遊戯王 スノーホワイト/ブラック   作:xxxg

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第五十七話 「温泉でのイベントといえば『アレ』でしょう」

 ケイト達が激闘を繰り広げていた頃、フユ達、修羅場チームも目的の場所『ガスタ湿地帯』にある『ガスタ温泉旅館』の近くまで来ていた。ちなみに前回のお菓子工場からかなり距離があったので移動はバスである。

 

「ん〜!結構かかったわね」

 

 これが千鳥がバスを降りてからの第一声である。

 

「やっぱり魔界発現世行きじゃないからデスガイドはいなかったね」

 

 これはフユ。

 

「夏休みやGW等の長期休暇の際には彼女もこういった通常のバスのガイドもするんですけどね」

 

 今度のはカオス・ソルジャーだ。

 

「「・・・・・・・・・」」

 

 そして普段元気いっぱいなのに今は背を向けて肩を落としている二人が春とセームベルだ。

 

「あれ?どうしたの二人共?」

「「・・・酔った」」

 

 二人共顔が青ざめ、口を抑えていた。これに一番慌てたのがフユ。

 

「大変だ!この作品のヒロイン両方がゲロインになる!」

「いや私は!?」

 

「え?千鳥ヒロインだったの?」

 

「この野郎・・・!」

「ですが、少しこの辺りで休憩してもよろしいかと。旅館はすぐそこですから」

 

 カオス・ソルジャーはこう言うし、別に千鳥も二人の地位を陥落させたいわけでもないので、まずは近くの休憩所に行くこととなった。

 

 

「それにしても、どうして温泉旅館なんて狙うんだろうね?」

「おそらく慰安が目的でしょう。ですが厄介なのは、そこが未だに抵抗を続けていることです」

「へぇ、ただの温泉旅館が、どうして?」

「それは、まぁ、色々ありまして・・・」

 

 急にカオス・ソルジャーの歯切れが悪くなった。

 

「しかし、抵抗する側の力が強ければ強い程、攻める側の力が強くなるのも、また事実。かなり強力な相手に挑むことになるでしょう」

「そうなんだ。頑張ってね千鳥」

「はい!?私!?」

 

 急に振られて千鳥の声が上ずった。

 

「なんで私なのよ!?」

「だってこれから行くところって《ガスタ》が経営してる温泉旅館なんでしょ。だったらここは【ガスタ】を使う千鳥が闘わなきゃ。話の展開的に」

「展開的にって・・・・・。そりゃまぁ私がやるつもりだったけどさ・・・」

 

 しかしそんなことを言われると多少反感が生まれるというもの。

 

「今日は千鳥ちゃんがデュエルするんだー。頑張ってね」

 

 背後から声をかけたのは春。隣にはセームベルもいる。どちらもいつもの調子に戻っている。

 

「立ち直り早っ!」

「そこで売ってるソフトクリーム食べてたら元気になりました!」

「それだけで!?」

「この一帯は市街地より空気が澄んでいますから、それもあるかもしれませんね」

「あっ、そうだ!」

「急に何?」

 

 春は山の方を向いて大きく息を吸った。

 

「ヤッホ―――――――――――――――――――――――――――ッ!!」

 

「そんなベタな・・・・・」

 

 千鳥が呆れているとやまびこが返ってきた。

 

―――――チクショオオオオオオオオオオオオオオオ!!

 

―――――クショオオオオオオオオオオオオオオ!

