ツッコミ不在チームが寒さに耐えている間、修羅場チームは湿気に耐えていた。もちろんこっちの方がマシではあるが。
で、彼らが向かう先は『黒の洞窟』。湿地帯を南に進んだ、霞の谷(ミスト・バレー)の奥地にある。そして移動手段はバスである。またしても。
「ふぃーっ、到着ーっ!」
伸びをしながら春が言った。
「今日は車酔いしなかったんですね。良かったです」
「カオス・ソルジャーさんが旅館で酔い止めの薬買ってくれたから」
「あ、私もー!」
春の言葉とそれに同意するセームベル。フユは後ろに付き従っているカオス・ソルジャーに、「そういうのは僕にやらせてよ」みたいな視線を送った。
「あの、まだ酔い止め残ってますから、後で渡します?」
カオス・ソルジャーはフユにしか聞こえないように言ったが、当の本人は箱をぶんどってからも視線を送っていた。
(コイツは・・・・・)
千鳥はそんなフユを半分呆れながら見ていた。
と、相変わらずのグダグダなやり取りをしているが、彼らがいるのは敵地の真ん前だ。○ンダムも余裕で通れるんじゃないかという程の大きさだが、十メートル先すら見えないほど真っ暗だ。
「!皆さん気を付けてください!何か近づいてきます!」
―――――ザッザッザッザ
確かに足音が聞こえる。即座に臨戦態勢に入るフユと千鳥。
そして、その姿が見えた。
「皆さん、お待ちしていましたよ」
わざとらしく丁寧な口調で挨拶してきたのは少年。黒い犬(?)を肩に乗せた黒服で色白な少年。
「初めまして。私(わたくし)、《調星師ライズベ・・・ぶほっ!?」
自己紹介を途中で遮られた《調星師ライズベルト》。そして遮ったのはフユのアイアンクロー。ライズベルトは掴まれたまま壁にぶつけられた。
「一体どのツラ下げて僕の前に現れたのかなぁ〜?うん?」
フユは満面の笑みを浮かべているが、それが逆に恐い。
「イダダダダダ!!顔潰れる、顔潰れる!!」
「セームベルの彼氏だかお兄さんだか知らないけど、どっちにしたって僕は認めないよ!!断じて!!!」
「そ、それは風評被害です!彼女とは初対面です!!」
これを聞いてやっとフユは手を離した。
「ふぅ・・・。危うく首から上がなくなるところでしたよ。私はここの主の命で道案内を任された者です」
「道案内?」
「ええ。この洞窟は迷路のように入り組んでいますから。最悪、一生出られなくなることも・・・。ッヒッヒッヒッヒ」
「なんかイラッとくるから秘孔突かれた世紀末の人みたいな顔にしちゃおっかなー」
「すいませんでしたァ!!全力ですいませんでしたァッ!!!」
フユによる制裁を加えつつも、洞窟に脚を踏み入れた一行。中は本当に真っ暗で、唯一の光はライズベルトの用意した懐中電灯一つのみである。
「主の元に行く前に、皆様には言っておかなければなりません。今回主とデュエルするのは、貴方です。白雪姫フユさん」
「え?僕?」
「復讐したいのですよ、貴方に」
「復讐?」
「っていうか、そもそも主って誰なのよ?」
「貴女もご存知のはず。《No.96 ブラック・ミスト》様ですよ!」
「ブラック・ミスト!?」
フユが過剰に反応した。
「本家では初登場で○ストラルの体を乗っ取ったのに○男に敗けて、計二回も封印されて、二期では○クターにヨイショされて調子に乗った割に最期は偽ナンバーズ製造機にされたり人形にされてベ○ターにこき使われたあのブラック・ミスト!?」
「説明的すぎ!あと叩きすぎ!」
ライズベルトは軽く咳払いしながら言った。
「ええ、まぁ、それも事実ではありますが・・・。今回重要なのは貴方がブラック・ミスト様を使役して『いた』ということです」
過去形になっていたことに千鳥が反応した。
「『いた』?そう言えば、私もコイツがブラック・ミスト使ってるとこ七話以降見てないんだけど?」
「いやぁ、実は枠の関係で《聖光の宣告者》と入れ替えたんだよね」
「それです。その事に主はお怒りなのです」
「そんなこと言われても・・・・・」
デュエリストはデッキを改良する際別のカードを入れる。そしたら逆に外すカードだって出てくる。それはしょうがないことだ。
