現代版 鬼滅の刃   作:ファイネス1

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魂の模倣

「何?『鬼殺隊』の正体が分かった?」

 

 警察組織の中でも「鬼」という異形に関する特殊な事案を扱う「02(オニ)課」に故あって配属された若手刑事、餅越 色音(もちごえ いろね)の困惑に、電話口からテンションの高い女性のキンキン声が響いた。

 

「はーい!『露払い』で仕留めた音無 無一郎と、先日鬼とは別件で死亡が確認されてそちらから回収させて頂いた胡蝶しのぶの遺体を解剖した結果―。

 あの『鬼殺隊』が、決して転生の類ではなく、ある科学技術で復活させられたことと判明しましたー!」

「佐々雪、何ですか?その科学技術は?」

「つまりは。

AIでーす。」

 

 

「つまり………そのAIを使った鬼殺隊復活を、少なく見積もって20年前から画策してたと?」

 

 餅超の報告を聞いた警視長の重苦しい口調と雰囲気は、単なる年齢や威厳といったものによるものではない。

 そのあまりの、元々「鬼」という超自然的な存在を扱う警察の暗部を以てしてもこの事実に秘められた事実に戦慄せざるを得なかったのだ。

 

「はい。

 彼等鬼殺隊の遺体を解析したところ、脳内にマイクロチップが埋められていて、そのチップには各々の鬼殺隊の人格データがプログラミングされていたのです。

 チップは非常に微小で、それこそ注射器で投入できます。

 ワクチン投与、予防接種などの名目で仕込むのも容易と。」

「それがある一定の条件で作動した結果、各々がプログラミングされた『鬼殺隊』としての記憶と人格データに脳内が侵されてしまった、と。」

「個人差が大きいですがその条件としては、彼らの周囲の環境が『ある程度』大正当時の状況であること。」

「その為に、彼らが生まれてから、いや、或いは生まれる以前から、その舞台を整えていた、と。」

「血統調査は勿論のこと、名づけ、容姿、家庭、及び学校における環境、配置。

 それらあらゆる面において、伝わっている鬼殺隊それぞれを思わせるように、周到な準備を込めていたようです。」

 

 話を聞いた警視長の顎から汗がぽたりと落ちた。

 

「要するに……『キメツ学園』という学園の入学や、そこでの縁や日々自体が……」

「はい、いわば彼等の人生そのものが、そのチップを仕込んだ組織のレールの上だったといえそうです。

 「科学者の鬼」佐々雪(ささゆき)は、こちらのマイクロチップのデータを解析し、その製作者、及び管理サーバーなどを突き止めるよう、警察(われわれ)に要請してきました。」

「……分かった。

 組織は、恐らく……」

「ええ、鬼の根絶を掲げるテロリズム思想、『鬼滅派』に属する者でしょう。」

「……全く。純粋な狂気ほど恐ろしいものはない。

 自らの理想の為に人の人生そのものをあっさりと道具にしてしまうとは。」

 

 

「そう、それが奴らの正体。」

 

 鬼の長である「政治家の鬼」香坂 稔(こうさか みのる)は、鬼きっての天才科学者の報告をスマホで受けていた。

 姿形はバリバリのキャリアウーマンといった所だ。

 

「それで、対抗策はあるの?」

「今の所熱、電波、衝撃などへのプロテクトは完璧!

 そもそも人体の、それも脳内深くにあることを考えると物理的には実質頭をかち割るしかありませーん!

 まあ、そうなると順序が逆なんですがーね!」

 

 上司、それも自分達の種族のトップに話しているにしては随分とふざけた印象の口調。

 しかし、これでも一応当人なりには『敬意』を表していることを知っている香坂は黙って続きを待つ。

 

「手っ取り早いのが開発元である組織や製作者突き止めることなんですがー……直観ですがそれはもう、無理でしょーね!」

「何故……」

「私には分かりまさあ。このプログラムは、自らの全身全霊を賭けた謂わば『遺言』に近いもの……恐らくぁ……

 なので最後の手段として、こっちで向こうの脳を破壊するウイルスプログラムを作るしかありゃーせん!

