狂信者+ダンジョン=農家栽培   作:ストマフィリア

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最近またelonaにハマってしまったので初投稿


1話 捧げもの探し

 

 暗い暗い闇の底。

 地の底に続く段差。

 底に足を踏み出すにつれて響く自身の反響音。

 

 あなたは繰り返される階層をまるで実家の階段のような気軽さで降りていく。

 

 ……別に、普段はこんなところに入るようなあなたではない。

 

 ランダムネフィア

 あなたの住む世界《イルヴァ》においてダンジョンと呼ばれる代物。

 地殻変動で、所々に作られたり消えたりするこの迷宮には未だに謎が多く、その中には様々な品質の武器や道具、果てにはベッドや祭壇、噴水などというものまでがこの迷宮で生産されている。

 

 あなたがランダムネフィアに足を踏み込んだのは、雪の村『ノイエル』で行われる祭りに1日ほど時間が余っていたからだ。

 ただ、予想よりネフィアが深かったのであなたが想定した予定よりだいぶ時間がたっていると思われる。

 早く攻略して脱出しなければ、数少ない親友が集まる祭りに出遅れてしまう。

 ちなみに脱出の巻物でネフィアを出る行動はとらない。一度入ったからにはすべて攻略することこそが冒険者たるものである。

 

『……――ッ……!――……!』

 

 一瞬。

 あなたの頭の中に謎の電波が流れたのを感じとった。

 様々な電波が聞こえる装備をあなたは普段着用しているが、今までにこんな聞き辛い電波は流れたことはなかったはずなのだが。

 軽い電波障害でも起こったのだろうか?

 あなたは疑問を感じつつも地の底へと足を進める。

  

 下を見れば次に続く段差はない。

 あなたはようやく平坦な地に足を付けると少し急ぐように前へ進む。

 ――早くこの迷宮(ネフィア)の主を殺してここを出ていく、という一心だ。

 

 と、いうところで。

 あなたは足元の地面がわずかに振動しているのを感じた。

 

 どこかの友人が《オパートス像》にでも触れたのだろうか?

 確かに、あれに触れれば意図的に地殻変動を起こすことができるが、あなたの友人にはランダムネフィアにこだわるような者はいないはずだ。

 

 あなたは少しながら違和感を覚えつつも迷宮(ネフィア)中を進み続ける。

 

 

 


 

 

 

 あなたが階層を降りる中、さらに違和感があった。

 見覚えのないモンスターと出くわしたのだ。

 

 あなたは《ノースティリス》の冒険者であり、親友からは【狂人】と呼ばれるほどの実力を持ちながらイルヴァに置いての知識も相当量持っている。

 【狂人】という呼び名は親友同士での呼び名であり、ノースティリスに出回っているあなたの二つ名もしっかりと存在する。

 

 ちなみにその昔、あなたは小さな農村であるヨウィンで仲良く酒盛りしていた衛兵(ガード)に勝手に異名を願いの杖で替えられた経験がある。

 あなたの信仰する神達と一緒に考えた異名を勝手に変えられ、その衛兵と仲良くOHANASIしたあなたはニッコリ笑顔のまま、抵抗も許さずサンドバッグに吊るして様々な状態異常を与える魔法《混沌の渦》を当て続けた。

 ゲロゲロのような色になりながら謝ってくる衛兵の姿も今となれば酒の肴になる笑い話である。

 

 本題に戻り、そんなあなたが見覚えのないモンスターに出くわした。

 殺す(ミンチ)前はさほど考えることなくドロップ品を回収しようとしたのだが、見覚えのない石ころが落ちていたところで、記憶を探り返すと確かに見たことのないモンスターだと思いだしたのだ。

 

 あなたは気になって《鑑定》の魔法を石ころにかけた。

 

 ――【魔石】という結果が出た。

 

 ふむ、特にこれといった珍しいアイテムではないらしい。

 イルヴァでは鑑定したときに★や☆の表記があると神器品質と呼ばれる非常に珍しいアイテムなのだが……。

 まあ、鉱石であるならば家に帰ってあなたの神の一人、癒しの女神ジュアに捧げてみるのもいいだろう。

 

 できれば、あなたが信仰する収穫の神クミロミにも珍しいものを捧げたいので、この調子で珍しい野菜などが出てきてくれるとありがたい。

 捧げなければ嫉妬で怒った収穫の神に殺されかねないのだ。

 無論、狂信仰者であるあなたはその死を拒むことは決してないのだが。どうせ這い上がればいいのだし。

 

 ――…………!

