【完結】範馬刃牙 史上最強の義親子喧嘩   作:和尚我津

1 / 6
範馬刃牙のアニメ視聴→そういや片腕という個性がどうなったのかな?調べて烈海王の右腕移植を知る。片腕という個性、生まれず→ハァ?→俺が創造(つく)らなければならぬ(今ココ)



範馬刃牙 史上最強の義親子喧嘩

 都内某所。

 広大な敷地に建てられた純和風建築。

 現代において国内外問わず絶大な影響力を秘める翁、徳川光成の居城であった。

 

 その客間の一室にて二人の男が向かい合わせている。

 一人は家主である徳川光成本人。

 歳相応。くしゃくしゃの矮躯に関わらず、その体から溢れる気力は並みの人間を凌駕している。

 全身に転移するほどのガンを患っていたが、先日の()()()()()()()()()が特効薬になったのか寛解に至っていた。

 

 かたや老人に対面するは若い男。何も知らぬ者が見れば祖父と孫と思われるほど若い青年であった。

 成人を迎えたかどうかという青年だが、若さよりデカさが印象として先に来る。

 正座して小さくなっているはずなのに、その肉体が真に大きく、鍛え上げられているのが素人であっても分かる。

 身長190センチ弱。分厚い胸板。太い首。節くれだった手足。どこをとっても特徴的。

 しかし一際目を引くのは、何と言っても彼の右腕であろう。

 特徴的な右腕、というわけではない。どこを探そうが特徴などは見当たらない。

 

 当然だ。彼の右腕は存在しないのだから。

 

 本来なら腕が通されているだろう袖は、力なく垂れて床についている。

 

 片腕。隻腕。不揃腕。

 明らかに普通ではない。それは分かる。見れば分かる。

 では違和感があるのか? そう問われたら誰もが首を傾げることだろう。

 あまりに自然体。引け目も、負い目も、そこには存在しない。これこそが己の個性(オリジナル)であるのだと、世界に訴えかけてるかのようだ。

 

 青年の名は愚地克巳。

 現・神心会の館長であり、武神・愚地独歩の義息子。

 ピクルとの闘争の果てに右腕を失いつつも、それすら糧に新たなる道を模索する格闘家(グラップラー)であった。

 

「ふむ。今日は一体どういう要件で参ったのじゃ?」

 

 老人がぎょろりとした目で青年に問いかける。

 いつもは呼びつける側の光成であったが、今回は克巳から求められ設けた一席であった。

 

 予定になかった唐突な訪問とはいえ、老人が青年の要求を無碍にすることはあり得ない。

 徳川光成は力の信奉者。彼の価値基準はただ一つ、強さのみ。強者を何より尊び、優先するのがこの男だ。

 総理大臣と愚地克巳のアポイントが同時に発生したのなら、彼は迷うことなく後者と会うことを選択する。

 

 一泊置いて、青年は口を開く。

 

「徳川老は、かの範馬親子の喧嘩をご覧になられましたか?」

「当然じゃ! 砂っかぶりの最前列で、この目でしかと見届けたわいっ!」

「そういえばそうでした。最後にはテレビにも映っていましたね。誰が呼んだか『史上最強の親子喧嘩』だとか。全く……大したものです」

 

 克巳は感嘆するように、一つ息を吐く。

 

「力及ばずと知りながら立ち向かった刃牙さん。それを踏まえ迎え撃った勇次郎氏。勝てる勝てないではない。始まりは日常の中の些細な切っ掛けから。それが刃牙さんが求め、勇次郎氏が応じた親子喧嘩。規模こそはまさに史上最強。しかし……これが親子喧嘩。これぞ親子喧嘩。喧嘩でありながら会話。どこの家庭でも起こりうる普通の親子喧嘩でした。そしてこれは自分の偏見かもしれませんが、それは血の繋がった実の親子だからこそできる喧嘩です」

 

 少なくとも俺には、ちょっと難しい。

 克巳は続けて語った。

 

「俺はあくまで養子。義理の父(向こう)がどう思ってるかは分かりませんが、遠慮がどこかに入ってしまう。血縁というものに甘えることができないんです」

「……ふむ。そうか」

 

 光成は話半分に聞き流しながらキセルに火をつけた。

 強さを尊ぶと言えど、興味のない話に関心を向け続けるのは難しい。

 あの戦いの感想戦をするのならともかく、始まったのは義理の親子関係特有の、それこそ何処にでもありそうなありふれた(つまらない)身の上話。相手が克巳でなければ既に追い出していただろうほどに、老人からすれば些末な話であった。

 

「……だからこそ、この俺たちの関係だからこそ出来る喧嘩がある」

 

 煙を飲まんとした徳川の息が、止まった。

 

「俺たちは範馬親子のように血は繋がっていない。義理の父、義理の息子。しかして二人を繋ぐ()()がある」

 

 突き出された左手。

 血が滲むような激しい修行によって作り上げられた、空手家の手。

 

 退屈そうにしていた光成の顔は一転して、遊園地を前にした幼子のように輝き始めていた。

 

「あの素晴らしい親子喧嘩……一つだけ欠点がある。大きな大きな欠点が」

「欠点? なんじゃそれは?」

 

 史上最強の親子喧嘩。そう呼ぶに相応しきあの素晴らしい闘争。ケチを付ける要素などどこにもないだろう。

 老人の考えを否定するかのように、克巳は大きく首を横に振った。

 

「――親父越え。成長した子が偉大なる父を打倒し凌駕する。そのカタルシスが、あの喧嘩になかった」

「お、おおっ!」

 

 なるほど道理だ。範馬刃牙という少年は範馬勇次郎という()()()()に挑めるほどに強くなった。勇次郎から地上最強を名乗ることを勝ち取った。されど勇次郎という大きすぎる壁を打ち破ったとは到底言えない。

 

 親子喧嘩の本懐とは父を超えてこそ、倒してこそだと克巳は言い切った。

 

 光成は待つ。決定的な一言を。言葉にしていないだけで、確定した未来として訪れる闘争の開始を。

 

「無論、先ほども言ったように範馬家とウチでは事情が違う。だが俺も、いやだからこそ俺も――」

「――克巳ぃっっ!! 何がしたいか早う言わんかいっっ!!」

 

 焦らすような克巳の物言いに痺れを切らした光成の声が、屋敷を突き抜ける。

 怒声? 否。それは抑えきれず裡から漏れ出た欲望の声。

 

 早く、早く言ってくれ。金だろうが土地だろうが何だろうが、必要なものは全てこちらで手配するから、どうかその言葉を言ってくれ。

 言葉の裏に秘められた彼の欲望は、もはや懇願と言ってもいいだろう。

 

 堪えきれないと言わんばかりの気持ちを汲み取った克巳は、苦笑と共に決定的な一言を告げた。

 

 

「徳川老、愚地独歩と愚地克巳による()()()()()()()()()()……見たくありませんか?」

「~~~~見たいッッ!!!」

 

 天よ裂けろと言わんばかりの絶叫が、老人の興奮を世界に伝えていた。

 

 

 これより一時間足らずのうちに、関係各所および格闘家たちに通達が届く。

 内容は以下の通り。

 

 ――これより〇〇日後、地下闘技場にて、()()()()()()()()()()を開催する。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。