「とにかく、ブラック・ミスト様は貴方とのデュエルをご所望なのです」
「・・・・ヤレヤレ」
「あ、あれじゃないかな」
洞窟に入って数十分が経った時に春が前方を示した。あっちを曲がりこっちを曲がりを繰り返していた辺り、本当に迷路のようになっているようだった。
そして春の指差した場所は、行き止まりになっており、松マツでも焚かれているのか明るい。その上遠目にだが無駄にでかい玉座も見える。そしてそれに座る人影が一つ。
「待ってたぜェ。白・・・」
「《マスター・ヒュペリオン》を特殊召喚!からのダイレクトアタック!プロミネンス・ブラスト!!」
「・・・雪姫フユって、えええええええ!!?」
いきなりのダイレクトアタックである。
「いや何やってんのアンタはァ!!」
「センテヒッショウユダンタイテキ」
「それ昔の○ケモンのOP!!」
「ヤルキマンマンイキヨウヨウ」
「春も乗らない!!」
するとさっきの攻撃でできた、元玉座、現在瓦礫から這い出したのはアニメでもお馴染みだったNo.96。いわゆる黒ア○トラルである。
「危ねぇな!!殺す気か!?」
「精霊って基本死なないんでしょ?」
「死なないけど死にかけるんだよ!!あと痛みとかも感じるんだよ!!」
「うん、後半に関しては知ってたよ」
この時フユは満面の笑みだったのだが、千鳥とカオス・ソルジャーは笑みが意味するものを理解していた。
「テメェ本当に主人公かよ?・・・とにかくだ!今すぐこのオレとデュエルしろ!そしてオレが勝ったらもう一度オレをエクストラデッキに入れろ!」
(な、なんてショボい要求・・・。本家では神を自称してた時期があったぐらいなのに・・・)
「別にいいよ」
呆れる千鳥とあっさり条件を飲むフユ。
「決まりだな。行くぜ!!」
「「デュエル!!」」
フユ LP8000
No.96 ブラック・ミスト LP8000
「僕の先攻!」
と、フユがデュエルディスクを起動させた時に、セームベルがあることに気付く。
「あれ?お兄ちゃんのデュエルディスク大きくなった?」
「あ、確かに」
セームベルの言うように、フユのデュエルディスク、形やカラーリングは変わっていないが、両サイドが広がり、もう二枚ほどカードをプレイできるぐらいの大きさになっていた。
「フッ、それは後のお楽しみさ。―――僕は《神秘の代行者 アース》を召喚!」
「グへへへへ」
アースは召喚されたことに気付かず、エロ本を熟読していた。
神秘の代行者 アース 星2 光 天使族 チューナー 攻1000/守800
「あ、あのー・・・・」
「グヘヘ。・・・・・・ハッ」
フユに話しかけられた事でようやく現状を理解し、直後ガックリとうなだれた。
「無制限になって油断した・・・・・・」
「ハァ。持ち主が持ち主なら、モンスターもモンスターよね」
「と、とりあえず僕はアースの効果を発動!デッキから《創造の代行者 ヴィーナス》を手札に加えて、ターンエンド!」
フユ LP8000 手札5
モンスター/《神秘の代行者 アース》
「伏せカードも無しで攻撃力たったの1000のモンスターを残したか。舐めやがって。オレのターン、ドロー!―――オレは手札の《マリスボラス・スプーン》を墓地に送り、《マリスボラス・フォーク》を特殊召喚!」
フォークを武器として構えた小悪魔が召喚された。
マリスボラス・フォーク 星2 闇 悪魔族 攻400/守400
「さらに《マリスボラス・ナイフ》を召喚!」
今度のも似たようなモンスターだが、武器がナイフだ。
マリスボラス・ナイフ 星2 闇 悪魔族 攻600/守100
「《マリスボラス・ナイフ》の効果発動!他の《マリスボラス》が存在する状態でこのカードが召喚に成功した時、墓地の同名以外の《マリスボラス》一体を特殊召喚できる!オレが呼び出すのは当然《マリスボラス・スプーン》!」
これまた名前通りスプーンを武器にしたチビ悪魔。
マリスボラス・スプーン 星2 闇 悪魔族 攻100/守500
「流石ブラック・ミスト様!1ターン目でモンスター三体を並べるとは!」
「あ、アンタまだいたんだ」
