第四十三話 「今回からデュエルの表記が色々変わります。こっちでは変わりません」
デュエルフェスタが終わってから数日が経った。皆祭りの熱気から冷め始めた頃、朝から生徒会室に呼び出された一人の生徒がいた。
天城零士。この小説の主人公、ではないが、主人公よりも人気があるんじゃないかと思われる人物である。呼び出したのは宵星麻理亜。彼の、というより登場人物ほとんどの担任である。今生徒会室には二人きり。教師と生徒の禁断の関係というのは、この二人に限ってありえない。では何故零士が呼び出されたのかというと―――、
「オレが生徒会長だと?」
というわけである。
「そう」
麻理亜は短く答えた。
「何故だ?」
「ほら、アナタデュエルフェスタの時に生徒会長の悪事を全校生徒の前で暴露したでしょ。それが原因で生徒会のメンバーが全員解任されたのよ」
「その話は知っている。だからといって何故オレなんだ?」
「アラ〜?先生、自分のやったことに対してちゃんと責任取らなきゃいけないと思うんだけど〜?それに次の生徒会長には是非あなたをっていう申し出が多いのよ。特に女子から。人気に火がついちゃったわねぇ」
「・・・・・・・・・」
こればかりは言い返せない。
「でも、特別に選択肢を増やして上げなくもないわよ」
「という訳で、フユ、お前生徒会長をやらないか?」
時間は過ぎて放課後。再び生徒会室。今度は麻理亜ではなく数人の生徒がやってきている。
「え〜。僕はいいよ〜」
と言って断りを入れるのは白雪姫フユ。こっちが正真正銘の主人公。だがいつもと様子が若干違う。普段もニコニコしていることが多いのだが、そのスマイルがここ最近今までの三割増しになっている。なぜなら、
「それにしても、まさか春さんが同じクラスだったなんてな〜。運命感じちゃうね〜」
というわけである。意味がよく分からない人は二十七話を読んでほしい。
「そう言えば、オレが決勝で闘った寧々とかいう女子も同じだったな」
「で、話を戻すけど、千鳥なんか適役じゃないかな?」
フユの発言で不機嫌になっていた千鳥だが、さらなる一言には戸惑った。
「ええっ!?私も無理よ!!」
これが一般的な反応だろう。しかしこの二人は違った。
「だったら生徒会長はこの俺に任せてもらおう!!」
そう言って自分の胸を叩いたのは英雄。
「いやいや、オレに任せろって!」
こちらも自信満々なのはケイト。ちなみにこれでも女の子だからね。たとえ一人称が『オレ』でも。
「オレもフユが断った場合千鳥を推薦してくると読んでお前達二人は集めた」
そこで一旦言葉を区切って零士はケイトと英雄に視線を送った。
「だがお前らを呼んだ覚えはない」
「んな堅ぇこと言うなよ〜」
「というか、そもそも何で僕達なの?」
「詰まるところ連帯責任だそうだ。オレが生徒会長になりたくないなら同じチームの人間から決めろとな」
「でも私達だって、ちょっと・・・・・・」
「そこでだ。一つ提案がある」
零士が人差し指を立てて言った。
「もう一つ担任から言われたことがあってな。会長の選び方は一任すると言われた。だからフユ、千鳥、オレの三人でデュエルで決めるというのはどうだ?」
「僕は構わないよ。千鳥は?」
フユは即答だったが、千鳥は思案顔だった。千鳥もデュエルの実力はある方だが、この二人には劣る。
「・・・・・・分かったわ。具体的なルールは?」
「ルールは三つ巴のバトルロイヤルルール。全員最初のターンは攻撃できない。最初に敗けた人間が生徒会長だ」
「OK」
「上等じゃない」
二人共快諾であった。
という訳で、生徒会室のソファやら机やらを移動させてデュエルのスペースを作った。そしてフユ、零士、千鳥の三人が三角形の頂点になるように対峙した。
