さて、零士がオバさん先生をフルボッコにした次はフユと数学教師、大久保のデュエルである。
「そういや、なーんか今日のアイツ変じゃねえか?―――お前昨日何か吹き込んだ?」
ケイトが三人の持っていた疑問を代表して零士に聞いた。
「ああ」
さも当然のように答える零士。
「どんなことを言ったんだ?」
英雄も気になる様子。
「あれは、昨日の食堂でのことだ・・・・・」
「怪談話風に回想スタートすなァァァァァ!!!」
という訳で回想の始まり始まり。
時間は零士の言った通り昨日まで遡る。秋人はスタジアムに戻り、食堂はフユと零士の二人だけになった。
「零士・・・。どうやったら好きな人に振り向いてもらえるのかな?―――後ろから名前呼ぶとかそういうのなしで」
それなりに時間が経ち、ようやく会話ができるまでに回復していた。しかしまだテーブルに突っ伏している。
「お前、あの女のどこに惚れ込んだんだ?初対面も同然だろう」
「そのはずなんだけど、どこかで会ったような気がするんだよね。それに春さんの笑顔を見てると何ていうか、和むっていうか、心が温まるというか・・・」
「だったら別に仲のいい友人の関係でもいいんじゃないのか?」
「それもそうなんだけど、どうも好きになっちゃったみたいなんだよねぇ・・・。でもこの恋が実るはずないもん。だってデュエル友達までなんだもの」
だんだん自虐的になってきた。
「だったらあの女がお前に惚れればいいんじゃないか?」
「・・・・・どゆこと?」
「お前のアピール次第で、両想いになれるんじゃないかということだ」
「・・・そうか。僕のいいところを春さんに見せることができればいいわけだ!」
フユのやる気が徐々にみなぎってきた。
「よーし!そうと決まれば、明日のデュエル頑張るぞ―――ッ!!!」
「・・・というわけだ」
「へえ〜」
「そんなことがあったのか・・・」
ケイトと英雄は納得したようだが、
「チッ、余計なことを・・・!」
千鳥だけは毒づいている。
「まあそうは言うけどよ、アイツが本腰入れて戦ってくれるってんだから、こっちの一勝は確実だろ」
そう言ってケイトがたしなめた。
「さあ――――――ッ!!零士選手の圧倒的勝利に終わった一戦目。続く二戦目はどうなるのか――――!!?それでは、デュエルスタートだァ!!!」
「「デュエル!!」」
フユ LP8000
大久保 LP8000
「私のターン、ドロー!」
ちなみにこの大久保先生、普通におっさんの先生なのだが、教師という職業上か、一人称は『私』である。
「まずは《ワーム・ゼクス》を召喚!」
最初に現れたのは緑色のヒトデみたいなモンスター。
ワーム・ゼクス 星4 光 爬虫類族 攻1800/守1000
「《ワーム・ゼクス》の効果発動!このカードが召喚に成功した時、デッキから《ワーム》と名のついたモンスター一体を墓地へ送ることができる!私は《ワーム・ヤガン》を墓地へ!さらに、墓地の《ワーム・ヤガン》の効果発動!私のフィールドのモンスターが《ワーム・ゼクス》のみの場合、墓地から裏側守備表示で特殊召喚できる!そして速攻魔法《フォトン・リード》を発動し、手札から《ワーム・テンタクルス》を特殊召喚!」
次に現れたのは黄色いイカとタコがゴッチャになったようなモンスター。
ワーム・テンタクルス 星4 光 爬虫類族 攻1700/守700
「最後にカードを一枚セットしてターンエンド!」
大久保 LP8000 手札2
モンスター/《ワーム・ゼクス》《ワーム・テンタクルス》リバース×1
魔法・罠/リバース×1
「僕のターン、ドロー!―――まずは速攻魔法《サイクロン》で伏せカードを破壊します!」
竜巻が相手フィールドを襲い、伏せカードを破壊した。
「《毒蛇の供物》がやられたか・・・!」
「さらに僕は魔法カード《精神操作》を発動し、先生の伏せモンスター《ワーム・ヤガン》のコントロールを得ます!」
セットされた状態のまま、フユのフィールドにモンスターが移動する。
「そして《ワーム・ヤガン》を反転召喚!」
セットされたカードから姿を見せたのは、イソギンチャクみたいなモンスターだ。
ワーム・ヤガン 星4 光 爬虫類族 攻1000/守1800
「そして《ワーム・ヤガン》の効果発動!このカードがリバースした時、相手フィールドのモンスターを手札に戻すことができる。僕は(話の展開上敢えて)《ワーム・テンタクルス》を手札に戻します!」
「( )内は余計だろ!!」
このツッコミはもちろん千鳥。
「そして僕は《召喚師セームベル》を召喚!」
召喚師セームベル 星2 風 魔法使い族 攻600/守400
セームベルは現れた途端、隣にいた《ワーム・ヤガン》にビビりまくっていた。
(お兄ちゃ〜ん!これ気持ち悪いよぉ〜!!)