 この私にかかりゃー数ヶ月で出来ましょーが

問題はやはり向こうに接種させる方法でさーね。

 何とかそれまでそちらで持ちこたえてくだせーな。」

「………悪いけどここにいる『露払い』の生き残りたちはそんな方法では納得しそうにないわ。」

「そりゃあ………そうっすよね。

 あと一つ分かること。」

「何?」

「彼等に説得は無理ですよ―!

 プログラムに組み込まれている鬼殺隊の信念である鬼の撲滅。

 それは最重要事項としてインプットされて改変、改ざんは不可能になってんのよー!

 まあ、そんなんだから胡蝶カナエのチップが存在しないのも当然!

 鬼との共存なんかを芯に持つ彼女のパーソナルデータは、鬼殺隊に最も合わないからね!」

「………成程。何度か話し合い試みたり、不死川の弟の体を乗っ取らせて忠告を発し続けたが、一向に解決に至らないのも当然ね。

 ………今になっては無駄な努力だっわね。

 でも少なくともこちらにとっては余計な憂いが無くなった分、ましか。」

「御前さまー。

 どうかどうか、我々鬼の為にもよしなにー!」

「分かっている。

 あなたの尽力、決して無駄にはしないわ。」

 

 通話を終えた鬼の長は襖を空けて居並ぶ鬼達を見回す。

 皆、沈痛な面持ちだ。

 

「聞いた通り。

 彼女の力を信じて待てば、我々にも勝機が訪れるはずだけど……どう?」

 

 沈黙が、幾たび続いただろう。

 鬼の一人が、頭をもたげていった。

 

「俺の弟分と兄貴、あの日の次の日、映画観に行く約束してたんや。

 兄貴がおススメや言うたが俺にはちょい、古臭いヒーローもんで肌合うか微妙やったんやが……帰りにでもそのことぶちまけよ思て……

 ここで人任せにしよったら……あのつまらん映画の主人公よりつまらん男やな俺。」

「わしゃあ、あの日から悔いんかった日はないわい。

 水柱に目の前でなで斬りにさえ続ける同胞を、踏み荒らされる故郷を救えんかった儂自身の未熟さを。」

「この『音柱』うちに任してくれへんか?

 土足で京都に乗り込んでうちの可愛い子たち遊んでくれた彼には、たっぷりおもてなししたいんどす。」

 

 一見すると談笑や他愛ない独り言を口々に言いつつ、彼等の間で抑え込んでいた怒気や殺気がぐんぐん上昇していくのが見て取れた。

 

 『露払い』

 悪鬼滅殺を掲げて再結成された鬼殺隊が、関東の鬼との全面戦争に備え

東北、北海道、機内、四国など全国各地に派遣した最大戦力『柱』を伴った鬼狩り部隊は、その地方を根城にしていた鬼達を片っ端から殲滅していった。

 何とか九州には鬼側が先回りして被害を最小限に食い止め、担当の『柱』音透 無一郎を討つことに成功したものの、その他の地方では多くて2体程の鬼が生き延びた程度だった。

 止まらない。

 彼等を止められる術など、あるはずがない。

 

(それにしても、恐ろしい世になったわね。

 現世に、まがい物とはいえ、とうとう魂を復活させられる所まで来るなんて。

 本来鬼殺隊がこの令和の世に転生してくる何てこと、ありえないのよ。

 だって、彼等の本来の魂は、まだ……そうでしょ?教主様。)

 

十数年前。

 

 万世極楽教にて、鬼と人の世の安寧を担う『組織』の教育を、教団No2の「教主」撫野 霧掛(なでの きりがけ)が本日は座学で執り行っていた。

 艶やかな黒髪を靡かせ、傍目からは小学生にしか見えない教主が、中高生くらいの少年少女たちを前にしてすらすらと予定の時間を半分ほどを残して一通りの講義を終えると、その内容の興味深さにむしろ生徒達の方が次々に手を上げて質問してくる。

 

「教主様、それは本当ですか?」

「ん?何がだい?」

 

 にこやかに笑いかける教主に、指名された少女は皆が疑問に思うことを代表のように言った。

 

「鬼殺達の者達は、本当に死後地獄に行っているのですか?」

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