遊戯王 スノーホワイト/ブラック   作:xxxg

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第四十五話 「今回は皆無双モードです」

 進路指導室。生徒と教師がマンツーマンで進路について話し合う教室だ。だが進路指導室はもう一つの使い方をされることがある。

 

「他校生との喧嘩、度が過ぎたデュエルディスクの改造、デュエル中にリストバンドに仕込んでおいたカードの使用・・・。これは全てあなたがやったことね?」

「いや最後のは全く身に覚えがねえんだけど。オレはトムに敗けたアメリカチャンプじゃねえんだけど」

 

 そう。校則違反等の非行にはしった生徒にお説教する場でもある。で、指導されているのはアカデミアの不良生徒。もちろん零士の舎弟的な存在だ。(零士本人は完全否定だが)そして指導しているのはアカデミア一エロくて恐い教師宵星麻理亜。

 

「なら、それ以外は認めるということねぇ?」

「・・・・・・停学か?それとも、退学、か・・・?」

 

 彼はもう諦めた様子で、最後の方はやっと絞り出したような声だった。

 

「そうねぇ。それでもいいんだけど、私の条件を飲んでくれるというのなら、この件はなかったことにしてあげてもいいわよ」

「条件?何だよ?」

 

 言った直後麻理亜の笑みが濃くなったような気がした。

 

「簡単よ。これから私とデュエルするの」

「デュエルを?」

「そう。最近私のデッキ調整したからそのテストがしたいの。それにこういう展開でよくある勝ち負けは関係なし。ただ一回デュエルをするだけ。とてもいい条件だと思うけど?」

 

 『デュエルをすれば勝ち負け関係なく問題行動が全て不問になる』あまりにも不良生徒にとって得すぎる条件。必ず何か裏がある。そんなことは分かっている。だが停学や退学は御免こうむる。だから

 

「分かったぜ。やってやるよ」

 

彼はこのデュエルを受けた。

 

「フフ、交渉成立ね・・・」

 

 麻理亜の笑みが、より一層濃くなった。

 

 

 

 それから十数分後のことである。場所は変わり体育館裏。そこにはアカデミア全ての不良達が集まっていた。たむろしているわけでも、これからどこかに殴り込みをかけるわけでもない。全員零士に集合させられているのだ。しかも隊列させられて。彼はデュエルフェスタで有名になり、生徒会副会長になってからも不良達が人様に迷惑をかけていないか確認するために時々集めているのだ。

 

「・・・一人足りないな」

 

 零士が独り言のように言った。そして不良達に冷や汗が流れてくる。八つ当たりをされるということはまずありえないが、いない奴が後でどんな鉄拳制裁を浴びせられるかを思うと末恐ろしいのだ。そんな時だった。

 

「デュ、エル・・・」

 

 列の後方から声がしてきた。声の主はいなかった不良生徒。つまり先程進路指導室に呼ばれていた生徒だ。だが明らかに様子がおかしい。顔に生気はなく、ゆっくり、ゆっくりと歩いてくる。まるでゾンビのような印象を受けた。

 

「デュエ、ル・・・」

 

 その不気味さに他の不良生徒達はおっかなくて脇に身を寄せた。ゾンビ生徒は真っ直ぐ零士に向かって歩を進める。

 

「いいだろう」

 

 零士はデュエルディスクを起動させる。

 

「遅れてきた理由は、後でじっくり聞いてやる」

 

 

 

 そして―――――。

 

 

不良 LP0

 

 

「オレの勝ちだ」

「ウ、ウウッ・・・」

 

 相手はバタリとその場に倒れた。だがすぐに起き上がった。

 

「ん、んん・・・。あ、あれ?何でオレこんなところにいるんだ?」

 

 よく分からないが正気に戻ったというのはその場にいた人間全員が理解した。

 

「お前スゲエじゃねえか!!零士さんと互角に闘うなんてよお!!序盤だけだったけど」

 

 他の不良達が起き上がった仲間のところに集まってきた。

 

「まるで別人みたいだったぜ。デュエルも普段より何倍も強かったし」

「TFで練習でもしたのかよ!?すごかったぜ!一瞬零士さんを追い込んだしよお!序盤だけだったけど」

 

 皆驚いているようだったが、一番驚いているのは当の本人だった。

 

