高度に発達したAIは小説家と区別がつかない 作:藍野策輪
高橋司(たかはしつかさ)は、幼い頃から本が好きだった。静かな図書館で過ごす時間が何よりも好きで、いつか図書館司書として働くことを夢見ていた。大学では図書館情報学を専攻し、卒業後は図書館での仕事に就くつもりだった。
しかし、2025年の春、世間ではAIの急速な発展が話題となっていた。AIがさまざまな分野で人間を超える能力を見せ始め、特に情報管理やデータベースの運用において、その優位性が注目されていた。
ある日、司は両親と夕食を共にしていた。食卓にはいつものように家庭料理が並んでいたが、その日の話題はいつもと違って重かった。
「司、最近ニュースで見たんだけど、AIがどんどん進化してるって話よね。図書館司書の仕事もAIに取って代わられるんじゃないかって心配なの。」
母親の言葉に、司は一瞬言葉を失った。確かに、自分の夢がAIの進化によって脅かされているという不安は、頭の片隅に常にあった。しかし、それを親から指摘されることで、その不安は現実のものとして胸に迫った。
「母さん、確かにAIはすごいけど、図書館司書には人間の手でしかできないこともたくさんあるんだ。利用者の相談に乗ったり、本の選び方を教えたりするのは、機械にはできないと思う。」
司は必死に自分の考えを伝えようとしたが、母親の表情は曇ったままだった。父親も同じく心配そうな顔で話に加わった。
「司、君の言うこともわかるよ。でも、現実問題としてAIが仕事を奪っていくのは避けられない。もし将来仕事がなくなったらどうするんだ?」
その言葉に、司の胸はさらに重くなった。自分が夢見ていた職業が、もしかしたら存在しなくなるかもしれないという現実が、彼を圧倒していた。
その夜、司は自室で一人考え込んだ。デスクには大学の課題が山積みになっていたが、手につかなかった。彼はパソコンを開き、「図書館司書 AI 影響」というキーワードで検索を始めた。
画面には次々と記事が表示され、どれもがAIの導入による図書館業務の効率化や、司書の役割の変化について書かれていた。AIは膨大なデータを瞬時に検索し、利用者に最適な情報を提供する能力を持っている。さらに、自動化されたシステムが書籍の整理や貸し出し管理を行い、人間の手をほとんど必要としない図書館の実現も進んでいるという。
司はその記事を読みながら、胸の中に冷たいものが広がるのを感じた。自分が愛する図書館という場所が、変わり果ててしまうのではないかという恐怖に苛まれた。
「どうすればいいんだろう……」
司は呟き、手元のペンを握りしめた。自分の夢がAIによって閉ざされてしまうかもしれないという現実に直面し、彼は途方に暮れた。
翌日、大学の図書館でバイトをしている間も、その不安は頭から離れなかった。利用者の対応をしながらも、心の中では常にAIの影がちらついていた。
休憩時間に、司は図書館の一角にある窓際の席に座り、本を開いた。しかし、文字が目に入ってこなかった。代わりに、ふと隣の席に座っている学生たちの会話が耳に入ってきた。
「最近、AIの小説が話題になってるけど、本当に人間が書いたみたいだよね。将来は作家もAIに取って代わられるかもね。」
その言葉に、司はハッとした。彼の友人である綾辻文の顔が思い浮かんだ。彼女もまた、AIによる文学の変化に悩んでいるはずだ。司は自分だけがこの問題に直面しているわけではないことを思い出し、少しだけ心が軽くなった。
「みんなも頑張ってるんだ。僕も負けていられない。」
司はそう自分に言い聞かせ、再び本に目を落とした。彼の夢が閉ざされるかもしれないという不安は消えないが、それでも自分にできることを見つけるために、彼は前を向くことを決意した。