狂信者+ダンジョン=農家栽培   作:ストマフィリア

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12話 ★《クミロミサイズ》

 

「お、お疲れ様でしたぁ……」

 

 早朝、ベルの気の抜けた声が朝の空気に響いた。

 疲労困憊な様子の少年に、あなたも労いを込めてコップ一杯のジュースを差し出す。

 

「ありがとうございます、師匠(せんせい)

 

 何をしてこうなっているかと聞かれれば、今日も今日とてベルを強くするために鍛錬を継続しているあなたであった。

 内容は組み手やら、武器の扱い方やらとそれぞれ。終末特攻も無しでノースティリスに居た頃ではあり得ない程やわなトレーニングだが、ベルに合わせる形であなたは鍛錬を続けていた。

 

 もちろん、2日に一食のハーブ摂取も継続中だ。

 ということでベルよ受け取れ、今日の分のハーブである。

 

「うぇ……い、いただきます」

 

 あなたが懐から各種ハーブを取り出し、ベルに渡すと心底嫌そうな顔をして受け取った。心なしか表情も青くなっている気がする。

 

「だってコレ、本当にマズイんですよ? 腐ったものとか酸味とか苦い味の集まりで……もうなんていうか、食べるのが苦っていうか……辛いっていうか……。正直、僕人間が食べれるようなものじゃないと思うんですけど。師匠(せんせい)の故郷ってコレを皆食べてたんですよね?」

 

 ベルの問いにあなたはしっかり頷いた。それはもう首が千切れそうなくらい勢いつけて頷いた。

 

 ハーブはノースティリス民が総意で認める万能な食べ物だ。一般人にとっては腹にも溜まるし栄養価もそれなりにある食べ物として。冒険者に至っては強さを求めるための常用食にすらなっている。

 まあ、常食した地点で大体その者は精神を摩耗し始めている場合が大半だが。普通に死にたくなるレベルで辛い。

 

 しかし実際、強さを得るための重要なファクターではあるので仕方ないのである。

 仕方ないから心を犠牲にしているのだ。

 三食ハーブ生活は、強さを精神の等価交換の例に最も当てはまる諸行だ。我慢さえできれば誰にでもできる分タチが悪い。

 

 だが逆説的に、ハーブ摂取はダンジョンで経験値を漁るよりも敷居が低いのだ。

 その点で言うと今のベルにとっては適している修行方法と言えよう。死にもしないのだから。

 

「辛さで言ったらこっちもどっこいですけど!?」

 

 それはそう。

 ハーブ摂取は冒険家業と違い死ぬリスクは無い。自殺したくなる気持ちは生まれると思うが。

 

 げんなりするベルに、まあ我慢だ我慢と告げるあなた。

 一応、死にたくなる衝動がベルを襲った時が来たならあなたは全力で矯正する気でいるので安心して欲しい。

 

「矯正? 言い方がやけに怖いんですけど……何をする気なんです?」

 

 具体的にはショック療法で記憶を消す計画だ。みねうちの全力を頭にでもぶち込めば死にたくなってた頃の記憶など消し飛ぶだろう。

 

「ダメだやっぱりこの師匠(せんせい)頭がおかしい人だ!?」

 

 ガチ目のドン引きをしながらそう叫ぶ少年。

 遂にベルにまで可笑しい人間だと思われ始めたことにあなたは少し機嫌を落とした。

 

 

 


 

 

 

 早朝の鍛錬を終えベルと別れて少し経った頃、あなたは町中を歩いていた。

 

 ベルは今日もダンジョンへ直行の様らしい。

 何でも、3日前程から神ヘスティアが不在らしくやることがそれしかないのだとか。

 子供であるベルに黙って席を空けるのはよっぽどの用事があるのかと思ったが、眷属でもないあなたが深堀りする事でもないと考えあなたは何も言わずにベルと別れたのである。

 

 まあ、神は気まぐれで生きる存在だ。何をしてるかなどあなたの想像で測るには知恵不足という者だろう。

 

 

 閑話休題。

 

 

 ともかく、今日は農家としての仕事が休みで、ダンジョンに行く予定も無かったあなたは少し散歩がてらにオラリオの街並みを満喫している所だったのだが。

 少しいつもと様子の違う街並みにあなたは疑問を覚えていた。

 