(大丈夫だよ。もう少しでフィールドから離れていくから)
「僕はさらに、速攻魔法《スター・チェンジャー》を発動!このカードはモンスターを一体選択し、そのモンスターのレベルを一つ上げる、もしくは下げることができます!僕はこの効果で、セームベルのレベルを一つ上げます!」
召喚師セームベル 星2→3
「そしてセームベルの効果発動!セームベルと同じレベルの《ジャンク・シンクロン》を手札から特殊召喚します!」
久々に登場した気がする《ジャンク・シンクロン》。
ジャンク・シンクロン 星3 闇 戦士族 攻1300/守500
「レベル3の《召喚師セームベル》と、レベル4の《ワーム・ヤガン》に、レベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」
(うわーん!お兄ちゃんのバカァ〜ッ!)
何かヤガンと一緒になるような気がしたのか、セームベルの泣き声が聞こえたが、今のフユは久しぶりにドSイッチが入りかけていて、あまり気にしていない。
「蹂躙せよ、《A・O・J ディサイシブ・アームズ》!」
しかしシンクロ召喚の際に発生する光の束からは、何も現れなかった。
―――ゴゥン、ゴゥン
だが何かの機械音だけは聞こえる。
「・・・・・・・あ」
そこでフユはハタと気付いた。
読者の皆さんはご存知だろうか?ディサイシブ・アームズのカードイラストの下の端には小さくいくつかの山が描かれているのだ。つまりあの最終決戦兵器、とんでもなく馬鹿デカイのである。当然一分の一スケールではスタジアムには入りきらない。きっとスタジアムの外で待機しているのだろう。
「ねー!もうちょっと小さくなってくれない!?」
フユが上の方に向かって叫ぶと、いつの間にか靴と同じぐらいの大きさのディサイシブ・アームズがフユの足元に転がっていた。
「いや、ちっさ!ラジコンじゃないんだから!!」
再び千鳥のツッコミが炸裂した。
と、そんなこんなでやっと程よいサイズになったディサイシブ・アームズ。
A・O・J ディサイシブ・アームズ 星10 闇 機械族 攻3300/守3300
「攻撃力、3300・・・!!」
愕然としているが、まあ無理もない。普通に考えて1ターン目から召喚できるようなモンスターではない。
「ディサイシブ・アームズの効果発動!相手フィールドに光属性モンスターがいる時、1ターンに1度3つの効果の内一つを使用できます!」
「3つもの効果があるだと!?」
「僕は第3の効果を発動!手札を全て捨て、相手の手札を確認しその中に光属性モンスターがいれば、それらを全て墓地へ送らせ、その攻撃力の合計分のダメージを与えます!」
「何ィ!?」
大久保先生の顔が青ざめる。
「さあ、手札を見せてもらいましょう!」
うなだれながら手札を公開した。手札の枚数は3枚。そしてその全てが光属性モンスターで、各ステータスは以下の通り。
ワーム・テンタクルス 星4 光 爬虫類族 攻1700/守700
ワーム・グルス 星4 光 爬虫類族 攻1500/守300
ワーム・クイーン 星8 光 爬虫類族 攻2700/守1100
「これにより、先生の手札は全て墓地へ送られ、3体のモンスターの攻撃力の合計値、すなわち5900ポイントのダメージを与えます」
大久保 LP8000→LP2100
「すごい、すごいぞ!!1ターン目から大ダメージだァァァ!!!」
秋人の実況にも熱がこもる。