「なあ、このデュエル、誰が勝つだろうな?」
英雄が訊ねた相手はケイト。
「ん〜?こういう時、二人がかりで一番強い奴を叩くっていうのが基本だからフユが不利だな。普通だったら」
「普通だったら?」
「今回のデュエルの目的は自分が勝つことじゃない。自分が生徒会長にしたい相手を倒すことだ。だからフユを真っ先に倒すかどうかは千鳥と零士の思惑次第ってことだよ」
そうこう言っている間に三人とも準備が完了した。
「それじゃあ始めようか」
「敗けた奴が・・・」
「生徒会長よ!」
「「デュエル!!」」「デュエル」
フユ LP8000
千鳥 LP8000
零士 LP8000
「僕の先攻!ドロー!―――――僕は《神秘の代行者 アース》を召喚!」
神秘の代行者 アース 星2 光 天使族 チューナー 攻1000/守800
「《神秘の代行者アース》の効果発動!デッキから《創造の代行者ヴィーナス》を手札に加える!さらにカードを一枚セットしてターンエンド!」
フユ LP8000 手札5
モンスター/《神秘の代行者アース》
魔法・罠/リバース×1
「なるほど、上手いな。普通のデュエルなら先攻でアースを攻撃表示で出したら間違いなく戦闘破壊される。でも今回はバトルロイヤルルールで最初は全員攻撃できないから大丈夫ってわけかい」
ケイトが一人感心する中、
「あ、本当に色々変わってるね。こっちでは一話からだけど」
なんて当の本人は別のことを気にしている。
「どこ見て言ってんのよアンタは!!・・・ったく、私のターン、ドロー!―――私は《ガスタ・ガルド》を召喚!」
ガスタ・ガルド 星3 風 鳥獣族 チューナー 攻500/守500
「攻撃力500のモンスターを攻撃表示で召喚とは、なかなか大胆に来たね」
「これで終わりだなんて本気で思ってるの?私は速攻魔法《緊急テレポート》を発動!」
「何だって!?」
驚きを隠せないフユ。
「このターンのエンドフェイズ時に除外される代わりに、デッキか手札からレベル3以下のサイキック族モンスター一体を特殊召喚できる!私はレベル2の《ガスタの巫女 ウィンダ》をデッキから特殊召喚!」
ガスタの巫女 ウィンダ 星2 風 サイキック族 攻1000/守400
「千鳥、デッキちょっとイジった?」
フユの言うように千鳥のデッキには今まで《緊急テレポート》は入っていなかった。
「まあね。いつまでも強くならない私だと思わないでよね!私はレベル2の《ガスタの巫女 ウィンダ》に、レベル3の《ガスタ・ガルド》をチューニング!―――シンクロ召喚!飛べ、《ダイガスタ・ガルドス》!!」
ダイガスタ・ガルドス 星5 風 サイキック族 攻2200/守800
「私はカードを一枚セットしてターンエンド!」
千鳥 LP8000 手札3
モンスター/《ダイガスタ・ガルドス》
魔法・罠/リバース×1
「オレのターン、ドロー。―――オレはフィールド魔法《混沌空間》を発動」
辺りが暗くなって、グニャグニャと歪んで見えてきた。
「さらにオレはモンスターを一体セット。さらにカードを一枚セットしてターンエンドだ」
零士 LP8000 手札3
モンスター/リバース×1
魔法・罠/《混沌空間》リバース×1カオスカウンター0
「さあ、ここからだぜ。誰が誰を狙う?」
この二人だったら解説役はケイトしかいませんわな。
「僕のターン、ドロー!」
「永続罠《マクロコスモス》を発動」
零士はキーカードをこのタイミングで発動したが、これはフユにも千鳥にも刺さるカード。まだどちらを攻めるのかは分かりかねる。