 

―――――ショオオオオオオオオオオオオオ

 

―――――オオオオオオオオオオオ

 

―――――オオオオオオ・・・・・

 

((あっれぇ〜・・・?どこかで聞いたことあるけどここにいない人の声が聞こえたような・・・・・・))

 

「あれ?今聞こえたのってケ・・・」

「さ、さぁ、行きましょうか春さん」

「そうね。今日は温泉旅館だからゆっくり休めるわよ」

 

 無理矢理話題を変えたフユと千鳥だった。

 

 

 

「へぇ〜。ここが」

 

 で、一行は今日の目的地である『ガスタ温泉旅館』に到着した。見た目はそこそこ大きめの老舗旅館と言った感じだ。

 

「すみませ〜ん!」

「はーい!」

 

 カオス・ソルジャーの呼びかけに反応し、思いっ切りの営業スマイルで出迎えてくれたのは《ガスタの賢者 ウィンダール》だった。

 

「お話は伺っています。どうか皆様、本日は旅の疲れを癒してください」

「何ていうか、もっとクールなキャラだと思ってたのに。ウィンダール」

 

 千鳥は想像していた雰囲気と違っていて少々ガッカリしていた。

 

「しょうがないよ。『こんな精霊世界は嫌だ編』なんだから。それに僕のモンスターなんかほとんど皆キャラ崩壊してるし。君の方がまだマシだよ」

「アンタのところと一緒にしないでくれる?」

 

 自然と眉がつり上がる千鳥。なんだか今日のフユの言葉は一々イラッとくる。

 

「そ、それでは、お部屋にご案内しますね」

 

 ここでまた別の《ガスタ》がやって来た。《ガスタの静寂 カーム》だ。

 

「それではお客様、付いてきてください」

 

 こちらはイメージ通りだった。

 

 

 

 で、移動中。カームは諸々の説明をしてくれた。

 

「当館の部屋は全て和室になっています。御夕食・御朝食は従業員の誰かに仰ってくださればすぐにご用意いたします。また、温泉ですが男湯も女湯もご利用できるのは午前6時から午後10時までで、露天風呂の方も同じです」

 

 そこでカームが立ち止まった。

 

「あ、ここが白雪姫様とカオス・ソルジャー様のお部屋になります。お嬢様方はもう少し先です」

 

 ここでフユはカオス・ソルジャーと共に千鳥達と別れた。そして部屋に入ると窓を開けて爽やかに言った。

 

「精霊世界、来てよかった」

 

 この一言から、フユにとって一世一代の大勝負が始まるのだった。

 

 

 

 そして数分後。

 

「フッフッフ・・・」

 

 フユは露天風呂に来ていた。もちろん男湯。それも一人きりである。彼がこれから成そうとしている事を読者諸兄、特に男性陣は理解していただけただろう。

 

 そう。『のぞき』である。

 

 無論狙いは春の裸体。でもセームベルのも見られたらなぁ、とも考えていた。しかもこの露天風呂、隣が女湯。その上遮っているのはベタに竹垣。上手く隙間を見つけられれば隣の様子が丸見えなのだ。

 

「・・・・・・・・・」

 

 フユはジッと息を潜め、隣の物音に集中していた。多分デュエルでもここまで集中することは少ないだろう。

 

―――――ガラガラガラ

 

(来たっ!)

 

 さらに向こうからは湯船に入る音が。

 

(チャンスは今しかない!)

 

 フユの目は、覚悟を決めた男の目をしていた。

 

 音を立てないようにゆっくり、ゆっくりと竹垣に近づいていく。移動しながらベストなポイントを探すのも忘れていない。そして数十秒かけて最も隙間の大きな箇所の前に立った。興奮やら緊張やら背徳感やらで心臓の鼓動が早くなるのが自分でも分かる。

 

(フ、フフフ・・・・。さぁ、ご対面―――――――――――――――っ!!!!!)

 

 隙間を覗いたその先にあったのは、秘密の花園――――――――ではなかった。

 

 彼の眼に映ったのは、同じく眼。当然自分の眼ではない。そしてそれが誰の眼なのかもすぐに分かった。ここに来た人間の中で、最も長く一緒にいる人間。その時、また戸の開く音が。

 

「あれ?千鳥ちゃん、そんなとこで何してるの?」

 

 それは春の声だった。

 

「な、なんでもないわよ?」

「ふ〜ん」

 

 聞かれた相手は気まずそうに答えた。フユもターゲットが来たのだが、もう覗きをする気にはなれなかった。

 

 

 

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

 

