オリジナルは難しいですね!はい。
───すごい。
サラスヴァティーを最初に動かして蓮華は思わずこう漏らした。
初めてCKに乗る蓮華の粗い操縦でもこの機体は全く体勢を崩さない。左右非対称に伸びるコードはそんなサラスヴァティーの軽い挙動にもしっかりと反応して揺れる。
この機体ならばやれる。なにが相手でも……そう思わされるような錯覚に蓮華は陥ったほどだ。
「CK動かせた程度で感動してないの!さっさとあの不届き者をやっつけるわよ!」
「……はい!行きます!」
蓮華は現在サラスヴァティーに設定してある出力を一気に最大まで持って行き、手近なミカエルに向かっていく。
「なっ、なんだ……!?あの機体は?
見たことがない……アーリアの新型か!?」
想像つかないほどの速度で接近してくるサラスヴァティーにミカエルのパイロットは驚愕する。なにせついさっきCKのカタパルトを潰し、今の今まで影も形もなかった、見たことすらないCKが現れたのだから、無理もない。
「新型が出来たなんて、聞いてないぞ……!全機聞こえるか!?こちらに未確認のCKが現れた!実力が未知数な以上集団で撃破するぞ!」
男がそう言うと、周囲からゾロゾロと微妙に色の彩度が違うのミカエルが五機増援に現れた。
「グプタさん!増援だ!殲滅隊仕様のミカエルが五機!」
「複数機が相手ならセンサーの真ん中をタップして!」
「装備は!?」
「ミサイル!連射用のモノだし、燃費が良い分威力は低いから牽制程度と思って!」
「わかった!」
蓮華はサンスクリットの言葉通りにセンサーの真ん中をタップする。するとセンサーの範囲に入っている六機のCK全ての反応に四角い括弧が現れる。恐らくロックオンしたということだろう。
「ミサイル一斉発射!」
蓮華はその言葉と共に左の操縦桿の親指を置く場所にあるボタンを押す。するとサラスヴァティーの肩部の表裏と脛、ふくらはぎのミサイルポッドか展開し、四方八方に百発はくだらない量のミサイルを撃ち込む。
「なっ!?あの細身のどこにこれだけのミサイルが!?」
ミカエルの部隊はそのミサイルによって撹乱され、互いに連携のとることが難しい位置まで離される。
「今よ!腰にマウントしてあるレールガンを!」
「レールガン……っ!これか!」
サラスヴァティーはスカートの裏側から一挺の小さなライフルを取り出し、一機のミカエルに向かって発射する。
するとそのライフルからはその身の小ささからは想像もできないような質量の青白い弾丸が放たれた。サラスヴァティーはそのレールガンのパワーに一瞬だけ足を取られてふらついたが、弾丸はきっちりとミカエルに命中した。
「……なっ、」
「なんてパワーだ……っ!」
「まさかこのレールガンにも件のエンジンが積まれてるの!?」
「まさか、レールガンに水なんか流し込むわけないでしょ?今のご時世で電気を通さない純粋な真水があれば見てみたいものだわ!
