狂信者+ダンジョン=農家栽培   作:ストマフィリア

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小話的なやつ。
あっちの話が多め。



23話 ぐるぐる回るよ水没トロッコ

 

 昨日の夜中は()()()()()を夜通しこなしたあなた。

 眠い眼を擦って早朝を迎え、ベルとのいつもの鍛錬の日々。何やらやたら今日のベルは元気な様子だったため、容赦なく問答無用でぶちのめそうと気合を入れるあなた。

 

「ファイアボルト!!」

 

 そうして鍛錬の最中、あなたはベルが魔法を使った事に目を見開く。

 

 走る稲妻の様な爆炎を放つ魔法。先日の鍛錬には見られなかった、ベルの新しい魔法である。

 

 魔法が欲しい欲しい、お目目キラキラな様子を見せていた先刻のベルではあったが、まさかこうも早く望んでいた魔法に恵まれるとは。などと、そんな簡略的感想を思いつくあなた。

 やけにウッキウキで元気な様子だったのはこれが原因であったことも理解した。

 

「なんで魔法がいきなり発現したか、ですか? ……えーと、ちょっとやらかしてと言いますか。お高いモノに手を出してしまったと言いますか。……って、ちょっと待って師匠(せんせい)! 頭ワシャワシャしないでくださいー!」

 

 やけに言い渋るベルにあなたは圧をかけて接近し頭をワシャワシャしてやると、ベルはようやく白状した。

 

 どうやら魔導書(グリモア)に無意識的に手を出してしまったとのことだ。

 酒場でもらった本を貸してもらい、それを読んでしまった結果魔法が発現したと。

 もちろんベルに、それが魔導書であったかどうかを判別できる術と判断は無く、結果的に事故のような形で起こってしまった魔法発現であったとベルは述べた。

 

 当然、人の良いベルはそんな高級なモノを使ってしまった罪悪感から本を貸してくれた酒場へ謝罪。そして大将であるミア母さんのお達しにより許されたようだ。

 

 被告人ベルは無罪。無罪放免である。

 

 借金を作ることなく無事に済んだことを祝うあなたであった。

 デメリット無しで生涯使える魔法が手に入ったことは、なかなかデカいのではないだろうか。

 

「そう聞くと最低な感じに聞こえるからやめてください……。いや、実際許してもらえなかったら僕本当に最低な人になってたから何も言えないんだけど……」

 

 ガックリとそう気を落とすベルにあなたは疑問を純粋に浮かべた。

 タダでモノが手に入ったのだ。それもカルマの減少無しで。喜ばずしてどうするのかと。

 

師匠(せんせい)ってこう、あれですよね。罪悪感とか絶対ないですよね。人の心が無いっていうか」

 

 HAHAHA。

 良し、ベルは魔法が手に入ってどうやら調子に乗っているらしい。

 そこまで調子のいい事なら、問答無用で今日の鍛錬を行おう。

 

 あなたは満面の笑みを浮かべながら、ベルに向け《ファイアボルトの魔法》を詠唱した。

 

 ベルと同じ、走る稲妻の様な爆炎を放つ魔法が銃の形をした指の先端から放たれる。

 

「ヘブっ!?!?!? ゴバッッッッ!?!?」

 

 それも連射。情け容赦のない『ファイアボルト』の乱れ撃ちである。

 なお、威力は底の底に落として放っているため命に別状はない。一発ごとに体が吹っ飛ばされているが命は無事だ。問題ない。

 

「ちょ、すびば!? ごべんなざい師匠(せんせい)!!?」

 

 無様に吹き飛ばされながら謝罪と悲鳴を上げる少年の姿。

 そんなこんなで、今日も今日とて鍛錬に身を費やすベルであったのだった。

 

 

 

 

 

 さて、その日の昼頃である。

 

 ベルとの健全な鍛錬を終え、あなたは家の中に設置しているシェルターへと足を運ぶ。

 シェルターを降りきればそこに広がるは満天の青――に見せかけた天井と、緑色と土色に染められた地面。

 

「ああ、お前か」

 

 そして、藁帽子を被り蜘蛛足を器用に使いながらあなたが作った畑の作物を収穫しているラーニェの姿であった。

 

 白髪を揺らし、病人のような白肌を所々土色に染めている彼女だが……その様子はやけに美しく(さま)になっている。思わずあなたも足を止めてしまったくらいだ。

 案外、彼女にとっての天職なのかもしれない。

 

「その……どうだ? お前に言われた通り、ここの作物を片っ端から収穫しているんだけど。ちゃんと出来ているか?」

 