 フユと千鳥。―――互いに意中の相手の裸体を拝もうとしてバレた馬鹿夫婦が廊下で対面していた。ちなみに二人共部屋にあった浴衣に着替えている。

 

「・・・・・見た?」

「いや、眼しか見えなかったよ。・・・・・見た?」

「見てないわよ」

 

 どうにも空気が悪い。

 

「そ、それにしても、千鳥にあんな変態趣味があったとはね」

 

 なんとか雰囲気を良くしようとフユが笑いながらそんなことを言うが、

 

「それ、ブーメラン発言だと思うけど?」

「うっ・・・!」

 

逆効果だ。

 

「・・・ねぇ、アンタも女の子の裸に興味あるの?」

「え?それは、まぁ・・・、僕だって男だから」

「そう・・・」

 

 千鳥は一歩だけ近づいた。その顔は少し紅潮している。そして肩を少しだけはだけた。

 

「じゃあ、私のも・・・、見たい?」

 

「別に見たいとは思わないけど?」

 

 即答であった。

 

「なっ・・・!?」

 

 何か言い返そうとした瞬間だった。

 

ドカァァァン!

 

 轟音と地響きが旅館を襲った。

 

「来たみたいだね。―――千鳥!デッキとデュエルディスクを!」

「分かってるわよ!」

 

 ひとまず二人は玄関の方に向かった。そこには既に春、カオス・ソルジャー、セームベルがいた。それに先程会ったウィンダールとカームだけでなく、ウィンダやカムイ、リーズにムストと、人型ガスタが勢揃いしていた。しかし彼らはそれとは別の光景に目を見張った。

 

 数十分前に自分達が通った場所が滅茶苦茶に荒らされている。そしてその向こう側にはこんなことをした犯人らしきモンスターが数体。それもかなりデカイ。

 

「これで当分経営はできませんよねウィンダールさん。―――いい加減、ここの権利を譲ってはもらえませんかね?」

 

 礼儀正しい喋り方で迫ってきたのは、《地縛神 Wiraqocha Rasca(ウィラコチャ ラスカ)》だ。後ろには他の《地縛神》達も控えている。

 

「悪いがここをお前達のような連中に譲るつもりはない!ここは全てのモンスターの癒しの場であり、何より我々《ガスタ》の大事な収入源だ!!」

 

 ウィンダールの言葉に他の《ガスタ》も「そーだそーだ!」と声を揃える。

 

「ああいうところ、使い主に似たみたいだね」

「どういう意味よそれ!?」

 

 などと会話をしていたフユと千鳥が、ウィラコチャラスカの視界に入った。

 

「ほぅ、貴方達が噂の人間一行ですか。デュエルディスクを付けているところを見ると、そちらのお嬢さんが私と闘うようですね」

「っ・・・!」

 

 千鳥は一瞬たじろいだ。なにせ相手は地縛神なのだ。リアルファイトなんかした暁にはケイトでも勝つのは難しいだろう。だが、やるのはデュエルなのだ。

 

「上等じゃない!神様だか何だか知らないけど、相手してあげるわよ!!」

「・・・・・気の強いお嬢さんだ」

 

 この一言がデュエル開始の合図になった。

 

「「デュエル!!」」

 

 

千鳥 LP8000

 

地縛神 Wiraqocha Rasca LP8000

 

 

「私のターン!」

「ヤレヤレ、先攻を譲ろうという気はないのですね」

「うっさい!言った者勝ちよ!」

「まぁ、私は後攻の方が嬉しいのですが」

 

 というウィラコチャラスカの言葉は無視して考えを巡らせる。

 

(確かOCG版の《地縛神》の効果はアニメ版と違ってこっちはダイレクトアタックできなかったはず・・・。となると、バウンスと破壊効果で何とかするしか・・・・)

 

「私はモンスターを一体セットしてターンエンド!」

 

 

千鳥 LP8000 手札4

モンスター/リバース×1

 

 

「おや?勝気な割にはなかなか守備的なのですね」

「そういうデッキなのよ!」

 

