遊撃士エレイン・オークレール様だ~!」と言って遊撃士協会支部に向かうように誘導しておいた。これで一安心。ふぅー、いい仕事したー。仲良しの親友の手柄にもなるし、民間人は確実に保護されるし、良いこと尽くめだ! 表に出るわけにもいかないしね。
「──ちょっと話を聞かせて欲しいのだけど、いいかしら? 結社の執行者さん?」
「──ご同行願おうか。ついてこなければ問答無用で令状を出すぞ」
──なんかエレインちゃんとルネっち先輩が声を掛けてきた。駅前で優雅にコーヒー飲んでただけなのに……しかもなんか怒ってる……怖い……ここは和ませるために小粋な挨拶を……。
「や、やっほー。久し振りエレインちゃん。ルネっち先輩。元気してたー?」
「ええ、すこぶる元気よ。どこかの私を騙った偽物が深夜に暴れ回って民間人を保護しまくるという意味不明な事件のせいで徹夜で仕事が出来るくらいにはね」
「こちらもどこかの誰かがCID本部に侵入し、縛って箱詰めにされたテロリストがダース単位で積まれているという阿呆の極みのような事件が起きたせいでしばらく寝られない程には元気だ。それとルネっちと呼ぶな。逮捕するぞ」
「ふ、ふーん……そうだったんだ。どこの誰がやったかは全然分かんないけど大変だね……」
「そうね。ふざけたことに証拠を全く残さないから捕まえるのに手を焼いているの。──とはいえあんなことをする人物は私の中じゃ1人しかいないのだけど」
「ああ。俺もあんなふざけたことをする奴は1人しか知らないな。そうだろう《アラミスの狂人》」
…………よし! 逃げよう! なんか逃げた方が良い気がする! ってことで早速──って、エレインちゃん!? 剣抜かないで!? ルネっち先輩も銃口向けないで! ウワー!? わ、わかった話す話す! 元々そのうち話そうと思ってたから! なんか普通に執行者だってバレてるしね!
ってことでヴァンの次にはエレインちゃんとルネっち先輩と再会して旧交を温めることになった……路地裏で私だけ正座させられながらだけど……せっかく2人の手柄にしてあげたのに怒られた……そして共和国内の混乱を治めるために協力することになった……。
──ま、でもやっぱり再会というか久し振りに話せたのは嬉しいし、2人とも私が執行者だって分かってるのにそんなに態度を変えてないのも嬉しい。なので結果オーライだ。2人が顔を合わせるのも久し振りらしいしね。ついでにヴァンとも会ったら? って敢えて言ってみたけどやっぱり2人とも微妙な反応だった。エレインちゃんは必要以上に冷たくあしらう感じに努めてたし、ルネっち先輩の方は必要ないと真面目に引きずってないし気にしてない感じを醸し出してた。うーん……この幼馴染ズはやっぱこじれるかぁ……また仲良くやってほしいんだけどね。でもこればっかりはまだ難しそうだ。
でも大体これに関してはヴァンが悪いし、もっと言うと教団が悪い。やっぱりヴァンにはドロップキックしておくべきだったかな。それと教団の人間も、もうほぼこの世にはいないけど消しておいて正解だったね。
そうして改めて表と裏で連動して共和国内のテロリストの逮捕に動いたし、地味に友達と会えたから本当に良かった。卒業してから2年ぶりに会ったエレインちゃんはまた綺麗になってたし、ルネっち先輩も背が伸びて大人感が増してた。軽く話したけどどっちも遊撃士とCIDで頑張ってるみたいだね。私のこともデザイナーとして大成功してることも当然知ってて店にも来たことあるっぽい。
そして執行者だったことについてはそれぞれ勤め先が勤め先なので自然と知ることになったそうだ。知ったのは割と最近らしいけどそりゃそうだよねー。知ってた。
ただなんか私を捕まえようとする動きはなんか見られないから黙認でもされてるんだろうか? よく分かんないけど……もしかしたらこれが友情……YUーJYOかもしれない。握手。友達だから許された! 単純に証拠がないとかなんか大人の事情が理由な気がするけど細かいことは気にしないYO!
──後は……そう。知り合いが沢山出来たかな。ヴァンの紹介でディンゴ・ブラッドにも会ったし、ベルモッティにも会った。2人とも結構なイケメンだったね! まあレーヴェには敵わないけど……それはともかく、2人とも表面上は普通に見えたけど若干緊張だったり苦笑気味だったのはなんでだろう? 自己紹介滑ったかな。それとも……私が可愛すぎてタイプだったとか!?