「あ? 人通りがいつもより多いって? そりゃお前さん、今日は祭りの日だからだろうが」

 

 そこを歩く住民にそこはかとなく話を聞いてみれば、何でも今日はオラリオで年1回に行われる『怪物祭(モンスターフィリア)』と呼ばれる催し物が開催される日だという。

 オラリオに来て早10ヶ月強のあなたでも知らない祭りに首を傾げた。

 

「お前さん、もしかしてここにきて日が浅いのか? あの旗見ろよ。流石見に覚えがあるだろ?」

 

 上に指をさす住民の言うとおりに目を向けてみると、そこには【ガネーシャ・ファミリア】の紋様が記された旗が揺れている。

 説明に耳を傾けると、どうやら怪物祭(モンスターフィリア)というのは闘技場を1日丸借りして、ダンジョンのモンスターを調教する様子を見せしめにする祭りなのだという。そして、その主催が【ガネーシャ・ファミリア】らしい。

 

 ふむ、この祭りはノースティリスで言う《ペットアリーナ》に近い部類だろうか。

 

 アレはあなたの育てたペット(仲間)と相手のペットを殺し合わせ競い、その様子を眺める娯楽なので厳密には内容は異なるのだが。まあ、大衆の見世物としての催しには違いない。

 どうやらオラリオだとモンスターの調教(テイム)で観客を沸かせるのが目的の催しの様だ。殺し合いを省き、ただただモンスターの調教に重点を置いた祭りだと思って問題ないだろう。

 かの地であるノースティリスでは思いもつかなかった祭りにあなたはまた一つ感心した。

 

 そもノースティリスではモンスターの支配(テイム)に1日も要らないのだ。 

 

 そこらいるモンスターにみねうちをぶち込み、瀕死になったところに《支配の魔法》をかけてやればそれだけで支配(テイム)完了だ。面白味も無ければ観客が湧く要素も無い。数秒で終わる行動に催し物としての価値はないのである。

 

 しかしオラリオはどうだ。

 モンスターとの調教(テイム)に1日という時間をかけ、ジェノサイドパーティの様に魅せる行動を取る。

 相手の意思を徹底的に叩き折り、服従させ、使役する。

 それまでの工程を観客に魅せ、娯楽として昇華させる思考などノースティリス民の誰にも有りはしないだろう。

 

 なんと素晴らしい。

 まさか演奏やジェノパ以外にも魅せる事に重点を置いた祭りがあろうとは。やはりこの異世界、オラリオはいろんな意味で侮れない。

 

 話を聞いていけば聞くほど楽しそうな祭りに、あなたは興味をそそられた。

 

「調教はどこでやってるって? ああ、この先のメインストリートを通った場所に闘技場があるからそこでな。多分もうちょいで始まるから――っておい!?」

 

 話をしてくれた住民に一言感謝を告げると、あなたは一目散に闘技場へと駆け出す。

 

 東のメインストリート。

 視線を周りに向ければいつもより盛り上がりが激しい住民。やけに増えた出店の数々と美しく彩られた花とリボンの通り道が目につく。

 まるで『ノイエル』の冬の聖夜祭(クリスマス)が行われているかのようなその光景に、少し懐かしみを覚えながらあなたは足を進めたのであった。

 

 

 

 足を運んだ闘技会場は熱気と歓声に包まれていた。

 モンスターが一度咆哮を上げれば歓声が、調教(テイム)する者が魅せれば熱気が湧く。

 いかんせんダンジョンや命の危機という物に縁が無い一般人ほどその傾向が強く、祭りは最高潮の盛り上がりを見せていた。

 

 興味本位で見に来た祭りだが、ジェノパにも劣らない盛り上がりにあなたは結構満足していた。

 

 物や方向性は違えど、祭りの盛り上がりについては文句なしの一点に尽きる。

 それに闘技者の見せ方も良い。強さ的にはレベル2や3程度であなたに劣るものだが、アレは観客に魅せる動きを弁えているタイプだ。

 

 ジェノパでも言えることだが、ただ殺したり調教するだけではだめなのだ。それではあまりにも()()()()