「ハッ!千鳥ちゃん!今私スゴイことに気付いた!」

 

 春が目を輝かせながら急に言ってきた。

 

「何よ?」

「今回行間が開く回数が多いよ!」

「・・・・だぁーかぁーらぁ!?どうせそんなの作者の読者様がもっと読みやすくなるようにとかいう配慮なんでしょ!!つーかそもそもこっちだと第一話からそうだから!」

 

 はい。その通りでごぜーます。

 

「愉快なお嬢さん方だ。私のターン、ドロー。―――どうやらこのデュエル、すぐに勝負が付きそうですね」

「何ですって?」

「私はフィールド魔法《死皇帝の陵墓》を発動」

 

 辺りの風景が草地から大きな墓とそれを囲む堀に変わった。

 

「不味いわね」

「さらに私は永続魔法《フィールドバリア》を発動。これで《死皇帝の陵墓》を破壊することはできなくなりました」

 

「でた!」

「ウィラコチャラスカさんのマジックコンボだ!」

 

 後ろにいた地縛神達が口々にそんなことを言っている。

 

「魔法カード一枚だけで!?絡んでるのは二枚だけど」

「そして私はカードを三枚セット」

 

(なんでわざわざ三枚も・・・?まさか・・・!?)

 

「私は《死皇帝の陵墓》の効果でアドバンス召喚に必要なリリース一体につき1000ポイント、今回は二体分なので2000のライフを払います」

 

 

地縛神 Wiraqocha Rasca LP8000→LP6000

 

 

 地面が大きく揺れだした。

 

「オオォ!現れよ我が分身!《地縛神 Wiraqocha Rasca》!!」

 

 

地縛神 Wiraqocha Rasca 星10 闇 鳥獣族 攻100/守100

 

 

 代表的なナスカの地上絵であるコンドルをモチーフとしたモンスター。攻守共に100だが、驚異的なのはここからだ。

 

「私自身の効果を発動。私のフィールドのカードを三枚までデッキに戻し、戻した数まで貴女の手札をランダムに捨てさせます。私はさっき伏せた三枚をデッキに戻し、私から見て右から三枚のカードを捨ててください」

 

 これに千鳥はクスリと笑った。

 

「何がおかしいのですか?」

「アンタのおかげで出番ないかもしれなかったカードを使うことができるからよ。私は今手札から捨てられた《ガスタ・グリフ》の効果を発動!デッキから《ガスタ》を特殊召喚できる!私は《ガスタ・サンボルト》を守備表示で特殊召喚!」

 

 

ガスタ・サンボルト 星4 風 雷族 攻1500/守1200

 

 

「だからどうしたというのですか?私のさらなる効果!この効果で戻したカードの数×1000ポイント攻撃力をアップ!」

 

 

地縛神 Wiraqocha Rasca 攻100→3100

 

 

「そしてご存知の通り《地縛神》はモンスターがいようと直接攻撃できる。私は私でダイレクトアタック!デス・シンギュラリティ」

 

紫色の炎が千鳥に迫ってくる。しかし、千鳥は精神的に余裕があった。

 

(大丈夫!昨日みたいにフユが助けてくれるはず!)

 

 だが攻撃が目前に迫ってきても誰も来ようとはしない。

 

「え?―――キャアアアッ!!」

 

 

千鳥 LP8000→LP4900

 

 

 あえなく吹っ飛ばされる千鳥。

 

(嘘!?アイツなんで助けてくれないの!?っていうかさっきから静かすぎない!?)

 

 千鳥が後ろを向くとさっきまでいたはずのフユがいない。といか自分達のデュエルを見ているのはもう春しかいない。

 

「ちょっ、春!!皆は!?」

「えっとねー。白雪姫君が晩御飯食べるって言ってー、カオス・ソルジャーさんとセームベルちゃんがそれに付いて行ってー、ガスタの皆はその準備に行ったよ」

 

ブチィッ!