 収穫された作物をかごに入れたモノを見せて問うラーニェ。

 一目したが問題はない。シェルターに籠ってばかりでは体も鈍るだろうと、あなたの仕事を少しだけ任せてみたが十分な成果である。

 

「そ、そうか。それと……」

 

 少し頬を上気させたラーニェが体をうずうずとさせている。

 

「私のこの格好だけど……これもどうだ? に、似合っているか?」

 

 ラーニェは今、あなたの装備の余り物であった白い薄布に身を包んでいる。ワンピースという衣服だ。

 畑仕事には向いてないだろう恰好ではあるのだが、あなたの手持ちの女服はこれしかなかったため仕方なく贈ったのだ。

 

 それをラーニェは、身を揺らして靡かせている。

 

 ……どうやら感想が欲しいようであるため、あなたは正直に先述と同じように述べた。

 やけに美しく(さま)になっている。思わずあなたも足を止めてしまったくらいだ。

 

「……っ! そそそそうか!! そうか……ありがとう」

 

 挙動不審な反応をしたラーニェはあなたの感想を聞いて頬を赤に染め上げた後、藁帽子を目元まで被り切ってあなたとの視線を切った。

 その下にある表情がどんなものであったかは確認できない。

 しかし、口角が少し緩んでいたところを見るに恐らく笑みでも浮かべているのだろうと、あなたは勝手に考察するのであった。

 

 

 まあ、それはそれとしてあなたはラーニェに話しかける。

 あなたがシェルターへ降りてきたのは他でもない。ラーニェに対する用事があるからなのだ。

 

そうか……似合ってる、のか。これが

 

 用事があるのだが。

 

ラウラに、可愛い服を着てみろと言われてはいたが……案外、良い。悪くない。これなら……

 

 用事が、あるのだが。

 

「ッ! あ、ああすまない! 何か用でもあるのか?」

 

 やけにトリップしていたラーニェの意識が戻ってきた。

 この応答に答えなかった場合、先ほどのベルと同じように『ファイアボルト』でも打ち込んでやろうと思ったが、要らぬ心配だったらしい。

 

 ともかくあなたはラーニェへと要件を語った。

 それもラーニェの今後に関する大事な用件を、だ。

 

「? なんだ。言ってみてくれ」

 

 少しだけ真剣な表情になった彼女に、あなたも簡略的な一言を彼女へ告げた。

 

 ――ラーニェを、人間のようにさせることができる準備が整ったと。

 

 

 



 

 

 

 

 遠い、世界の狭間を超えた別の場所。

 丁度どこかの街で終末を呼び、阿鼻叫喚と混沌が渦巻く、そんな世界の辺鄙な一角。雪空が覆う果ての地に、あまりに場違いともいえる豪邸がポツンと立っていた。

 

 そんなメルヘンチックな豪邸に来訪するは、とある2柱の神。収穫のクミロミ、そして癒しのジュアの名を持つ神である。

 

「ここに彼のペットがいるって話だけど……ねえクミロミ、本当なの?」

「ああ。僕が……彼の友人に直接聞いたからね。多分……この家に居ると思うよ」

 

 彼女達はそんな豪邸に住む一匹のペットに用があり来訪したのだ。

 

 訪問すれば、まず現れたのが豪邸の主である冒険者。すくつの奥底へと潜った末『廃人』へと成れ果てた1人の人間であり、あなたの友人の一人だ。

 彼は来訪した神に対して、紳士のようなお辞儀をしたのちに豪邸の中を案内する。

 

 そうして案内された先。豪邸の庭へ辿り着いた2神が見たものは。

 

「……がぼぼ()、どうも神様方。こんな辺境にある主人のごぼぼぼぼ(クソ豪邸な家)……に何の用で?」

 

 豪邸の主であるペットの一人、別世界からの来訪者であるケンタウロスが長方形に線路の引かれたトロッコに詰められ、ぐーるぐーると水没を繰り返している光景であった。

 

 もちろんその眼は死んでいる。死人もびっくりな腐り具合だ。

 

「オレに用事で……ぶば(すか) ああ、オパートスの神さんのノイエルで食らってた罰ゲームの1000回ぶっぼぼぼがぼばっば(ブッコロしが終わった)から、戻るついでに挨拶を……そりゃご丁寧にどうも、こんな見苦しい姿ですびばせんねごぼぼぼぼぼ…………おいゴラ主人!! 今客人の前なんだからせめてトロッコ止めてくんないか!? 笑ってねぇでよぉ!?」

 

