狂信者+ダンジョン=農家栽培   作:ストマフィリア

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少し短話的な


11話 初めての鍛錬は腐った座布団味

 

 あの一件から2日の時間を空けた頃合い。

 ベルとの特訓を約束したあなたは、その期間をベル育成のための試行期間としてもらっていた。何せあなたはペットの育成の際も妥協はしない主義だ。

 ノースティリスに居た頃のこだわりと言わなくも無いが、強くなりたいと願う者をあなたは全力で支援する癖があった。

 

 そうして、試行錯誤しながらベルの強化案を考えること2日。

 

 時間が経つのは早いもので、食事もせず餓死しながら体内時計で時間が経ったことを知った。

 ガリガリになった姿を見せるのもアレなので、祝福された激マズハーブを無理やり胃に叩きこんで腹を満たしたあなたは、ベルとの合流を果たしていた。

 

 ――それでは、今日からあなたによるあなたの愛弟子であるベル・クラネルの為の冒険者育成の稽古を始める。

 心の準備は良いだろうか。

 

「はい師匠(せんせい)! よ、よろしくお願いします!」

 

 場所はあなたの家。オラリオにある一軒家の割には程々に大きい庭。

 オラリオの街並みが朝日を浴びようとする時間帯。

 普段着で頭を下げて元気いっぱいな声量を上げるベルを前に、あなたは鼻で嘆息をついた。今日も元気いっぱいで何よりである。自前の白髪もフワフワで絶好調だ。

 

「それで、僕は一体何から始めればいいんですか?」

 

 首を傾げるベルに、あなたは笑顔でいくつかの選択肢を提示した。

 ベルを強くするために2日丸ごと餓死しながら悩んで悩んだ末に思い付いた案だ。どうか検討して欲しい。

 

 

 1、死の経験を食らい続け、死と痛みの恐怖に慣れながら技量を上げるプラン。

 2、これから一定の強さに至るまで三食ハーブ生活をするプラン。

 3、遺伝子融合機で手足を増殖させ戦いにとっての有利を重ねるプラン。

 4、餓死しながら経験値をこれでもかと稼ぐプラン。

 

 

 あなたはベルにこの中からどれかを選んでもらうことにした。

 そんなあなたの提案にうっそだろと言わんばかりにベルは驚愕。

 

まともな案が一つも無いんですけど!?

 

 何を言う。これでもまともだ。

 ベルはあなたのペットではない。隣人でありオラリオで2人目の友人だ。

 だからこそ、今言ったの全部まとめてやれボケが、などと言わないのである。これはあなたの優しさだ。

 まあ、一度は無理にでもやってもらおうと考えたが。

 

「これ全部僕にやらせる気だったんですか!?」

 

 だからその案は2日間の思考で撤回しただろう。あなたはジト目でベルを見た。

 

 ベルは駆け出し冒険者で耐久力に自信があるとは思えない。

 先日殴ったあの犬畜生なら全部まとめてやらせても耐えられるだろうが、残念ながら今のベルにそれを求めるスタミナがあるとも思えないのだ。

 

 それに3番以外の選択肢は比較的精神を病みやすい。

 あなたはもちろんの事、あなたのペットが一度心を壊して何度も自分からロープで首をくくった経験がある程には精神を病む。普通に何度か埋まりたいと思う。

 だからせめて全部とは言わず、どれか一つの中から選ばせようとしているのである。

 

「どれ選んでもキツそうだし安心できる要素が一つもない……ち、因みに具体的に何をやるかについては聞いていいですか?」

 

 ドン引きしながら問いかけてくるベルには当然の権利とばかりに説明を入れる。

 

 

 まず1つ目はベルをシェルターの中に入れて、終末にぶち込むという案だ。

 

 まず《終末》と呼ばれる現象がノースティリスには存在する。

 特定の武器を振るうことで稀に起こるこの現象は、荒れ狂うエーテルの嵐と共に周囲を地獄に変える。オラリオ風に言うならば、災害付きの怪物の宴(モンスター・パーティー)といったところだろうか。