「そして《A・O・J ディサイシブ・アームズ》で《ワーム・ゼクス》を攻撃!ハイメガビーム砲!!」
ディサイシブ・アームズの主砲と副砲と思われる箇所からビームが発射され、《ワーム・ゼクス》は跡形も残らず消滅した。
「うわああッ!!」
大久保 LP2100→LP600
「僕はこれでターンエンドです!」
フユ LP8000 手札0
モンスター/《A・O・J ディサイシブ・アームズ》
「クッ、私のターン、ドロー!」
(!このカードは・・・。このままやられるぐらいなら少しでも抵抗するべきか・・・)
「私は手札から、魔法カード《死者蘇生》を発動!墓地の《ワーム・クイーン》を特殊召喚!」
白い蛇のような胴体をしたモンスターが現れた。
「さらに《ワーム・クイーン》の効果発動!《ワーム》と名のつくモンスターをリリースし、そのレベル以下の《ワーム》と名のつくモンスターをデッキから特殊召喚できる!」
(《ワーム・ヴィクトリー》を特殊召喚しても、攻撃力はせいぜい2000。ならば・・・)
「私は《ワーム・クイーン》自身をリリースし、デッキから《ワーム・キング》を特殊召喚!」
クイーンが消滅したら、今度は金色で大きく口を開けている顔の付いた胴体が特徴的なモンスターが現れた。
ワーム・キング 星8 光 爬虫類族 攻2700/守1100
「《ワーム・キング》の効果発動!《ワーム》をリリースすることで相手フィールドのカードを一枚破壊できる!私は《ワーム・キング》自身をリリースして、《A・O・J ディサイシブ・アームズ》を破壊!」
《ワーム・キング》はディサイシブ・アームズの砲撃をものともせずに相打ち覚悟の特攻を仕掛けた。
「私はこれでターンエンド・・・」
大久保 L600
「先生・・・」
力なくエンド宣言をした教師相手に、フユはこんなことを言った。
「お互いの手札は0。そして先生のライフは600、僕は8000。次の先生のターンに攻撃力8000以上のモンスターを引ければ先生の勝ちですけど、ここで僕が攻撃力600以上のモンスターを引ければ面白いですよねぇ?」
「え?っていうか600以上とか高確率で引ける気が・・・」
「でも引いたら面白いですよねえ!?」
○代のセリフのパクリなんだろうが、これはあんまりすぎる。
「僕のターン、ドロー!!」
少し間を置いたあと、フユはニッと笑った。
「―――――魔法カード《死者蘇生》を発動し、墓地の《召喚師セームベル》を特殊召喚!」
再び登場したセームベル。
(わ〜い!お兄ちゃん大好き〜!)
つい1ターン前『バカ』呼ばわりしていたのにすごい身の変わりようである。
「バトル!《召喚師セームベル》でダイレクトアタック!セーム・バーニング!!」
BMG風の技名なんだろうが、所詮は攻撃力600。「イテッ!」ぐらいにしかならなかった。
大久保 L600→LP0
「決ぃまったぁ―――――!!!二戦目もチームACEの圧倒的な勝利だ―――――!!!」
歓声が上がる中、フユは観客席の方を見ていた。
(見てくれていましたか、春さん。――――この勝利、貴女に捧げます)
そう心の中で呟いた。
しかし当の春はフユが見ていた方向とは真逆にいて、しかも友達とのおしゃべりでほとんど見ていなかったということを、彼は知らない。
【ワーム】を使っている方はこの話を見て「【ワーム】はもっと回るし強いわ」とか思ったかもしれません。ですが使っているのが遊戯王を始めて数日の素人ということをお忘れなく。
そして次回はケイトの国際色豊かなデュエルとなります。