 何日も寝ていないことを証明しているだろう目の隈を付け、真っ青な表情で叫び散らかすケンタウロス。

 彼は水没トロッコと呼ばれる、イルヴァにて昔流行ったらしい耐久上げをその身で実験されている最中なのであった。

 

 

 

「それで、オレに何か用で? 挨拶はありがたいんすけど……神様方って結構忙しいんじゃ?」

 

 いったん休憩ということでトロッコから降りたケンタウロスは、いかにも高貴そうな椅子に座る神の前で地面に座り()()()()()

 本来なら、彼女達の信者にぶちのめされかねない諸行であるが、彼が異界の者であること、そしてあなたの関係者ということもあり大目に見られている。無礼講というやつだ。

 

 でなければ今頃、主人であるあなたの友人に八つ裂きにされている。

 

「もちろん忙しいわよ。当たり前でしょ? これでも神なんだから管理することなんてたくさんあるの」

「僕はそれほど……偶に信者たちと自然の様子を見に……下界に降りるくらいだ」

 

 ジュアは長い髪をフサッと靡かせ、クミロミは自慢のピエロ帽子の端をつつきながら口ずさむ。

 

「あ、でも彼が居た頃はまだマシだったかしら。時たま降臨するたびに彼、私達の仕事を手伝ってくれていたから」

「神様の仕事を手伝う人間って……字づらスゲェなおい……」

「彼……僕達の信仰者代表みたいな所があるから。他の信者も……彼ばかりは僕達に深く関わる事を許してくれてるしね。まあそうなるまでに何度か他の信者にミンチにされたこともあるらしいけど」

「うげぇ……流石狂信者。ちゃんと頭おかしいぜ」

 

 話題にされているのは、今しがた別世界を満喫中のあなたの話である。

 

 ノースティリスのあなたの知名度は神に関係する者であれば、その名を知らないと言わせない程だ。

 何せ、年がら年中信仰する2神の信者を増やすためにノースティリス中を歩き回っている狂人なのだ。勧誘を始めた頃の噂など疾うの昔に消え去り、今ではノースティリスで生きる者にとって既知であるべき当然の存在に昇華している。いや、別の神を信仰する者にとっては忌むべき存在でありもするが。

 

 昔のあなたは別の信仰者を見つけ次第殺害、大勢で戯れているとならば核や終末をブチ込むくらいの積極性を持っていた。

 今となっては、神もそれくらいは許してやってくれというお告げにより温厚に自重してはいるが、そのイカレタ時期の話は今もなお廃人を含む冒険者に語り継がれているのだ。

 

 ……因みに、もしその積極性が未だあなたに残っていた場合はどうなるかはお察しの通りだ。

 

 オラリオは神が住まう都市。住民もまた多くの神を信仰している。

 もしあなたが昔のままの性格ならば、都市に降り立った地点で発狂、そこから核の爆雷ループの始動である。その際犯罪者がどうとかはあなたの脳裏に無いだろう。あなたは間違いなくオラリオ中を爆散させまくる。

 

 ケンタウロスはあなたを頭のおかしい狂信者と罵っていたが、残念ながら今の方がまだマシになっているのであった。

 

 そうして、そんな狂信バカに畏怖と引き気味な感情が混ざった表情をしている最中。

 

「あっちの彼は……まだ冒険者を続けてる?」

 

 ふと、クミロミが問いを投げた。

 コテンと横に首を倒し、金髪を靡かせる彼女の一挙動は額縁にでも飾っておけるほどの美しさを放っている。あなたがもし間近で見たなら失神するだろう。

 

 そうなるとは知らず、ケンタウロスは正直に問いに対して答えを返す。

 

「あー、いやオレはそういうのを聞く前に死んじまったもんで。ただダンジョンに出入りしているくらいだから冒険者だとは思うが」

「そう……争いごとは……醜いから嫌いなんだけど……でも良かった」

「良かった?」

 

 クミロミが自身の胸に手を当てて安堵の様子を見せた。

 その様子を見たジュアが、呆れたような嘆息を吐きつつケンタウロスの疑問に答える。

 

「……彼、本当に根っからの信仰者だから。ここ数年、冒険者らしいこともせずにずっと信仰活動に付きっきりだったのよ?」

 

 苦笑気味にそう語り始めたジュア。

 やけに自身の信徒を心配するようなモノ言いに、ケンタウロスは胡坐をかく()()()()に頬杖を立てながら問いを続けた。

 

「信仰活動ってのは?」

「主に無信仰者の勧誘とか、偶に私やクミロミの玩具を作ってくれたりね。だからネフィア(ダンジョン)に入る事なんて滅多になかったし、すくつなんて()()()()()()くらい潜れるくせに、時間の無駄だって言って潜らないのだもの。どれだけ私達の事好きすぎるんだって叫んだか分からないわよ。……ってべ、別に私は彼の事好きってわけじゃないんだからね!何言わせるのよ!」