 

 あなたがそんなことを考えていると、不意に迷宮の暗闇の中からはみ出るような明かりが目についた。

 

 迷宮の中は基本的には光を通さないものが多く、あなたがいる迷宮も地下に続くものでその都合上、キャンプファイアなどの明かりのもとがなければ光を通すものはない。

 なお、あなたはそんな一筋の光も通さない暗闇の中だろうが、外界と同じような明るさであたりを見渡すことができる。明かりの有り無しで困惑するくらいの冒険者がネフィアなど攻略できようはずもない。

 

 見覚えのないモンスターの件もある。

 興味本位で近づいてみると、そこは岩壁が割れて外界の光らしきものが差し込んでいた。先の地殻変動でできたものなのだろう。

 異界をつなぐ【ムーンゲート】のような炎のようにゆらめく青い光ではない。しかし先ほどから続く違和感のある現象から警戒心だけは怠らない。

 

 もしも突然モンスターが出てこようものなら、あなたは《メテオ》を繰り出すつもりでいる。どんな速度で出て来ようとも絶対に殺しきるために。

 

 しかし、そんな考えとは裏腹にいくら待とうと何かが出てくる気配がない。

 あなたは何も起こらないことに肩をすかした。

 なんだ……、ときびすを返して探索を続けようと思ったが。

 

 ――……!…………!!

 

 ふと、壁の割れ穴から何者かの声が響いた。

 ?と首をかしげながら、再度割れ穴に近づくあなた。

 

 迷宮(ネフィア)5階層。

 当たり前だが、こんな地下に人が居ることはまずない。

 たまに見るネフィアを根城とする盗賊や冒険者はいることには居るが、その場合は割れ穴に近づいた時点であなたが長年の冒険者生活で鍛えた《探知》スキルに引っかかるはずだ。

 

 先ほどから2,3度と続いている奇怪な現象に、冒険者としてのあなたの好奇心が最大値を迎えようとしていた。

 言葉で表現するなら『わくわく ゾクゾク *ゴゴゴゴゴゴ*』といった感じである。

 

 ムーンゲートの(たぐい)であるなら、すぐに戻ればいいだろう。

 あなたは、友人に申し訳ないと思いつつ、目の前に広がる壁の裂け目に身を投げた。

 

 好奇心は猫を殺す。

 

 上等である。

 数々の修羅場を超えて這い上がって(しにつづけて)きたあなたは、その先にある何かに期待するのだった。

 

 

 


 

 

 

 

 …………以上が、あなたが現在に至るまでの最も新しい記憶だ。

 

 あなたが、気が付いた時にはどこか日陰の壁に寄り添って背中を合わせて気を失っていた。

 壁の裂け目に身を投げてからというもの、その前の記憶があいまいで混乱した状態になっている。

 記憶のかけらを集め、整理したとき、初めてあなたは自分が陥った状況に回答を出すことができた。

 

 さて、状況もわかったところで今を見よう。

 

「――お、ようやく動いたか。バベルの壁に立って寝るなんてとんだ度胸を持っているな」

 

 がっはははと、目の前には甲冑(かっちゅう)を被った衛兵らしき人物があなたを笑いながらに眺めていた。甲冑のせいで顔が見えないが呆れているようなしぐさが見て取れる。

 あなたは、この傭兵に体を揺さぶられて無理やり起こされたのだ。

 頭に上らない血のせいでやけに思考がまとまらないが、自分は何をしていたのかと衛兵に訪ねるとあなたはここで立って寝ているように見えたという。

 

「あんた見ない顔だな、観光客か? 寝るのはいいがそこら辺の宿で寝てくれよ? バベルの裏手とはいえダンジョンからモンスターが出てくる危険性は0じゃないんだからよ」

 

 ダンジョン、モンスター。

 衛兵から出てくる言葉は確かにイルヴァと同じようなものだが、あなたは()()()という言葉に引っかかった。

 あなたはノースティリスの冒険者だ、異国に来た覚えはない。

 

「? まだ寝ぼけてるのか? ここは迷宮都市オラリオ。ダンジョンと冒険者が織を成す世界最大の都市に決まってるだろ」

 

 衛兵に尋ねるとそのような言葉が返ってきた。

 さらっと語られる異常事態宣言に頭を抱えそうになった。

 どうやら、あなたは本当に異国へと降り立ってしまったようだ。

 

「ていうか、あんた流れ者か。その成りじゃかなりの腕に見えるが、なんだってこんなところで寝ているんだ? 金に困るような風貌には全く見えないぞ?」

 