「それでも僕のやることに変わりはない!僕は《創造の代行者 ヴィーナス》を召喚!」
創造の代行者 ヴィーナス 星3 光 天使族 攻1600/守0
「さらに《創造の代行者 ヴィーナス》の効果発動!ライフを1500ポイント払って、《神聖なる球体》を三体特殊召喚!」
フユ LP8000→LP6500
神聖なる球体 星2 光 天使族 攻500/守500
「僕はレベル2の《神聖なる球体》三体に、レベル2の《神秘の代行者アース》をチューニング!―――シンクロ召喚!轟け、《スクラップ・ドラゴン》!」
この主人公ロマンの欠片もねえな、と思った読者諸兄、作者もそう思います。
スクラップ・ドラゴン 星8 地 ドラゴン族 攻2800/守2000
「お前のモンスターが合計四体除外されたことで、カオスカウンターが四つ増える」
カオスカウンター 0→4
「でも君の除外戦術は潰させてもらうよ!僕は《スクラップ・ドラゴン》の効果発動!僕のセットカードと、零士の《マクロコスモス》を破壊する!スクラップ・クラッシュ!」
「なるほど。フユの狙いは零士かい」
「その考えはちょっと早計だよケイト。僕はこの効果にチェーンして、罠カード《強制脱出装置》を発動!この効果でフィールドのモンスター一体を手札に戻す!この効果で手札に戻すのは・・・、《ダイガスタ・ガルドス》!」
「え!?」
フィールドになんかよく分からない装置が出現し、ガルドスを吸い込んだ。そして少し間を置くと装置の上部からガルドスが放り出された。
「僕の狙いは千鳥、君だ!!」
何故フユは千鳥を狙うのか?それは・・・
(これ以上零士に人気を持っていかれるわけにはいかない!)
ダメな主人公である。
「僕は《創造の代行者 ヴィーナス》で千鳥にダイレクトアタック!Go!速Q!」
「させないわよ!罠カード《ガスタのつむじ風》を発動!墓地の《ガスタ・ガルド》と《ガスタの巫女 ウィンダ》を墓地に送って、デッキから《ガスタの巫女ウィンダ》を守備表示で特殊召喚!」
(ウィンダを破壊するとガルドが、ガルドを破壊するとイグルが、さらにイグルを破壊するとウィンダが・・・。今千鳥の墓地にモンスターを貯めさせるのはあまりいいとは言えないな)
「なら僕はバトルを中止する!そしてメインフェイズ2に入って、カードを一枚セットしてターンエンド!」
フユ LP6500 手札4
モンスター/《スクラップ・ドラゴン》《創造の代行者ヴィーナス》
魔法・罠/リバース×1
「私のターン、ドロー!――――私は《ガスタの神官 ムスト》を召喚!」
ガスタの神官ムスト 星4 風 サイキック族 攻1800/守900
「だったら私はムストでヴィーナスを攻撃!」
「なるほど。千鳥はフユ推しか」
「フッ、甘いよ千鳥!速攻魔法《月の書》を発動!《ガスタの神官ムスト》を裏側守備表示にする!」
「やってくれるじゃない・・・!私はカードを二枚セットしてターンエンド!」
千鳥 LP8000 手札1
モンスター/《ガスタの巫女 ウィンダ》リバース(《ガスタの神官 ムスト》)×1
魔法・罠/リバース×2
「ならばオレのターン、ドロー」
さて、ここで零士が誰を攻撃するかでこのデュエルは変わってくる。
「オレは《異次元の女戦士》を反転召喚」
異次元の女戦士 星4 光 戦士族 攻1500/守1600
「オレは女戦士で、《創造の代行者ヴィーナス》を攻撃」
「なっ!?」
女戦士はヴィーナスに斬りかかったが、ヴィーナスは傷一つ付いていない。
零士 LP8000→LP7900
「この瞬間、オレは《異次元の女戦士》の効果を発動する。このカード自身とこのカードと戦闘を行ったヴィーナスをゲームから除外する」