 観客を楽しませるには『結果』がどうこうよりも『過程』をどれだけ楽しそうに魅せれるかに限っている。

 

 例え手段の内に実用的でない物が含まれていても、観客に魅せる為であれば実行する度量と技術。 

 ついでにあなたの実体験代わりに述べると、殺す方法に一癖を付けたり、開幕と同時に核を起爆して祭りの勢いをつけたりと、誠心誠意を込めた趣向が魅せる者には必要なのだ。

 

 その点で言うと、闘技場の真ん中で見せる闘技者の評価は中々に高い。

 一般人にも分かりやすく殺陣を繰り広げモンスターの危険度を示しつつ、それを躱して交わして調教(テイム)までの順序を観客に魅せている。実に合理的で魅力的な演舞だろう。

 

 あなたもふと、顎に指を当てあの場に立っていたならどのような調教手段を取っていたかを考えてみた。

 

 

 ――まず開幕の一発がてら核を起動。モンスターが核爆発よりも頑丈だということを観客に知らしめる。

 ――第2陣にサンドバッグに括り付け調教ならぬ拷問を開始。精神の凌辱を進める。

 ――しかしそれではお互いに動きが無く観客も見ていてつまらないので、第3におもむろにサンドバッグから開放し真剣勝負を始める。

 

 ――最後の仕上げに、真剣勝負にてメンタルと肉体をボッコボコにして絶対に適わない相手と認識させ屈服させる。

 

 

 ふむ、なかなかいいプランではないだろうか。

 

 あなたは道中、口のお供ついでに買ってきたジャガ丸くんを頬張り観客席に座りながら自身の立てたプランを完璧なものだと自負する。

 ノースティリスで常にジェノパを開いていたあなたはこういったプランを考えるのが得意であった。

 

 

 

 熱を帯びる会場で観戦を続けていたあなただったが、ふと視界の端に人影を視認する。

 

 常人なら見えない距離、一人前の冒険者でも小粒程度に見えるものだったが、あなたの探知スキルと常人の域を外れているフィジカルのおかげか、間違いなくその人物を視界に入れていた。

 

 覚えのある金髪と童顔。それと歳幼い少女の姿が。

 私服らしい容姿でそこらに建てられた一本の柱の頂点へ飛び立っていくアイズ・ヴァレンシュタインの姿を確認したのだ。

 

 割と真剣な表情で柱の上へと飛んでいくアイズを横目に、あなたは周囲の様子を確認する。

 闘技場内の中心を見れば活発な動きは見られない。どうやら今は休息時間の様で、観客を見れば興奮を収め他の者と談笑している光景が目に映る。

 

 だから……せっかくの休憩時間だ、と。

 

 あなたは見知った知り合いの元へ駆けつける準備を始めた。

 余った時間を有意義に使いたい気持ちや、せっかく見つけた知り合いに話しかけに行きたい気持ちもあるが、単にあんな場所へ飛んで行った少女が気になったのが主な理由だ。

 ともかく、あなたは闘技場を後にしアイズの向かった柱へと向かったのである。

 

 

 

 柱の真下へと移動したあなたは4次元ポケットから緑色の軽装のローブを取り出した。

 装備した者を*浮遊させる*ことができる、至って普通の装備である。あなたはこれを胴体に纏った。

 別に柱をよじ登ることは苦ではないのだが、少々時間がかかる上に労力もかかる。どうせ登るなら疲れない方法で登った方が楽だ。

 

 そうして、風を切って柱を登ってくと視界に映るは一人の少女。

 

「誰っ!?」

 

 あなたは至極当然の様に挨拶を交わすと、突然背後から現れたあなたに驚いたアイズが金髪を揺らして振り向いた。

 どうやら警戒していたようで、一瞬だが殺気めいたものを向けられてしまう。

 

 しかしあなたの顔を見たと同時、警戒を解いていくアイズ。

 危険が無いと判断してくれたのはありがたい。

 

「……あ、ジャガ丸くんの。ジャガ丸くんの……ファンさん?」

 

 ファンというか、ただの農家だ。ついでに冒険者だ。

 あなたの印象がアイズにとって薄いのか、開口一番に独特な愛称を告げられてしまった。

 

