遊戯王 スノーホワイト/ブラック   作:xxxg

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第八話 「正直今時廃校舎とか残ってんの?」

 フユたちの通っているデュエルアカデミアには、最近ある怪談話が流行っていた。

 七不思議というわけではなく、一つしかないのだが、実際に体験したという人が多く、話題となっていた。ちなみにこんな話。

 

 学校の外れにある廃校舎から、夜な夜な少女の泣き声が聞こえてくる。

 それはかつてここで隠れんぼをして遊んでいた少女の一人が誰にも見つけてもらえないまま死んでしまい、霊となって未だにさまよい続けている・・・・・。

 

 というものだ。

 で、今回そんな恐怖体験ツアーを行うのが、フユと千鳥の二人である。フユが人から本当に少女の霊が出るのか見て来て欲しいと頼まれたので毎度のごとくあっさりOKし、面白そうだからという理由であの手この手を使って千鳥も連れて行くことにしたのだった。

 

「ちょっと、ホントに大丈夫なんでしょうね?」

 

 千鳥がおっかなびっくり聞いてくる。恐いのは結構苦手なようだ。

 

「まあ、大丈夫でしょ」

 

 フユは笑いながら答えた。

 今長い廊下をフユが懐中電灯を持ちながら歩き、千鳥がその一歩後ろを歩いている。

 そして会話でもして恐怖を和らげようと思ったのか、千鳥が先日から気になっていたことを聞いてみた。

 

「ねえ、そういえばこの間の零士とのデュエルで、最後のターンアンタ急にキョロキョロしたり独り言呟いたり、何があったの?」

「ああ、アレ?突然話しかけられたからね」

「誰に?」

「《カオス・ソルジャー ―開闢の使者―》」

 

 隠さずに言った。

 

「・・・コワ(別の意味で)」

 

 まあ、そうなるだろうね。

 

「・・・・・フユ」

「ん?」

「アンタがどんなになっても、私は変わらず接し続けてあげるから」

「??う、うん」

 

 フユには全く意味が解らなかった。

 

 

 

 彼らはどこかの教室に入っていた。もうボロボロでかつてそこがどんな教室だったのかは判別がつかなくなっていた。

 

「この辺で泣き声を聞いたって人が多いらしいよ」

「ちょっ、マジ勘弁してってば!!」

 

 そしたら彼女の近くでガタッ、という物音がした。

 

「キャアア!!」

「何かいるかもしれない!後ろに下がって!」

 

 そうは言うが実際はフユが足元の椅子を蹴っ飛ばしただけである。(それもわざと)

 

「おおおおい!!!」

 

 千鳥がグイとフユの胸ぐらを掴んだ。

 

「ど、どうしたの?」

「上の地の文読んだわよ!!ふざけんなよコラァ!!!」

「キャッ!」

「いや、だって面白そうだったから・・・」

「面白いってどういう・・・・、」

 

 そこで千鳥の言葉が途切れた。

 

「今の悲鳴って、アンタじゃない、わよね?」

「う、ん・・・・・」

 

 ウ、ウウ、ウッウッ・・・・

 

 二人の顔から血の気が引く。

 

「さっきの泣き声、もしかして・・・・、」

 

 千鳥の声はもう泣き出す寸前のものだ。

 

「・・・・・・・・・」

 

フユは泣き声のする方にライトを当てる。

 

 いた。

 

 まだ幼い少女が泣いていた。

 茶色い髪のショートツインテール、赤い頭巾、水色のミニスカートに白いブーツ、そしてベルの付いた白い尻尾のようなアクセサリー。

 その容姿に二人は見覚えがあった。

 

「あの娘、《召喚師セームベル》のカッコしてない?」

 

 千鳥が恐る恐る聞いてきた。

 

「そうみたいだね・・・」

(カオス・ソルジャー、あの娘ってもしかして・・・?)

(はい、間違いなく本物の《召喚師セームベル》です)

 

 別に理由はなかったが、千鳥に聞かれないように心の声で会話をした。

フユは少女に歩み寄る。

 

「お嬢ちゃん、どうして泣いてるの?」

 

 フユは彼女の前にかがみ込み、笑顔で聞いてみた。

 セームベルはしばらく泣いていたが、やがて少しずつ喋りだした。

 

「ひ、一人ぼっちが、怖かったのと、」

 

 そう言うと千鳥を指差した。

 

「そのお姉ちゃんが、急に怒り出したから・・・」

「「・・・・・うん、ゴメン」」

 

 千鳥も、原因を作ったフユも申し訳なく思った。

 

 

 

 どうしてこんなところにいるの?というフユの問いにセームベルは一瞬口ごもったが、ポツリポツリと答え始めた。

 彼女の話によるとこういうことだ。

 

 彼女たち、俗にモンスターの精霊と呼ばれる存在の彼らは、この世界とは異なる世界で生活しているそうだ。しかし彼女はそこでの生活に不満があった。

 一つは彼女自身、すなわち《召喚師セームベル》があまりデュエルに使われない、使われたとしてもネタや遊びだけということ。そしてもう一つ、全く同じタイミングで現れた《久遠の魔術師ミラ》の方が向こうの世界でも、こちらの世界でもモテるということだ。

 こんなつまんない世界なら出てってやるもん!と、半ば家出感覚でこちらの世界にやって来た、とのことだ。

 が、この世界に来るまでは良かったものの、行くあてもなく、帰る方法もわからない。そして夜は暗闇の恐怖から泣き明かしていたそうだ。

 

 

 

(・・・こういう事ってよくあることなの?)