二体のモンスターは粒子化して消え去った。
「さらに二体のモンスターがゲームから除外されたことで、《混沌空間》にカオスカウンターが二つ乗る」
カオスカウンター 4→6
「そしてメインフェイズ2に移行し、《混沌空間》の効果発動。カオスカウンターを4つ取り除き、除外されている《異次元の女戦士》を特殊召喚する」
女戦士が帰還したのはいいんだが、最近出番が多い気がする。
カオスカウンター 6→2
「そして《異次元の女戦士》をリリースし、《邪帝ガイウス》をアドバンス召喚」
この帝に関してはほぼ毎回登場である。
邪帝ガイウス 星6 闇 悪魔族 攻2400/守1000
「アドバンス召喚に成功した《邪帝ガイウス》の効果発動。《スクラップ・ドラゴン》をゲームから除外する」
ガイウスの放った気弾は《スクラップ・ドラゴン》を蝕んだ。
カオスカウンター 2→3
「これでターンを終了する」
零士 LP7900 手札3
モンスター/《邪帝ガイウス》
魔法・罠/《混沌空間》カオスカウンター3
「まさか零士までフユ狙いたぁな。さすがのフユもこりゃあ厳しいか?」
「頑張れよー、フユー!!」
英雄の声援に笑顔で返すフユ。
「僕のターン、ドロー!―――僕は《サイクロン》を発動して《混沌空間》を破壊する!」
部屋を覆っていた暗闇と線がかき消された。
「ならばオレは《混沌空間》のさらなる効果を発動。このカードがカード効果で破壊された時、その時のカオスカウンターの数以下のレベルの光または闇属性モンスターを一体、デッキから手札に加える。オレはレベル2の闇属性モンスター《異次元の偵察機》を手札に加える」
「へえー、その効果僕のデッキとちょっと相性良さそうだね。今度機会があったら僕とタッグ組まない?」
「・・・・・・考えておいてやる。だが、お前にそんなことを言っている余裕があるのか?」
「正直あまりないかな?僕はモンスターを一体セットしてターンエンド」
フユ LP6500 手札3
モンスター/リバース×1
「私のターン、ドロー!―――フユ、アンタ下手したら次の零士のターンで終わるかもね」
千鳥はニヤっと笑った。
「え?マジ?」
「大マジよ。私は《ガスタ・ガルド》を召喚して、《ガスタの神官 ムスト》を反転召喚!」
これで千鳥のフィールドには鳥が一匹、少女が一人、おっさんが一人である。
「それで何をシンクロ召喚するの?スフィアード?それともガルドス?」
「んなわけないでしょ。私はレベル2の《ガスタの巫女 ウィンダ》と、レベル4の《ガスタの神官 ムスト》に、レベル3の《ガスタ・ガルド》をチューニング!―――シンクロ召喚!撃ち抜け、《ハイパーサイコガンナー》!!」
千鳥の場に白と黒の一対のハンドガンを構えたモンスターが召喚された。
ハイパーサイコガンナー 星9 地 サイキック族 攻3000/守2500
「また新しいカードを・・・」
フユは苦笑いしている。
「バトル!《ハイパーサイコガンナー》でフユのセットモンスターを攻撃!サイキックショット!」
サイコガンナーの撃った弾丸は見事にフユの伏せカードを貫いた。そのモンスターは・・・。
ネクロ・ガードナー 星3 闇 戦士族 攻600/守1300
「《ハイパーサイコガンナー》は貫通効果持ち。よって1700のダメージを受けてもらうわよ!」
「くっ!」
フユ LP6500→LP4800
「そしてサイコガンナーの効果発動!守備モンスターを破壊した時、このカードの攻撃力と相手の守備力の差分だけライフを回復するわ!」
千鳥 LP8000→LP9700