この場で唯一ブラック・ミストの応援をするライズベルト。
「行くぜ。オレは《マリスボラス・フォーク》《マリスボラス・ナイフ》《マリスボラス・スプーン》でオーバーレイ!―――現れろ、我が分身!No.96!漆黒の闇からの使者、ブラック・ミスト!」
No.96 ブラック・ミスト ランク2 闇 悪魔族 攻100/守100
「バトル!ブラック・ミストで《神秘の代行者 アース》を攻撃!ブラック・ミラージュ・ウィップ!」
ブラック・ミストは腕を触手のように伸ばしてきた。
「攻撃力100しかないのに攻撃するの?」
しかし春以外はその理由を知っている。
「ブラック・ミストの効果発動!シャドーゲイン!」
ブラック・ミストは伸ばした触手をアースの体に突き刺し、エネルギーらしきものを吸い取っていた。
「オーバーレイユニットを一つ取り除き、戦闘を行う相手の攻撃力の半分を吸収!」
No.96 ブラック・ミスト ORU 3→2 攻100→600
神秘の代行者 アース 攻1000→500
「これでアースは破壊可能になった!行け、ブラック・ミスト!!」
フユ LP8000→LP7900
「ッ・・・!たった500の攻撃力を奪いに来るとはね」
「塵も積もればなんとやらだ。カードを一枚セットしてターンエンド!」
No.96 ブラック・ミスト LP8000 手札2
モンスター/《No.96 ブラック・ミスト》
魔法・罠/リバース×1
「僕のターン、ドロー!」
(来た!)
フユは高々と両腕を上げた。
「レディースアーンドジェントルメーン!本日は最高のショーをご覧に入れましょうー!」
突然の大道芸人のような口上に、皆キョトンとなっている。
「まずご紹介いたしますは、新たなる召喚!僕はスケール2の《フーコーの魔砲石》と、スケール7の《閃光の騎士》をペンデュラムゾーンにセッティング!!」
黄金色に輝く騎士と、腕がキャノン砲になっているマシンがフユの後ろの上空に並んだ。
フーコーの魔砲石 P(ペンデュラム)スケール:青2/赤2 星5 闇 魔法使い族 攻2200/守1200
閃光の騎士 Pスケール:青7/赤7 光 戦士族 攻1800/守600
「これで、レベル3から6のモンスターが、同時に召喚可能!―――揺れろ、ペンデュラム!混沌に導け、二色のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、僕のモンスター達!」
二体のモンスターの間に穴が空き、そこから二体のモンスターが召喚された。
「《創造の代行者 ヴィーナス》、《死の代行者 ウラヌス》!!」
一体は毎度お馴染みだが、もう一体は新しい代行者だ。その姿は堕天使と呼ぶにふさわしい。
創造の代行者 ヴィーナス 星3 光 天使族 攻1600/守0
死の代行者 ウラヌス 星5 闇 天使族 チューナー 攻2200/守1200
「ペンデュラム召喚ですって!?」
「あー、知ってるー。モンスターがいっぱい出てくる奴だよね」
しかしペンデュラム召喚を前にしてもNo.96は落ち着いている。
「ふん、いくらモンスターを召喚しようが、オレのブラック・ミストの前には・・・」
「さっきのステータス表示を見ていなかったのかい?ウラヌスはチューナーモンスターだよ?」
「何だと!?」
「どうやら気付いたようだね。僕がこの後ヴィーナスの効果で《神聖なる球体》三体を特殊召喚してその内の二体で《ガチガチガンテツ》をエクシーズ召喚。さらにヴィーナスとウラヌスで《スクラップ・ドラゴン》をシンクロ召喚して、その効果で余った《神聖なる球体》とブラック・ミストを破壊すれば、ガンテツの効果で攻撃力の上がった《スクラップ・ドラゴン》のダイレクトアタックが君に直撃するというわけだ」
だが、これに対するNo.96の反応は意外なものだった。
「クックックック、ヒャーッハッハッハッハッハッハ!!」
「何がおかしいのかな?」
「どうやらお前は知らないようだな。説明が敗けフラグだということを!!永続罠発動!《エクシーズ・トライバル》!」
