第5話:プロポーズと、サボり大将と、異例の飛び級
ドンッ!!!
「おい、待てよガキ。俺の可愛い弟(懸賞金1億2000万ベリー)を、跡形もなく消してくれたそうだなァ……!」
シャボンディ諸島の広場が、突如として激しい水流に包まれた。
私の前に立ち塞がったのは、弟の報復に燃える懸賞金2億5000万ベリーの賞金首。そして、最悪の能力者だった。
「俺は自然系(ロギア)『ミスミス(水水)の実』の水人間! この俺の前では、悪魔の実の能力など無力! 海水すら俺の意のままだ!!」
ゴオオオオッ! と津波のような海水が私の周囲を取り囲む。
幻獣種『バハムート』の能力を持つ私にとって、海水をダイレクトに操る能力はまさに天敵。周囲の海兵たちが「椿少尉! 引いてください! 相手はロギアだ!!」と悲鳴を上げる。
(くっ……、確かにこの水の牢獄は厄介だな。だが、私のスペックを舐めてもらっては困る)
体の自由を奪われかけるピンチの中、私は冷徹に最上大業物「黒桜」へと魔力と覇気を集中させた。まだ5歳、中級とはいえ、私の剣術と魔力制御はすでに極限まで練られている。
「――オリジナル技、『黒龍・残撃(こくりゅう・ざんげき)』」
一閃。
空間ごと水を切り裂く、漆黒の斬撃が解き放たれた。
「ははは! ロギアの俺に物理攻撃が効くわけ――ぎゃあああああああ!?」
流動する水のはずの彼の体が、覇気と魔力を帯びた刃によって強制的に実体をとらえられ、ドサリと、相手の左腕が鮮血と共に地面に落ちた。
「ひ、ひぃぃ……! 2億5000万のロギアが、5歳のガキに一撃で斬られた……!?」
周囲の海兵や、隠れて見ていた住民たちが、恐怖で顎が外れるほど驚愕している。
勝負はついた。私は刀の血を払い、冷たく言い放つ。
「次はない。失せろ、魚類の仲間」
しかし、左腕を失い、地面に膝をついた男の視線は――なぜか熱く燃え上がっていた。
激痛に耐えながら、彼は私の顔を見つめ、顔を紅潮させて叫んだのだ。
「……つ、強い……! なんて冷徹で美しいんだ……! おいガキ! いずれお前を、俺の嫁にしてやるからなァァァ!!!」
しんと、広場が静まり返った。
(……アホ? こいつ? 私、まだ5歳よ? ねえ?)
シャボンディ諸島の住民たちも心のシャッターを静かに閉め、(この男、頭のネジが全部飛んでるな……)と、生暖かい目で見守るしかなかった。
その時。
「――いや〜〜, すげーな。あの椿, すげーマジで!」
広場のヤルキマン・マングローブの根元から、だらけきった声が響いた。
白いスーツに青いシャツ、額にアイマスクを上げた高身長の男が、長い足を投げ出して座り込んでいる。
「「「く、クザン大将……!?」」」
周囲の海兵たちが一斉に直立不動で敬礼する。
そこにいたのは海軍最高戦力の一角――海軍本部大将「青キジ」であった。明らかに大将としての任務中のはずだが、完全に暇を持て余してサボり見物をしていたらしい。
「クザン大将……。何ですか、またサボりですか?」
私が冷ややかな視線を向けると、クザンはのっそりと立ち上がり、頭を掻きながら近づいてきた。
「おいおい、サボりじゃなくて見守りって言ってほしいねェ。それにしても椿ちゃん、今の何? あの2億5000万のロギアを一撃でぶった斬ったやつ。大将の俺から見てもビビるんだけど、あれ何なの?」
興味津々で顔を覗き込んでくる海軍最高戦力(298cm)。
私は人差し指を口元に当て、5歳児特有のあざとさを最大限に利用して微笑んでみせた。
「……秘密❤️」
「……んも〜〜。ごー女甘いねェ……。そんな顔されたら、大将の権限でもこれ以上突っ込めないじゃん」
完全に私の「秘密❤️」にノックアウトされ、デレデレになっている海軍の最高戦力。
私はその様子を見て、回れ右をすると、背後に控えていた海兵たちや住民たちと、静かに視線を交わした。
(……ねえ。この海、大将も含めてこんな奴しかいないの?)