「さらに私は罠カード《ガスタへの祈り》を発動!墓地のウィンダとガルドをデッキに戻して、墓地のムストを攻撃表示で特殊召喚!そしてダイレクトアタック!」
「なら僕は、今墓地に送られた《ネクロ・ガードナー》を除外して攻撃を無効にする!」
ムストの攻撃を黒い影が止めた。
「アンタもしぶといわね。ターンエンド!」
千鳥 LP9700 手札1
モンスター/《ハイパーサイコガンナー》《ガスタの神官ムスト》
魔法・罠/リバース×1
「行くぞ。オレのターン、ドロー。―――オレは《次元合成師(ディメンション・ケミストリー)》を召喚」
奇妙な仮面をかぶったモンスターが現れた。
次元合成師 星4 光 天使族 攻1300/守200
「《次元合成師》の効果発動。デッキの一番上のカードを除外し、このモンスターの攻撃力をエンドフェイズ時まで500アップする」
次元合成師 攻1300→1800
「零士の場にはガイウスもいやがる。フユへの合計ダメージは4400。まともに受けたらかなりやべぇぞ」
「バトルだ。《次元合成師》でフユにダイレクトアタック」
《次元合成師》は小さい亜空間を生み出し、それをフユに向けて放った。直後、爆煙。
「やられたか!?」
「え!?やったか!?じゃなくて!?」
英雄のちょっとしたボケにも千鳥はしっかりとツッこむ。それはともかくとして、所詮は1800の攻撃だったせいか、すぐに煙は晴れてきた。
フユ LP4800
「何?ライフが減っていないだと?」
「・・・僕は君の攻撃の瞬間、手札の《バトルフェーダー》を特殊召喚してバトルフェイズを強制終了していたのさ」
バトルフェーダー 星1 闇 悪魔族 攻0/守0
「ならばオレはこれでターン終了だ」
次元合成師 攻1800→1300
零士 LP7900 手札4
モンスター/《邪帝ガイウス》《次元合成師》
「僕のターン、ドロー!―――クククッ・・・」
フユはカードをドローすると、笑い出した。
「何がおかしいのよ!?」
「・・・君達のデュエルは素晴らしかった。コンビネーションも、戦略も!」
「え?ちょっ、そのセリフって・・・」
「だが!しかし!!まるで全然!!この僕を倒すには程遠いんだよねぇ!!!」
(((・・・4だ―――――――――――!!!)))
「という訳で僕は速攻魔法《異次元からの埋葬》を発動!ゲームから除外されているアース、ヴィーナス、《神聖なる球体》を墓地に戻す!そして墓地のヴィーナスをゲームから除外!」
「来るな・・・。この状況を打破する可能性を秘めたカードが・・・」
「天空に住まいし太陽神よ、矛を向ける者全てを灼き払え!!来い、《マスター・ヒュペリオン》!!!」
マスター・ヒュペリオン 星8 光 天使族 攻2700/守2100
「さらに僕は《ジャンク・シンクロン》を召喚!でも効果は発動しない!」
ジャンク・シンクロン 星3 闇 戦士族 チューナー 攻1300/守500
「フユの場にはレベル1の《バトルフェーダー》がいる・・・。ってことは・・・」
「その通りだよケイト。―――僕はレベル1の《バトルフェーダー》に、レベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!―――シンクロ召喚!現れよ、《アームズ・エイド》!!」
アームズ・エイド 星4 光 機械族 攻1800/守1200
「そして僕は《アームズ・エイド》を《マスター・ヒュペリオン》に装備!これで攻撃力が1000ポイントアップ!」
《マスター・ヒュペリオン》の右腕にごつい手甲が取り付けられた。
マスター・ヒュペリオン 攻2700→3700
(《ハイパーサイコガンナー》の攻撃力が上回れた。でもこの伏せカードがあれば・・・!!)
