今回のサブタイでなんとなくお気づきの方もいらっしゃいますが……サブタイ、章タイトルはほぼ可能な限り神の名前でいきたいと思います!
意図?神を信じないへそ曲がりな主人公へのいやがらせですがなにか?
「……ごめんなさい。一晩泊めてくれただけじゃなくご飯までお相伴にしてもらって……」
「はいはい堅苦しいのはなしなし!そうかしこまって喋られるのはちょっといい気がしないの。……お姫様扱いされてるみたいでさ」
「あ……じゃ、じゃあもう少しフランクな言葉遣いを心掛けます……よ?」
蓮華はアーリア教独特の菜食主義に少し難色を示しながら出されたものは仕方ないとゆっくりと食を進める。
蓮華はどうも野菜が苦手だ。ものによって入っている水分なんかも全然違うし、やたらと変な味がする。……やはり、野菜の栽培も完全に機械化されたせいなのだろうか。絶対にずっと小さな頃、それこそまだ日本があったころに恐る恐る食べた野菜の方が美味しかった。
「好き嫌いしないで食べなさい」
「……はい」
なぜばれたのだろう。難色は示したが顔には出していないはずなのに、どうしてばれた?
そう思いながら蓮華は残りの野菜に手を付ける。食感も微妙、味も微妙、食べやすさやカタチも微妙と見事に三拍子揃った微妙っぷりだ。
やはり機械では人がやるよりも精密さがあっても、手間を知らない分味が劣るのだ。
「……正直にぶっちゃけるとそこまで美味しくないね」
「悪かったわね。料理がヘタクソ、素材もダメダメで」
「いや、僕は素材がダメダメとしか言ってないんだけど……」
「どっちにしろ失礼よ、それは」
サンスクリットがジトーっと蓮華を睨んで来るので露骨に目を逸らす。そんな中でもしっかりと食べるには食べているが。
「……そういえば、一つ聞きたいことがあるんですけど」
「なに?私に答えられる範囲ならいいわよ」
「なんでこの国はこんな戦争真っ只中の夜中でもお祭り騒ぎ状態なんだろうかな……って」
「ああっ……それね。そんなの簡単よ。娯楽に精通した旧日本の人が他の国よりも比較的多く集まってるの。
そうなれば旧日本の人はどの国も科学的に優遇されてるから自然と戦争事よりも自国の戦わない部分の発展をしてるの。
それでもまだこの国も宗教が一番力握ってるっていうのは、覆しようのない真実なんだけどね」
「……いないヤツなんか信じて、なんになるんだろう……」
ふと、蓮華はそう呟く。彼が何年も疑問に思い、答えを明かすことのできない疑問。
いつ、どうして宗教は始まったのか。そんなものは教科書や辞書を引けば簡単に出てくるだろう。
だが、始まるに至った経緯は?なぜいないとわかる神を信じ込ませることができたのか?
そういった疑問が尽きない。そんな疑問だらけのものが世界を掌握していることが信じられないのだ。
そんな難しい顔をした蓮華を見つめたサンスクリットはなにを言ってるんだというかのような顔をしていた。
「そんなの簡単よ。人は常に誰かに見てもらってないと不安に思える生き物なの。
そもそも神様なんてのは都合のいいモノなんだから、そうそう深く考えない方が人生気楽に生きられるわ」
「それじゃあ納得できないんだ。そんなんじゃ……そんな理由で作られたモノがいずれ世界をメチャクチャにするかもしれないのに!」
「……信じ込みすぎる教徒もそうだけど、貴方もなかなかカタブツね。もっと簡単に考えればいいのに───」
言い切れないような不信感を持つ蓮華にサンスクリットは顎を右手で支えながら諭していると、突然轟音と共に地面が揺れ出した。
「きゃっ!?」
「っ!?今の爆発音───CKの音だ!」
状況を理解できないサンスクリットに対して慌てながらも冷静に状況を把握する蓮華。この辺りが蓮華がこの戦争時代に旅を何年も続けているということを裏付けているようだ。
「逃げよう!早く!」
蓮華がサンスクリットの手を強引に引いて家から出る。上空にはつい一年前にロールアウトしたというアルヒャイに継ぐナザレ教国のCK、ミカエルが無造作に弾丸を撃ち散らしていた。
普通緑色の翼状スラスターを持つ機体のカラーリングはその普通とは違い、天使には相応しいもはお世辞にも言えない漆黒のカラーリングをしていた。
「黒のカラーリング……まさか殲滅部隊!?クソッ、それじゃあまさか、この国の空爆で制圧に来たっていうのか……?」
だとしたら、向こうがやってくることはアーリア教国の機体を出撃させる前に首都を制圧する電撃戦だろう。
機体は四機。教皇が降伏しなかった時に市民を見せしめに虐殺することも可能だ。
そして案の定、教皇の居所に突入し、暫くしてからミカエルの殲滅部隊は無差別に市民を撃ち殺し出した。
蓮華が目にしたその光景はまさに、力がなかったせいで自分を助けようとして殺された蓮華の家族そのもの。
