それゆけ! スーパーアロナ先生   作:融合好き

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これはパヴァーヌなんだ…誰が何を言おうとパヴァーヌ編なんだ…。


第八話 唐突な総力戦+護衛演習+防御演習byパヴァーヌ

 

 

ひたひたと時折肌を伝う水滴が気持ち悪い。あちこちで油膜の張った水溜まりを覆う水草の香りが、淀んだ空気をより一層不快な臭気で包み込む。

 

アタシはミレニアムのあのどこもかしこも空調を効かせた感じは内心苦手に思っていたが、こうして一切の手入れがされていない廃棄区域を見るとやはり普段から文明の恩恵に浸っていることを実感する。ここもかつては栄えていた時期もあったのだろう。しかし文明とは人の移ろいにより変化するもの。放棄された今となっては、自然の侵食に抗うように、ただただ重く冷たい空気を遺すのみである。

 

「ケセド?」

「ええ。この辺りで過去に廃棄された兵器生産工場の生産システムのAIを指してそう呼ばれています。どうして生産ラインをもっと徹底的に破壊してくれなかったのかという憤りはありますが、そこを嘆いても仕方がないので今こうして出向いているわけです」

 

そんな辟易とする光景を尻目にして、既に垂れたいくつかの水滴によってシミがところどころ出来ている豪奢な制服を特に気にした様子もなく、何やらやたらデカい武器を担いだ“先生”を名乗る少女は、その武器の重さを感じさせない軽やかな足取りでこの狭い通路を歩き続ける。

 

つらつらと澱みなく語られる内容はやたらと物騒で、それがそのまま見た目通りの高い声からハキハキと告げられるため結構な違和感を覚える。この場所の不穏さも相俟って嫌な予感しか感じられないが、とはいえ戦闘は前提で、そういう目的でアタシが呼ばれたのも事前に聞いてはいる。

 

ただ対象が予想外というか、てっきりこの女が普段やってるような暴徒鎮圧に駆り出されるだけだろうと高を括っていたのに、まさかその足でセミナーにまで顔を出して更には立入禁止区域まで出張る羽目になるとは誰が予想できようか。安請け合いしたアタシもアタシだが、だからと言って容赦なくこき使う気満々なコイツもコイツである。

 

「今回はあくまで威力偵察の予定ですが、状況次第ではそのままアリスちゃんの『光の剣』を主軸に据えた攻略戦も実施します。こちらも一応はATM(対戦車ミサイル)を持ち込んでたりはするのですが、1発きりですし通じるのかも怪しいのでマトモに通用しそうな武器の存在は助かりますね」

 

それが個人の兵装であるのは色々と気掛かりですが、とだけ付け足して、ちらりとそいつは後方に視線を向ける。その先にはアリス並びに何故か当然のように連れてこられたゲーム開発部の面々がいて、乱戦に慣れたアタシや、“先生”同様にクソデケェ武器を担いだアリスはともかく、せいぜいがグレネード程度の火力しか有してないだろうコイツらを連れて来ても大丈夫なのかと疑問に思ったが、その疑問に答えるかの如きタイミングで視線を向けられたアリスが声高に答える。

 

「はい! 確かに此度のレイド戦においてはアリスが直々にメンバーに指名されましたが、モモイたちもログイン報酬目当てに参加を表明するとのことです!」

「……ログイン報酬だぁ?」

「実は今回の案件は、ゲーム開発部の実績作りという側面もありまして……ご存知ミレニアムサイエンススクールゲーム開発部は色々と問題が多い部活と言いますか、はっきり言って廃部寸前の状態でして。ゲーム開発部なのにゲーム以外で功績を上げて廃部を回避しようという試みはちょっと本末転倒な気もしますが、私は助かりますしゲーム開発なんてそれこそ年単位で掛かるものですし方法の一つとして已むなしかなと」

「あ、あはは……」

「えっと、露払いは全身全霊でやりますので、どうか……」

「うぅ……」

 

(あー……)

 

さっきからこんな暗くてジメジメした通路を歩いてんのに、普段は騒がしいコイツらが文句一つ言わずやたらと静かだった理由がコレか。当然ながらC&Cの部長であるアタシは、コイツらが先日起こした騒動のそもそもの原因についても聞いている。曰くゲーム開発部はロクな実績を持たない部活だから廃部予定で、それに焦ったコイツらがセミナーを襲撃して騒ぎを起こしたと。正直セミナー襲撃とゲーム開発に何の関係があるのかとこちらが聞きたいくらいだが、そこはきっとアタシが口を出すところではない。