「まだだよ!僕は《マスター・ヒュペリオン》の効果発動!墓地の《神聖なる球体》を除外して、千鳥の伏せカードを破壊する!シャイニング・デストラクション!!」
小規模の太陽が灼いたカードは《攻撃の無敵化》であった。
「《攻撃の無敵化》か・・・。確かに強力なカードではあるけれど、そのカードはバトルフェイズにしか発動できない!これで君のモンスターを守るカードは無くなった!」
「やってくれたわね・・・!!」
千鳥の言葉には僅かに怒りが滲んでいた。
「今回は絶対に君を倒さなければいけないからね!僕は《マスター・ヒュペリオン》で《ハイパーサイコガンナー》を攻撃!プロミネンス・ブラスターナックル!!」
《マスター・ヒュペリオン》の右腕がサイコガンナーを貫いた。
千鳥 LP9700→LP9500
「そして《アームズ・エイド》の効果発動!破壊した《ハイパーサイコガンナー》の攻撃力分のダメージを君に与える!」
千鳥 LP9500→LP6500
「僕はこれでターンエンド!」
フユ LP4800 手札0
モンスター/《マスター・ヒュペリオン》
魔法・罠/《アームズ・エイド》(装備カード)
「これで流れがフユに傾きだしたな」
「でも、俺フユの応援やめようかな・・・」
英雄がポツリと呟く。さっきの4ショックが原因だろう。
「っ!私のターン、ドロー!」
(このカード・・・。来るの遅いってば!こうなったらブラフにするしか・・・)
「私はカードを一枚セットしてターンエンド!」
千鳥 LP6000 手札1
モンスター/《ガスタの神官 ムスト》
魔法・罠/リバース×1
「あっ!バカ、千鳥!!ムストが攻撃表示のままじゃねえか!!」
「しまっ・・・」
「ハハハハハ!!ここに来て最悪のミスをしたね千鳥!!でももうエンド宣言をした君になす術はない!!」
これでも主人公です。
「零士がなんとかできるというなら話は別だけどねぇ」
「・・・オレのターン、ドロー」
零士はフユの言葉には何も返さず、黙々とターンを進めた。
「オレはガイウスと《次元合成師》を守備表示に変更。さらにモンスターを一体セットし、カードを二枚セットしてターン終了」
零士 LP7900 手札2
モンスター/《邪帝ガイウス》《次元合成師》リバース×1
魔法・罠/リバース×2
「フッ、どうやら頼みの綱の零士にもどうにもできなかったようだね。―――僕のターン、ドロー!」
ドローカードを見ると、フユは急にこんなことを語りだした。
「希望を与えられ、それを奪われる。その瞬間こそ人間は美しい顔をする・・・。それを与えるのが、僕のファンサービスだ」
「アンタさっきからネタとして使いまくってるけど、対○ッシュ戦はかっこよかったからね」
「千鳥、君にそんなことを言っている余裕はあるのかな?このターンで、君は敗れる!!」
「まだ6000もあるライフをどうやって削るっていうのよ!?」
「こうするのさ。僕は墓地の《神秘の代行者アース》を、ゲームから除外!!」
「ま、まさか・・・!?」
「天空に住まいし太陽神よ、以下略!!来い、《マスター・ヒュペリオン》!!!」
フユの場には二体のモンハン廚・・・、もとい最強の天使が並び立った。
「まずは《アームズ・エイド》を装備した《マスター・ヒュペリオン》で《ガスタの神官 ムスト》を攻撃!!プロミネンス・ブラスターナックル!!」
千鳥 LP6000→LP5100
「さらに《アームズ・エイド》の効果で1800の追加ダメージ!!」
「キャアッ!!」
千鳥 LP5100→LP2300
「フユにはもう一体のヒュペリオンの攻撃が残ってやがる!」
「生徒会長は、千鳥か・・・」
「そんな・・・・・・!!」
「千鳥、生徒会長就任の挨拶でも考えておくんだね。《マスター・ヒュペリオン》でダイレクトアタック!!」
《マスター・ヒュペリオン》は両手をかざしてエネルギーを溜めた。そしてそれを千鳥へと放つ。
ドオォォォン――――――。
「決まったね」
千鳥 LP200
しかしフユの言葉とは相反して、千鳥のライフは僅かに残っていた。
「馬鹿な!?何故!?」
その問いに答える者がいた。
「オレだ」
零士である。
「お前が攻撃した瞬間、オレは速攻魔法《禁じられた聖衣》を発動し、《マスター・ヒュペリオン》の攻撃力を600ポイントダウンさせていた」
マスター・ヒュペリオン 攻2700→2100
「上手く千鳥を守ったということだね・・・!!ターンエンド!」
マスター・ヒュペリオン 攻2100→2700
フユ LP4800 手札0
モンスター/《マスター・ヒュペリオン》(《アームズ・エイド》装備)《マスター・ヒュペリオン》
魔法・罠/《アームズ・エイド》(装備カード)
「私のターン、ドロー!」
(何とか零士に繋いで次のターンでフユを倒すしか・・・)
千鳥がそう考えていた時だった。
「千鳥」
零士が視線を送ってきた。
「勝つぞ。このターンでな」
(私の場にはブラフにしていた伏せカードが一枚だけ。普通に考えてこのターンじゃ『私一人の力だけで』勝つのは不可能・・・。となると、零士のもう一枚の伏せカードに何か逆転するための手が・・・?)