住民も海兵も、無言のまま何度も深く首を縦に振っていた。求婚してくる2億5000万の海賊といい、秒で幼女にデレる大将といい、この世界の大人たちは頭のネジが数本足りないらしい。
◇
後日、海軍本部の掲示板に前代未聞の人事発令が下された。
【本部通達:椿少尉、ドンキホーテファミリー傘下の有力海賊(懸賞金2億5000万ベリー)を単独で撃破。その特異な戦闘能力および功績を鑑み、本日付を以て――『本部少佐』へと昇格とする】
クザン大将の「椿ちゃんマジすげーから少佐でいいじゃん」という超適当な推薦もあり、5歳にして異例の『少佐』へ。
「――おいおい、マジかよ。5歳で少佐って、歴史上始まって以来だろ」
「いや、あの強さを見たら、ぶっちゃけまあ妥当だな」
本部が納得の空気に包める中、廊下で葉巻を咥えた若き日のスモーカーだけが、不機嫌そうに掲示板を見上げてボソリと呟いた。
「5歳のガキが少佐だぞ。そうか? 本当にそれが妥当なのかよ……大将も周囲も感覚が麻痺してやがる」
スモーカーが一人で頭を抱えて常識的なツッコミを入れているのを、私は少し離れた場所から冷静に眺めていた。
(やれやれ。少尉から少佐への飛び級か。給料が上がるのはありがたいが、これでまたじいちゃんや海軍の上層部に振り回される案件が増えそうだな……)
私は小さくため息をつき、ジンちゃん(ジンベエ)から貰った飴の包み紙をポケットに仕舞う。
5歳の少佐――椿の明日は、一体どっちだ。
(第5話 終わり)
第6話:『三皇』が揉める理由と、お留守番の危機
5歳にして海軍本部少佐という、前代未聞の肩書を手に入れてしまった私。
しかし、求婚してくるロギアの変態海賊や、秒でデレる大将など、海軍本部の周囲の大人たちの狂気に、私の精神的疲労は限界を迎えていた。
「……よし。レイリーの所へ行こう」
私はじいちゃん達の目を盗み、シャボンディ諸島の某所にある、あの『冥王』の隠れ家へと足を向けることにした。あそこなら、少しは静かに過ごせるはずだ。
だが、私がそうやって現実逃避を決め込んでいた、まさにその頃。
赤い土の大陸(レッドライン)を越えた先――「新世界」の海は大激震に見舞われていた。
当時はまだ「四皇」という言葉が定着する前。4人目の海の覇者がまだ不明である、いわゆる『三皇』の時代。
その新世界を統べる3人の怪物たちが、信じられない理由で大揉めしていたのだ。
◇
「グララララ! 剣姫の娘(つばき)はどこへ行った! おれはあいつをモビー・ディック号に乗せて、おれの娘にするって決めたんだよォ!」
「オロオロ……おい白ひげ、あのガキは俺が『雷鳴八卦』を教えて我が百獣海賊団の後継者にするんだ! 邪魔するな!」
「何言ってるんだい、あんた達! 椿ちゃんはお菓子より飴(ジンちゃんに貰ったやつ)が好きなんだよ! 私の万国(トットランド)で『威国』を仕込んで、最高の家族にしてやるんだからねェ!」
白ひげ、カイドウ、ビッグ・マム。
世界を滅ぼしうる3人の怪物が、領土争いでも財宝争いでもなく、「5歳の椿を誰が一番最初に溺愛(英才教育)するか」という、極めて不毛な身内バカの理由で海を割るほどの覇気をぶつけ合っていた。
この異常事態に、最も血を吐きそうになっているのは海軍本部である。
「――おい!! 誰か説明しろ!!」
海軍本部、元帥室。
センゴクが机を両手で叩きつけ、青筋をこれでもかと浮かべて絶叫していた。