 あなたは使い込まれた薄緑色の軽装の装備に身を包んでいる。

 ただ、あなたが潜っていた迷宮(ネフィア)では魔法一つで階層を攻略していたため、普段使っている武器は四次元ポケットに収納してあり、今は背負っている武器はない。

 傍から見れば、ただのホームレスが寝ているようにしか見えないと思う風貌だが、あなたの実力を一瞬で見抜いた衛兵の目は非常に鋭いとあなたは感心した。

 

 まあ、あなたにジェノサイド()され続けて毎回レベルが上がって強くなっていったノースティリスの衛兵とは比べるまでもないが。カルマ下げ、ウザし。

 

 


 

 

 衛兵が嘘を語っている様子に見えなかったあなたは、とりあえず先ほどの言葉を信じ、一通りの説明を受けた後、謝罪をして衛兵のもとを去った。

 

 去り際にこの町についての情報が欲しい、と衛兵に聞いてみたところ。

 

「ギルドに行ってみたらいい。一通りのことは何とかしてくれるからな。ちなみに、受付の嬢さんもかわいいの多いから目の保養になるぞ」

 

 そういって【ギルド】と呼ばれる名称の場所まで教えてくれた。

 ただ、最後の補足のところで下心丸出しではあったが。甲冑の下からでも鼻の下が伸びていることが容易に予想できた。

 

 気を付けろよ、と言いながら見送ってくれた衛兵には殺意が全くなかった。ノースティリスの衛兵ならば、怪しいと疑われてあなたのカルマが下がっていたことだろう。

 

 というより、観光客という言葉が出ていたところを思い返すと、この異国――オラリオは観光名所のような場所なのかもしれない。

 ならばあの衛兵の対応のザルさにも納得だ。いちいち怪しそうな観光客を相手にしていたらキリがないはずだ。

 

 天に上る壁――衛兵に聞いた通りなら、バベルと呼ばれる構造物の裏手であなたは気を失ってたようだ。

 裏手ということは、表通りがあると踏んだあなたはバベルの壁を伝うように歩いている。

 

 しかし、この構造物はいったいどうやって作られたのだろうか。

 ここまで見事に立派だと一度壊してみたくなる。核で。根元から粉々に。

 それかマニ信仰の親友(ロリコン鬼畜野郎)に*チキチキ*してもらって機械化して動かしてもらいたい。最高傑作と言いながら血の涙を流して。

 ただ彼の事だから必ずロリ化させるだろう。

 

 と、考えながら歩くこと数分。

 

 日に遮られていた場所が多かったが少し歩くと闇の切れ目が目の前に見えた。

 日差しの切れ目から足を踏み出す瞬間、太陽の光があなたの目を刺す。

 

 そこに広がっていた光景は――

 

 ノースティリスとは比べものにならない程の多くの人々が右往左往する、広大な広場。

 広場には、野外商店らしきものが多数並んでおり、あなたが見たことのない物を買っている人も大勢いる。

 

 通りゆく人々には外見的に人類種ではないものも多かった。

 耳が長いエレアのような風貌の者もいれば、頭に生えた耳や腕がふわふわとした体毛で覆われた獣人のような、あなたが初めてみるようなものもそこらを闊歩している。

 

 そして、その多くが衛兵の語っていたバベルと呼ばれる搭へ足を運んでいく。

 大口を開けて先のない暗闇を押し出すバベル――いや、確か衛兵は冒険者とダンジョンが織を成すと語っていた。

 

 ――今日は12階層まで潜ろうぜ!

 ――早く試したい……!新しくなった俺の相棒の切れ味を……ッ!!

 ――やっぱモンスターって異形で萌えるものだと思うんだよ。思わない?そっか……

 

 ということは、彼ら彼女らが足を運ぶ先はダンジョンなのだろう。

 

 会話の流れにモンスターに対する異様な愛情を布教するものもいたが、あなたは別に何とも思わなかった。

 性癖は人それぞれだろう。かくいうあなたも信仰する神に対する愛情は狂気の沙汰に近いのだ。

 あなたの神のためなら、核爆弾で都市区画ごと爆散させることなど容易。何ならあなたの腕を丸ごと捧げることも(いと)わない。

 尤も、本人――もとい本神はそんなこと要求しないとあなたはわかっているが。

 

 と、あなたは問題の本質へと戻ったが一つの疑問を浮かべた。

 

 ――今日は12階層まで潜ろう。

 

 ダンジョン。そこには何の疑問もない。

 12階層。これもなんとも思わない。今日は、と言っていたのでまだまだ階層は続くのだろうが、あなたが昔攻略したレシマスは50階層ほどあったのだ。今更だろう。

 