「ふざけるなよ……!神の教えって言えばなにをやっても祖国は許すっていうのか!?」
蓮華は吼える。人間とはここまで愚かなのかと。どうして人間は、存在しない神程度が噛み合わないからと殺しあうのかと。
全部が、全てが理解できない。いや、したくない。
「僕に……僕に力があれば!力があればこんなことにならなかったかもしれないのに!」
「……力、あげましょうか?」
「───え?」
嘆く蓮華に対し、突然サンスクリットがそう問いかけてきた。振り向いた蓮華が見たのは彼と同じか、それ以上に怒りを燃やしている彼女の姿だった。
「力がほしいかと聞いているの。ほしいのなら、その力が世界を変えるかもしれない……それでも欲するのなら、力を貴方にあげるわ」
試すような瞳をするサンスクリット。蓮華はその瞳に一瞬圧される。
だが、蓮華はそれと同じくらいに世界を変えるかもしれないという言葉に強く惹かれた。
ふと、CKを出動させる場所を見てみると、アーリア教国のCKが出動するのであろうカタパルトハッチが破壊されているのが見えた。
もう、国の力を頼ることはできないだろう。
ならば、世界を変えようとも力を欲しよう。そもそも、こんな宗教の世界を変えられるのならそれこそ本望だ。
「僕は力が欲しい!お願いだグプタさん!僕に力をくれ!」
「……わかったわ。この街が取り返しのつかないことになる前に、急ぐわよ……ついて来て」
そう言うとサンスクリットは家の中へと入って行った。蓮華は彼女の後ろを追いかける。
「私のお母さんが旧日本の人っていうのはさっき教えたわよね?」
「はい」
「私のお母さん、私が生まれるちょっと前にこの国に亡命してきてね。国の技術を発展させた人の一人なの」
「……それがなにか?」
サンスクリットは家の床を一つずつ音を鳴らして行き、一つだけ違う音が鳴った床を見つけるとそこを全力で踏み抜いた。
すると床が壊れて大きな空洞の入り口が現れた。サンスクリットはそこへ躊躇なく飛び込み、蓮華もその後に続く。
「亡命した時に教皇から出された条件としてお母さんが旧日本の技術の全てを、あるものにつぎ込んだの」
「あるもの?」
「エンジンよ。そのエンジンの性能が認められてアーリア教国に亡命したんだけど……残念ながらエンジンそのものは高性能すぎて軍属される時に大幅にデチューンされちゃったの」
空洞の中を走るサンスクリットを追いかけ、空洞の一番下の位置にたどり着く。その空洞はどこからどう見ても人の手が加えられているもので、いたるところに電子機器が散漫していた。
「でもお母さんはそのエンジンがもったいないと思ってね……国に隠れて一機のCKを作ったの……それが、これよ」
サンスクリットは軽く電子機器を弄り、空洞のいたるところについていた照明を点灯させる。
そして、蓮華の目の前に一機の機体がその姿を晒した。
「……これは?」
「お母さんの言ってたエンジン……水力回路エンジン内蔵型CK……常識を覆すという意味を込められたコモンセンスカタクリズマーの常識を覆すコモンセンスカタクリズマー、HM2-00 機体名"サラスヴァティー"」
なんというか、その機体はCKという枠組みからすればかなり近未来的な機械だった。
通常、CKのデザインはそれぞれの宗教に登場する天使や幻獣をモチーフとするため、生物的である。
だが、この機体……サラスヴァティーは機体の一部一部が透明色となった透けている辺りは機械的ではないものの、その透けている部分や透けていない部分から無骨なコードが何十本と伸びている。唯一生物的と言うのであれば、頭部から背部のスラスター元に伸びている青いコードが人の髪型を模しているようなところだろうか。
「二人乗りになってるわ。一人が操縦と火器管制、もう一人が機体のエンジンやシステム、兵器の出力の制御ね」
「わかった……サラスの制御を頼んだ。僕は動かす」
「サラス?」
「コイツの愛称だよ。サラスヴァティーじゃ長い上に僕の大っ嫌いな神様の名前になる。だからサラス」
機体に愛称をつけるのなら既に愛称付けで呼ばれる人間を苗字で呼ぶのは何故だとサンスクリットは言いそうになったが、そんなことで時間を潰しているヒマはないので二人はすぐにサラスヴァティーのコクピットハッチを開けて乗り込む。
「いい?さっきも言った通り、サラスに搭載されているエンジンは普通のCKのそれをはるかに上回る反面、制御はとても難しいわ」
「わかってる。だから二人乗りなんでしょう?」
「ええ。エンジンは他のものとは違うから基本的に出力は高めに設定しておくわ。あとは貴方の指示に合わせて私が調整する」
「了解……それじゃ、サラスヴァティー……出撃!!」
なんやかんやで現れた主人公機。いやー、水の神様だからって水力回路とか安置すぎかな?