遊戯王 スノーホワイト/ブラック   作:xxxg

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第六十四話 「今回の長編、意外と話数少なかった」

 フユら一行は既に教会をあとにしていた。

 

「そう言えば、元の世界に帰るのは明日だったね」

 

 フユが傍らにいたカオス・ソルジャーに訊ねた。

 

「それなんですが・・・」

 

 カオス・ソルジャーは申し訳なさそうな顔をしている。

 

「明日は明日でも、明朝なんですよ」

「ならこの世界を満喫できるのも今日ぐらいか」

 

 英雄が反応した。

 

「それはいいんだけどよー」

 

 若干ケイトが不機嫌な声を上げる。

 

「なんでオレがこの二人担いでんだよ?」

 

 ケイトは秋人と少女を肩に担いでいた。

 

「しょうがないじゃない。あのまま放っておくのも後味悪いでしょ?」

「それに君だってこっち来る時千鳥と英雄を担いでアカデミア走り回ってたんだから、別にいいじゃないか。あと重いし」

「女子に言うかそれ?」

 

 一応こちらでの戦いは全て終わったおかげか、皆明るい会話をしているが、この主従だけは違った。

 

「エアトス、あの声の主が誰か分かるか?」

「申し訳ありません。私も彼女が黒幕と思っていましたので、何も・・・・」

「そうか」

「マスター、機嫌が悪いようですが?」

「オレにこれ以上言わせるな」

「・・・・はい」

 

 二人のやり取りを見ていたフユは軽くため息をつくと、少し明るい口調で言った。

 

「それより、これからどうする?まず二人を病院に連れて行くとして、その後」

 

 これに他の面子がシンキングタイムに入ると、最初に提案をしたのは英雄だ。

 

「折角の最後の一晩なんだ。パーッとやろうぜ、パーッと!!」

「さんせーい!!」

 

 セームベルもそれに同意した。

 

「そうだな。特にオレら、結構ハードな旅だったし。いいよな?零士」

「好きにしろ」

「私がお金払わないなら別にいいけど」

 

 三人も特に反対意見は無し。約一名を除いて。

 

「・・・・・・・・・」

 

 春だ。秋人が倒れて以降、元気がない。それでもフユに声援を送ってはくれたのだが。

 

(・・・やっぱり、春さん元気ないな)

 

 

 

「――――で?なんで俺んちでどんちゃん騒ぎしてんだよおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!?」

 

 数時間後、秋人と少女を病院に連れて行った後、一行は最初に訪れた《カオス・ソルジャー》の住むマンションの一室に来ていた。しかも彼ら(一部)は部屋に入るなりテレビ点けーの、冷蔵庫物色しーのと好き放題やっていた。

 

「ホント何なんだよお前らぁ!人が○ンハンの4Gに備えて4で感覚取り戻そうとしてた時に、祝勝会!?他所でやれよ!!」

「いやぁ、マドルチェの工場とかも考えたんですけど、病院からだとこっちのほうが近くて・・・」

 

 などと弁明するフユなのだが、最初に冷蔵庫を物色し始めたのはコイツである。

 さらには英雄が部屋の入り口の方から顔を出した。しかも手には円盤状の黒い箱が。

 

「おーい!出前で頼んでおいた寿司が来たぞー!」

「出前!?何お前ら、いつ頼んだの!?そして誰が払うの!?俺か!?俺なのか!?」

 

 つっこみまくる《カオス・ソルジャー》の肩に手を置いたのは、カオス・ソルジャー(開闢の方)。

 

「すみません。私も、今回の長旅でもう懐が・・・」

「やっぱり俺かーい!!大体俺お前らの敵だったんだぞ!なんで俺が払わなきゃならないんだよ!?」

「敗者が勝者に搾取されるのは、戦いの歴史においてごく自然なことだ」

「なんだよそれ!?フォローのつもり!?全然フォローにも何にもなってねぇよ!!」

「ヤレヤレしょうがないな。セームベル、よろしく」

「はーい!」

 

 返事をすると、セームベルは《カオス・ソルジャー》に寄っていった。目をウルウルさせて。

 

「おねがい・・・・・・」

「・・・・はい」

 

 瞬殺である。

 

ピンポーン

 

 直後チャイムが鳴った。

 

「お、注文しといたピザが来たか?」

 

 今度はケイトが玄関の方へ走っていった。

 

「え?ピザまで頼んだの?俺の分ある?」

 

 などと《カオス・ソルジャー》までその気になってきて、いよいよヒートアップ。

 

「・・・・・・・・・」

 

 しかし、未だ春は意気消沈。少し離れたソファに一人座っていた。

 

「どうしたんです、春さん。全然元気ないですよ?」

 

 その隣にフユが腰掛けた。

 

「私が・・・、私が自分がやりたいようにやった方が楽しいなんて勝手なこと言ったから、先輩が・・・・」

(そういうことだったのか・・・)

「僕は春さんの言った事、正しいと思いますよ。それに、似たような事言った零士だっていつも通りの仏頂面なんですから」

「おい」

 

 零士が軽いツッコミを入れたところで、ケイトが戻ってきた。

 

「おーい、ピザは届いてなかったけど・・・・・」

 

 もったいぶったように間を貯めるケイト。

 

「先パイが届いたぞー」

 

「やぁ皆、心配をかけたな」

 

 秋人の突然の来訪に皆どよめく。

 

「うおお!?秋人先輩、もう大丈夫なんですか!?」

「ああ。まだ所々痛むが、大事無いよ」

「ふん。生きていたか」

「ま、しぶとくな」

 

 悪態をつく零士だったが、少しだけ表情が和らいだように見えた。

 

「ほら。秋人先輩もこうして無事戻ってきたことですし、春さんも元気出してくださいよ」

「―――――――うん!」

(ああ〜、やっぱり春さんの笑顔は癒される〜)