 

とはいえセミナーのユウカも相当甘い。エンジニア部がポンポンと良く分からん新作メカを定期的に暴れさせたりするから感覚が麻痺しそうになるが、クリエイターなんざ一つの作品に年単位の時間を掛けるのが普通だ。だから新作ゲームとは言わずとも、せめて定期的に活動記録なりを提出してさえいればこんな面倒なことにはなってなかっただろうことを思うと、まあ結局は彼女たちの自業自得ではあるのだろう。

 

そんなことを考えていると、“先生”は更に付け足すように、何やら少し気になることを告げる。

 

「それと今回はもう一人、控えとしてSRT特殊学園からゲストをお呼びしてます」

「もう一人? そんな奴どこにも……いや、控えってことは支援役か?」

「いえ? 別にそんなことは……あれ、もしかして本当に見えてません?」

 

首を傾げた少女は、そのままアタシの少し右後ろにいるゲーム開発部の方向……ではなく、何故かそのちょうど反対側の僅か離れた方へと視線を向ける。当然、その先には何もなく、何の冗談だと釣られて向けていた視線を元に戻そうとしたその瞬間、

 

「──や、やっぱり私なんて、この場でひっそり捨て置かれて、速やかに苔の中へと埋没するべきなんだ……」

「おぉう……!?」

 

滲み出すように。湧き上がるように。視界の端に突如として映り込んだ謎の人物の特徴的な声が耳に届いて、それまで気が抜けていたのもあり思わず銃を構えた状態で右端の壁まで後退ってしまう。

 

自慢の革ジャンが苔やら湿気やら油やらに塗れて酷いことになった気がするが、そんなものは無視だ。何だコイツは。一体どこから現れた? 多少油断はしていたとはいえ、仮にもこの場所は危険地域。警戒を怠ることはなかったし、何より逸れる危険性を憂慮するなら同行者の人数を数え間違えるなどあり得ない。

 

なのにそいつは当たり前のように、その気になればいつでもその手に持った銃でアタシを撃ち抜ける場所に、まるで最初からそこにいたかのように佇んでいた。自他共に認めるミレニアムの最高戦力たるアタシを前にしてだ。警戒するに余りある、まさしく理外の存在である。

 

「い、いきなり出て来たよ……!? どこから!? ってか誰!?」

「まさか、隣に居たのに全然気付かなかった……?」

「そ、そんなことあるの…? わたし達だって、精一杯警戒はしてたのに…」

「アリスのセンサーにも反応はありませんでした……! 凄腕のタツジンとお見受けします!」

「あ、ううぅ……かつてない眼差しで見られて……そ、そんなに見つめられると溶けてしまいます……」

 

身長はアタシと同じか少し高いくらいか。これまでの行軍で付着した落ち葉を、長い黒髪にまるでアクセサリーのようにいくつも貼り付けた垂れ目の少女。青を基調としたセーラー服はミレニアムのそれとは似ても似つかず、備え付けられた仰々しい装備と合わせて只者ではない雰囲気を醸し出している。

 

何より、この目の前に居てすら見逃しそうになるほどの異様に薄い存在感……! 見ればアリスにも劣らないだろう、彼女の身長に勝るような凄まじくゴツい銃まで背中に担いでいる。風貌こそ地味目ながらこんなにも特徴的な少女でもあるのに、アタシがそれに気づかないなんてことはあるのだろうか? 

 

仮に彼女が敵の刺客で、素知らぬ顔で間合いまで詰め寄られたらと考えるとゾッとする。これほど巨大な武器を抱えていても気付かないのだ。腰に下げた自前らしき布の巻かれた小銃とも違う、もっと隠しやすい武器、例えば懐にデザートイーグル辺りでも忍ばせて無防備な後頭部を狙撃されたら、流石のアタシも意識を保っていられるかどうか。

 

つまり、目の前のコイツは、その気になればアタシにいつでも土を舐めさせることが可能な人物だということになる。ならばそれを警戒するなという方が無茶な話だろう。

 

「では改めてご紹介しますね。こちら連邦生徒会の特殊部隊に当たります、連邦捜査部シャーレ直属SRT特殊学園出身の霞沢ミユさんです。彼女はまだゲーム開発部の皆さんと同じくピカピカの一年生ではありますが、肩書から察せられるようにエリート街道まっしぐらの超絶有望株ですので、仲良くしているときっと良いことがありますよ」

「ひ、ひぅぅ……」

 