「ねぇ千鳥ちゃん。《エクシーズ・トライバル》って?」
「《エクシーズ・トライバル》は自分のエクシーズモンスターを守るためのカード。エクシーズモンスターはカード効果では破壊されなくなるし、戦闘を行なった相手モンスターは破壊される。代わりにエクシーズ素材が2つ以上ないとこの効果を受けないんだけどね」
しかし・・・、
「フッフッフッフ・・・・」
フユの反応はこれまた『笑い』だった。
「何がおかしい?」
「フッ、君は僕の策に嵌った!」
「何ィッ!?」
「策は二重三重に張り巡らせておくものだよ!――僕は《死の代行者 ウラヌス》の効果発動!デッキの《代行者》一体を墓地に送り、そのモンスターと同じレベルになる!僕は《奇跡の代行者 ジュピター》を墓地に送ってウラヌスのレベルを4にする!」
「レベル変換能力だとぉ!?」
死の代行者 ウラヌス 星5→4
「シンクロ召喚の前にエクシーズ召喚といこうか。ヴィーナスの効果を発動!ライフを1000払って、デッキから《神聖なる球体》二体を特殊召喚!」
神聖なる球体 星2 光 天使族 攻500/守500
「レベル2の《神聖なる球体》二体でオーバーレイ!―――二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ、《ガチガチガンテツ》!」
ガチガチガンテツ ランク2 地 岩石族 攻500→900/守1800→2200
創造の代行者 ヴィーナス 攻1600→2000/守0→400
死の代行者 ウラヌス 攻2200→2600/守1200→1600
「さぁ、今度はシンクロ召喚だ!レベル3の《創造の代行者 ヴィーナス》に、レベル4になった《死の代行者 ウラヌス》をチューニング!―――清廉なる花園に芽吹き孤高の薔薇よ。蒼き月の雫を得てここに開花せよ!《月華竜 ブラック・ローズ》!」
ケイトの玄翼竜と同じく、《ブラック・ローズ・ドラゴン》と似た姿と同じ攻守を持つが、その属性と効果は大きく異なっている。
月華竜 ブラック・ローズ 星7 光 ドラゴン族 攻2400→2800/守1800→2200
「ブラック・ローズの効果発動!このモンスターが特殊召喚に成功した時、相手の特殊召喚されたモンスター一体を手札に戻すことができる!退華の叙事歌(ローズ・バラード)!」
ブラック・ミストはバラの花びらが舞う渦に飲み込まれた。
「バウンス効果かよ・・・!!」
「ああ、それと。君がレベル5以上のモンスターを特殊召喚してもこの効果が発動するから。と言っても、君のデッキ、大体のモンスターがレベル2だろうけど」
相手のフィールドがガラ空き同然だからこその余裕である。
「バトル!《月華竜 ブラック・ローズ》でダイレクトアタック!散華の鎮魂歌(ローズ・レクイエム)!」
「グアアアッ!!」
No.96 ブラック・ミスト LP8000→LP5200
「僕はバトルフェイズを終了してメインフェイズ2に移る。そして永続魔法《補給部隊》を発動!このカードは1ターンに一度、僕のモンスターが破壊された時カードを一枚ドローできる効果を持つ!」
「チマチマしたカード使いやがって」
「ペンデュラム召喚は手札消費が激しいからね。――それと、エンドフェイズ、その永続罠は後々厄介になる可能性があるから破壊させてもらうよ。《フーコーの魔砲石》のペンデュラム効果発動!このカードを発動したターンのエンドフェイズに、相手フィールドの表側表示の魔法・罠一枚を破壊する!」
《フーコーの魔砲石》は腕のキャノン砲を構えると、《エクシーズ・トライバル》を撃ち抜いた。
これでNo.96は完全に丸裸の状態である。(最初から全裸とか言わないで)
「クッ・・・!」
「さぁ、お楽しみはこれからだ」
「いやアンタが言うとなんか違う意味にしか取れないんだけど!!」
P召喚が普及してもうそろそろ一年になりますね。こっちの主人公もどこぞの新社長が如く色んな召喚法を使ってますが、デッキ柄不向きなのでフユが儀式や融合を使うことはないと思います。
次回はこのダメ主人公がさらにダメな方向へアクセラレーションしていきます。