読者参加型TRPG風小説 作:矢端トラム
思考の末にあなたの視線は上へと向けられた。
急峻な斜面と、その先に見える樹木の先端だ。
登攀は可能だとあなたは判断したが、それは人間の手足を基準に考えた場合だ。
いかに剛力を誇るとはいえグリズリーの巨体では登り降りは難しいだろう。
谷底で暴れた熊の縄張りが崖上にも広がっている……などという状況は考えにくいはずだ。
現場は遠目にしか見えないと思われる以上、直接足を踏み入れるよりも得られる情報は減るかもしれない。
だが、安全性という観点では明らかに崖を登る方が優っている。
今回のあなたの相手は凶暴極まりないグリズリーだ。
死の可能性も大きい脅威を前に、危険をわずかでも減らそうというあなたの判断は実に妥当なものだろう。
よって、あなたは川辺を離れ岩壁をよくよく観察する。
触れたならばすぐにわかるが、やはりあなたが全体重をかけた程度ではそうそう崩れる事はなさそうだ。
ならばと、手足をかけられそうな凹凸の具合を探り、念入りにルート選定を行った上であなたは崖をよじ登り始める。
岩の出っ張りは多いとはいえ、完全な安定を望めるほどに大きくはない。
僅かずつ、無理な姿勢に陥らないようにあなたは進むが、それでも手足の筋肉にのしかかる負担は相応のものだ。
| 判定内容 | 崖の登攀 |
| 判定方法 | 2D6+筋力SB 7以上で成功/普通 |
| 判定結果 | 2D6+2=5(失敗) |
それは、あなたの鍛えられた肉体をしても十全な肉体操作をし損ねるほどだったらしい。
現在地よりもやや上方。
背筋を躍動させ左腕を伸ばし、掌で包み込めるサイズの丸い出っ張りを掴む。
そして、力を籠めてあなたが自身の体を持ち上げた、その時だ。
左腕が負荷のために痙攣した。
ほんのわずか。
時にして秒にも満たない瞬間的なものだったが、この状況では間違いなく痛手であった。
力の抜けたあなたの指は岩壁を手放してしまった。
さらに悪い事に、急激に体重をかけられる形となった他の手足もずるりと滑る。
まずい、と。
そう思った瞬間にはあなたの体は宙に投げ出されている。
| 判定内容 | 落下ダメージの軽減 |
| 判定方法 | 2D6+敏捷SB 7以上で成功/普通 |
| 判定結果 | 2D6+3=10(成功) |
だが、あなたの反応は素早かった。
事が最悪に至る前、落下を始めたまさにその瞬間、あなたは冷静に足を前に出した。
つまり、眼前の岩壁へとだ。
そうして壁を蹴り、落下を跳躍へと変化させる。
空中で見定めた着地点は河原の大きな岩の上。
届く範囲で最も平らかつ、安定していると見えるそこへ向かってあなたは飛ぶ。
| 判定内容 | 落下ダメージ |
| 基礎ダメージ | 軽減失敗時/1D6 軽減成功時/1D3-2 (高度:低) |
| 判定結果 | 1D3-2=0 |
足裏が岩に着いた瞬間、あなたは適切に脱力した。
足首、膝、腰を柔らかく曲げ、衝撃を吸収する。
それでも不足していた分は両の腕を用いて補い、ピタリと静止する。
少しの間そのままの姿勢で待機したが、あなたの体のどこにも痛みや違和感は生じていない。
登攀には失敗したが、不幸中の幸いとして怪我は負わなかったようだ。
依頼の続行には何の支障もない。
ただ、と。
あなたは再び崖を見上げた。
どうやらこの崖を垂直に登っていくのは諦めた方が良さそうだ。
無理をすればやってやれない事はないだろうが、1度失敗した事を工夫なくそのまままたやり直すのは余り良くない事だろう。
他に手段がないならともかく、崖上にはなにも登攀でなければ辿り着けないわけでもない。
多少時間はかかるが、下流へ引き返して簡単に登れる道を探せば良いだけだ。
あなたは落下の衝撃でずれた荷の具合を直し、歩き始める。
| 判定内容 | 幸運な出来事 |
| 判定方法 | 2D6+幸運SB 7以上で成功/普通 |
| 判定結果 | 2D6+2=10(成功) |
すると、さほど歩かぬうちにあなたはあるものを発見した。
崖の一部が階段状に崩れていたのだ。
正確には本当の階段ほどに整っているわけではないが、そう大きな苦労なく登っていけそうな形ではある。