いやまあベルモッティはオネエだから違うと思うけどね。ディンゴも……なんだろう。やっぱ気まずかったかな? とりあえず今後は仲良くなることを目標にしよう。
それと逆に関係ないところで知り合ってめちゃくちゃ仲良くなった娘もいる。マリエル・エーメちゃんっていう新人記者だね。彼女とは駅前通りで歩いてたところ偶然知り合った。私が仕事のことで悩みながらとある店から出てきたところで。
「はぁ……仕事上手く行かないなぁ……どうしよっかなぁ……」
「うぅ……取材が上手く行かない……どうすればいいんでしょう……?」
「「え?」」
──と、ばったり。ほぼ同じ言葉を発していたため互いに互いを見る。目と目が合う。そしてお互いに若干気まずくなりながらも話の流れでお茶をすることになり。
「ですよね! 私間違ってませんよね!?」
「間違ってないよ! 仕事で重要なのはバイタリティ! 何事にも体当たりでぶつかっていくのが大事なんだから!」
「そうですよね! 何事も自分で動いて掴み取るしかありませんよね!」
「そうそう! 周りの言う事なんてあんまり気にする必要ないない! もし失敗しても次成功すればいいんだから! 私もよく失敗するけど全然気にしてないよ!」
「アーヤさんほど出来る女性が言うなら間違いありませんね!」
「マリエルちゃんもかなり有望だと思うよ! 将来はフューリッツァ賞間違いなしだね!」
……すごく仲良くなった! すごい! こんなに話が合うなんて!
まさか偶然出会った相手がまたしても一方的に見知った相手だとは思わなかったけどね。まだ17歳で今は首都の高等学校に通ってるらしい。アラミスではない。ゲームじゃアラミスしかクローズアップされてないし、他の制服なんて見れなかったけど共和国にも高等学校はそこそこあるんだよね。当然っちゃ当然だけど。殆どの人は日曜学校を15歳くらいで卒業したら働き始めるが、共和国だと大体2、3割くらいの人は高等学校とか専門的な学校に入って勉強してから就職する。高等学校に入学するのは15歳から17歳くらいで意外とばらけてたりするのは割と寛大な価値観のある証拠だね。というか厳密には入学に関して年齢制限はなかったはず。共和国の学校は大体は参考にした帝国の士官学院を参考にしたアラミスの形式を参考にしてるからね。10歳くらいでも入ろうと思えば入れる。試験があるからそれをクリアして学校側に認められればだけどね。
そして現在は学校で新聞部をやったりして卒業に向けて色々やってるらしいマリエルちゃんだが、将来は確かタイレル通信っていう共和国じゃ結構でかい会社に就職するし、実はそこそこ頭が良いのだろう。私と同じだね! 私も馬鹿っぽく思われがちだけどこう見えて頭が良いのでそういうところも似てるかもしれない。
なので学生と社会人とはいえ話してて意気投合。普通に茶飲み友達になった。私って記者と相性悪いと勝手に思ってたけどリベールじゃドロシーちゃんと仲良くなったし、意外とそうでもないかもしれない。
とにかく良い息抜きになった。改めてお仕事を頑張ろう。さてと、次の予定は確か──メルキオルがなんか姿隠して来て欲しいとか言ってたよね。うん、嫌な予感しかしない……行きたくない……。
私はまたしても頭を抱える。でも行かないとなにするか分かんないからなぁ……仕方ないから要望通り、以前仕立てた《庭園の主》風衣装を着て行こう。赤いコートでちゃんと肌も隠して、と。
そして場所はメッセルダムだ。共和国北にある港町。冬だから雪が降り積もっててちょっと寒い。久し振りに来たけど懐かしいなー。子どもの時はここで教団や教会の人間に襲われて大変だった。ビクトルさんに会えたのもあるけどあんまり良い思い出はない。
でもそういうのはこれから塗り替えていけばいいだけだ。メルキオルの用事ってのは不穏だけどそれが終わったら新鮮な海の幸でも楽しんで帰ろう。そうしよう。
──と、そういうわけで待ち合わせ場所の路地裏に到着したけど……誰もいない。あれ? ここで合ってるよね? 道間違えたかな? メルキオルー?
…………しかし返事は返って来ない。困ったなぁ。深夜とはいえこの姿であんまり長居したくないし、連絡入れようかな。
「──で、貴方たちは誰かな?」
「っ!?」
──まあ誰か分からないけどこの襲撃者2人……いや、3人かな? その人達を片付けてからね。
私は突如飛んできた謎の飛来物と頭上から襲いかかってきた誰かの攻撃を躱す。──って、意外と強い!? 速い! 攻撃が鋭い! 怖っ!? 手加減する余裕ないじゃん! 本気でやらないと!