「はあ!?互角だった!?追い込んだ!!?オレにそんな芸当できるかよ!!仮にもプロに勝った人だぞ、プロに!!」

 

 どうにも会話が噛み合わない。

 

「そんなことはいい」

 

 会話に入ってきたのは零士。

 

「なぜ集合時間に遅れた?」

 

 すると先の副将軍の印籠を見せられた悪党のように縮こまった。

 

「れ、零士さん!?す、すいません!!確か何か大事な用事があって、誰かにどこかに呼ばれていた気がするんですけど、なんでか記憶があやふやで・・・」

「あまりにも信憑性に欠ける話だな・・・」

「ヒ、ヒィ!!」

 

 よく覚えていないが、今度は物理的にボコボコにされる。○斗百裂拳されたみたいな顔になる。そんな覚悟をしていたが、零士の拳が振り下ろされることはなかった。

 

「だが目の前で起きたことは紛れもない事実だ。今日はもういい。全員帰れ。ホームルームに遅れるなよ」

 

 そう言いおいて零士はその場をあとにした。

 

 

 

「ということが、今朝あった」

 

 時間は少し経って昼休みである。零士が話しているのはフユ、千鳥、ケイト、英雄。要するにチームACEの面々だ。

 

「ああ、それなら僕も似たようなことがあったよ」

 

 フユが思い出したように言った。

 

「今朝、知らない人にデュエルを挑まれたんだ。ここの制服着てたからこの学校の生徒みたいだったけど。でも何か様子おかしかったし、僕が勝ったら急に倒れて、その後すぐ正気に戻ったみたいだったけどその前後の記憶がうやむやだったし・・・」

「オレもオレも。オレの場合は知った顔だったんだけど、ちょっと普段より強かったんだよなぁ」

 

 ケイトも同じようなことに遭っているようだ。

 

「お前ら、そんなことがあったのか・・・」

「それにしても・・・、」

 

 そこまで言うと千鳥は教室を見渡した。

 

「今日・・・、なんか人少なくない?」

 

 千鳥の言う通り、なぜか今日は教室の人間が半数ぐらいに減っているのだ。

 

「これは・・・、何かあるな」

 

 五人の胸に暗雲が立ち込めてきた。

 

「とりあえず、秋人先輩に相談してみない?あの人今生徒会室にいるはずだから」

「・・・そうね」

 

 フユの提案で教室を出て行く五人。

 

「案外生徒会室に行く途中にそのゾンビ生徒と鉢合わせしたりしてな」

「そりゃあねえだろ」

 

 英雄の冗談をケイトが笑い飛ばした。

 

 が、直後廊下を見て零士以外の四人の背筋が凍った。

 

―――デュ、エル・・・・・・

 

 何十人ものゾンビ生徒がこちらに向かって歩いてくる。

 

 

「「「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」」」

 

 

 フユ、千鳥、英雄の大絶叫。

 

「何だこりゃあ!?『○イオハザード』か!?それとも『○が如く OF THE END』!?」

 

 ケイトも驚きはするが、まだボケる余裕がある。

 

「チッ、こっちだ」

 

 零士が反対方向へ行くように促した。そちらにはゾンビはいない。

 

「う、うん!皆急いで!!」

 

 フユの言葉で五人全員が走り出した。しばらく走ったところで後ろを見ると、ゾンビ達からはだいぶ距離が開いていた。どうやら彼らは歩いてくることはあっても走ってくることはないようだ。しかし・・・。

 

ウワアアアアアッ!!

 

キャアアアアアア!!

 

な、何だコイツら!?

 

 後ろから悲鳴が聞こえてくる。ゾンビ化した生徒達は様々な教室に侵入し、他の生徒達に襲いかかっているのだ。

 

「ちょっ、ちょっと待て!!皆を助けないと!!」

 

 英雄が先行する零士を止めようとするが、

 

「ダメだ。ここは秋人と合流することを優先する」

 

零士は冷たく拒否した。

 

「だったらここで見捨てていくのかよ!?」

「落ち着いて英雄!何も助ける手がないことはない!!多分、彼らをデュエルで倒すことができれば元に戻るはずだ!!」

 

 激怒した英雄をフユが落ち着かせる。

 

「その通りだぜ英雄!だがオレや零士の話だとゾンビどもの実力は上がってやがる!ここであの先輩さんを敵に回すともう手がつけられねえ!!」

 

 ケイトもフユに同意する。

 