 

 頭の中の何かが切れたような感覚がした。

 

 

 

 その頃、フユとカオス・ソルジャーの部屋では。

 

「ゴッハンーゴッハンー♪」

 

 セームベルも部屋に来て三人で食事をしている。料理は鍋や刺身と豪華なものだった。だがカオス・ソルジャーだけは部屋の隅で正座で待機していたので実質二人。

 

「主、一つ聞いてもよろしいでしょうか?」

「んー?」

「今日の主は、少し千鳥様に冷たい気がします」

 

 フユは箸を止めた。

 

「それじゃあ質問に質問で返すけど、元ACE組五人の実力順ってどんなだと思う?」

「主、零士様、ケイト様が伯仲。次いで千鳥様、最後に英雄様かと」

「うん。まぁそんなところだろうね。今回の七人の中じゃ、流石の千鳥も強い方じゃない。・・・・・普通に闘ったらね」

「と、言いますと?」

「個人的に本気で怒ってる状態でデュエルしてる時の千鳥を『魔王千鳥』って呼んでるんだ。最近はそんなことなかったけどね。その時の千鳥の実力は壮絶で、聞いた話だとデュエルフェスタ勝ち抜き戦の時に四連勝したぐらいだから」

「ということは、今日はわざと怒らせていたと?」

 

「そう。今回来る場所が『ガスタ温泉旅館』と聞いた時、確実にここでデュエルをするのは千鳥だと思ってた。そしてキレた千鳥なら大抵の相手になら簡単に勝ってくれると確信しているよ」

 

 

 

「どうやら仲間にまで見捨てられたようですね。ターンエンド」

 

 

地縛神 Wiraqocha Rasca LP6000 手札0

モンスター/《地縛神 Wiraqocha Rasca》

魔法・罠/《死皇帝の陵墓》《フィールドバリア》

 

 

「・・・・・・私のターン、ドロー」

 

 千鳥の声はとても落ち着いているように聞こえた。―――――しかしこれこそが、魔王降臨の予兆だった。

 

「悪いけど、次の私のターンで、あなたを倒す」

「何を言うかと思えば。貴女は私を攻撃できず、こちらには最強の地縛神が・・・・・」

 

「アンタの意見なんて聞いてないのよっ!!!!!」

 

 千鳥のその剣幕は数倍の巨体を誇る地縛神達すらも怯ませるものだった。

 

「今の私はすこぶる機嫌が悪いの!アンタらで憂さ晴らしさせてもらうわよ」

「そ、それは八つ当た・・・」

「私は《ガスタの神裔(しんえい) ピリカ》を召喚!!」

 

 

ガスタの神裔 ピリカ 星3 風 サイキック族 攻1000/守1500

 

 

 現れたのは虚ろな顔をした少女。だがその効果はなかなか強力。

 

「ピリカのモンスター効果!!このモンスターが召喚に成功した時、墓地の風属性チューナー一体を守備表示で特殊召喚できる!!私はアンタの効果で捨てられた《ガスタ・イグル》を特殊召喚!!!」

 

 

ガスタ・イグル 星1 風 鳥獣族 チューナー 攻200/守400

 

 

「さらに《ガスタ・ガルド》を反転召喚!」

 

 

ガスタ・ガルド 星3 風 鳥獣族 チューナー 攻500/守500

 

 

「レベル3の《ガスタの神裔 ピリカ》に、レベル1の《ガスタ・イグル》をチューニング!―――シンクロ召喚!羽ばたけ、《ダイガスタ・ファルコス》!!」

 

 召喚されたのは巨大化した《ガスタ・ファルコ》と、それを駆る《ガスタの希望 カムイ》だ。

 

 

ダイガスタ・ファルコス 星4 風 サイキック族 攻1400/守1200

 

 

「《ダイガスタ・ファルコス》の効果発動!シンクロ召喚に成功した時、フィールド上の全ての《ガスタ》の攻撃力を600ポイントアップ!!」

 

 

ダイガスタ・ファルコス 攻1400→2000

 

 

