男子冒険者学校生の日常   作:puripoti

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第47層 文句はテリー・ギリアムにでも言ってくれ

 

「バッカなことを言うもんじゃない あのウサちゃんが怪獣だってのか」

「ただのウサギとはワケが違う この世で一番、凶悪な怪物なんじゃ目にもとまらぬ早業で人を殺すのだ」

 

 

 

  ───偉大なる王による聖杯探求の一幕より

 

   ◇

 

 

「いらっしゃーい」

 

 押し合いへし合いするアホの海原をかきわけて、どうにか図書室の受け付けまで辿り着いたオーリたちを常と変わらぬ風情な緑髪の少女が出迎えた。

 

 笑顔が可愛い図書室の新人看板娘、あるいは悪魔の毒々図書委員ことサラである。

 

「サラちゃんこんにちは。ちょっくら調べ物をしたいんで、先輩方によるモンスターのレポートを閲覧したいんだ。あ、先生から許可はもらってるからね」

「はいはい、話は聞いてるよ。で、こちらがお求めの品ね。読み終わったら返却箱に入れておいて」

「さんきゅ」

 

 礼を言って資料を受け取るオーリに、いたずらっぽいものを笑顔に混ぜてサラが言った。

 

「キミたちも災難だったね。危うく全滅しかけるだなんてさ」

「まーね、大変だったよ。……って、なんで知ってるんだ。先生がわざわざ言ったとも思えんが」

 

 よく思い出してみりゃ先程も『話を聞いた』とは言っても『先生から』とは言ってないし、それ以前に芋洗い状態の図書室から職員室までどうやって連絡をとったのかさえ不明である。

 しかも欲しいレポートはピンポイントで例のモンスターのやつときた。

 

「聞きたい? お代が安くつくかはしんないけど」

 

 いつでも絶やさぬ愛想のよい笑みが、形はそのまま目を背けたくなるようなものに変わったのはきっと気のせいだろうと一行は思い込むことにした。

 はらわたをアイスゴーレムにでも鷲掴みにされたような気分でオーリは引き下がった。

 

「結構です。何が潜んでるかもわかんない藪をつつきたくないもんね」

「ふっふーん、人様の痛くもないお腹を探らないのはいいことだよ。女の子の場合は特に、ね」

「あい、気をつけます」

 

 赤べこじみた動きで頷いたオーリは図書室を出て、構外のベンチでレポートを開き必要な項目をノートに写した。

 図書室でやらなかったのはおっかないお嬢さんから離れたかったのと、構内がぎゅうぎゅう詰めなお陰で作業どころじゃなかったせいだ。机も空いてなかったし。

 

 写し終えたレポートの返却をフェアリーくんに任せ(彼は空飛べるので混雑も無視できる)、オーリ達は購買部に引き返していくらかの素材を購入した。

 フェアリーくんとの待ち合わせ先の食堂に到着したところでお昼を報せる鐘が鳴った。

 

 …………

 

 食堂は閑散としていた。

 

 普段なら空腹で正気を失った欠食児童どもによる、混雑と騒々しさと罵声鉄拳魔法剣戟呪文爆撃キレた厨房のおばちゃんの怒鳴り声とげんこつが飛び交う時間帯なのだが、その大元となる連中も今は片っ端から図書室に押しかけている。

 何名かの学徒たちがまばらに座り、談笑したり静かに食事をしている食堂内を見渡すとちょうど真ん中らへん、他には誰も使ってない長机で退屈そうに頬杖をついたフェアリーくんが空いてる手を軽く振っているのが見えた。

 

「お使いさせた上に待たせちゃってごめんよ」

「いいってことよ。そんで、これからどーすんだ」

「まずはご飯にしよう。話はそれからでも遅くない」

「それもそっか」

 

 配膳カウンターで今日のメニュー(閑古鳥が鳴いてるお陰で大盛りのサービスをしてもらえた)を受け取ったオーリ達は、さっきフェアリーくんが座っていた長机に戻って食事ついでに今後の話をする。

 

 油で揚げたミートボールと野菜を煮込んだトマトシチューに、いつもの硬パンを千切って入れながらフェアリーくんが訊ねた。

 

「───で、アレを相手にする算段はついてるんだろーな? 死んじまってたから詳しいことは判らんが、今のぼくらだとアレを相手に攻撃を通すことも難しいんだろ」

「うん、ちゃんと考えてるからそこはご安心だ。職員室で俺が言ったこと憶えてるかい」

「ああ、『手榴弾を使う』とか言ってたな。爆弾でも合成するんか」

 