慎重に進めば、登攀のような危険は伴わずに崖上に辿り着けるだろう。
……逆に言えば、先程の苦労と落下で冷えた肝はなんだったのかという話だが。
とはいえ、こういう事は冒険にはつきものであるし、幸運な発見には違いない。
川沿いを大きく戻る必要はもうない。
あなたは時間の浪費を回避しつつ崖を登る事に成功した。
辿り着いた場所は、やはり森林であった。
鬱蒼と立ち並ぶのは広葉樹のようだ。
崖側は地面が剥き出しだが、10歩も歩けば腐葉土が敷き詰められた柔らかい土壌となっている。
わずかに探っただけでも生命豊かな土地だとわかる。
小動物の気配はそこかしこから感じられ、地面に積もった葉をかき分ければそこには無数の虫たちが息づいていた。
さらに、あなたが木の下で手をかざせば、そこにポトリと木の実が落ちてくる。
ツヤのある赤い皮の、指先で摘める大きさのものだ。
それをあなたは、一切警戒せずに口に運んだ。
木々の果実は聖典にある通り、人のために存在するものである。
人間に害となる木の実はこの世界のどこにもあるわけがない。
木の実は甘酸っぱく、瑞々しかった。
栄養豊富な土の上で健康に育った味だとあなたにはわかったはずだ。
辺りの木々を見渡せば、同じような木の実は数え切れないほどに見つけられる。
あなたを横目に警戒しながら、夢中で赤い実をつつく小鳥の存在も気付けただろう。
| 地形変化 |
| 『谷底』→『森林』 谷底の地形効果が一時的に消失 視界減少により目視での索敵成功率低下 食料無限により休息の効果が上昇 |
良い森だが、今用があるのは森の中ではない。
あなたは崖際を、落下の危険がない程度に距離を取って歩む。
もちろん、森から何かが現れても良いように警戒をしながらだ。
そうして、それからしばし。
太陽が傾き始めたが、空が赤く染まるにはまだ余裕があるといった頃合いに、あなたは目的地の真上に到着した。
……そこが件の目撃現場だというのは一目でわかる。
何しろ、凄惨そのものだ。
それなりの高さがある崖から見下ろしただけではあるが、あたり一面に液体が飛び散り乾いた黒い跡、つまりノッカーの体液の跡が見て取れる。
千切れ飛んだ手足や、胴や頭の一部と思われるものも。
| 判定内容 | 痕跡の調査 |
| 判定方法 | 2D6+感覚SB 10以上で成功/難しい |
| 判定結果 | 2D6+3=12(成功) |
そしてさらに、あなたはふたつの発見をした。
まずひとつ。
激しい、いや、激しすぎる戦闘の痕跡だ。
岩壁、転がる岩、それらのうち、巨大な力で砕かれたように見える不自然な形の物が明らかに多い。
残されたグリズリーの爪痕もだ。
グリズリーは確かに凶暴な獣ではある。
が、同時に明確な知能も持ち合わせている。
ノッカーの反撃に遭ったとしても、これほどの跡を残すような状態に陥るものだろうか。
もしかすると、あなたが追うグリズリーは『正気を失っている』のかもしれない。
心に留め置くべき事柄だと、あなたは記憶した。
そしてふたつめ。
不自然な岩の山だ。
あなたが居る場所とは反対の崖側に、こんもりと岩が積まれた箇所がある。
その付近の岩壁に崩れた様子がない以上、何者かが何らかの目的で積み上げた事は明らかだ。
あなたはそれが一体何かと考えたが……残念ながら思い当たる事はない。
また崖の下に降り、近くで調べれば何か分かるかも知れないが、現時点では自然に出来たものではないとしか見て取れない。
──そこまでを、あなたが頭の中で整理した瞬間の事だ。
| 判定内容 | 危機感知 |
| 判定方法 | 2D6+感覚SB 5以上で成功/簡単、非隠密 |
| 判定結果 | 2D6+3=10(成功) クリティカル! |
背後。
森林の中から響いた音に、あなたは素早く反応した。
しゃがみ込み崖下を覗いていた姿勢から、メイスを抜きつつ振り向く速度はまさしく戦場に身を置く者のそれである。
反応の早さは
あなたは森を睨みながらじわりと移動する。
戦闘が起こっても落下の危険がなく。
回避などを十全に行えるほどに足場が安定していて。