 ノースティリスでは《終末狩り》と称して、その終末によって出現したモンスターをペットに倒させる育成方法が存在する。

 

 ベルはまだまだ駆け出しの身。這い出てくるモンスターに脅威は死を感じるほどの差があるだろう。

 だからこのプランでは、あなたの家に設置したシェルターの中で《終末》を発生させ、その終末の中で凌辱を経験し、死と痛みの恐怖に慣れてもらう所から始めてもらうというプランである。

 

 ベルにはその終末の場を、修行として生き残ってもらいたい。

 

「それは修行じゃないと思います!」

 

 む、何を言う。

 人間、生と死の境界を体感しなくては己の限界も知れないのだぞ。かつてのあなたも何度も死を経験した末に、この強さに至ったのだ。

 それにベルは駆け出しだ。限界なぞ、何百と越えなければ強さの果てには至れないだろう。

 

「限界の意味とは!?」

 

 死の果てにある。あなたの身をもって経験済みだ。

 

 もちろんこの世界の人間の命は1つのみで、ノースティリスの様に這い上がることができないのはあなたも把握している。

 だから、死にそうになった瞬間にはあなたの助けが入るという安心設計も付いてくる。なんと良心的だろうか。

 

 一通りの説明を入れると諦めたように困惑しながら左手を上げるベル。

 

「えっと……終末っていうのが何かは分からないんですけど。モンスターって一体何を相手にすれば」

 

 ドラゴンだ。

 

「ドラゴン」

 

 それと巨人も出てくる。

 

「巨人」

 

 そう、レッドドラゴンや巨人。エーテルの嵐が吹き荒れる中、その他諸々がわんさか湧いてくる。

 辛いかもしれないが、ベルには頑張って生き延びてもらいたい。

 

「……ごめんなさい。チェンジで」

 

 無情にもチェンジ発言をしたベルの目は死んでいた。

 

 

 

「じゃ、じゃあ2つ目は」

 

 仕切り直して2つ目の説明を求めるベル。

 

 2つ目は言葉通り、三食ハーブ生活をするだけである。

 分かりやすく説明をするために、あなたは《祝福されたモージア》を4次元ポケットから取り出した。

 

「これが、そのハーブって食べ物ですか?」

 

 ご明察。

 このハーブと呼ばれる植物は、ノースティリスに住む冒険者の誰しもが愛食しているモノである。

 他の能力が下がったりはしないしその他の副作用も無い。ただ単に食べれば能力が向上する。そういう代物だ。

 

 あなたの説明におっかなびっくりとベルはハーブを受け取った。

 

「食べるだけで強くなれるってことですか……? オラリオってそんな食べ物があるんですね。僕初めて知りました。いい匂いもするしおいしそう……」

 

 紅い目を丸々開いて不思議そうにハーブを見つめ、匂いを嗅いでみればいい匂いがすると述べるベル。

 見た目はただの草だが、ハーブなので一応いい匂いがするのは当然だ。

 あとハーブは正確にはオラリオの品ではなくノースティリス産なのだが、そこの説明は要らないだろう。要は強くなればいいのである。

 

 まあ、まずは試しに騙されたと思って食べてみてほしい。

 

「あ、はい。じゃあいただきます」

 

 そう言うと素直にむしゃむしゃとハーブを食べるベル。

 あなたは一言、ボソッと独り言をつぶやいた。

 

 

 *……本当に食べてしまったのか?*

 

 

「――んぐっ!? ま、マズ!?師匠(せんせい)、これ凄くマズイんですけど!?」

 

 突如、顔を青くして口を押さえたベル。

 まるで苦虫を丸々かみつぶしたかのような表情になったベルの様子を見て、あなたはニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。ハーブを吐き出さなかったのは誉めてあげよう。

 必死に水を求めるベルに、あなたはあらかじめ用意していた水の入ったコップを差し出す。もちろん汚水ではない。

 

 そう、これがハーブのクソな所だ。

 要するにハーブは基本激マズなのである。というかゲロまずだ。

 確かに、ハーブを食べれば能力値は上がる。それもコツコツ食べ続ければ飛躍的に上がる。

 しかし代償として、日頃の食事がハーブだけになることを強制されることになるのだ。

 