「いや……最後のは自滅だろ」

 

 身をもじもじとさせたかと思いきや、赤面を晒しいつものツンデレを発揮させるジュアである。

 説明ついでに最後の一文で勝手に自滅した訳だが、まあそれがジュアが特に冒険者に人気の神の一柱であることを意味付ける理由の一つでもあるのだ。

 

 なにせ人類――否、異形共々皆、ツンデレが大好物なのだから。

 

 それもあざとさ皆無の純正ツンデレとなれば、である。

 可愛いは正義。以上。

 

 それはそうとて、安堵の様子で微笑みを見せていたクミロミは一つ口ずさむ。

 

「彼は僕達の信者だけど……だけど彼は『冒険者』だから。あっちの世界で……ちゃんと『冒険』をしてくれていることが……少し嬉しい」

「神さん……」

 

「嗚呼……僕の大切なしもべ。君の全てを……僕は許すよ。だから『冒険』を……大事な冒険を……存分に楽しんできて」

 

 親心、あるいは信徒を見守る神心というモノか。

 表情をほころばせ、この場にいないあの狂信バカを想う神の御心に少しだけほっこりするケンタウロスであった。

 

 

 

「あ、そうだ。彼に関係することで……君に聞いておきたいことがあった」

 

 ちょっとした雑談を終え、さあ天界に帰ろうとする神々であったが。

 

 途端に何かを思い出したように口を開くクミロミ。

 次いでソレに割って入るようにジュアがケンタウロスに問いかけた。

 

「ねえあなた、あっちの世界にいた頃の最期って、彼に誰かの護衛を任せて死んだのよね?」

「? ええまあ。オレの同族……っていうか同僚みたいなもんですかね。オレは人間に襲われて瀕死になったもんですからどうしようもなかったんすけど、アイツは軽傷で済んでたから藁にすがる思いであの狂信ヤロウに任せましたけど」

 

 疑問符を浮かべたまま、当時の状況を語るケンタウロス。

 意図は分からない。今更あの世界にいた頃の最期について何を聞きたいというのかと思考するが……。

 

「その子の名前、もしかしてラーニェって言わない?」

 

 途端に出されたその名前に、一瞬呼吸を止めた。

 

「んなっ!? ……どうしてアイツの名前を? 廃人さん方にも言って無かったはずだってのに」

「その反応……心当たりがあるんだ」

「まあ、ええ」

「やっぱり、だと思ったのよね。やけに聞き覚えの無い名前だからちゃんと聞いておいてよかったわ」

 

 困惑に困惑を重ねる。

 ケンタウロスは進んで自身の過去を語らない。それは異世界の者だから、というより異界の知識を少しでも晒すことを避けるのが目的だからである。

 何せこの世界の人間は好奇心旺盛な者が多い。特に廃人。彼らに目をつけられればロクな目に合わないのは、プチを終末にブチこむが如く容易に理解できることだった。

 要するに保身のためである。

 

 故にもちろん、ラーニェの名前も一言たりとも語ったことは無いのだが事実、目の前の神は何故か彼女の名を知っている。

 

「丁度降臨する前の事よ。クミロミの所に信者が新しく一人入ったの。下界の子が勧誘キャンペーンする前のことだったからちょっと珍しい時期だなって思っていたんだけど……そしたらその名前がね」

「ラーニェだった、と」

「そう。多分……向こうにいる彼の手ほどきで……僕の信者になったんだと思う」

 

 なるほどと、事情の一端を聞きうねり声をあげるケンタウロス。

 

 信者になったというラーニェの無事を確認できたことに喜ぶべきか……それともこんなイカレタ世界の一端に触れてしまったことを憐れむべきか、反応に少し困っていた。

 眉間にしわを寄せるほどの困り具合である。

 

「……まあ、無事なら無事で良いか」

 

 結論としては、無事に生きているなら良しということで何とか納得をした。

 だがラーニェが信者になったとなれば、あの頭のおかしい狂信者と何らかの関係を持ったことにもなるのだが……まあそこに関してはノーコメントとしか言えない。

 

 ()()()()()()()で胡坐をかきながら。頬杖を突いて。

 

 ケンタウロスは心の中で合掌した。どうぞこれから頑張ってくれと祈るばかりであった。

 

 





 ようやく大立ち回り前段階まで進めれそう。
 てなわけでこれからの展開に期待してくれてる読者さん、是非評価くれると嬉しいです。

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