 

 明るい空気が充満してくる中、まだ一人だけ悶々としている者がいた。千鳥だ。

 

(フユは春といい感じになるし、《カオス・ソルジャー》さんがツッコミ入れまくるから私の仕事減るし。・・・いやこういうのは減ってくれていいんだけど!何よりフユは春といい感じになるし・・・・・。何とか私にもいい意味でスポットライトを・・・・・)

 

 なんて考えていると、ベランダの窓からコンコンと音がした。何事かと思ってカーテンを開けると、そこには《忍者マスター HANZO》が立っていた。手にはピザが入っていると思われる箱をのせている。

 

「チーッス。三河屋でーす」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 千鳥は肺一杯に空気を吸い込んだ。

 

 

「何か色々おかしいだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

 

 

 

 ―――――翌朝。

 一行は街中にあるどこかの広場にやってきていた。とうとう元の世界に帰る時が来たのだ。

 

「やっと帰れるんだな」

「はい、英雄様。少々時間は過ぎていると思いますが、皆様がここに来た時と同じ場所、同じ日に戻すことができます」

「それにしても不思議よね。この世界には何日もいたのに、帰ったらほとんど時間が経ってないなんて」

 

「ん?」

 

 不意にケイトは背後に視線を送った。

 

「どうしたのケイトちゃん?」

「ん〜・・・・。いや、気のせいだな」

 

「秋人、あの女はどうなった?」

「ああ。彼女もすぐに回復するそうだ」

「そうか」

 

「グスッ、お兄ちゃん・・・。ふえぇ・・・・・」

 

 泣き出す一歩手前のセームベルの頭を、フユは優しく撫でた。

 

「大丈夫だよ。こうやって触れることはできないけど、またすぐに会えるさ。だって僕達は、繋がっているんだから」

「うん・・・。ところでお兄ちゃん。なんで鼻から血が出てるの?」

「いや何かさっきの台詞意味合いによってはとんでもないことになるから」

「カオス・ソルジャーさん。この世界にも警察ってあるのかしら?」

「もう手遅れです」

 

 呆れ顔で言いながら、カオス・ソルジャーは剣を引き抜いた。

 

「はああっ!!」

 

 そしてここに来る時と同様、気合の掛け声とともに空を斬った。すると空間が裂け、大きな穴となった。

 

「こちらをお通りください」

「それでは皆、帰るとしよう。俺達の世界へ」

 

 そう言うと秋人が先頭をきって穴の中に入った。

 

「グッバイ!精霊世界!!」

 

 次いでケイトが。

 

「よーし皆!ケイトに続け!」

「アイアイサー!」

 

 さらに英雄、春。

 

「必ず戻ってくるぞ、精霊世界。復讐を果たすまで、何度でもな」

 

 零士もクールに言い残す。

 

「じゃ、私達も行くわよ、フユ」

「ああ」

 

 フユと千鳥は同時に入った。だがフユは去り際、左の親指を立て、肩の高さまで上げていた。

 

「いや王様の最期のマネせんでいいわ!!」

 

 

 

 アカデミアの廃校舎奥。しばらく閉じていた異世界へと続く穴が、また出現した。そしてその中から秋人、ケイト、英雄、春、零士、千鳥、フユの七人が出てくる。

 

「どうやら今回は大落下しなくて済んだみたいだね。そもそも年末じゃないし」

 

「皆、お帰り」

 

 ずっとスタンバッていたのか、校長が立っていた。

 

「よかったよ。君達が無事帰ってきてくれて」

「ま、全員が全員無傷というわけではないですがね」

「それよか校長、ずっとここにいたのかよ?仕事とかねぇわけ?」

「え゛?」

「確かにタイミングが良すぎる気がするな」

「そ、そそ、そんなことないよ〜!君達が行った後、一旦本校舎に戻って、様子を見に来たら偶然・・・・」

「あ、見て見てー。空き教室に漫画置いてあるよー」

「あ゛!!」

 

 確かに机の上に漫画が山のように積まれていた。

 

「だ、誰が置いてったのかな〜?一応言っておくけど、僕は読んでないからね。時間潰すために読んだりとか決して・・・・」

 

 弁解する校長をよそに、フユはその漫画の山を見ながら訪ねた。

 

「校長先生。『吉原炎上篇』って何巻でしたっけ?」

「ああ、それなら二十五巻と二十六巻だよ。確か、左側の山の上の方に・・・・・ハッ」

「・・・・読んでたんですね」

「職務怠慢だな」

「そ、それにしても君達が今日中に帰ってきてくれて良かったよ。明日だったら結構不味い事になってたから」

 

 明らかに話題を逸らそうとしている。

 

「え?今日何かありましたっけ?」

 

 しかし英雄は見事に引っかかった。

 

「いや、今日じゃなくて明日。皆覚えてないの?明日から中間試験だよ」

 

 

「「「・・・・・・・・・・・・ええええええええええええええ!!!?」」」

 

 

 ケイト、英雄、春の絶叫が響いた。

 

 

 

 

 

次回予告

 

フユ「精霊世界から帰ってきたら、なんと明日は中間テスト!その上ケイトに英雄に春さんはテスト勉強もしてなかった!?皆で勉強会をすることになったんだけど、それがまたカオスなことに。そしてデュエルのテスト内容も・・・?果たして千鳥の喉は持つのか!?次回、遊戯王スノーホワイト/ブラック『テストなんて闇の炎に抱かれて消えろ』。お楽しみに!」

 

 




 というわけで『こんな精霊世界は嫌だ編』、これにて終了となります。ついでにご覧の通り次回予告も付くようになります。
 ちなみに次回からは新章、『非日常的日常編その1』がスタートです。
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