 因みに、筋力と耐久を上げるこの《祝福されたモージア》は腐った座布団のような味がする。口に入れた瞬間、何日も干していないような服を無理やりぶち込まれた気分になるのだ。

 まさにゲロまず。コレを三食食べていた頃のあなたの心境はいかに。

 

「うえぇ……コレ、ダンジョンの食べ物とかじゃないんですか? 絶対に人が食べていいモノじゃないですよぉ……」

 

 水で流し込み、ようやく回復したベルが吐いた言葉にあなたは心底同意する。

 しかし強くなるためには仕方ない。

 そう、仕方ない。

 

 あなたはベルに今食したコレと同じようなモノを合わせて4つ、朝昼夜の三食として毎日食べてほしいと伝えた。

 

「無理ですぅ……」

 

 泣きそうな目でベルが拒否してきたので、あなたは渋々と2つ目の案を取り消した。

 

 

 

 3つ目、遺伝子融合機で手足を増やすプラン。

 

 こちらも文字通り、ベルの手足を増殖させてやろうという案だ。

 戦いとは手数だ。供えられる武器が多い事にはメリットしかない。

 現にノースティリスでは複数の手を持っているカオスシェイプという種族が人気で、強さ的にも上位を席巻している。

 

 このプランでは、あなたがモンスターを召喚しそのモンスターの部位をベルに移植してやろうという名案である。

 

「僕、まだ人間でいたいので止めておきます……」

 

 死んだ目で却下された。

 

 

 

 4つ目、餓死しながら経験値をこれでもかと稼ぐプラン。

 

 ノースティリスではお馴染み、手っ取り早く能力やスキルを鍛える手段として最も有名な方法な《バブル工場》と呼ばれる無限乱獲である。

 

 ノースティリスにはダメージを受けると分裂する《バブル》と呼ばれるモンスターがいるのだが、このプランではその特性を利用する。

 

 手順としてはまずバブルを痛めつけてサンドバッグに吊るす。

 サンドバッグに吊るされた者は前に説明した通り、サンドバッグから解放されない限り不死となるが、ダメージを受ければ分裂するという特性までは消えないのだ。

 そして分裂し、地に落ちたモンスターはサンドバッグに吊るされていないし不死でもない。

 よってサンドバッグを殴るだけで無限にモンスターが湧くようになるのでこれを狩り続ける。

 

 後はこれの繰り返し。モンスターを経験値として己の糧とし、ステイタス上では強くなるという図式の出来上がりである。

 

「……方法はおかしいですけど。今までのだとこれが一番簡単そうですね」

 

 そう簡単だ。

 だからベルにはコレを四六時中、24時間ずっとやってもらう。

 

「……はい?」

 

 聞こえなかったか。

 ベルにはこのバブル工場の稼働を食事なし、休みなしで24時間やってもらう。

 

「死んじゃいますけど!?」

 

 安心して欲しい。死なないようにベルには地獄属性を持つ武器を予め渡しておく。

 地獄属性の持った武器はモンスターを切りつけるたびに体力(HP)を吸収するのだ。餓死中はガリガリと体力が削れていくが、地獄属性の吸収能力で削れていく体力を補おうという寸法だ。

 

 しかし、餓死中の苦痛は何度も続く。

 ベルには餓死の苦痛と、何度も同じことを続けなければならない苦痛に苛まれながらも経験値を稼いでもらう。

 因みに、終わった後には先程のハーブ等を大食いしてもらうが。

 

「ごめんなさい無理です……」

 

 死んだ目で却下された。

 

 なんだったらベルは泣きそうだった。

 

 

 


 

 

 

 後日、ダンジョンの中。

 

「……それで、結局お前はそのベルって子供をどうやって鍛えているんだ」

 

 もはやお馴染み、いつもの20階層付近。

 暗闇と木々が覆い茂る階層。そして見慣れた人蜘蛛(アラクネ)の姿。

 森林地帯でラーニェと会合したあなたは、この間ベルの育成話について語っていた。何故かラーニェは呆れた目を向けていたが無視だ。悲しきことにあなたはもう慣れた。

 