 なお冒険者学校で云う“爆弾”とは火薬等を用いたものではなく錬金術による『爆破』の情報コードを用いて合成したアイテムのことである。これは性質上、攻撃の対象となった相手・物品以外には毛筋ほどの影響も及ぼすことはない。

 前にも述べたが地下道のような半密閉空間で、しかも学徒に爆発物なんぞを扱わせるわけにはいかないのだ。

 

 しかしオーリは首を横に振る。

 

「うんにゃ。俺が使うと言ったのはそっちじゃなくて〈手榴弾(てりゅうだん)〉ね」

「ああん? 同じだろーが」

「全然違う。ま、こればっかは口で説明するよりも実際に見てもらわんとわからんな。説明したげるからご飯の後、みんなで厨房に行こう。そこで件のアイテムを調合するから」

 

 卓上のソースに伸ばした手を止め、エルフちゃんが眉をひそめた。

 

「なに言ってんのさ。合成をするなら合成屋さんにでも頼むか錬金棟の実験室だろ」

「普通のコードツールならね。今回の手榴弾は現代錬金術(現化物理学)とはまったく別口の、古式ゆかしい調合による聖なるアイテムなの」

「なんだそりゃ。何が違うってのさ」

「ここらの区分は錬金術や迷宮技術史の講義を受けたことがない子にはちとめんどいね。なんなら俺の教科書なり参考書でも貸すから目を通してみれば」

「要らない。興味ないしそんなもん頭に詰め込むほど暇じゃないし」

 

 そう言うと思った。メンチカツへかぶりつくエルフちゃんを脱力したように見やって、オーリもミートボールをスプーンですくった。

 

   ◇

 

 お昼を終えたオーリ達一行はその足で厨房に向かった。

 仕事が一区切りしたらしいおばちゃん達に断りを入れ余ってるコンロを使わせてもらえるか頼んでみたところ、以前にカシナートの剣を調達したときのお礼もあったのか二つ返事で快諾してもらえた。

 

「親切はしておくもんだね。───それじゃ始めようか」

 

 オーリは先に購買部で買った素材をキッチンテーブルに並べ、同じく借りたズンドウ鍋をコンロに置いた。

 次に家庭科の教科書(冒険者学校のそれは一般的な家庭生活のみならずサバイバル知識なども掲載されている)を取り出し、目当てのページをめくって内容を朗読していく。

 

「さて、『経典の第2章は9節より。これなるは聖アッティラが考案されたる聖なる手榴弾』───誰なんだよそのピリ辛系ホットスナックみたいな名前の人は───『その目的は神の御心に添い奉り、おおいなる愛にすがり、さりながらも罪深き敵と戦うときに効力があろう。これすなわちここにおいておやなにをか言わんやしからずんばさにあらずのみならずもってくだんのごとしなり……』ああゴメン、これ飛ばしてもいいやつだわ」

 

 オーリはページを何枚かすっ飛ばしてから続ける。

 

「えーっと、このページかな? 『主の御心はこれによって慈悲を垂れたまい、神聖なるお肉お野菜に各種香辛料、オートミール、果物の種その他色々を……』」

「まてや」

 

 教科書に記載されているレシピを口にしながら材料を鍋に入れていると、隣に浮かび作業を覗き込むフェアリーくんが夏の熱気さえ凍てつくがごとき声をかけてきた。

 

「邪魔せんでよ。今いいとこなのに」

「なんだその爆弾と微塵の関わりもなさそうな素材と調合法は」

「聖属性のありがたい手榴弾を作るのに、火薬なんて物騒なもん使ってられんだろ。バチが当たってもしらんぞ」

「そういう問題じゃねーだろ。大体、御心もへったくれもぼくら神様とも敬虔とも無縁じゃねーか」

「きみは司祭学科で性格も〈善〉だし、俺も次の転科で僧侶とかいういかにも聖職者っぽい字面の学科になるから無問題や」

「無茶苦茶な理屈を並べよる」

「そんな心配なら後で近所のお地蔵様にお供え物しとくよ。これで神様も大目に見てくれるさ」

「気がついてるか。おまえ一行で矛盾するようなこと言ってんぞ」

 