そのエリートどもの頂点と言って過言じゃない奴に持ち上げられ、顔を赤くして縮こまる霞沢ミユと呼ばれた少女。“先生”の言葉を信じるなら『SRT特殊学園』とやらの出身とのことだが、アタシはその詳細を知らない。とはいえ、『連邦生徒会の特殊部隊』『連邦捜査部直属』『エリート街道まっしぐら』と言った断片的な情報だけでも只者ではないことが伺え、そもそもアタシ自身がコイツに対して“侮るな”と最大限の警鐘を鳴らしている。

 

誰かに対して()()()()()()()を安堵するなんて初めての経験だった。まあ、ある意味ではこの“先生”に対しても同様のことは言えるが、それが純粋な戦闘力を評価してのこととなれば、エリート云々の話も納得するしかないだろう。

 

しかし、そんなレッテルを貼られている霞沢はと言えば、そんな評価などどうでもいいとばかりに、妙に低い物腰のまま、不思議と耳に残る甲高い声で何かを囀っている。

 

「で、でも私が支援砲兵なんて……そういうのはモエちゃんの役割で──」

「モエさんは前回のビナー戦の際にヘリの操縦席を色んな液体で汚したので現在処分を検討中です。トリガーハッピーと言いますか、そういう性癖自体は別に否定しませんが、戦場でマス掻き……失敬。任務を疎かにするようではこちらとしても困ります。まあ実害は特に無かったので重くて訓戒程度を想定していますが。現に彼女は今もそちらの小隊に所属しているでしょう?」

「え、ええと……ぅぅ」

 

何やら機密っぽい馬鹿話が聞こえた気はするが、とにかくそれで納得したのか霞沢は大人しく引き下がる。というより、先の言葉は思わず口を衝いただけで逆らう気は全く無いのだろう。彼女とて伊達にエリート部隊に所属していない。向き不向きの都合で上司たる“先生”に楯突くようなら、それこそ先の笑い話では済まないレベルの処分を受ける可能性だってある。まさしく口は災いの元というやつだ。

 

(つーかコイツ、マジでただのガキじゃねぇのな……)

 

コイツというのは当然、この“先生”を自称する少女のこと。今更疑うつもりもなかったが、そこかしこで悪辣さが滲み出ているというか、性格の悪さが隠し切れてない。善人ではあるのだろう。治安維持にも積極的で、今だってわざわざ独自に部隊を率いて危険地域にまで出向くような奴だ。報酬有りきで動くアタシらや、それ自体を生業とするヴァルキューレなんかよりもよほど正義感に溢れているのかもしれない。

 

ただ、その性根は純粋無垢と言うにはほど遠く、むしろ権力ゴリ押しでシャーレなんて反則スレスレの組織を築き上げている辺り、毒を以て毒を制す的な思考の持ち主であるのは間違いない。少なくともこんなのが見た目通りの年齢のガキだったらこの世の終わりである。

 

(……まあ、あれだ)

 

確かに色々と厄介な相手ではあるが、敵に回さないで済むならそれに越したことはない。この案件での“貸し”がどれくらい高く付くかはまだ未知数だが、アタシの苦労一つで今後コイツらに口八丁手八丁と酷使される未来が削がれるのであれば是非も無い。

 

何より、ここは僻地とはいえミレニアムの管轄区域。そこで勝手に兵器を乱造してる馬鹿を放っては置けない。いや、AIって話だったか? まあ同じことだ。馬鹿野郎でもオンボロ機械でも、横っ面を全力でぶっ叩けば少しはマシになるだろう。

 

「なんか、だんだんと通路が綺麗になってる……?」

 

発端となったのは、双子の姉からのそんな呟き。

 

湿っていた足元はいつしか乾き切って、錆混じりだった足音は小気味良く、不穏に狭い通路に響き渡る。

 

「ケテルの襲撃は当然無しと。わざわざこんな道を選択した甲斐ありましたね」

 

設備が復活したということは扉を代表する各種セキュリティがあるはずだが、それらは“先生”がちょっと引くくらいあっさり解除していき、まるで自動ドアを潜る感覚でごっついドアをいくつも通過すると、

 

「なんだありゃ……」

 

だだっ広い空間と、そこに鎮座する謎のクソデカい球体。そうとしか呼べない何かが視界全体に広がる。よくよく見ればその球体は何故か当然のように浮遊していて、足元?には無数のオートマトンが待機状態で並んでいる。

 

「アレがデカグラマトンの預言者が一体、名をケセドと言います。元はこの廃棄された兵器工場の生産システムのAIだと先程申しましたが……」

「どう見ても、稼働してます、よね……」

 

双子の妹の言葉に同意する。設備が復活している時点で察してはいたが、実際に目にすると結構な衝撃を受けてしまう。いつから稼働していたのか。どれほどの武装を溜め込んでいるのか。鎮座するオートマトンの数を見るに、少なくとも一朝一夕の話では無いだろう。

 

(これが、ある日突然、ミレニアムを襲う……?)