 そうあの日、結局ベルはあなたの提示した案を全て却下したのである。

 2日の間餓死しながら、何度も試行錯誤した育成案をやりたくないと否定されたあなたは少し首をくくりたくなる気分だったことを覚えていた。

 

「そのベルって人間は戦いも知らない子供なんだろう? 私みたいなのならともかく、子供にくらいは手心は与えてやればいいのに」

 

 手心を与えてあのレベルだというのに。

 そもそも手心が無かったらあなたは問答無用で全部ヤレと伝えてる。あなたの慈悲には神すら涙を浮かべるほどだろう。

 

「はぁ……そうだな。お前の邪知暴虐ぶりには神も泣くだろうな。ていうかそもそも、そんな無茶苦茶な育て方が通ると思っていたのか? どう考えても無理があるだろう」

 

 そこら辺はあなたのペットの実例があるから可能なのだが。

 ていうか、ノースティリスでは常識的なペットの育成方法なのだ。根性さえあれば何とかなる。なお精神面は死ぬ。慈悲はない。

 

 

「で、結局お前はどうやって育て始めたんだ? ……まさか、無理矢理やらせているわけじゃないだろうな?」

 

 ラーニェのジト目と質問を受けて気を取り直すあなた。

 

 まさかお前……と、人間を見下すような視線を向けるラーニェに対し、あなたはそこまで鬼ではないと返す。

 

 友人の廃人ならともかく、ただの農家で戦闘狂でもないあなたはベルの意思を尊重した。

 ――具体的には、あなたは上げた4つの案を出来るだけ薄め、限界まで辛さのランクを下げることによってベルが実行できるくらいに調整したのである。

 

 

 技術はあなたとの直接的な戦闘訓練で鍛え上げ、死の恐怖は偶に全力の殺気をベルにぶつける事で慣れさせる。

 各種ハーブの摂取は三食という決まりを撤廃し、2日に一食というルールに落ち着き、偶に含む良薬は口に苦しという扱いになった。

 因みにベルはこの決定に一番喜んでいた。うっすら泣いていたかもしれない。

 

 なおバブル工場は残念ながら稼働を断念した。

 改めて考え話し合った結果、ベルはダンジョンで生計を立てるために魔石を集めなければいけないある種の仕事があるのだ。ファミリアを存続させる大事な都合となれば、あなたも惜しみながら断念するほかない。バブル工場はベルを強くするためとしても拘束時間がかかりすぎる。

 故に選択肢から消すしかなかったのである。

 

 まあそれでも、ベルの育成方針はあらかた決まったという訳で。

 

 そうしてあなたは指針が決まったベルの育成に着手し始めたのである。

 

 今日も今日とて、ベルをみねうち付きの組手や短剣の打ち合いでシゴいてきたばかりだ。

 骨にひびを入れてしまったり、軽度の出血だったりを繰り返しながら稽古をしているあなた。

 一応、終わった後には《錬金術》で作ったポーションを与えているため負傷は無いが、稽古中に貰った痛みはもちろんそのままある。なので一度は根を上げるかと思ったのだが……。

 

 しかし、ベルは根を上げず今に至るまで辛い稽古に付いてきている。

 あなたのペット並みとは言わないが、まだ年端も行かないだろうベルがそれなりのガッツを持ち合わせていることに少し驚いたのは記憶に新しい。

 

 継続は力なり。この調子ならば、ベルは一通りの強さを身に着けることができるだろう。

 あなたは満足気にそう語った。

 

「…………」

 

 ……で、なぜラーニェは有り得ないもの見たような視線を向けてくるのだろうか。

 ここ最近、というか出会ってから一切向けられてこられなかった意外性抜群な視線にあなたは首をひねった。

 

「……いや、お前にまさかそんな常識的な感性があると思わなくて、な」

 

