「わぁー!綺麗な町ー!」
「プラネテューヌみたいに近代的な街並みも悪くないけど…歴史ある街並みも風情があるなぁ」
馬車の窓から、目に映る光景に新鮮さを感じていたネプギア。その隣に座るドラグエフトも自分の住まう国とは異なる風景に関心を示している
「実はわたし、ルウィーに一度来てみたかったんだ。ありがと!お姉ちゃん!」
「ふっふっ〜ん、実はネプギアがそう思っているような気がしてさぁ〜いやぁ…やっぱり、わたしとネプギアは通じ合ってるねー!」
「ネプねぇは超能力でもあんの?てか、アニキが普通に他国に行くのって、珍しいよな……ラステイションの時はいーすんさんから逃げる為の口実だったけど、今回は自分から言い出したじゃん」
ドヤ顔で慎ましやかな胸を張るネプテューヌは抱き付いてきたネプギアを撫で、その姿に鋭い突っ込みを入れるドラグエフトは隣でノートパソコンと睨めっこ状態の兄に声を掛けた
「んあ?あー……今回はタートに呼び出されてな。気は進まねぇけど……偶にはやることやらにゃいかんだろ?神獣としては」
「タートさんに呼び出された……それも珍しいな。まぁ、俺としてはリラとキラに遊びに来いって言われてたから、願ったり叶ったりだけど」
「そうか…なら、良かったじゃねぇか……おん?なんだぁ?このプログラムはぁ……エグいくらいに昔のじゃねぇか…!あー…コイツは一から組み直した方が早ェかもな……」
会話に受け答えしながらも、キーボードを叩く手を止めないドラグエスト。その姿は仕事よりも娯楽を優先する普段とは裏腹に知性が漂っていた
「ねぇ、ジェヴォ?気のせいよね?私にはエスが仕事してるように見えるんだけど………どうなってるの?これは」
「考えられる選択肢は二つだ、頭を打ったか…もしくは熱があるかだ」
「それよ」
信じ難い光景に瞬きを繰り返すノワール、それに的外れな選択肢を用意するジェヴォーダン。二人の中に仕事をするドラグエストという枠組みは存在していなかった
「いやいや、わたしの
「流石は俺の
「や〜ん!甘やかし上手だなぁー!エスはー!」
「はっはっはっ、ぼっちとは違うのだよ!ぼっちとは!」
「「誰がぼっちだ!!」」
唯一の理解者であるネプテューヌを甘やかしながら、ラステイション組を弄り倒す姿は何時もと変わらないが、その手は未だに動き続けていた
「ねぇ、ドラグエフト。ドラグエストさんって、そんなにプログラミングが得意なの?」
「得意というか……本業みたいな感じだな。今のプラネテューヌに使われてる技術の大半がアニキのプログラミング技術の応用なんだよ」
「うぇ?マジかよー!それってすごくね?何気に」
普段の彼から想像もつかないスペックの高さをユニに問われ、答えを返すドラグエフトにジェスーダンは驚きが口から自然に溢れた
「すごいなんかで片付けちゃダメだよ!ジェスくん!!誰にも真似出来ないお兄さんだけのアイデンティティなんだよ!ねっ?エフくん!」
「ギアが誇らしそうに言うことではないけどな…」
理由は皆無であるが、誇らしそうに語るネプギア。彼女は普段は大人しいが姉や兄貴分の話になると、途端に饒舌なったりする
「元気かなー、ロムちゃんにラムちゃん」
「元気だと思うよ?というか、リラとキラと一緒にイタズラしてるのが目に浮かぶ…」
「「「ああ……確かに……」」」
「なぁなぁ、リラ!」
「どうしたの…キラ」
ルウィーの教会の一室、本を読んでいた黒髪緑眼の少年に声を掛けたのは、彼と似た容姿ながら活発なイメージが印象的な少年。彼等の名はリラとキラ、ルウィーの神獣であるタートの弟たちにして、未来を担う双子の幼獣だ
「今日さ、エフがジェスたちと遊びにくるんだってよ!」
「へー……そうなんだ」
余程の機会が無い限りは会えない友人の来訪に興奮気味のキラと対象的に、リラは本片手に話半分に相槌を返す
「リラ……おめぇ、聞いてねぇだろ!?ぜってぇ!!」
「聞いてる聞いてる……あれだよね?エフの気まぐれサラダをシェフがなんとかって話でしょ」
「ちげぇし!!そーいや…ラムとロムはどしたんだよ?見当たらねぇぞ」
「ん?ああ、二人ならイタズラしてんじゃないかな?バケツとバナナを持ってたのを見たよ」
「バケツとバナナ?なんかおもしろそーだな!よし!行こーぜ!リラ!」
「えー……めんどい…」
意気揚々と走り出すキラに手を引かれ、リラは不服そうにするが彼の耳には届かない。既に目先の楽しいことに興味津々なキラは目的地まで一直線である
「あっ!キラ!ちょうど良かった!逃げるの手伝ってよ!」
「おー!ラムじゃん!いいぜー!楽しそうなことは大歓迎だー!」
「リラくんも一緒に」
「いいよ」
部屋を出た瞬間、鉢合わせた女神候補生のロムとラムの逃亡を手伝うことになり、追ってくる教会職員から四人は逃げ惑う
「リラ様にキラ様!?大人しく、ロム様とラム様を引き渡してください!」
「やだよーだ!」
「ていちょうにお断りします」
教会職員の呼び掛けも虚しく、四人は教会内を所狭しと逃げ回る。遊び場であり住居でもある場所を完全に熟知している彼等にとっては、この程度は造作もないことだ