「あと、ベートを殴り飛ばした人」

 

 ついで暴行者めいた称号まで与えられてしまった。なんて不名誉だろうか。

 まあ、改めて考えると彼女と会うのはジャガ丸くんを売っている屋台でしかなかったか。確かにそれなりに話をかけたりはしていたが、彼女にとってのあなたはただの偶然同じ趣味を持った通行人程度のモノだろう。

 

 とりあえずあなたは自己紹介を含めた会話から始め、アイズは今ここで何をしているのか問いかけてみた。

 

「私は……今ギルドの人に頼まれて周囲の観察をしている。モンスターが町中に逃げたらしくて」

 

 なんと、非常事態の最中だったか。

 

 話を聞いていく限り、どうやら件の闘技会場から逃げ出したモンスターがいるらしくアイズはその討伐をギルドの職員に頼まれたとの事らしい。今は周囲を観察して、モンスターを探している最中だとか。ご苦労な事である。

 

「あなたはどうしてここに? 身体、浮いてるけどどうやって飛んでいるの? 」

 

 こてっ、と首を傾げてアイズがあなたを問う番になったところで、あなたは正直に質問に答える。

 こんな所に居座っているアイズが気になって寄ってきたこと、身体が浮いている理由については身に着けているローブがそういう効果を持った『魔道具』であることを告げた。

 

「そのローブが『魔道具(マジックアイテム)』? ……すごいね。飛ぶことができるローブなんて私初めて見た」

 

 そうだろうか、ノースティリスでは割と常識的な部類のエンチャント付き防具なのだが。それほど珍しいだろうか?

 

「うん。多分作れるのって【ヘルメス・ファミリア】の万能者(ペルセウス)くらい、かな? それに質も良くて高そう。私も欲しい……あ、でも借金が……」

 

 あなたの解答に目を見開いて驚くアイズを見て、あなたはこの効果を持つ装備がオラリオでは希少な部類であることを察した。

 これからは使用を自重したほうがいいだろう。変に目立つと困る。

 

 それと、なぜアイズはそんなにしょぼんな顔をしているのだろう?

 言葉の切れ目に借金がどうとかあったが……まさかその歳で()()()()のだろうか?

 

 あなたの問いに、返答の無い沈黙が返されたことで少し同情するあなた。

 その歳でカルマが底辺に落ちるのは中々に辛いだろう。衛兵(ガード)に攻撃され、買い物もまともにできずに蹴り飛ばされることもあるだろうが、心を強く保ってほしいものである。

 まあ、何だ。第1級冒険者なだけあって死にはしないと思うが、どうか強く生きてほしい。

 

「ぐすん……」

 

 

 

 

 そんなこんなで、周囲の観察を再開するアイズを横にあなたはただ傍観していた。

 捜索に協力したわけではないのだが、闘技場の方も休憩時間なこともあって単に暇だから傍に付いているだけである。

 

 しかし暇は暇。やることも無い為アイズと同様にあなたも周囲を見渡す。

 するとふと、人が蟻のように蠢いている集団の中にベルの姿を確認するあなた。

 

 彼に手を引っ張られている少女は恐らく神ヘスティアだろう。神域の気配とわっかりやすい姿恰好が記憶に焼き付いているためあなたは察することができた。

 ただダンジョンに向かうとベルは早朝に言っていたはずだが、あなたは一体どうしてまだこんな街並みにいるのだろうかと眉を顰める。それに何故3日前から帰ってこなかったという神ヘスティアと一緒にいるのかも気になるところだ。

 

 まあ、妥当に考えれば怪物祭(モンスターフィリア)を楽しんでいるという所が無難だろう。

 神ヘスティアとは偶然再会して、一緒に祭りを楽しんでいるという経緯は容易に想像できる。

 

 実際に飛んで事実確認をしようと思ったが、あなたは彼と彼女の間に入るのは流石に無粋だと考え少し自重した。

 遠目で見たベルの笑顔を見て思いとどまったのもある。楽しそうにしている所に第三者の横やりを入れるのも気遣いに欠けるだろう、という思考が働いたのである。

 あなたも神との楽しい団欒に水を差されたら思わずぶち殺したくなるのだから。

 

