狂信者+ダンジョン=農家栽培   作:ストマフィリア

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まずは短め


14話 レアモンスターだ!殺れッ!!

 

 ある日のあなたは少々不機嫌だった。

 

 それは、ダンジョンに入って数時間が経った頃だっただろうか。

 ダンジョンの外は丁度夜時だと体内時計で悟ったあなたは、そこら辺の岩影で4次元ポケットの魔法を発動。

 そこからいつも使用している祭壇を取り出し、両膝を地につけて祈りを捧げていた。

 

 祭壇とはその名の通り、神に祈る際に供え物を捧げたり祈りを捧げるための道具である。基本的に部屋の横半分を埋めるか埋めないかのバカデカサイズで重量も大木数本分に匹敵する。常人が持てば体が潰れて数秒の内にあの世行きだろう。

 そんな物を持てるあなたは、廃人とは言えずともやはりノースティリスの上位冒険者だ。

 

 話を戻すが、あなたの祈りは毎日のルーティーンである。

 きっかり朝昼夜に行うため、あなたは普段4次元ポケットに祭壇を常備しており、時間となったらすぐにでも祈れる体制を作っている。

 

 本当は祭壇が無くても祈れるが、そこはあなたが狂信者たる所以だ。祭壇を設置しなければ満足しないことから、ギルド内や大衆の面前等のよっぽどの理由がない限り祭壇を使う。

 

『■■■――っ!!!』

 

 祈りとはいついかなる時もあなたがあなたの神の事を頭の片隅に想っているという証明であり、ノースティリスで冒険者になったあなたが今までも欠かさず行ってきた大事な儀式である。

 とてもとても、大事な儀式なのだ。

 

 ――それ故、祈りを捧げる最中に邪魔をする者は確実に殺す。

 末代まで、子に至るまで鏖殺する。

 対象がモンスターだろうが人であろうが関係ない。

 

『■――ッ!?』

 

 ぶちゅんと。

 言質通り、あなたは祈りを捧げる最中背後から襲い来るモンスターを《混沌の矢》の魔法を放ち一撃で肉片に変えた。咆哮も絶叫すら許さない刹那の抹殺。あなたに潰れた肉片と血が降りかかる。

 死に至らしめるまでの思考などなく、ほぼ無意識下による反射での殺害だった。

 

 見下す視線を投げてみると、それは20階層から下に生息するだろうトロルと呼ばれるモンスターだろうか。投げ散らかされた肉片から特徴を見出し、あなたはそう予想した。

 

 さて、あなたは先の宣言通り、祈りの邪魔をした者は確実に殺す。

 末代まで、子に至るまで、その宣言に違いは無い。

 あなたの祈りを邪魔した罪を凶器に、祈る間もなく殺す。

 

 あなたは4次元ポケットから愛用武器である大鎌を取り出して、自身の速度を最大にした。

 吹き荒れる暴風。狂信者の狂風がダンジョン内を埋め尽くす。時よりすれ違う他の冒険者はその風に驚きこそすれど、残像すら残さないあなたの速さには気づきもしなかった。

 これより、ダンジョン内に住むトロルはあなたの手によって鏖殺されるだろう。

 

 それが祈りを捧げている者を妨害したモンスターの末路であった。

 

 まあ、後でどうせダンジョンから生まれるのだが。

 あなたの中でトロルというモンスターは鏖殺する対象になった。それだけの事である。

 

 

 掃討終了。

 

 あなたが掃討を終えた頃には、不機嫌なオーラを漂わせ全身が血と肉にまみれた姿恰好であった。ベタベタとしていて気持ちが悪い。

 適当な場所に座って全身にかかった血と肉片を4次元ポケットからタオルを取り出して拭き取るあなた。

 

「……なあフェルズ、オレっち今からアレに話しかけなきゃいけないのか?普通にいやなんだが、全身血まみれだしよ。なんかすげぇ不機嫌だしよ」

 

 ふき取っている最中、どこからともなくぼそぼそとした音量で声が聞こえてくる。

 いや、どこからともなくは訂正だ。あなたはその位置を把握していた。

 そしてつい先日聞いたような、ノイズが特徴的な声色も同時に流れてくる。

 

「せめてラーニェの合流を待たないか? 用事があって少し遅れるって言ってもすぐだろ?」

「しかし私たちのどちらかが行かなければ話も始まらないだろう? 大丈夫だ、私の見てきた限りでは初対面の相手に対して危害を加えることはないだろう」

「フェルズ? それはオレっちの目を見ながら言って欲しいんだが?」

「……多分大丈夫だ。恐らく、メイビー的に。だから頼んだぞ、リド」

「おぉい!? 安心できねぇって!?オレっち殺されたくな……て、ぬおぉっ!?」

 

 うるさい、さっきからうるさい。

 ぼそぼそ声を超えて大声のツッコミが聞こえたあなたは騒音に耐えかねて、嘆息をつきながら声色の主へと姿を現した。

 

 木陰から身を出したのは赤緋色の鱗と雄黄の瞳が特徴な見ず知らずの蜥蜴人(リザードマン)

 と、全身を黒衣で包んでいる見ず知らずのリッチ。

 

「……」

 

 急な出会いに静寂が響く数秒間。

 蜥蜴人(リザードマン)とリッチはこれからどう反応するか困っている様子を見せている。

 

 あなたも少し、両名を見ながら思考を働かせていた。

 