 

ゾッとしない話だ。冗談であればどれほど良かったか。しかし現実にこれらの脅威は立ち塞がっていて、それは既に連邦生徒会が危惧するほどにまで成長している。その事実が何とも腹立たしい。

 

「デカ……預言者? 何そのゲームみたいな呼び名?」

「デカグラマトンの預言者、ケセド。ゲームっぽいのは確かにそうですね。デカグラマトンとはざっくり言うと暴走した悪性AIの名で、回線などを無視してあちこち飛び回り周囲のAIを“感化”させます。本体はこの前ご存知超天才病弱美少女ハッカーことヒマリさんと共にかなり頑張って潰したのですが、正体がAIである以上データや思想が僅かでも遺されていてはとても駆逐したとは言えませんね」

 

スパムメールみたいなものです、と締め括り、一旦彼女はその背に背負っていた武器を降ろす。ヒマリというと、確かあのハッカー集団の長だっただろうか。預言者だの感化だのと良くわからない単語も混ざってはいたが、飛び散ったデータの回収が困難という話はそうだろうなとしか言えない。

 

「“感化”、ですか……アリスには良く分かりません」

「そう難しい話でもありませんよ。アリスちゃんがゲーム開発部に所属しているのも、『ゲームは面白いもの』だと“感化”されたからですし、世界が好きなら勇者に、逆に憎いなら魔王に。映画を見て涙を流すことも“感化”です。我々はそのようにして、互いに互いで影響を与えているのです」

「じゃあ、そのデカグラマトンというのも、人に使役される現状が嫌で……?」

「その発想が即座に出るのは流石はサブカル好きと言いますか……真意は不明です。ただ、現状が嫌だというのはおそらくその通り。でなければこうして、世界を壊す兵器など造りはしない」

「つ、つまりアリスの“光の剣”も……?」

「せっかく格好いいこと言ってるのに余計なノイズを混ぜるのはやめてください。用途から察するにそれは“壊す”ではなく“開拓する”ためのもの。一口に破壊と言っても全てがマイナスというわけではありません。魔王だって已むを得ず侵略するパターンの作品もあるでしょう?」

 

正直エンジニア部(アイツら)についてはそこまで難しいことは考えていないと思うが、兵器がそのまま悪ではないというのはその通りだ。ありきたりな結論ではあるが、結局は全て使い手次第。同じ銃でも悪人が握れば凶器に善人が握れば護身になる。その辺りは確かに良くも悪くも純真なアリスには難しい話だろう。

 

「その“光の剣”ですが……いわゆるレールガンなのですよね? 見るからに堅牢なあの装甲相手に通じるのですか……?」

 

僅かに弛緩した空気。しかしここは明らかな敵地。いつまでも駄弁っているわけにもいかないと、その辺りは厳格だろう特殊部隊の出である霞沢が代表して声を上げる。それに対して“先生”はしばらく悩んだ素振りを見せると、

 

「目算で40メートル前後の球体。まあ捻る理由もないでしょうし基幹部はあの中でほぼ確定。外殻さえ剥がせば何とでもなりそうですが、あのサイズともなると実弾ではもはやどうにもならない。となると……まあミユさんにどうにかしてもらうしかありませんね」

「へぅ? わ、私ですか……?」

 

戸惑う霞沢とは対照的に、期待に満ちた眼差しを彼女へと向ける“先生”。その視線の先には彼女というより彼女が担いだ武器にあって、やはりというか当然というべきなのか、彼女が腰にぶら下げる自前らしき銃とは別にわざわざこんなところまで持ってくるような武器だ。このためのもの、こういう相手を想定しての武器であるということなのだろう。

 

「この武器は“アツィルトの光”──先日討伐したビナーの口内に仕込まれていた光学兵器をデチューンした一品、いわゆるビームランチャーです」

「び、ビーム……!? なんか強そう……!」

「いえ正直火力はあまり……一瞬だけなら“外”の人間が生身で浴びても大丈夫なくらいにはコレに物理的な破壊力はありません。ですがこの兵器は絶対に外部に流出してはならない、本当に一点物の、“生徒を殺すことが出来る”武器の一つなのです」