ガスタ・サンボルト 攻1500→2100

 

 

ガスタ・ガルド 攻500→1100

 

 

「たかだか攻撃力2000かそこらのモンスターを並べたところで」

 

「フィールドをよく見ることね。私のフィールドには今、レベル4のモンスターが二体いる!!」

 

「ま、まさか・・・!」

 

「私は《ダイガスタ・ファルコス》と《ガスタ・サンボルト》でオーバーレイ!―――二体の風属性モンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!鳴り響け、《電光千鳥》!!!」

 

 それは、青白い雷が鳥の形をしているようなモンスターだった。

 

 

電光千鳥 ランク4 風 雷族 攻1900/守1600

 

 

(千鳥ちゃんの新しいカードが、《電光『千鳥』》・・・。ププッ)

「《電光千鳥》の効果発動!エクシーズ素材を一つ取り除いて、フィールドの表側表示のカードをデッキトップに戻す!選択するのは当然《死皇帝の陵墓》!!」

「何だとぉっ!?」

 

 《電光千鳥》が鳴き声をあげ、辺りに電撃を撒き散らす。すると墓が電気を帯びて崩れ去っていった。そしてこれは同時にある事を示している。

 

「フィールド魔法が場を離れれば、《地縛神》は存在できない!!」

「くっ!」

 

 そう。《地縛神》はどれも超強力なモンスターばかりだが、弱点はある。それがフィールド魔法がないと自壊することだ。

 

「これでアンタのフィールドはがら空き。あるのはもう意味のない《フィールドバリア》だけ。バトルよ!!《電光千鳥》と《ガスタ・ガルド》でダイレクトアタック!!」

 

 

地縛神 Wiraqocha Rasca LP6000→LP3000

 

 

「ウグッ!」

「私はカードを一枚セットしてターンエンド」

 

 

千鳥 LP4900 手札0

モンスター/《電光千鳥》《ガスタ・ガルド》

魔法・罠/リバース×1

 

 

「さぁ、あなたのターンよ。もっとも、手札は0な上、次に引くカードも分かりきってるけど」

「クッ。だがまだ!まだ私は諦めない!!都合よく来い、リ・コントラクト・ユニバース!!!」

 

 ウィラコチャラスカがカードを高々と上げてドローするが、どこからどう見てもさっきデッキの一番上に戻された《死皇帝の陵墓》だった。

 

「・・・・・リ・コントラクト・ユニバース!!!!」

 

シ―――――ン

 

「ユニバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアス!!!!!!!」

 

 なんかもう○ーンエーの人みたいになっている。

 

「茶番は終わり?なら私のターン、ドロー。私は《電光千鳥》をリリースして《ガスタの賢者 ウィンダール》をアドバンス召喚!!」

 

 

ガスタの賢者 ウィンダール 星6 風 サイキック族 攻2000/守1000

 

 

「レベル6の《ガスタの賢者 ウィンダール》に、レベル3の《ガスタ・ガルド》をチューニング!撃ち抜け、《ハイパーサイコガンナー》!!!」

 

 

ハイパーサイコガンナー 星9 地 サイキック族 攻3000/守2500

 

 

「《ハイパーサイコガンナー》でダイレクトアタック!!サイキックショット!!」

 

 《ハイパーサイコガンナー》の撃った弾丸はウィラコチャラスカの胴体に的中した。

 

「ウオオオォォォッ!!!」

 

 

地縛神 Wiraqocha Rasca LP3000→LP0

 

 

「まさか、人間の怒りの力がこれほどとは・・・」

 

「勝手に話進めないでくれる?」

 

「え?」

 

「私の腹いせとバトルフェイズはまだ終わってない!!!リバースカードオープン、《バスター・モード》!!!!」

 

「おい!ちょっ、待っ・・・」

 

「《ハイパーサイコガンナー》をリリースしてデッキから《ハイパーサイコガンナー/バスター》を特殊召喚!!!」

 

 

ハイパーサイコガンナー/バスター 星11 地 サイキック族 攻3500/守3000

 