「新世界で、あの白ひげとカイドウとビッグ・マムが接触しただと!? 喧嘩の規模が大きすぎて、新世界の天候がひっくり返っとるわ! なんでだ!? なんであいつらが突然揉め始めたんだチクショウ!!」
理由が「5歳の海軍少佐を我が子にしたいから」だとは夢にも思わないセンゴクは、世界の終わりが来たかのように頭を抱えている。
そんな相棒の姿を見て、ソファで煎餅をバリバリと貪っていたガープじいちゃんが、ニヤリと豪快な笑みを浮かべて立ち上がった。
「ガハハハ! センゴク、そんなに心配ならワシが見に行ってやるわい!」
「ガープ……! お前、珍しくやる気だな……!?」
「おうよ! よし! ワシが行く! 新世界のあのバカどもがワシの可愛い椿に変な虫を付けんよう、愛の拳で全員ぶっ飛ばしてやるわい!」
「……は? 椿?? お前今、なんて言っ――ちょっと待てガープ! 戻れぇぇぇ!!」
センゴクの静止の声を無視して、じいちゃんは大喜びで元帥室を飛び出していった。
当の本人が、シャボンディ諸島でレイリーと静かにお茶を飲んでいるとも知らずに――。
(第6話 終わり)
第7話:黒龍神社爆誕と、将来の未来予想図
「――はぁ。ようやく静かになった」
シャボンディ諸島、13番ヤルキマン・マングローブ。『シャクティーズ・ぼったくりBAR』。
私はカウンターの椅子にちょこんと座り、ジンちゃん(ジンベエ)に貰った飴を舐めながら、ようやく訪れた平穏に息をついていた。
「あら、椿ちゃん。5歳の本部少佐ともなると、世界を動かす男たちをあしらうのも一苦労ねェ」
シャッキーが面白そうにタバコを燻らせる。
その時、店のドアが開き、海軍の制服を着た男たちが大量の荷物を担いで入ってきた。
「つ、椿少佐……! 新世界の『三皇』から、シャボンディ諸島経由で少佐宛てに、直接『貢ぎ物』が届きました……!」
「……は?」
届けられた荷物を見て、店に戻ってきたレイリーが呆れたように苦笑する。
白ひげからは極上の名酒(5歳なので飲めない)。カイドウからは超頑丈な特製防具。ビッグ・マムからは「飴が好きならこれをお食べ」と、最高級のお菓子。
「グララララ、オロオロ、ハハハ……って、5歳にして新世界の怪物たちを裏から牛耳っているねェ、君は」
レイリーが感嘆していると、さらに、外の広場から凄まじい歓声が聞こえてきた。
気になって外に出てみた私の目に、あり得ない光景が飛び込んできた。
「おい、もっと右だ! 女神様のお顔の彫刻がズレるだろうが!」
「お賽銭箱はここに設置しろ! 椿巫女様への感謝の気持ち(ベリー)を収めるんだ!」
ヤルキマン・マングローブの巨大な根の敷地に、見事な朱塗りの鳥居と、立派な社殿が建っていた。看板には神々しい文字で『黒龍神社』と書かれている。
建設しているのは、シャボンディ諸島の住民たち、そして――なぜか海軍の海兵や、これまで私にわからせられた海賊たちまでもが涙を流して一丸となっていた。
「あ! 椿少佐……いや、椿巫女兼女神様だァァァ!!!」
「女神様、先日はロギアの海賊から救っていただきありがとうございました!」
驚くべきことに、私は海軍少佐という現役の国家公務員でありながら、この神社の「主祭神(女神)」兼「最高位の巫女」として完全奉納されてしまっていたのだ。
さらに本殿の前に鎮座する巨大な【女神像】を見上げて、私は思考が停止した。5歳の幼児体型の私とは似ても似つかない、出るところが出まくった超絶ナイスバディな大人の巫女姿だったのだ。