 あなたは自分が嫌がることを他人にやらない思考を持ち合わせていた。

 

「見つけた……!」

 

 そうこうしている内に、どうやら徘徊しているモンスターを見つけたらしくアイズが反応する。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】!」

 

 それはこの世界の魔法の詠唱だろう。

 アイズは一言そう唱えたのち、すぐさまその場から飛び立って行く。

 

 空気を置き去りに、突風を吹かせて宙を駆けるその姿は風のルルウィを彷彿とさせる。

 流石に第1級冒険者(Lv5)なだけあって、飛んで行ったアイズの速度はノースティリスでも随一の速度だとあなたは認識した。

 ひゅう、と思わず口笛を吹いて称賛をしてしまうくらいには素直な評価だ。

 

 見ればアイズが徘徊していたモンスターを刹那の内に倒し、切り伏せている光景があなたの眼に写る。

 

 強さも申し分ない。若干耐久と力量に問題があると察するが、それを補う速度がアイズには備わっている。あの調子ならば、並みのモンスターは相手にならないだろう。

 

 あなたも様子を見がてら、そこら辺の屋根を着地点に柱から飛び降りる。

 そうして屋根伝いにアイズが戦っている元へ走って向かっていく。飛んで行ってもいいのだが、先のアイズの言葉通りならローブの浮遊は人の目を引くだろう。

 あなたはそこまで目立ちたくも無い為、自重しているのである。

 

 近づくにつれ、振動と轟音は大きくなる。時折建物の陰から花や触手のような物体が見えており、何かしらが暴れているのだと考えた。

 

 音のする方に走ると、そこそこの広さの通りにおいて先ほど目にした花のようなモノが蠢いていた。

 

 あなたは()()を見て、眼を見開き――

 

 

 ――それは花、だ。

 ――それは植物。新種の。あなたの知らない植物だ。

 ――それはモンスター。地面から生えた触手を振り回し、素手の冒険者を手玉に取るそこそこ強めのモンスターだ。

 

 

 だが、見た目が植物であることには変わりなく。

 そしてあなたは、狂喜的な笑みを――浮かべた。

 

 

 

 あなたは狂信者だ。

 移る世界が変われどその心持ちは変わらず、依然あなたはあなたの神である彼女達に尽くし、喜ばせることを目的としている。

 

 そして、あなたの神が喜ぶ方法は他でもなく彼女たちが好む物を『捧げる』ことだ。

 

 鉱石、野菜、種、死体、など。

 あなたは常日頃からそれらの類の物を欠かさず捧げることを日課としている。

 全てはあなたの神を喜ばせようとしているために。

 全てはあなたの忠誠心と信仰心を証明するために。

 

 果たして、その思いは今もなお変わらず。

 神は好む物を欲している。そしてあなたはそれを捧げ続ける。

 そして今目の前に、()()()()()()()()()()()()()()()がそこに鎮座している。

 

 そう、植物だ。

 つまりはあなたの神であるクミロミが好む捧げ物だ。

 ならばどうして、それを刈り取らんとする思考が生まれようか。

 

 スラリと、自問自答の答えを表明するかのようにあなたは4次元ポケットから一振りの大鎌を取り出した。

 

 あなたの愛用武器であるそれは突然虚空から現れ、緑色の刀身を曝け出す。

 持ち手に絡みついた緑のツタは、まるで長年に渡って成熟した大樹に絡みつくように美しく存在している。

 一振りすれば、霊布で出来た大鎌がフォンッと軽く耳を傾かせる快音を上げた。

 

 冒険者が、神々が、一目見ただけで魅了されるだろうその姿。

 しかしてその実態は、ただの農作物を刈るだけの武器。

 芸術的なまでに完成されたソレは名を★《クミロミサイズ》と呼び、あなたの神クミロミによって下賜られた武器であった。

 

 

 そうして、あなたは単身で宙を駆けながら花のモンスターへと突進する。

 

 もはやそこに周囲の目を気にする思考は無く、余裕もなく、気も無く。

 ただ、半月に形取られた大鎌で花のモンスターの首を掬う冒険者の姿だけがそこにはあった。

 

 

 

 

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