 

「後ろの奴らもまとめて攻撃!!!サイキックバレット!!!!」

 

「ウゲアアアアアアァァァッ!!!」

 

 

地縛神 Wiraqocha Rasca LP0→LP-3500

 

 

 後にこのデュエルを終始見ていた春はこう語る。

 

「千鳥ちゃんだけは絶対に怒らせたらダメだ!!」

 

 

 

「はぁ・・・・。少しはスッキリしたわ・・・・・・」

 

 ある程度冷静になったことで、《地縛神》連中には悪いことをしたな、などと考えていた。

 

(こういう演出いつかやると思ってたけど、まさか私が初めてライフをマイナス値にするとは思わなかったわ・・・。でも、後で絶対あのロリコンは制裁する)

 

 そんなことを考えていると、さっき相手をしていた《地縛神》達が起き上がり始めた。

 

「許さん・・・!!断じて許さんぞ人間共!」

(ヤバッ!怒らせすぎた!!)

「こうなったら力づくでも・・・」

 

「ギャーギャー、ギャーギャー昼間っからうるさいんだけど」

 

 《地縛神》がさっきとは別の意味で臨戦態勢に入った時、千鳥の背後から声が聞こえた。だがそれは間違いなく《ガスタ》の誰かではない。振り返ると、そこにいたのは一体のモンスターだ。それは巨大な《地縛神》のさらに数倍の大きさを誇り、召喚条件が異様に難しいが、一度召喚されれば何もかも消滅させるモンスター。

 

《創星神 sophia(ソピア)》である。

 

「また貴女ですか。いい加減我々の仕事の邪魔をするのは止めていただきたい」

 

 ウィラコチャラスカの言葉で、千鳥は理解した。何故一介の温泉旅館が今まで抵抗できていたのか。何故それを説明するのにカオス・ソルジャーは言葉を濁していたのか。

 

 全てはこの神の気まぐれで成り立っていたのだ。

 

「とりあえず、こっちも○SUTAYAで借りたDVD延滞したの返しに行く途中だから機嫌悪いんだよねー。というわけで、削除」

 

 ソピアの右手が彼ら《地縛神》を押しつぶした。「ギャアアア!!!」という叫び声や、『プチッ!』という擬音が聞こえたりしたが、ソピアが手を離すとまるで何事もなかったかのように《地縛神》達は消え去っていた。

 

「事のついででここも直しとくねー」

 

 次いでソピアが左手をかざすと壊れていたはずの玄関が綺麗に治っていた。

 

「じゃ、私街の方に用事あるから、そういうことで」

 

 「あー、もう。昨日までだったら近所のコンビニでなんとかなったのになー」と、ブツクサ言いながら創星神は去っていった。

 

 この出来事を、千鳥と春はただただ呆然と眺めることしかできなかった。

 

 

「あ、どうやら無事勝てたみたいだね」

 

 フユだ。後ろにはカオス・ソルジャーとセームベルもいる。

 

「フユ・・・」

(さーて、どんなこと言って殴ってやろうか?)

 

 とか考えていると先にフユの方から喋りかけてきた。

 

「でも、千鳥なら絶対勝てるって信じてたよ」

「え?」

「特に怒った千鳥ならね。わざわざ一日千鳥にフラストレーション溜めさせて正解だったよ」

「ああ、そう・・・」

 

 今回はプッツンするのが早かった。千鳥は某北斗神拳伝承者みたく指の関節をゴキゴキ鳴らしながら笑った。

 

「実は私・・・、まだ機嫌悪かったりするのよねー」

「え?」

 

 フユ、顔面蒼白である。

 

「止めないの?」

「今回は、しょうがありません」

 

 その日、ガスタ湿地帯では一日中絶叫が響いたという。

 

 




 ムフフ(?)な回となりましたが、いかがだったでしょうか?女の子は怒らせたら恐いもんですからね。皆さんも気を付けましょう。
 次回は久々のタッグデュエルです。
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