(いえ、あまりこういうケースは聞いたことが・・・。ですが、それ故にお二人にも彼女の姿や声が確認できるのでしょう。ですが、触れることはできないようです)

 

 フユとカオス・ソルジャーが話している中、

 

「へ、へえ~」

 

千鳥にはただのイタイ女の子にしか見えなかったようだ。

 

「そ、そういえばずっとここにいるの?お腹とかすくんじゃない?お父さんやお母さんは?」

「モンスターにはね、お父さんとかお母さんのいる子もいない子もいるの。あたしはいない方」

 

 話しているうちにセームベルも幾分か打ち解けてきたようだ。

 

「それとね、モンスターは皆怪我とかビョーキにはなるけど死んじゃうことは滅多にないんだって。モンスターが死ぬのは・・・・・」

 

 そこまで言った時、不意に声が聞こえた。それはさっきの泣き声とは全くの別物。

 

「・・・・・ヤル。・・・ッテヤル。・・・ヲ、・・・ッテヤル」

 

 徐々にその声は近づいてくる。

 

「もう!何なのよ!?次から次へと!!」

 

 千鳥が三度目の恐怖体験で喚く一方、セームベルはフユの方へ駆け寄ってきた。

 

「お兄ちゃん、助けて!!」

 

 涙が流れ落ちていた。

 

「え?どういう・・・・」

 

 その時今までの声がはっきりと聞こえた。

 

「罪人ヲ、狩ッテヤル」

 

 暗闇から鎌を振りかざした幽霊みたいなのが襲いかかってきた。

 

「キャアアアアアアアアア!!!何よアレ!!?何よアレ!!!?」

 

 千鳥、大絶叫。

 

(まずい!あれは・・・!―――主、私を召喚してください!!)

(え?)

(早く!!)

(わ、分かった!)

「光臨せよ、《カオス・ソルジャー ―開闢の使者―》!!」

「狩ッテヤルゥゥゥ!!」

 

 その幽霊はセームベルに向けて鎌を振り下ろした。

 

ガキィン!!

 

 が、すんでの所でカオス・ソルジャーの剣が受け止める。

 

「カオス・ソルジャー、ソイツは?」

「この者は《カードを狩る死神》。我々モンスターの精霊が死ぬ時の一つは、この者に討たれた時です」

 

 フユとカオス・ソルジャーが普通に会話しているのを聞いて、何かもう色々ありすぎて引きつった笑いを浮かべる千鳥。

 

「ハ、ハハ・・・。さっきアンタが言ってた事、信じるわ・・・・・」

 

 カオス・ソルジャーが死神に問う。

 

「この娘に何か用ですか?」

「コヤツハ、異端者ダ。我等ノ世界カラ外レ、コノ世界ノ人間ノカードニモナラナイ、罪人ダ。罪人ハ我ガ狩ルノミ!」

「そんな事はさせない!!」

 

 フユが珍しく怒った。

 

「あなたに誰かの生き死にを決める権利なんてない!!」

「フン、小賢シイ人間ガ。・・・イイダロウ」

 

 そう言うと死神は鎌を収めた。

 

「ナラバ、デュエルデ勝負ダ」

「デュエルで?」

「ソウダ。我ラノ世界デハデュエルコソ、唯一二シテ、絶対ノ掟!貴様ガ勝ッタラ見逃シテヤロウ。ダガ我ガ勝ッタラ・・・、」

 

 そこで間を空けた。

 

「コノ場二イル者全テヲ狩ッテヤル!」

「なっ!?」

「拒否ハ許サヌ」

 

 

 フユは少し考え込んでから口を開いた。

「・・・分かりました。このデュエル、受けて立ちます」

「あ、主!」

 

 今回は千鳥ではなくカオス・ソルジャーが口を挟んできた。

 

「本当に分かっていらっしゃるのですか!?貴方様が負ければ、千鳥様まで・・・」

 

 そこまで言ったところでフユに制された。

 

「僕は君を信じる。だから、君も僕を信じて欲しい」

 

 二人はしばし互いの目を見て沈黙していたが、やがて

 

「主を信じずして何が剣でございましょうか・・・」

 

そう言ってカオス・ソルジャーは消えていった。

 

「―――カオス・ソルジャー・・・」

 

 フユは少し笑った。

 

「用ハ済ンダカ?」

 

 そう言った死神を真剣な顔つきで見据える。

 

「・・・はい」

(このデュエル、敗けるわけにはいかない!)