「OK!やってやるわよ!!」
千鳥は覚悟を決めた瞳をしていた。
「私はまず、《ガスタの静寂 カーム》を召喚!」
ガスタの静寂 カーム 星4 風 サイキック族 攻1700/守1100
「さらに私は魔法カード《死者蘇生》を発動して、墓地の《ハイパーサイコガンナー》を特殊召喚!」
千鳥のニュー切り札が蘇った。
「バトル!《ハイパーサイコガンナー》で装備カードがない方の《マスター・ヒュペリオン》を攻撃!サイキックショット!!」
サイコガンナーの銃撃は見事命中。《マスター・ヒュペリオン》は破壊された。
フユ LP4800→LP4500
「でもその程度では攻撃力3700になっている《マスター・ヒュペリオン》は倒せない!」
「まだよ!まだ私のバトルフェイズは終わっていない!!リバースカード、オープン!《バスターモード》!!」
《ハイパーサイコガンナー》の周りに様々なアーマーが出現した。
「このカードは、特定のシンクロモンスターをパワーアップさせる罠カード!私は《ハイパーサイコガンナー》をリリースして、《ハイパーサイコガンナー/バスター》をデッキから特殊召喚!!」
《ハイパーサイコガンナー》の頭部と脚部が緑色のクリスタルで覆われ、背中の装甲が展開されて翼のようになった。
ハイパーサイコガンナー/バスター 星11 地 サイキック族 攻3500/守3000
「貧弱貧弱ゥ!!それでも攻撃力では及ばない!!」
一部、某吸血鬼が混ざり込んでいました。
「ならこれでどうだ?速攻魔法《収縮》を《マスター・ヒュペリオン》に対して発動し、元々の攻撃力を半分にする」
「なっ・・・!?」
マスター・ヒュペリオン 攻3700→2350
「何故このタイミングで《収縮》を発動したんだい?やろうと思えば君のターンに発動して《マスター・ヒュペリオン》を破壊できていたはずだよ」
「聞きたいか?それは・・・・・・」
零士はきっぱりと言った。
「演出だ」
「いや演出でそんなことしないでくれない?こっちマジでヒヤヒヤしたんだから」
でも、と千鳥は続けた。
「おかげでサイコガンナーでも破壊できる!《ハイパーサイコガンナー/バスター》で攻撃!サイキックバレット!!」
放たれた弾丸は元のサイコガンナー以上の威力だった。
フユ LP4500→LP3350
「さらに《ハイパーサイコガンナー/バスター》の効果発動!このカードが相手モンスターを破壊したダメージステップ終了時に、相手にそのモンスターの守備力分のダメージを与え、私はその分ライフを回復する!《マスター・ヒュペリオン》の守備力は2100!」
「そんな!?」
「追加ダメージに加えて、自分のライフ回復もできるたァやるじゃねえか!!」
フユ LP3350→LP1250
「就任挨拶を考えなきゃいけないのはアンタだったみたいね。《ガスタの静寂 カーム》でダイレクトアタック!サイレント・ウィンド!!」
「ウワアアアッ!!!」
フユ LP1250→LP0
「お前の敗けだ、フユ。次期生徒会長、勤めてもらうぞ」
「・・・・・・・・・」
フユは、何か納得いかない、という顔をしている。まあ、実質二対一でデュエルしていたようなもんだから分からなくはないが。
「そう言えば一つ言い忘れていたことがある」
「え?」
「オレ以外の誰かが生徒会長になる場合は、他の生徒会役員はACEのメンバーでかためろということだ」