「よろしいのですね?この計画が実行されれば、世界に革命的な変化がもたらされますわ」
執務室では、ベールがルウィーの女神であるブランと神獣のタートを前に神妙な顔付きで怪しげな対談を行なっていた
「ええ、構わないわ。既にドラグエストにプログラミングの見直しを外注してあるし、かなりの確率で上手く行くと思うわ」
「正直、僕たちだけでは手を持て余していたからね。コウヨクに指摘された通りにドラグエストを頼って正解だったよ。今日は彼を呼んであるから、最終チェックは今夜にでも済ませられると思うよ」
「「逃げろー!」」
「「それー!」」
刹那、廊下から聞こえた賑やかな四つの声。その騒がしさに痺れを切らしたブランとタートは扉を蹴破る
「おめーら!仕事中は静かにしろって言ってんだろ!」
「ぎゃーすか騒ぐんじゃねぇ!!こちとら、会議中なんだよ!!」
「あ!お姉ちゃん!」
「あんちゃん!」
姉と兄を見るや否、ラムとキラが嬉しそうに近寄る。その後ろを追随するようにリラがロムの手を引く
「お姉ちゃんとお兄ちゃんの似顔絵描いたの!」
「ラムちゃんと一緒に描いたの」
ロムとラムはクレヨンで描いた似顔絵を差し出し、嬉しそうにブランに駆け寄る
「なぁなぁ!エフたちはもう来たか?まだなら迎えにいこーぜ!」
「あんちゃん。この本の続きが読みたい」
元気の有り余ったキラはタートの袖を引っ張り、本が読みたいリラは続きを強請り始める
「「静かにしろって言ってんだろうがぁぁぁぁぁ!!!」」
遂に臨界点を突破した怒りは頂点に達し、ブランとタートは弟妹たちを追いかけ始める
「あっ!ネプギアとユニちゃん!」
「久しぶりだなー!エフにジェス!」
「元気だった?」
「あ〜……相変わらず……やらかしてるね……」
曲がり角に差し掛かった時、姿を見せたドラグエフトたちを見るとラムとキラは元気よく彼等の名を呼び、その光景に何が起きたかを理解した一行は苦笑を浮かべる
「やっほー!ブランにタート!ワカホリ気味のエスさんの付き添いで遊びに来たよー!」
「あ〜……外注なんかやるんじゃなかった……おい、タートさんよぉ!なんだぁ?あのプログラムはどぇりゃあ昔じゃねぇかよぉ!流石にエスさんも一週間は寝てねぇんですがねぇ!」
開口一番に元気良く挨拶するネプテューヌに引き摺られる形で、両目の下に隈を作ったドラグエストは文句を放ちながらも、依頼者であるタートに異議を唱える
「そうは言いながらも仕上げてくれたんだよね。感謝しかないよ、ドラグエスト」
「調子が狂うから、素で話せや。猫被り」
貼り付けたような作り笑いを浮かべるタート、彼の素を知るが故にドラグエストが喧嘩腰に声を掛ける
「やだよ、大声を出すのは神獣化してる時だけにするって決めてるんだ」
「とか言いつつ…面倒なだけでしょ…」
「キミとは話してない」
「タートの分際で生意気よ」
静かに火花を散らしだすブランとタート。彼等の関係性は気の合わないビジネスパートナーとしての傾向が強く、基本的には剃りが合わないのだ
「それは兎も角として〜!ルウィーに新しいテーマパークが出来たって聞いたよ!みんなでいこーよ!」
「なぬっ!ソイツはエスさんも初耳だ!息抜き基サボりの為にいざいこーや!」
「アニキ……本音が隠せてないよ。というか、ネプねぇに至っては隠す努力すらもしてないだろ」
「お姉ちゃんもお兄さんも相変わらずだね…」
此方は何処までも似たり寄ったりな考え方のネプテューヌとドラグエスト。仕事等は気にせずに、テーマパークに行こうと口にする
「……イストワールからは、女神と神獣の心得を教えてやってほしいって聞いたけど?」
「遊んでる暇があるの?キミたち」
「細かいことは気にしな〜い!遊べる時に遊んでおかないと人生損するよー!というか、心得は特に役に立たないってことが立証されちゃってるから、もういいよー。あっ、詳しくは前回の話を読んでね☆」
「というワケだから、テーマパークにレッツゴー!といこーや」
「少しは歯に着せなさいよっ!全く…」
「二度と此奴等の助力等してやらん」
心得を教えた身としては、複雑な心境のノワールは外方を向き、ジェヴォーダンは鼻で笑う
「テーマパーク……その話は私たちも耳にしていますわ」
「折角の機会だ、視察の名目で我々全員で遊びに行ってみないかい?適度な息抜きも必要だしね」
「スーパーリーテルランド!? 行きたい行きたい!」
「連れて行って、ワクワク♪」
「楽しいとこか?それって」
「新しいから未知数……でも興味はある、わりと」
テーマパークの話に食いついて来たのは、遊びたい盛りの四人。ロムとラムは両眼を輝かせ、リラとキラも表情に緩みがある
「………妹たちをお願いするわ」
「僕たちはちょっと外せない用事があるから、遠慮させてもらうね。ドラグエスト、プログラムの外注を受けてくれてありがとう、埋め合わせはするね」
それだけ言い残すと、ブランとタートは執務室に戻っていく。その背中が僅かに寂しそうだった事に気付いたのはドラグエストだけだった
「ネプよ、ネプちゃんよ、ネプテューヌよ。難しいもんだなぁ〜全員で仲良くってのはよぉ?」
「そうだねー…エスや、エスさんや、ドラグエストや」