「くっ・・・!!」

 

 英雄も渋々ながら納得したようだ。

 

「分かったのなら先を急ぐぞ」

 

 五人は足を速めて生徒会室へと向かった。

 

 

 

 五人は何とか生徒会室のすぐ近くまでやって来ることができた。途中何度かゾンビと出くわしたが、道を変えるか、零士とケイトが(物理的に)倒してきた。

 そして生徒会室に駆け込み、最後を走っていたケイトが部屋に鍵をかけた直後である。

 

「何だ、君達か」

 

 秋人である。

 

「秋人先輩、無事だったんですね」

「君達こそ、無事でなによりだ。それに、君達にまでゾンビ化されたらこっちもたまったもんじゃないからね」

「オレ達までああなるってどういうことだよ?」

「私達が知ってるのは元に戻す方法だけなんです。何かそれ以上のことを知ってるんですか?」

 

 千鳥の質問に秋人は首を縦に降った。

 

「ああ。俺も今朝から何人か相手をしてね。最初の数人は記憶が曖昧になっていたみたいだが、徐々に少し異なるタイプの生徒が出てきたんだ」

「異なるタイプだと?」

「そうだ。ゾンビ化しているということに変わりはないんだが、その状態になる前の記憶はしっかり残っているんだ」

「確かに、僕らが闘った人達はゾンビになる前の記憶も一部なかったようですからね」

「それで俺がその元に戻った人に話を聞いてみたんだが、ゾンビ化した生徒とデュエルをして敗けた後から記憶がないらしい」

「つまり・・・・・・、どういうことだ?」

「いやこんな時に典型的なボケしないでよ!!」

 

 さっきから英雄が空気だったので無理矢理ねじ込んでみました。

 

「つまりゾンビに敗けた人間は同じようにゾンビになるということだ」

 

 零士が英雄にも分かるであろう程度に説明する。

 

「で、だ。ここからは俺が立てた仮説だが、この事件、おそらく元凶となった人間がいる。その元凶が直接ゾンビ化させた人間は前後の記憶がないタイプ。そしてゾンビ化させられた人間は、他の人間を襲い、ゾンビ化させていく。ゾンビによってゾンビにさせられたのがそれ以前の記憶のあるタイプということだ」

「ってことは、その親玉を叩かないとキリがないってことかい?」

「その通りだ前田さん」

「だが、他の学生達はどうするんですか!?」

 

 英雄はさっき見捨ててしまった者達が心配なようだ。

 

「分かっている。それに、策は既に練ってある」

 

 そう言うと秋人は学校案内図を広げて見せた。

 

「読者にも分かるように説明すると、ここの校舎は北と南の二つに分かれ、どちらも五階まである。俺達がいるのが南校舎。そしてゾンビはどちらの校舎にも各階ほぼ均等に分布している」

「ちょっと待ってください。何でゾンビがどこにどのぐらいいるかが分かるんですか?」

 

 千鳥の質問にも納得がいく。二つの校舎全ての階を見てきたとでも言うのか。

 

「それはね、これのおかげさ」

 

 秋人はそう言うと、デスクにあったパソコンを見せてきた。そこには教室、廊下、階段など、アカデミアの様々な場所が映し出されている。

 

「最近備え付けたカメラだよ。まさかこんな風に役に立つとは思わなかった。ちなみにちゃんと校長から許可を取ってある」

「何故こんな物を付けた?」

「どこかの庶務がほぼ毎日暴れまくってるからな。その辺の対応のためだ」

「いや〜、ワリィワリィ」

 

 ケイトからは全く反省の色が伺えない。

 

「話を戻そう。簡潔に言えば二手に分かれて生徒の救出及びゾンビ化した生徒をデュエルで倒していくということだ。だが・・・」

 

 そこで秋人はフユと零士を見た。

 

「君達二人はどうせ言うことをまともに聞くタマじゃないだろうから、自由に行動してくれ。君達の実力ならまず安心だからな」

「え?零士はともかくフユは・・・」

 

 千鳥がフユに視線を移すとものすごい勢いで貧乏ゆすりをしているフユが目に入った。え?何で?と思われる読者の方々のために、ちょっとフユの頭の中を覗いてみましょう。

 

(春さんが危ない春さんが危ない春さんが危ない春さんが危ない春さんが危ない春さんが危ない春さんが危ない春さんが危ない春さんが危ない春さんが危ない春さんが危ない)