 ノースティリスにて、あなたは【すくつ】というレシマスに似た底なしのダンジョンへ足を運んでいる。

 底なし、の名の通り文字通り【すくつ】には最下層はない。潜れば潜るほど、より強いモンスターが生まれる底の見えない闇のようなもの。

 

 ちなみに、あなたは100の階層を降りた地点から、それ以降を数えることはやめている。

 底なしなので数えるのは無駄という結論――悟りに至ったのだ。

 

 そして。

 

 ――潜ろう。

 

 これだ。あなたはこれに着眼点を当てた。

 

 ダンジョンは潜るもの、という概念には別に問題はない。当たり前だ。

 だがおかしい。

 

 あなたは迷宮(ネフィア)を降りてきたのだ。

 降りてきた、ということは出てくる場所はダンジョンの中でないとおかしい。

 バベル上層から降りてきたという点なら話は合致するが、あなたはダンジョンでモンスターと出会い、これを殺してきている。

 

 つまり、ダンジョンから昇ってきた。という事実で、あなたがこの地に降り立ったことの状況が合致するのだ。

 これでは、現状に至るまでの経路と記憶のかけらが一致しない。

 

 やはり壁の割れ目から出てた光はムーンゲートと同じ類のものだっただろうか……?

 入ったものをことごとく異界に飛ばすあれならばこの矛盾にも納得がいくが……。

 

 顎に手を当てう~んとうねるあなただが、答えはまるで出てこない。

 

 ……まあいい。

 あなたにとってはただ、見知らぬ土地に降りてしまっただけのこと。

 

 あなたが頼りにしてるペットもおらず、右も左もわからない状況。

 

 昔のあなたならユニコーンの角がなければ狂気度が上がりっぱなしでやがては発狂待ったなし、といった感じだと思うがこの程度で狼狽(ろうばい)する今のあなたはいない。

 

 確かに困惑こそあれど、不安はない。

 むしろ、あなたは高揚感を感じつつあった。

 

 あなたがこの地に降りた原因がムーンゲートであるならば、出口は必ずあるはずだ。

 本来は異界の境界線を越えた瞬間、ノースティリスに帰還できるのだが、まだこの世界にきて間もないので実際に試してみないとわからない。

 

 もしかしたら、このオラリオのダンジョンへ潜らなければいけない可能性も出てくるかもしれない。

 だが問題はない。

 

 手持ちには愛用の武器、魔法のストックも無限に近い数ある。一部は除くが。

 

 さらには四次元ポケットに数百発ほどの核爆弾を詰め込んでいる。

 いざとなればこの都市を丸ごと吹っ飛ばして出口を見つければいいだけだ。

 

 というより、あなたはこの世界のダンジョンにどれほどのモンスターがいようとあなたの手にかかれば確実に殺しきれる自信があった。

 そも、あなたはノースティリスにて神を召喚し、これを殺すことに成功している。

 

 神の剥製が欲しかったあなたは仕方なく殺したのだ。

 たとえ相手が誰であろうと、それこそ狂気的なほど信仰している神であろうと己の欲望のために殺さない理由にはならない。

 例に漏れず、あなたが信仰しているクミロミ神とジュア神も例外なく殺害している。

 

 天地(てんち)開闢(かいびゃく)に等しい激闘を繰り広げた懐かしき記憶にあなたは思わず笑みを浮かべた。

 全身全霊を込めて、さらなる高みに挑戦してきた冒険者としての経験を久しく味わうことができていないのだ。あなたが強くなりすぎたが故のことだから仕方はないが。

 

 神の殺害後は、終わった後にこっぴどく叱られ何回か死ぬより痛い目にあわされたが、狂気的信仰心を持っているあなたからしたら、別に何とも思うことはなかった。ただ、死に近い痛覚を無限回味わっただけなのだから。死なないのだからどうということはない。

 

《ほんっっとに痛かったんだから! あなたも覚悟してよね!》

《僕も痛かった……。たとえ僕の愛するエヘカトルの一撃でもきっかけはあなたが引き起こしたもの。……つまり、覚悟して》

《うみみゃぁ!!》

 

 片頬を膨らませながらあなたを殺そうとしてくるあなたの神は、それはそれは愛らしいものだった。

 エヘカトルはいつも通りで天真爛漫に殺してきたが。アレは言葉こそ通じるが会話が通じない。

 

 間が長くなってしまったが、つまりだ。

 

 わが家へ帰るための問題は何一つない。

 方法こそ不確定なものの、大抵のものであればあなた自身の力でなんとかなるはずだ。

 

 今はこの不安定な状況を楽しもう。

 

 あなたは胸の高揚感に身を任せて、異界――異世界(オラリオ)の地を踏みしめ歩き出した。

 

 

 

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