 返ってきた台詞はTHE辛辣な答えだった。

 ラーニェの蜘蛛の身体部分に背中を預けながら、あなたは少し頭上にあるラーニェの人間部分の紅い瞳を軽く睨んだ。

 果たして毎日のように出血と骨にひび入れを繰り返していることを常識的と呼んでいいのかは謎だが、それはそれとしてラーニェの言い分には文句があった。

 

 一体ラーニェはあなたの事を何だと思っているのか。

 オラリオに降り立ってから、あなたはキチンと常識に沿った判断をしているというのに。

 

「何ってそれは悪逆非道……ああ違うな、非道下劣人間性の欠如の全部を合わせた頭のおかしい人間がお前だと思っているけど何か?」

 

 メンタルに深刻なダメージを受けたあなたは咄嗟にラーニェの蜘蛛体に顔をうずめた。

 あなたの凶行にラーニェはビクンッを体を震わせる。

 

「――ちょっ、くすぐったいんだけどっ!」

 

 うるさい。イジメにしか聞こえない言い分を投げつけてきたラーニェが悪い。その仕返しと思え。

 

 因みにさりげなくあなたがラーニェの蜘蛛部分の身体に寄り掛かってる理由だが、ここ数ヶ月前に彼女自身の誘いに乗ったらいつの間にか習慣になっていたのだ。

 始めは何だったか、毎回木に寄り掛かってたり立ち話ばかりだと辛いだろう。などと言う話からだったか。赤面しながらも提案してくる彼女にサラッと近づいて背を預けたのだ。

 

 まあ今となってはどうでもいい一幕だ。メンタルを傷つけられたあなたは枕代わりにしているラーニェの蜘蛛部分に甘えたくなった。

 ラーニェの背中はほんのりと暖かくて気持ちがいい。売ればいい枕になりそうだ。

 

「だからって顔をうずめて息を吐くなっ! くすぐったいって……ひぅっ!」

 

 瞬間、いい加減にしろっ! と言葉を吐いて蜘蛛の身体を揺らしあなたを跳ね飛ばすラーニェ。

 

 こういったやり取りにももう慣れたもので、出会ってからもう10ヶ月は経つ関係上、お互いに遠慮というものが無くなってきている。

 喜ばしい事ではあるのだが、この前の様に体が溶けかねない毒を吹きかけてくるのは止してほしいものだ。死にはしないが普通に痛い。

 

 跳ね飛ばされたあなたの体が大木に激突し背骨が折れ、肺の息が強制的に吐き出される。

 どうやら結構な威力なようで。もはや加減を考慮しないラーニェにある種の信頼感を感じるあなたであった。

 

「全く……もうっ」

 

 

 


 

 

 

「へぇ……あのラーニェが、人間の雄にすげぇ懐いてる。こりゃ驚いた」

「レイの話通り、か。ハァ……まさか本当に人間と関係を持っていたとは。ウラノスにどう報告したものか……」

 

 木々で隠れる暗闇の中。

 あなたの察知スキルで感じた2つの気配からそんな会話があった。

 姿形こそ見えないが、声色からして両方とも恐らく男。それもヒトではない何かとわかる。

 

「シンプルそのままに、でいいんじゃないのか? 見たところ敵意の欠片も見え無いしさ」

「そういう訳にもいかないだろう? 君たち異端児(ゼノス)にとって、人との交流は繊細さを要求されるのだから」

「あー……そうだな。オレっちはともかくグロスとか怒り狂いそうだ……」

 

 あなたが彼らに近づいて行かないのは、彼らがあなたとラーニェに危害を与える気が無いと悟ったからである。

 会話の内容からして、彼らはラーニェの関係者だろうか。

 

「喜ばしい……が、少し面倒な案件だな。……憂鬱だ。今ですら忙しいというのに…」

「元気出せってフェルズ、もしあれに接触するってなったらオレっちも行くからさ」

「ああ……まあ、そうだな。その時は頼んだ」

 

 そんな会話を区切りに、あなたの察知スキルの対象範囲から去っていく2人組。

 

 どうやら今度、あなたに関わってくる者がいるかもしれない。

 あなたはラーニェとの会話を楽しみながら、いつか来るどこぞの誰かとの出会いを待ち遠しく思い始めていた。

 

 

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