 

 この主人公、もう手遅れである。

 

「という訳で、二人は先に行動を起こしてくれ」

 

 秋人に言われると二人は無言で立ち上がり、そのまま一言も発さず生徒会室を出ていった。

 生徒会室を出た直後、まだそれなりの距離はあったが、無数のゾンビ化した生徒がこちらに向かってきていた。

 そして先に行動を起こしたのはフユ。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!春さああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!!」

 

 

 猛然と走り出した。

 

デュエル・・・・・・

 

デュエル・・・・・・

 

デュエ/(`Д´)/

 

 だが走り出した先にもゾンビは立ちはだかる。

 

 

「どけええええええええええええええええええええぇぇぇ!!!!!モブ共おおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

 

 

《マスター・ヒュペリオン》三体でダイレクトアタック!!

《アームズ・エイド》を装備した《カオス・ソルジャー ―開闢の使者―》で二回攻撃ィ!!

 

しかしフユもバッタバッタと敵をなぎ払っていく。

 

 

「春さんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!どこですかああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!?」

 

 

 ものの数分で廊下には倒れたゾンビの山が出来ていた。

 

「これで俺達が出て行っていきなり襲撃されるということはないだろう」

 

 もちろん生徒会室の中にもフユの声は聞こえていた。

 

「・・・チッ!」

 

 短く舌打ちをする千鳥。

 

「じゃあ改めて、前田さんと霧谷さんはこの南校舎。主に前田さんがゾンビを倒し、霧谷さんがまだ無事な生徒の避難誘導。鍵をかけて教室に居させるのが効果的だろう」

「分かりました!」「OK!」

 

 二人共即承諾。

 

「そして俺と不屈野君は北校舎だ。デュエルは俺がやるから君は生徒の方を頼む」

「任せてください!!」

 

 英雄も決意は堅い。

 

「よし。それじゃあ最後にこれだけは言っておく。全員、生き残るぞ!」

「「はい!!」」「ああ!」

 

 こうして四人もフユと零士に一歩遅れる形で生徒達の救出に向かうのだった。

 

 

 

 時間はほんの少しだけさかのぼり、零士サイド。

 彼もまた並み居る敵をバッタバッタとなぎ倒し、ある場所へ向かっていた。放送室である。零士は放送室に入ると諸々の電源を入れて放送が流れる場所を全校にセットするとマイクに向けてこう言った。

 

「全校生徒、及び教職員に告げる。一度しか言わないからよく聞いておけ。現在異常事態になっていることはよく分かっているだろう。今お前達を襲っている奴らをとりあえずはゾンビと呼称している。ちなみに奴らの知能はデュエル以外では猿以下と考えていい。だからこの放送は聞こえることはあっても理解されることはない。奴らを元に戻す方法についてだが、簡単に言ったらデュエルで倒すことだ。だが決して奴らのデュエルを受けるな。逃げるか教室で篭城しろ。奴らは通常時より数段強い。その上敗けたらお前達もゾンビ化する。じきに『約一名を除く』生徒会の人間が助けに来る。そいつらの指示に従え。それと教師ども。可能ならこれからスタジアムを開けろ。あそこなら全校生徒を収容することぐらい余裕だろう。以上だ」

 

 零士はマイクの電源を切ると、放送室をあとにした。

その後零士は何分もかからずにゾンビどもの集団を発見したのだが、彼らの視界に零士は入っていない。誰かを取り囲んでいるようだ。わずかな隙間から見えたのはかなり小柄な少女。そして零士にはその少女に見覚えがあった。豊橋寧々。この間のデュエルフェスタの決勝戦で零士と闘った少女だ。ちなみにデッキは【聖刻】。それは置いといて、彼女は周囲を完全に囲まれていて逃げ場がない。つまりここを切り抜ける方法はたった一つ・・・。

 

「戦うしかない、みたいね・・・」

「手を貸してやろうか?」

 

 零士がジャンプ一つで寧々の隣に着地した。

 

「必要ないわ。それにこんな奴ら相手に敗けたりしない」

 

 寧々も対応が淡々としている。

 

「お前の実力が確かなのは知っている」

「なら何故?」

「簡潔に言えば、手を貸してやるからお前も協力しろ」

「具体的には?」

「さっきの放送は聞いただろう。これからスタジアムまでの道を作り、避難が完了した後もそこの防衛につく。お前にはその手伝いをしてもらいたい。だから効率化のために『いやいや』手を貸してやる」