 ちなみにその『お地蔵様』とやら、どこかのバカタレ邪宗門が勝手に設置した物体で、腕は千手観音さまに対抗してちょっぴり多めの千と三本、足にいたっちゃニ千本とかいうゲテモノ御本尊である。バチが当たればいいのに。

 

「それはさておき続けるよー。『とにもかくにもそういった諸々を鍋に入れ、蓋をし、火にかけ、熱し、瞑目(めいもく)することしばし。形が成るまで努めて敬虔なる気持ちで神に感謝を捧げ祝詞を唱えよ。すなわち……』あー、そんなもんやってられねーよ。出来上がるまで海戦ゲームでもして暇つぶすか」

「また懐かしいものを」

 

 …………

 

 厨房の隅っこでフェアリーくんを相手に1勝2敗1分けしたオーリが駆逐を東に2マス移動させたところで、どこからともなく「チーン」という、コンビニの呼び鈴を間抜けにしたような音が聞こえてきた。

 

「お、どうやらできたな」

「今の音なんだよ」

 

 首をひねる相方を伴ったオーリがズンドウ鍋の蓋を開けると、そこには奇妙な物体がニ個、転がっていた。

 大きさは拳二つ分くらい。鋳物を思わせるざらついた質感の球体をリベットでも打ち付けたような鉄帯が交差するような形で飾り、頂点の部分にはけったいな十字型の部品がぶっ刺さっているという、さながら邪悪な鉄玉子とでも形容すべき代物である。

 

 相方の秀麗な(おもて)に納得いかなそうな表情が張り付いた。

 

「こんなレシピと作業とで、こんなもんがどうして出来あがる」

「そんなもん俺に訊かれても困る。そんなもんだと割り切れ」

 

 出来上がった品を、オーリは大事そうに道具袋へと仕舞う。

 

「それにレシピと見た目と名前こそアレだけど、こう見えて由緒正しき武器なんだぜ」

 

 なんでも大昔の偉い王様がいと尊き存在より『おい、そこのお前。ちょっくら聖杯ってやつ探してこい』と仰せつかった苦難の旅、その道中にて遭遇した〈白き魔獣〉を討ち果たすのに使われたものだとか。

 

「魔獣とな」

「うん、なんでも『雪のように白くふわっふわな体毛に燃え盛る溶岩のごとき真紅のつぶらな眼、ぴょこぴょこ動く長き耳とぴょんぴょん跳ねる後ろ足』の、それはそれは恐ろしい獣なんだって」

「ふーん」

 

 なにか色々なものを諦めたように引っ込んだフェアリーくんと入れ替わるようにエルフちゃんが訊ねてきた。

 

「ていうかさあ、そんな作るのも七面倒なら見た目まで胡散臭いものに頼らないでもオーリくん達の大加護だっけ、あの魔法を使えばいいんじゃないの?」

「今回は確実性を取りたいのな。忘れたか、Lv7大加護(マハンマハン)はお目当ての効果を狙って出すことはできんのだ。アレを相手するからには〈守り〉と〈魔力向上〉の二つを引かにゃならんのだが、運が悪けりゃ延々ボコられながらスカに耐える羽目になんぞ」

「ぬー」

「ま、楽して得られる成果も通れる地下道も無いってことだな。ひとまずこれで対抗策は手に入ったことだし、次の下準備に移ろうや」

「今度は何をするのさ」

「図書室で借りたレポートを写したろ。ありゃ例のアレの行動傾向を把握して、対処の方法を考えるためさ」

 

 具体的に必要なのはとにかくアレに攻撃をさせないこと。なにがしかヤバい行動に移ったと見たら、即対応して邪魔ができるようにしたい。

 

「きみら前衛組にはお腹が落ち着くまでレポートを読み込んで、その後で必要な行動を考えてから体に覚え込ませてほしいのな」

 

 クラッズさんと指スマで遊んでたセレスティアさんがその説明を聞いて感心したように頷いてみせた。

 

「なるほどね。あなたが職員室で先生に言ってた『ズル』云々ってそういうことか」

「ゲームなら攻略本だの使うのは忸怩たるものがあんだろうけどね、これ斬った張ったの話な上に血ぃ流すんは俺らだかんね。ズルでもなんでも使える手は使いたい」

「そこに関して文句はつけないって。私らのことをちゃんと考えてくれたからだろ」

「そう言ってもらえるとありがたいね。じゃあお次は体育館に行こう。普段なら部活動やレクリエーション目的の連中が先に使っちまってるだろうけど、今日だけは俺らが独り占めできる」