姿ははっきり見えてないけど大柄な男と闇に隠れてる女かな。もう1人か2人くらい人の気配はするけどそっちはどこにいるか分かんない。ちょっと距離が遠いかな。
でもとりあえずここで襲ってきた2人を仕留めてから逃げよう。誰が何の目的かは知らないけど怖いし。もしくは逆に捕らえるとか出来たらいいけどそんなリスク取りたくないんで帰りたい。
もしくは殺意がすごいんで今流行りの反移民派テロリストかも。私のことは分かんないはずだけど……うーん……やっぱりやってもいいかもしれない。流れによってはそうしよう。
「っ……空気が変わった……!」
「──それじゃお先にー」
「ぐっ!?」
まずは大柄な……猟兵? うん、多分猟兵っぽい相手にフェイントをかけて分け身を囮に懐を通り抜けて横腹を切り裂く。──とと、浅かった。致命傷ではない。てかやっぱ思ったより強いじゃん……怖い……って、痛っ! なんか当たった! 上からも降ってきてるじゃん! なんか針みたいなの! 別に刺さりはしないけど痛いんだからやめてよね! そこの奥にいる人!
「こらこらこら。そういうの良くないよ。当たったら死んじゃうでしょ?」
「なっ……かはっ……!?」
とりあえず間合いを詰めて奥に隠れてた女の人の腹を蹴って壁際に弾き飛ばす。その上でゾルフシャマールを開いた状態で壁に、女の首を挟むように突き刺した。これでいつでも鋏を閉じればやれる。壁がちょっと傷ついちゃうし汚れちゃうかもけど持ち主さんごめんね。後でこっそり塗装しておくから。
「えっと……それじゃどこの組織所属で何の目的かを教えてくれる?」
「ッ……クソ……」
「あ、教えないのね。わかった。ばいばい」
そうして一応質問するけどもうなんか明らかに敵意と教える気がない感じが伝わってきたから鋏を閉じることにする。暗くて見えにくいけど褐色の綺麗なお姉さんなのに勿体ないね。
でもなんか見覚えもあるような気もするけど……ま、いいかな。とりあえず悪人っぽいのは十分分かったし。
「──そこまでにしてあげなよ、ボス♡」
「えっ? メルキオル?」
そうして鋏を閉じようとしたところで新手──じゃなくてメルキオルの声が聞こえたためそれを鋏を閉じようとしていた手を止める。
「びっくりした……思わず鋏を閉じちゃうところだったよ……」
「アハハ! さすがはボスだね。だと思ったから早めに僕から声を掛けさせてもらったよ。そちらから声を掛けちゃうとさっさと殺してから対応しちゃってただろうからね」
「──ああ。さすがは名高き伝説の暗殺者だ。これでもかなり腕の立つ2人なのだがな。まさかこうも容易く退けられるとは」
「えっ、誰?」
私は困惑する。メルキオルが私のことを名前で呼ばないのはこの場での配慮だろうけど、メルキオルと一緒に路地の奥からやってきたもう1人の気配。人影と声を感じて私は頭に疑問符を浮かべる。
「まずは非礼を詫びよう。大陸最強の暗殺者がどれほどの実力を持つか試してみたくてな。仲介役となったそちらの部下に頼んで奇襲を仕掛けさせてもらった」
なんか結構良い声だね。それになんだか……あれ? よく見たら私に襲いかかってきたこの2人って…………えっと、確かアレクサンドルとヴィオーラ?
……………………えっ。じゃあもしかしてこの人って……まさか……。
「結果は想定以上だった。《
「……………………アッハイドウモ」
そうして闇の中から姿を表したオールバックの男を見て、私は叫んだ。──うわああああああああ!!? じぇじぇじぇ……ジェラール・ダンテスだー!!? 最悪のマフィア《アルマータ》のボスだー!!? いやああああああ!!? ヴァンの魔核の実験をした諸悪の根源だー!! カルバード王家の末裔で色んな意味でやばい人だー!! ふえええええん!! 怖いよー! なんで私の前に現れたのー!? 何を企んでるのー!? 怖いー! ──え? 商談がしたい? あっ、はい……それじゃあ適当にそこに木箱にでも腰掛けて……って、仕事したくないー!! 特にこの人とは関わりたくない! メルキオルはあげるからそっちはそっちで勝手にやっててよー! 私はこの人たちと何ら関わりはありませんっ! だから帰らせてもらいます!
──そんな訳で私はジェラールと出会ってしまった……とりあえず庭園の主ムーブで興味ないって言ってなんとか帰ったけど怖かったぁ……ぶるぶる……なんかメルキオルが契約する気満々だったけど嫌な予感しかしない……でも関わる方がもっと危険だから放置するしかない……ひええ……最悪の2人が組んじゃったよぉ……。
今回はここまで。後に共和国編でメインとなる人達と縁が出来たね! やったねアーヤちゃん!
次回は外伝が終了しつつ、旅行に行きます。どこに行くんだろうねって。
そして今回が多分今年最後の投稿になります。また来年もアーヤちゃんの愉快で不幸な軌跡は続いていくのでよろしくお願いします。次回もまたお楽しみに。
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