「・・・分かった。『渋々』手伝ってあげる」

 

 

 

 所変わってこちらは千鳥&ケイトサイド。こちらもまあ無双といえば無双な活躍を見せていた。廊下の端。前方にはゾンビが群がっている。

 

 

「どっせい!!!」

 

 

 という、お前本当に女子か?と問いたくなるような掛け声とともにケイトは空気を殴った。するとほんの数秒遅れて一人のゾンビが倒れて動かなくなった。要するに拳圧だけで人間を吹っ飛ばし、気絶させたのだ。

 

「よっしゃビンゴォ!!」

 

 ガッツポーズするケイトに、

 

「いや待てえええええええええええええええええええええええええ!!!」

 

久々の大シャウトツッコミをする千鳥。

 

「ツッこむとこありすぎ!!っていうかツッこむところしかない!!何で拳圧だけで人を気絶させられるの!?何で殴るの!?デュエルで勝たなきゃ元に戻せないのよ!!そもそも・・・、アンタの身体能力規格外すぎぃ!!」

「いいじゃんこっちのが楽だし。それに結構難しいんだぜ、狙って当てるの」

 

 千鳥のロングツッコミをケイトはそのたった一言だけ返した。

 

「リアリスト!!」

「あ〜、もう分かった分かった。次はまとめてぶっ飛ばすから」

 

 言うとケイトは腰をかがめて右腕を引いた。

 

「え?ちょっ、本当にできるの?」

 

 千鳥が引きつった笑みを浮かべる。

 

 

「うおおおおおぉぉぉるああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 パンチの勢いはさっきの比ではなかった。

 

―――ドガシャアァ!!

 

 衝撃音の響いた後、もう廊下に立っている人間は一人もいなかった。

 

「えええええええええええええええええ!!!?」

 

 そりゃあ驚きますわな。

 

「うっし!これで大丈夫だな。―――おーい!無事な奴らは早くスタジアムに逃げるか教室を閉めとけよー!」

 

 ケイトの言葉で全ての教室から生徒達が蜘蛛の子を散らしたように走り去っていった。

 

「アンタ、本当にカードで人が殺せるんじゃない?本家で使われるのとは別の意味で」

 

 その階一帯が静まり返ると、千鳥がポツリと言った。

 

「さあ?今度やってみようか?」

「いややらんでいいわ!!」

「冗談だって。それより・・・」

 

 倒れていたゾンビ達がムクリと起き上がり始める。

 

「へぇ、思ったより早く起きてきたな。―――――んじゃ、今度デュエルでぶっ飛ばすかぁ!!」

 

 

 

 またまた場所は変わりこちらは秋人&英雄サイド。こっちは普通にゾンビどもをデュエルで倒しまくり、普通に生徒達を救援していましたとさ。

「「短っ!!」」

 

 

 

 という訳で、再びフユサイド。

 

「春さああああああああああああぁぁぁん!!どぉーこぉーでぇすぅかぁ!!」

 

 未だに探し回っていた。色んな教室に入って春を探すものの全く見当たらない。そうこうしているうちにどこぞの空き教室に入った時だった。

 

「あ、白雪姫君。どったの?そんなに慌てて」

 

 彼女が桜木春。まだ今起きていることに気付いていないようだ。

 

「春さん、無事でしたか!実はカクカクシカジカで・・・」

「おお、便利だね」

 

 フユは今なんちゃって○イオハザードが起きているということ。デュエルで勝てば元に戻せるということ。逆に敗ければこちらがゾンビになるということ。また相手の実力は普段より強くなっていること。そして生徒会の面子が対処しているということを伝えた。

 

「へぇ、大変なことになってるんだね」

「っていうか春さん、何でこんなところにいるんですか?」

「皆でお昼食べるつもりだったんだけど、皆来た途端にデュエルしたいって言うからやってたんだけど、デュエル終わったら倒れちゃって・・・。寝不足だったのかなぁ」

 

 よく見ると前にデュエルフェスタで春と同じチームだった女子四人が壁にもたれかけた状態で気を失っていた。

 

「春さん、多分その人達、ついさっきまでゾンビ状態でした・・・」

「そうだったんだ」

(まったく動じてない!?どういうメンタルしてるんだこの人は!?)