 

   ◇

 

 おばちゃん達にあらためてお礼を言って、オーリ達は体育館に向かった。

 案の定というかいつもならお昼を終えて球技等に興ずる学徒連中の声がひっきりなしに聞こえてくる時間帯にもかかわらず、体育館は喪中のごとく静まり返っていた。中を覗いても構内には人影がほとんど見当たらない。

 

 更衣室で体操着やジャージに着替えてきたエルフちゃんはじめとした前衛組は、端っこにある戦術技能訓練場にて練習用の剣や槍を手にして汗を流した。

 

 彼女たちが今やってるのはレポートから得た例のモンスターの行動傾向に関する情報を基に、野郎がヤバそうな挙動を見せたら即、その出鼻をくじいて邪魔するための戦術と連携の構築、およびそれらを体に刷り込ませる特訓である。

 

 彼女らの他に誰もいない静寂に沈む体育館の中、軽快に足音を響かせてセレスティアさんと組んでの連携に励むエルフちゃんが口を尖らせた。

 

「動きをふつーに目で見てから対処するなんて久しぶりすぎて、やりづれー」

 

 ぶーたれながらも相手役のバハムーンくんが胴めがけて放った横薙ぎの一閃を手元で回した模擬槍の石突で弾き返し、できた隙へと間髪入れずにセレスティアさんが斬り込んでいく。

 

 エルフちゃんが口にした「目で見てから」云々だが、なんでもこいつら相手の筋肉や関節、足回り動きから次の行動を先読みする立ち回りが染み付いてるので、例のアレのような筋肉どころか関節も足も存在してないようなのが相手だとその感覚のズレが邪魔して行動が鈍っちまうのだそうな。

 この特訓はそうした、ある意味においての『悪いクセ』の矯正も含まれているのだ。

 

 ここ来る途中に引っこ抜いた猫じゃらしでクラッズさんの相手をしていたオーリがそんな彼女を諭すように言う。

 

「でも次のレベルアップで俺は転科しちゃうから、今までみたく魔障壁込みの戦術は使えなくなるわけで。その意味じゃ今回の負けも特訓も、戦術の幅を拡げるいい機会になったのかもしれんよ」

 

「物は言いよう!」鋭く言い返しながらエルフちゃんはコンパクトな挙動による突きの連撃を叩きつけ、

「塞翁が馬とでも言わんかい」フェイントをかけたクラッズさんの一撃によりオーリの手から猫じゃらしが飛んだ。

 

   ◇

 

 翌日。

 

 オーリ達はリベンジを果たすためにジェデロ地下道へと赴いた。

 ポータルの出入りによるエリアリセットでもって件のモンスターが潜むマップを引き当て、他には目もくれず短距離転移魔法(Lv6マロー)でもって例のアレがいる区画に隣接する座標へ飛ぶ。

 

 なお今回のメンバーは前衛組とオーリのみ。

 人選の基準は例のアレの攻撃を耐えられるだけの守りや装備ができるかどうか。

 特に1度目の接敵、その初手にくらった攻撃はなんとしても撃たせるわけにはいかないが、しくったときに備えて一回だけでも耐える必要がある。

 

 最後の仕込みとしてあるったけの補助魔法をかけ終えたオーリは仲間達に声をかけた。

 

「さてみんな───覚悟と準備はよろしいかい?」

「ばっちこい」

 

 親指を立てたエルフちゃんに頷きを返し、戦場となる区画に足を踏み入れるや床が幾何学模様を描いて光り、模様に沿って膨大なコード情報が流れ込んでくる。

 極限まで圧縮された情報は区画の中心部に集い渦を巻き、渦は螺旋を形作り、空中へと内包された設計図に基づいた“存在”を形成し───

 

 

「まずはこないだのお礼だコンニャロー!」

 

 

 例のアレが物質化をするが早いか、ダッシュで距離を詰めたエルフちゃんが先制の一撃を見舞った。

 やはりというか大したダメージも通ってなさそうだが、エルフちゃんは気にせず瀑布のごとき勢いで槍撃を叩き込み続ける。

 

 前衛組が戦闘に突入したのを見計らい、オーリも戦いの要となる〈手榴弾〉、ついでに必要なあれこれをメモしたノートの切れ端を道具袋から取り出した。

 