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

フユ LP8000

 

 

カードを狩る死神(以下略:死神) LP8000

 

 

「我ノターン、ドロー!」

「千鳥、一ついいかな?」

 

 フユは真剣な顔つきのまま近くでセームベルの傍にいる千鳥に話しかけた。

 

「ど、どうしたのよ?まさか、何かあったの!?」

「うん。この小説が始まってはや八話。でも、僕は今だに先攻を取ったことがない・・・」

「今はいいでしょ、そんなこと!デュエル始まるまでは結構シリアスでいい感じだったのに、始まった途端いつもの調子かよ!!」

 

 そんな二人に構わず、死神はどんどん続ける。

 

「我ハ、モンスターヲ一体セット。サラニカードヲ四枚セットシ、ターン終了」

 

 

死神 LP8000 手札1

モンスター/リバース×1

魔法・罠/リバース×4

 

 

「いきなり伏せカード四枚!?」

(でも、今の僕の手札にあれらのカードを破壊するカードはない)

「僕のターン、ドロー!」

「コノ瞬間、リバースカード、三枚ヲ発動!!―――トラップカード、《ギフトカード》!!」

「《ギフトカード》!?」

(なら相手のデッキはキュアバーンか何かの類か・・・?もし9000もダメージを受けたら何もできずに終わる・・・!)

 

 

フユ LP8000→LP17000

 

 

「・・・え?」

「ドウシタ?貴様ノターンダゾ」

(何もなかった・・・?一体何が狙いなんだ・・・?)

「ぼ、僕は《創造の代行者 ヴィーナス》を召喚!」

 

 

創造の代行者 ヴィーナス 星3 光 天使族 攻1600/守0

 

 

「フユの奴、やる気?あの何の面白みもない代行天使の典型パターンの一つを・・・・・」

 

 前回の事があるのでフユには聞こえないように声を抑えた千鳥。

 

「ヴィーナスの効果発動!合計で1000ポイントのライフを支払い、《神聖なる球体》を二体、特殊召喚!」

「折角クレテヤッタライフヲ・・・・・」

 

 

フユ LP17000→LP16000

 

 

神聖なる球体 星2 光 天使族 攻500/守500

 

 

「《神聖なる球体》二体で、オーバーレイ!―――レベル2のモンスター二体で、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れよ、《ガチガチガンテツ》!!」

 

 代行天使の割にはこれでまだ二度目の登場。

 

 

ガチガチガンテツ ランク2 地 岩石族 攻500/守1800

 

 

「《ガチガチガンテツ》の効果により、このカードのエクシーズ素材一つにつき、僕のモンスターの攻撃力と守備力は200ポイントアップする!」

 

 

創造の代行者 ヴィーナス 攻1600→2000/守0→400

 

 

ガチガチガンテツ 攻500→900/守1800→2200

 

 

「これでヴィーナスの攻撃力は2000。そう簡単には防げはしないはず。《創造の代行者 ヴィーナス》で伏せモンスターに攻撃!セイントソウル!!」

 

 ヴィーナスは自分の周囲を浮遊している球の一つを掴むと、伏せカードに向けてメジャーリーガー並の剛速球をお見舞いした。

 

「何で投げるのよ!?」

 

 そしていつものツッコミも。

 

「伏セモンスターハ、《魂を削る死霊》ダ。戦闘デハ、破壊サレナイ・・・」

 

 

魂を削る死霊 星3 闇 アンデット族 攻300/守200

 

 

 ヴィーナスのぶん投げた球は死霊の体をすり抜けてしまう。

 

「クソ・・・!僕はカードを一枚セットして、ターン終了」

 

 

フユ LP16000 手札4

モンスター/《創造の代行者 ヴィーナス》《ガチガチガンテツ》

魔法・罠/リバース×1

 

 

「我ノターン、ドロー!我ハ魔法カード、《ソウルテイカー》ヲ発動!《創造の代行者 ヴィーナス》ヲ破壊シ、貴様ハ1000ポイントノライフヲ回復スル!」

 

 ヴィーナスの胸元辺りから魂のようなものが抜き取られる。

 

 

フユ LP16000→LP17000

 

 

「またライフ回復・・・・」

(何だ・・・?一体何を企んでいるんだ・・・・・!?)

 

 フユに言い知れない不安がよぎってきた。

 




 ちょっとホラーな第八話でした。と言ってもなんやかんやでギャグ色に染まりましたが。
 今回セームベルがぼっちが寂しくて夜な夜な泣いていたみたいなことが言われていますが、「だったら昼間のうちにそこ出ればいいじゃんwww」とか思った読者もいるかもしれません。しかしそれができない理由が後の展開でそこそこ重要なファクターになったりします。
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