「で、これからどうするの?」

「え?そうですね・・・」

 

 さっきまで春を探すことだけに夢中になっていたせいで、零士の放送は聞いていなかったのだ。

 

「とりあえずゾンビを倒しながら安全な場所を探しましょう」

「だったら強い人にも手伝ってもらったらいいんじゃないかな?麻理亜先生とか」

「いいアイディアですね。じゃあ職員室行ってみます」

「あ、私も行くー」

 

 同行するという春の意見にフユは嬉しさと不安が芽生えた。

 

「え?何でですか?」

 

 すると春は親指を立てていい感じの顔をして言った。

 

「だってお茶菓子置いてありそうだから!」

(ホントメンタルすごいなこの人・・・。まあ、お近づきになれるからいいか)

「分かりました。一緒に行きましょう。でも外にはゾンビ達がいると思うので僕から離れないでください」

 

 そう言ってフユは教室の扉を開けた。そして二人の目に入ってきたのは、ブッ倒れた無数の人間であった。およそ普通の学生生活をしていたら、こんな光景を見ることはない。

 

「白雪姫君。皆お昼寝してるのかな?」

 

 もちろんこれはフユが倒しまくったのが原因。しかし繰り返すようだが、ついさっきまで無我夢中だったのでフユ自身もこの光景には引いていた。

 

「そ、そうですね。多分・・・」

 

 

 

 フユと春の二人は(フユが敵を蹴散らしていたので)難なく職員室の前まで来ることができた。中に入ると教師はたった一人しかいなかった。その人こそ協力を仰ごうとしていた。宵星麻理亜だ。今は一人でお茶している。

 

「アラァ、珍しい組み合わせの二人ね。どうしたの?」

 

 二人に気付く麻理亜。

 

「お茶菓子もらいに来ました!」

「いや違います!ちょっと手伝って欲しいことがあるんです!」

 

 どうやらこの二人の組み合わせだとフユがツッコミに回るようだ。

 

「ゾンビ化した生徒達を元に戻したいのかしら?」

「え?何でそれを知ってるんですか?」

「さっき天城君が放送で喋ってたわよ」

「零士が?だったら・・・」

「大丈夫よ。私が動かなくても、もうすぐこの一件は終わるわ」

「どういうことですか?」

 

 

「だって、あのゾンビ達を作り出したのは私よぉ」

 

 

「・・・・・・え?」

 

 フユも春も自らの耳を疑った。

 

「厳密には最初に何人かゾンビ化させてそいつらにまた新しいゾンビを生み出させていたの。もっとも、私個人はゾンビ化じゃなくて『ヴェルズ化』と読んでるんだけどね。そっちのほうがシャレてるでしょ?」

「何で・・・、何でこんなことを!?」

 

 しかし麻理亜はただ笑っているだけだ。いつもよりゾッとするような笑みを。

 

「ねぇ。どっちか私とデュエルしない?予想はついてると思うけど、私を倒せばヴェルズ化した人間は全て元に戻るわ。ただし、敗ければもちろんヴェルズ化よぉ」

「くっ・・・!」

(正直、【ヴェルズ】相手に勝てる気はしない。でも・・・!)

 

 フユはチラッと春の方を見た。

 

(でも春さんを危険にさらすわけには・・・)

「分かりました。僕が相手になります!春さん、デュエル中にヴェルズ化した生徒が来ないように、職員室の扉に全て鍵を・・・」

「その必要はないわぁ。今この一帯には来ないように命令を出したから」

「なっ・・・!?どうやってそんなことを・・・?」

「ある程度なら脳内で命令できるの。今の私には、それができる」

 

 最早麻理亜のやっていることは人間の範疇を超えていた。

 

「ならそれも含めて洗いざらい教えてもらいますよ。デュエルで!!」

「いいわよぉ。特別授業をしてあげる」

 

「「デュエル!!」」

 

 




 今回はデュエルはしててもほとんど描写がありませんでしたが、これを全部一個一個丁寧にやってたらデュエルフェスタ編並の長編になるのでやめておきました。次回はちゃんとしたデュエル描写があるので許してください。
 それと分かっていると思いますが、リアルで【カオス代行】と【ヴェルズ】が戦ったら高確率で【ヴェルズ】が勝ちます。年明けからオピオンが完全復活しますし。
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