「少佐! この女神像は我々職人と海兵が総力を結集した最高傑作です! イメージは少佐の血筋であられる先代(剣姫)ですが、それよりもさらに『胸を大きく』盛り込ませていただきました! 将来必ずこうなられるという我々の祈りです!」
(……未来の私の成長率を勝手に盛り込むな。というか、先代より大きくするな。私の将来の肩凝りが心配になるだろうが)
大将クザンすら「いや〜、職人のこだわりが詰まった素晴らしいご神体だねェ……。ねえ椿ちゃん、将来本当にこうなるの?」とサボりながら手を合わせてくる始末。
本人の困惑を置き去りにしたまま、超ナイスバディな女神像を擁する『黒龍神社』は、シャボンディ諸島の名物となったのだった。
(第7話 終わり)
第8話:暴走ジジイと、不憫な赤髪
黒龍神社が爆誕し、私が自分の「盛り盛り女神像」に頭を抱えていたその頃。
新世界の戦況は、私の想像を遥かに超えるカオスへと突入していた。
海軍の通信兵が血相を変えてシャッキーのBARに飛び込んできたのだ。
「ほ、報告します! 新世界で揉めていた三皇の元に、ガープ中将が『ワシの椿に変な虫を付けるなァ!』と軍艦ごと突撃! 完全に暴走して大戦争が始まっております!!」
「センゴク元帥は……?」
「泡を吹いて倒れました!!」
(やれやれ……。あのバカ老人ども、放っておいたら本当に世界を滅ぼしかねない)
さらに通信兵は、涙目で衝撃の戦況を口にした。
「あ、それと……! たまたま近くを通りかかった、あの赤髪のシャンクス率いる赤髪海賊団が、暴走したガープ中将と三皇の覇気の衝突に巻き込まれ、一瞬で瞬殺(気絶・撃沈)された模様です!!」
「え、赤髪のシャンクスが……? 今の時代のあいつじゃ、あの怪物たちの本気には耐えられなかったか……。トホホな奴だねェ」
レイリーがかつてのロジャー海賊団の見習いを憐れむようにため息をつく。
現代(ルフィの旅立ち後)のシャンクスならいざ知らず、四皇に成り上がる前のこの時代の彼では、全盛期に近いガープと三皇のガチ喧嘩の余波は強大すぎたらしい。
周囲の状況がカオスを極める中、私は静かに立ち上がり、愛刀「黒桜」の鯉口を軽く切った。
まだ5歳。能力も覇気も中級。だが、これ以上大人たちの身内バカに付き合って世界を崩壊させるわけにはいかない。
「おや、行くのかい?」
レイリーの問いに、私は冷徹にバハムートの魔力を練り上げながら、小さく頷いた。
「少し、新世界のバカ老人たちを黙らせてくる。……『解放』」
バリバリと黒い雷が空間を圧する。
次の瞬間、私の背中から、周囲の光すら吸い込むような漆黒の巨大な『竜の翼』がバサァッと広がった。
「ほう、見事な翼だ」
レイリーとシャッキーが見守る中、私は翼を一振り。音速を超えた衝撃波を残し、不憫な赤髪とバカ老人たちが待つ新世界の戦場へと、一気に飛び立った。
(第8話 終わり)
第9話:新世界大決戦と、白巫女の奇跡
ドゴオオオオオオオオッッ!!!
新世界の空が、赤と黒の覇王色の衝突によって完全に割れていた。
「ワシの可愛い椿に変な虫を付けるなと言うとろうがァ!!」
「グララララ! うるせェガープ! おれはあいつを娘にするんだよ!」
「オロオロ……貴様ら、椿は俺の後継者だ!!」
「いいや、私の最高の家族にしてやるんだよォ!!」
全盛期に近いガープじいちゃんと、新世界を統べる三皇たちが、身内バカの限界突破で大戦争を繰り広げている最悪の戦場。
その中心の遥か上空から、空間を圧する冷徹な声が響き渡った。
「――いい加減にしろ、このバカ老人ども」
バサァッ……!