「殺……え?」

 

あまりに穏やかじゃないその言葉に、双子の妹が驚きの声を上げる。そこまで露骨な反応ではなくても、この場の全員が似たり寄ったりのリアクションを示している。アタシたちキヴォトスの民が肉体的に頑強であるのは、他の誰よりも連邦生徒会長である彼女が理解しているはずなのに、その上で“殺す”などと不穏極まりない言葉を使ったのだから当然だろう。

 

「コレは武器というより本当の意味でのレーザー照射装置に近く……照射先、即ち着弾点が徐々に加熱されていき、最終的には融解するという……まあ間違っても人に当ててはいけない代物ですね」

「ひ、ひぃ……!?」

 

そんな物騒なものを背負っていたことを知ったからか霞沢が怯えるが、それでも取り落としたりすることはなく視線がそのアなんとかに集まる。

 

説明を聞くに、虫眼鏡で紙を燃やす実験に似たようなものだろうか。レーザーポインタを目に長時間照射すると網膜が焼き切れると言うが、それを兵器として転用した場合の恐ろしさは想像できようというもの。

 

なるほど、確かにコレはアタシたちを殺せるモノだ。先程から背筋を伝っている冷や汗、汗を流すということは即ち我々とて体温調節が必要だということを意味する。百鬼夜行やレッドウィンターでは遭難の果てに凍死した生徒の話もあると聞く。ならば当然、その逆も然りであると。

 

「熱……機械……装甲……つまり」

「ええ。これからミユさんには延々とあの装甲に光を当て続けてもらい、それに際して起動する防衛機構は全てこちらで対処。やがて逃亡か新替か、装甲が剥がれるタイミングが必ずあるはずなのでそれを見計らい“光の剣”で狙撃する、という形で行きます。“装甲が追加される”という方向で対処されたらその時点で撤退を行います。また物量に対応し切れなかった場合に関しても撤退を選択します。ケテルの乱入といったその他不測の事態があった場合も遠慮なく撤退に移行します」

 

随分と逃げ腰ではあるが、無理もないだろう。色々と未知数な特殊部隊の霞沢はともかく、こちらの面子はたったの7人、かつその過半数が文化系部活の者となればむしろ挑む選択をした方が驚くほど。

 

ただ、ここまで来た以上はこの状況をみすみす見過ごせないというのもまた事実。本来の意味とは違うが壊すのは一瞬という言葉もある。それこそアリスが適当に“光の剣”をぶっ放すだけでも充分な猶予は得られることだろう。……その場合、再侵攻時の反撃は更に苛烈なものとなりそうだが、そこは連邦生徒会が考えることだ。

 

「さて、そうと決まれば早速行きましょう! まずは景気良くこの使わないミサイルの処分からですね! いやぁこれもまたビナーくんから出た不発弾でして処分に困っていたんですよ! いやはや寡兵での突貫とはこれまた実に胸が躍ります! たーまやー!!!」

「ちょっ、先生──ぇぇえええ!!?!?」

 

その場の誰もが反応する間もなく、いつの間にやら一度床に降ろしていたはずのATMを再び担いでいた“先生”は、それまで抑えていた声量を解き放つように、奴らオートマトンの中心へと向けて、その物騒な花火を派手に撃ち込むのだった。

 

 

 

………………………

 

 

………………

 

 

 

…………

 

 

 

──後に連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの活動記録に刻まれることとなる第二の総力戦、“ケセド殲滅戦”はこうして人知れず幕を上げる。この件に関して、現場の最高責任者である連邦生徒会長は「勝てると思ったからやった。普通に勝った」などと要領を得ない発言をしており、どのようなやり取りの果て、10にも満たない人数で決死の殲滅戦に挑むことになったのか、その経緯についてはとんと明かされることはない。

 

ただ現実として、彼女らがその場を去った後に残されていたものは、徹底的に壊された工場跡と、見るも無惨な骸と化した“ケセド”の姿だけであり、それを成し遂げたミレニアムのC&C及びゲーム開発部、並びに連邦生徒会直属SRT特殊学園の名はシャーレを通じてキヴォトス全体に知れ渡ることとなり──その功績を知ったミレニアムの運営たるセミナーは、対外的な理由も含め“ゲーム開発部の廃部”を取り下げる羽目になったと噂されているが、その真偽もまた誰の口からも語られることはなかったとされる。









原作でも先生含め7人以下で攻略できるから矛盾は無いな、ヨシ!

この中でアリスが一番身長高いという事実。
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