 今回の作戦はオーリが野郎に例の〈手榴弾〉を叩きつけるまでの時間を前衛組総出で稼ぐというシンプルなものである。

 そんなもん初手で投げたら終わりじゃねぇかと思われるだろうが、世間一般で使われるものとは違ってこれは世にもありがたい聖なる手榴弾。扱うにも相応の定められた諸手続きというか前準備は必要なのだ。

 

 オーリは切れ端に書かれた文言をつらつらと詠唱していった。

 

「これなるはいと慈悲深き神の御心(みこころ)に添い奉る聖なる手榴弾なり。その使い方はまず、ありがたい神様だかなんだかの御心に頭を垂れて聖なるピンを抜く───」

 

 執拗に食らいついてくるエルフちゃんを鬱陶しく思ったのかアレが腕を大きく振って薙ぎ払いを叩きつけるが、それは割って入ったバハムーンくんのカイトシールドによって阻まれた。

 しばしの間、拮抗する両者だったが、アレは力比べに拘泥(こうでい)することなく後ろに退がり筒状の腕をこちらに向けてきた。最初の接敵において、一撃でオーリ達を半壊にまで追いやった攻撃を放つつもりだ。

 

「それからすぐに3つ数えよ、多くも無く少なくも無く。ピンを抜いて3つ数えよ。この数字は必ず守られねばならぬ」

 

 しかし攻撃が放たれるより先に盾役の影からセレスティアさんが躍り出て、十八番の超加速突進を撃ち込み不発に終わった。

 代償としてしばらくのクールダウンに移ったセレスティアさんをカバーするためエルフちゃんが果敢に攻め立てる。彼女が隙を見せたときはすかさずバハムーンくんがリカバリーをする。

 

「つまり4では遅すぎるさりとて2では少なすぎ、しかして5などあるまじきこと。かようなる不心得者は天罰に身を焦がすとしれ」

 

 態勢を立て直すためなのかアレは大きく距離を取ろうとするが、そこにいつの間にやら上空に移動してたセレスティアさんがラスタンサーガの下突きばりの急降下攻撃をぶちかます。

 

 天井を蹴っての落下速度に翼の推力も加味したその一撃によって体勢を大きく崩したアレへと、ダメ押しとばかりにエルフちゃんが渾身の力でパルチザンを投擲。吹っ飛ぶアレに距離を詰めるついでのドロップキックもお見舞いする。

 着地と同時に彼女はすかさず道具袋から銅槌(オーリに借りた)を取り出して思い切り振り下ろした。

 

 仄暗い地下道に派手な打撃音と火花が散った。

 

「そして最後は投擲に移る。聖なるピンを抜いてから数を数え3つに達したとき、しっかりと握りしめた聖なる手榴弾を敵に目がけて投げつける。さすれば汝らが道を阻むアホタレは残らず昇天するであろう。アーメン───ところでどこの国の言葉なんだよ、この〆の一言は」

 

 オーリは厳かに告げてメモをポッケに仕舞いピンを引っこ抜いた。

 

「じゃあ投げるわ。1、2、3、ほい」

 

 特に思うところもなく、無造作に投げつけられた手榴弾は例のアレを跡形もなく消し去った。

 

   ◇

 

「───つまりはこれが手榴弾を使うやつが滅多にいない理由なのな」

 

 使用の際におけるとかく面倒かつ長ったらしい諸手続きに加え、延々と垂れ流される無駄に長くてくどい祝詞。前準備だけでも嫌気が差す。

 どれだけ強力だろうとこんなもん使うくらいなら、誰だって普通にレベルを上げて装備を整えて殴る方を選ぶてなもんだ。

 

「……あー、もう。よくわかった」

 

 緊張の糸が切れたせいなのかはたまた精神的疲労のせいなのか、地べたに尻もちをつきウンザリしたようにつぶやくエルフちゃんをよそに、オーリは道具袋からもう一個の〈手榴弾〉を取り出した。

 

「じゃ、一休みしたら“次”に向かおうか」

「んー?」

「このスレッドにはもう一匹、同じやつがいるかもって言うたろが。なんのために俺がこんなもんを2つも作ったと思っとる」

 

 つまりさっきと同じようなことをもう一回やる羽目になるということである。

 

 前衛組の3人は心底からイヤそうに顔を歪めた。

 




 しょーがねーだろ実際にこんなのなんだから
 性格が(EVIL)のやつが使うときにはサラダオイルを忘れんな
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