光すら吸い込む漆黒の竜の翼を広げ、5歳の本部少佐・椿が戦場のど真ん中に降臨した。
いまだ覇気や能力は「中級」の域。だが、バハムートの魔力と最上大業物「黒桜」、そしてこれまでの怒りが合わさった彼女の戦闘力は、この瞬間に限り神の領域に達していた。
「つ、椿ィ!?」
「椿ちゃん!?」
驚愕する大人たちに向け、私は冷酷に刀を構える。
「オリジナル技――『黒龍・残撃』。……これで黙れ。『合体魔法(メドローア)』!!」
物質を消滅させる極大消滅光線と、空間を切り裂く黒き斬撃が同時に炸裂した。
覇気をまとった一撃が、世界最強の男たちと、愛の拳の頑固ジジイをまとめて直撃する。
「ぶはっ!?」「ぎゃあああ!?」「オロオロぉ!?」
世界政府が恐れる最凶の4人が、5歳の幼女によって同時に地面へと叩きつけられ、文字通り「ボコボコ」にされて沈滅した。あまりの規格外な威力に、新世界の海が一瞬で静まり返る。
フゥ、と息を吐いて刀を収めた私の目に、戦場の隅で今にも全滅しそうなボロボロの海賊船が映った。赤髪海賊団である。
白目を剥いて泡を吹いているシャンクス。生きてはいるが、瀕死の重傷だ。
(……生きてる。なら、仕方ない。じいちゃん達のせいで巻き込んで悪かったな、赤髪)
私は漆黒の竜の翼を閉じ、今度は純白の神聖な魔力を全身に纏わせる。
黒き「鬼巫女」から、すべてを癒やす「白巫女」へのモードチェンジ。私は瀕死の赤髪海賊団へ向けて、両手を広げた。
「――『ベホマラー』」
キィィィィィン……!
聖なる光が戦場全体を包み込む。
次の瞬間、シャンクスたちの傷が一瞬で完全に塞がり、消えかけていた生命力が爆速で満タンまで回復した。
「たすかったァ〜〜!! ありがとう、白巫女のお嬢ちゃん! 俺、君のこと一生忘れないよ!!」
ガバッと飛び起きたシャンクスは、私の姿を見るなり、感激の涙を流して叫んだ。
ボコボコにされて地面にのめり込んでいたガープ、白ひげ、カイドウ、マムの4人も、その光景を見ながら「やっぱりワシの孫(俺の娘)に相応しい……」と、懲りずにデレデレと目を輝かせていた。
こうして、5歳にして新世界の生態系の頂点に君臨してしまった私は、バカ老人たちに「これ以上騒いだら次は消滅させる」と冷徹に言い残し、シャボンディ諸島へと帰還したのだった。
◇
それから諸島に戻ると、相変わらず女神像の胸元を見上げて「なるほど! こうなるか! 将来が実に楽しみだねェ……」と感心しているレイリーの背後に、シャキーが冷徹な殺気をまとって立っていた。
「あ?! レイさん? ……何をしげしげと女の子の胸元を眺めてるのかしらァ?」
「ひ、ひぃっ!? し、シャクヤク……っ!」
大先輩が秒でわからせられているのを、クザン大将が「んも〜、レイさん業が深いねェ……」と呆れ顔で眺める。そんな最高に狂った崇拝と溺愛に包まれながら、私の年齢は順調に上がっていった。
(第9話 終わり)
第10話:12歳の神罰、アーロンパーク消滅編
新世界大決戦から、数年の月日が流れる。
黒龍神社には毎日、世界中から「ご利益(ベホマラー)」を求める人々が参拝に訪れ、今や聖地マリージョアを超える隠れパワースポットと化していた。
私のステータスも、能力・覇気・剣術ともに「中級」から「上級」へと完璧に到達し、12歳(ルフィ旅立ちの8年前)の年齢に成長していた。