……それはサラスのエネルギーをコードを通して撃ってるの!」
「じゃあ撃ち過ぎるとサラスは止まるの!?」
「サラス自体かなりエネルギー効率はいい機体だからよほど無駄打ちしないか過剰なエネルギーで撃たない限りは無事よ!つまり、私がエネルギー調節すれば威力の加減も多少はできるわ!」
「じゃ、じゃあレールガンに回してるエネルギーを少し下げてください!」
わかったわ!とサンスクリットが言い、蓮華はレールガンを
サラスヴァティーのスカートの内側に仕舞う。そして次に腰部に帯刀されていた剣を抜く。
「ちょ、ちょっと!剣なんて扱えるの!?マニピュレーターの力の調節とかすごく難しくて、ライフル握ってる時の比じゃないのよ!?」
「あるもの使わなくてどうするんですか!レールガンだけに頼っててもワンパターンで逆に追い込まれるのもあり得ます!」
蓮華はそのままサラスヴァティーの速度を上げ、一機のミカエルにミサイルを撃ち込んで怯ませると一瞬でその機体に肉薄して上半身と下半身を真っ二つにし、両腕を斬り裂いた。
「二つ目!」
「調子に乗るなぁぁぁぁぁ!!」
サラスヴァティーが敵を斬り捨てた時の慣性で、蓮華の技量の低さと多少の安心も相まって少し動きのぎこちなさが現れた瞬間、隊長機と思しきミカエルがサラスヴァティーに向かってレールガンを撃つ……が、それはサラスヴァティーのものよりも速度も太さも劣る。
「せぇやぁぁぁ!!」
そしてサラスヴァティーはなんとそのレールガンを断ち切った。レールガンが電磁加速によって実弾を撃ち出す兵器なので、こんなこと可能と言えば可能だが、こんなことは普通のCKでは失敗率も高い行為なので自殺行為とも言える。
だが、このサラスヴァティーは他のCKを遥かに上回るインターフェースの正確さとエンジンによる動作の安定感を持つため、素人の蓮華にもこれを可能としたのだ。
だが、いくらサラスヴァティーでもこれは操縦者がレールガンにあたるタイミングなどを理解していなくてはならないため、操縦者本人にもそれなりの動体視力を求められる行為だ。
「バカなっ!?」
「うおおおおお!!!」
サラスヴァティーは続いて左手にレールガンを持ち、近くのミカエルを無造作に狙い撃ち、撃墜する。
───これで三機!あと半分!───
蓮華は間髪入れずに残ったミサイルを撃ち尽くし、そのミサイルが着弾する前に出力を最小まで弱めたレールガンでミサイルを撃つ。するとミサイルが爆発し、次々と付近のミサイルに誘爆していって視界を消す。
CKにはセンサーがついているため、煙幕なんてなんの障害にもならない───と思われがちなのが現実だ。
世の中にはたかがメインカメラをやられただけだと言って切り捨てる者もいるが、サブカメラだけで敵を征圧できる者なんてそうはいない。何故なら、映像が見えない分モニターだけでは詳しい位置情報が把握しにくいし、上下の角度を見極めれない。
だが、煙というものは上へと行くもの。下からの強襲には上記のこともあってからうってつけだ。
サラスヴァティーはミカエルの胸部に剣を突き刺し、胸部に足を添えて蹴り飛ばすことで強引に次のターゲットに肉薄し、レールガンを接射して破壊する。
「後は隊長機だけだ!」
「なめるなよ……!新型風情がぁぁ!!」
ミカエルは取り回しを重視するサラスヴァティーよりも大きな得物を構えて突っ込んで来る。
サラスヴァティーもそれに応え、剣を構えながら突進する。
「ば、バカ!こんなウェスタンみたいなことしたら得物の短いサラスが負けるに決まってるでしょう!?」
「そんなの、重々承知だよ!だから、これで終わらされるんだ!」
そして剣と剣がぶつかり合う寸前、蓮華はなんと剣を敵に向かって投げ飛ばして来たのだ。
虚をつかれてミカエルはそのままコックピットに刀が直撃した。
「……終わった、のか……?」
「……そうみたい」
ミカエルに刺さった剣を抜き取り、腰の鞘におさめると、まるでその時を待っていたかのようにミカエルは空から地上に落下し、轟音を鳴らした。
「……これが世界を変える力……サラスヴァティー」
レールガンを撃って敵を倒すその瞬間は恐らく最も美しい見栄えになっていたのだろう。だが、その美しさを生んだのが戦争とは、なんとも虚しいものだ。
「……正に、"蒼炎のサラスヴァティー"ね。蒼く光って燃え盛る炎の中を行く水の女神……ロマンチックにもほどがあるわね」
サンスクリットがやれやれと言った風に両手で降参のボーズを取る。
「グプタさん、僕は神話が大っ嫌いなんでその手の話はやめてください」
「はいはい、徹底してるわね、この宗教嫌い」
「好きに言ってください。貴女達からしたら病気みたいなものですから」
蓮華は次にレールガンをスカートの内側に収め、ゆっくりと着地する。
そして蓮華は次にくるであろう事態に備え、それが見事に的中したので露骨な溜息をつく。
「今更来ても遅いってーの……」
敵がいなくなってようやく現れたアーリア教国のCK、シヴァに辟易としていると、そのシヴァの軍勢はサラスヴァティーを囲むように立った。
「……あーはいはい、取り調べか」
「まっ、普通こうなるわね」
なんだか僕の小説、三話辺りで説明するのが当たり前になってる気が……