「っていうことは・・・?」
「オレ達がお前を支えてやる。何とかなるだろう」
零士のその一言でフユは何かを悟ったようで、いつもの笑顔に戻った。
「・・・分かったよ。それじゃあ」
やらせてもらうよ。そう言葉を続けようとした時である。
「ハッハッハ!皆元気か!?」
と言って元気よく部屋に入ってきたのは秋人である。
「何の用だ?」
いい感じに締まるという時に秋人が乱入してきたせいで、零士の声は少し不機嫌だ。
「いやそれがな、この間零士が生徒会長の秘密を公表したせいで生徒会の役員が全員解任されたんだよ」
「ああ、それでしたらさっき・・・」
「で、俺に決まったんだよ。生徒会長。正式な手続きも全部済んだ」
「「「「・・・・・・え?」」」」
五人全員が耳を疑った。
「だから、校長が俺の事を推薦してくれたみたいなんだよ。俺だったら人望もあるだろうし、一年生に重荷を負わせるよりはマシだろうからってな」
「でも、いいんですか?先輩、プロとしての仕事とかもあるんじゃ・・・?」
千鳥の質問は秋人に笑い飛ばされた。
「いや、実はね、先日の世界大会入賞のおかげでお偉方が目をつけてくれてな。俺の試合の大部分を土日と祝日に集めてくれたんだよ。限られた学生生活を楽しめるようにってな。だからこれからは基本的に学校にいられるってことさ」
五人は、なるほど、という納得と、じゃあさっきのデュエルは何だったんだよという脱力感にさいなまれていた。
「しかし、だ。会長が決まっても他の役員がまだ決まってないんだよ。そこで、この場でサクッと決めてもいいか?」
「え?別にそんな焦らなくても・・・」
「いいじゃないか。どうせ君達が生徒会やるつもりだったんだろ?それに、もうそろそろ尺がヤバイ!」
「いやいい顔してそんな尺とか言わないでください!!」
「じゃ早速決めていくかー」
千鳥を無視して秋人はさっさと話を進める。
「とりあえず副会長は零士と白雪姫君の二人にやってもらおうか。本当は一人だけなんだが、もし俺が不在の時に対応できるようにそっちのほうがいいだろう」
「いいですよ」
「いいだろう」
二人共即OK。
「じゃあ次の会計は守銭奴の霧谷さんにお願いしよう」
「いいですけど、何でそんなこと知ってるんですか?」
「あとは書記と庶務なんだが・・・」
そこまで言って秋人は残ったケイトと英雄を見た。
(オレが書記オレが書記オレが書記!!)
(俺が書記俺が書記俺が書記!!)
二人共目がとてもキラキラしている。
「じゃあじゃんけんをして勝った方が書記、負けた方が庶務で」
「もう適当に決めてるでしょアンタ!!」
ツッこむ千鳥はさておき、ケイトも英雄も既に臨戦態勢である。
「恨みっこなしの一発勝負だ。行くぜ英雄!!」
「来い!!ケイト!!」
なんだかさっきのデュエルより燃えている気がする。
「ピカピカピカリン・・・!!」
「来週もまた見てくださいね〜!!」
「日曜ジャンケン戦争!?」
「「じゃんけん、ぽん!!」」
という訳で、会長秋人、副会長フユと零士、会計千鳥、書記英雄、庶務ケイトでsin生徒会、もとい新生徒会が結成されたのだった。
第一話冒頭を除くと、これがフユの初黒星回となります。まぁ二対一みたいなもんでしたからね。
次回もちょっとした日常(?)回になります。お楽しみに