見た目も、あの盛り盛りだった女神像のナイスバディへと着実に(胸の成長も含めて)近づきつつあり、戦闘用の巫女服に身を包んだその姿は、周囲から「本当に女神様になられた……!」とさらに拝まれる始末。
そんなある日のこと。東の海の視察任務中、私の元に不穏な報告が飛び込んできた。
「椿中佐! 東の海のココヤシ村が、魚人海賊団『アーロン一味』に襲撃された模様です!」
(……なるほど。タイムライン通り、あの魚類どもがやってきたか)
前世の知識(原作の記憶)がパチリと繋がった。ココヤシ村、アーロン、そしてベルメールさん。
私は愛刀「黒桜」の柄に手をかけ、冷徹な笑みを浮かべる。
「よし、舵をココヤシ村へ向けろ。――我が黒龍神社の神罰を、あの魚類どもに叩き込んでやる」
◇
ココヤシ村のミカン畑。
悪名高いアーロン一味が乗り込み、元海兵のベルメールに銃口が突きつけられ、幼いナミとノジコが泣き叫ぶ絶望の瞬間。
その空間のすべてを圧するような、冷徹で圧倒的な覇王色の覇気が上空から降り注いだ。
バサァッ……!
光すら吸い込むような漆黒の竜の翼を広げ、戦闘用巫女服に身を包んだ私が上空から静かに降臨した。
「――おい。そこどけよ。私の前を遮るな、魚類」
「あァ!? なんだこの人間のガキは! 魚人であるこの俺様に口を利いてんじゃねェ!」
キリバチを振り回して突っ込んでくるアーロン。
(やれやれ。5歳の頃に新世界で四皇をボコボコにしてきた私からすれば、東の海の魚人など、ただの少し大きなイワシと変わらないのだが)
私は愛刀「黒桜」を抜き放ち、四皇直伝の術式を練り上げた。
「――『威国』。……ついでに『合体魔法(メドローア)』」
ドンッ!!! どごおおおおおおん!!!
放たれた一撃は、アーロンの自慢の武器を木端微塵に砕き、背後のアーロンパークの建物を――爆発を起こすことすらなく、地形ごと文字通り「塵」にして消滅させた。遥か彼方の海へと巨大な風穴が空く。
「ぎゃああああああ!? 海が消えたァァァ!?」
地面に叩きつけられ、ガタガタと震えるアーロン。
「な、何なんだあいつは……! 12歳くらいのガキが、なんで四皇みたいな国家崩壊級の技を……っ!?」
ハチやクロオビたち幹部も、恐怖のあまり「オロオロ」とカイドウばりに狼狽し、その場にへたり込んで泡を吹いて気絶した。
「ベルメールさん、怪我はない?」
私は刀を鞘に収め、呆然としている女性に、かつてジンちゃん(ジンベエ)から貰った飴を一つ差し出した。
「あ、ありがとう、可愛いお嬢ちゃん……って、あんた一体何者だい!?」
「お姉ちゃん……かっこいい……!」
涙を拭った幼いナミとノジコが、完全な信者の目で私を見上げてくる。
「私は海軍中佐(兼、黒龍神社の女神)、椿。もう安心しろ。この魚類どもは私が本部に連行する」
私の言葉に、ベルメールや村人たちは涙を流して大感謝した。
「海軍の女神様かい……! ありがとう、本当にありがとう! よーしお前たち、今度みんなでシャボンディ諸島の『黒龍神社』へお礼参り(ガチ参拝)に行くよ!!」
こうして、ナミの悲劇の過去も、私の介入によって跡形もなくハッピーエンドへと書き換えられた。のちにルフィやエースと交わす「兄姉妹の盃」、そして未来の頂上戦争の完全回避へ向けて、女神の進撃はまだまだ止まらない。
(第10話 終わり)
お疲れ様でした。作者ゆうちゃんいかがでした?感こそお願いします。