 ……今日はやけに厄日だ。見ず知らずのモンスターに祈りを邪魔された上、体中を返り血でベタベタにされてしまった。

 当然と言えば当然だが、そんなあなたの気は少々荒立っていた。

 ノースティリスに居た頃だと、核を数回ぶっ放すくらいには気が荒立っていた。

 

 まあ、だから当然というか。流れというか。

 

 ポクポクチーン、と間を置いて。

 あなたは目の前のモンスターを()()()()して、憂さを晴らすくらいは良いだろうと思考を終了させてから。

 直剣をスラリと抜いた。

 

「ちょ、待てぇぇ!!?!? おいフェルズ、どうなってるんだよぉ!危害は加えて来ないんじゃなかったのかぁっ!?」

「私はこの冒険者の倫理観が終わっているという情報しか知らん!危害がどうこうは予想に過ぎない!! とりあえずお前、一旦落ち着いてくれ!!私たちは話をしにきにぇゃぁぁぁ!?!?」

 

 引き抜いた無骨な直剣をあなたは目の前の喋るモンスター共に向ける。

 

 あなたが凶器を見せびらかしたのを見て、明らか怯えに怯えているモンスター達。リッチの方はなんというか、語尾の叫びが面白いほどに歪んでいた。殺せばいい声を上げて絶命してくれるだろう。

 

 よく見るとこのモンスターたちはオラリオでは初めてお目にかかる部類だということに気づいた。レアモンスターという類なのかもしれない。

 もしかしたらドロップ品も珍しいものを落としてくれるのだろうか。

 オラリオでは基本的に落とすことの無い、彼らの死体も残してくれたり……。

 

 そう思うと少しワクワクしてきた。

 

「目を輝かせて何を言ってるんだ!?」

「怖えぇ!! こえぇってこの冒険者!!てか、オレっち食ってもうまくねぇぞ!?」

 

 大木を背に怯えている2人。

 なに、死体を落とした時は安心して欲しい。あなたは拾ったものはしっかり処理する人間だ。どんな物であろうとちゃんと調理して食してみせよう。あなたは腐ったものをも消化できる胃袋を持っているのだ。

 

 さて、宣言も済んだところで解体の時間だ。

 これより一刀両断ののちモンスターの解体おば……いや、この世界では灰になるのでその必要はないのだったか。まあいい、とにかくブッコロベイベーを始めよう。今すぐに。

 

 ドロップ品は運ゲー。あなたに幸運の日は訪れていないが、落とせばラッキー。

 *ウキウキワクワク*と、レアモンスターににじり寄っていくあなた。

 

 の背後に、感じ慣れた気配が。

 

「やめろ馬鹿!! その2人は私の知り合いだ!!」

 

 脳天一閃。全力のパワーでぶち込まれるチョップに少しだけ昏倒する。

 頭蓋に少しだけヒビが入っただろうか。それほどに遠慮のない一撃を加えた相手は誰かと思えば……。

 

 いつもの蜘蛛足に上半身が人の形をしたラーニェが立っていた。顔を隠している兜もいつも通り着用済みだ。

 しかもチョップをしてきた犯人だということを示すかのように、彼女の手の側面には微量な煙が上がっているように見えた。

 

 そんな当人はあなたの横を通って眼前のレアモンスター2体に声をかけていく。

 

「全く……リド、あとフェルズ。大丈夫か?」

「あ、ああ。助かったぜラーニェ。マジでブッコロされるかと思った……」

「はぁ……フェルズ、だから言っただろう? コイツは理性こそあるものの倫理観と常識が欠けている頭のおかしい人間だ。せめて私がいない内に話しかけるのはやめておけ。死人が出る」

「……ああ。今後の為に留意しておこう」

 

 何とも不名誉な言い分がラーニェとモンスター2体から飛び交っているが、まあいいだろう。ラーニェの暴言及び暴力は仲を築くうちに慣れたものなのだ。決してマのゾな癖を持っているわけではない。ラーニェのコレは、友愛の表現という話である。

 

 あなたは先ほどの動乱を無かったかのように、さり気なくラーニェに挨拶をする。

 

「ん、ああ。……もうお前との仲だから察してるが、一応聞く。どうしてリド達に刃を向けた?」

 

 ナンデも何も、むしゃくしゃして殺したくなったから殺そうとしただけだが、それがどうかしただろうか。

 

 とはいえ、彼らがラーニェの知り合いというのなら殺すのも流石のあなたでも気が引くというもの。まあ、無関係ならブッコロを継続していたかもしれないが、あなたの癇癪にラーニェを付き合わせる訳にもいかないだろう。友人であるとはいえ、そこの礼儀は弁えている。

 あなたは笑顔でそう言ってから、殺そうとしたモンスター2体に一言謝罪を述べたのちに直剣を収めた。

 

 瞬間、正面を見ると目に見えて瞳を濁らせるラーニェと他2体。

 

「……な? こういう人間なんだ。コイツは」

「なるほど。よし、オレっち絶対今後ラーニェがいない所で話しかけないぜ。まだ死にたくねぇからなっ!」

「…………胃が痛い。もうこの身体には無い筈なのにどうして胃痛が……っ!」

 

 やけに肩をすくめていたラーニェの一言を区切りに、蜥蜴人(リザードマン)とリッチは何故かあなたを異常者を見るような目で見始めるようになった。

 

 解せん。

 

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