そして、森から何が飛び出してこようとも、互いの間合いに入る前に秘蹟の詠唱程度は済ませられる、そんな位置へと。
そうして、積もった葉を蹴散らす音を立てながら……気配の主は現れた。
四肢を地についた姿勢ですら、あなたと同じ高さにある頭。
全身は灰色の分厚い体毛に覆われ、その下には尋常ならざる密度の筋肉が秘められているのが即座にわかる。
手足に揃った長い爪はどれも鋭く、人間の柔らかい腹など秘蹟の護りさえ貫き通してあっさり引き裂くだろう。
グリズリーだ。
しかも見るからに成獣の……そして最悪な事に、成獣の中でもさらに一際体格に優れた個体だとの理解があなたの頭に沁み渡る。
あなたが予想外の出来事に弱い性質ならば、驚愕と共に混乱に陥ったかもしれない。
不意の遭遇を避けるために選んだ崖上の道で、何故こんな事になっているのかと。
しかし相手はあなたがこの場に居る事情など鑑みてはくれない。
森から歩み出たグリズリーが立ち止まり、黒い瞳であなたを睨み付けた。
荒い息を漏らし、呼吸を数度。
引き攣るような緊張が大気に満ちた、その瞬間に。
「ゴォアァァァッッッ!!」
グリズリーはその巨体を持ち上げ、木々を揺らすほどの咆哮を上げた。
倍以上の身の丈から見下ろされ、押し潰すような威圧感が、余りにも直裁的な死の恐怖を伴ってあなたへと襲い掛かる。
| 判定内容 | 恐怖への抵抗 |
| 判定方法 | 2D6+精神SB 8以上で成功/やや難、非不意打ち |
| 判定結果 | 2D6+4=11(成功) |
しかし。
それはあなたの正気を揺らす事はない。
むしろ逆だ。
対応を損ねれば死を招くと、あなたが現状を正確に飲み下す手助けとなったようだ。
メイスを握る手はより堅く。
地に下ろした足はどのような動きにも対応できるよう適切に力が籠もり。
そして何より、頭脳が冷静に回転を始め──気付く。
違和感である。
何かがおかしいと、あなたは確かに気がついた。
眼前のグリズリーはあなたへと威嚇を行っている。
だがそれだけだ。
最初の咆哮の後、2度3度と繰り返してはいるが、まだ襲い掛かってくる様子はない。
もちろんこのまま放置すれば戦闘になる事は疑いないが……それは妙だろう。
あなたはすでに殺戮の現場を見て、狂乱の跡を見て取った。
正気では作りようがないのではと感じられるほどのその様子と比して、眼前の個体はどうだろうか。
……どう見ても正気だと、あなたは確信した。
今相対しているグリズリーは、威嚇を繰り返しながらもどこか困惑しているように思えてならない。
まるで、
また、並のグリズリーを上回る体躯もあなたは気になった。
たっぷりと脂肪を蓄えた体は毛艶も良く、健康状態は最高の個体と見える。
その体格を維持できるだけの恵みの量をざっと計算し、この森の木々ならば問題なく支えられるとの結果も叩き出せた。
グリズリーの食性は雑食である。
必ずしも他者を襲い肉を食わねばならない類の獣ではない。
そして、目の前の相手は飢えとは無縁に生きてきた事が明白だ。
これらの要素から導き出される結論は、おそらくひとつだろう。
「グウゥ……ゥルルル」
と、そこまで思考したところでグリズリーが痺れを切らし始めた。
巨大な体に見合った巨大な口から漏れる音の質が変わっている。
グリズリーがあなたを敵と認識し、その剛腕を振るうまであと数秒とかかるまい。
その前に何をすべきか。
あなたは素早く決断せねばならない。
| 名前 | (あなたが自由に決めて良い) |
| 職業 | 神官 |
| HP | 36/36 |
| MP | 17/17 |
| 筋力 | 7 | SB=2 |
| 耐久 | 13 | SB=4 |
| 敏捷 | 9 | SB=3 |
| 器用 | 6 | SB=2 |
| 感覚 | 10 | SB=3 |
| 知識 | 12 | SB=4 |
| 精神 | 13 | SB=4 |
| 幸運 | 8 | SB=2 |
| 装備 | 性能 |
| メイス | 『2D6+筋力SB』の物理ダメージ |
| バックラー | 防御成功時、 物理ダメージを『耐久SB』追加軽減 |
| 特殊技能 | 詳細 |
| 信仰 | 秘蹟の使用権を得る |
| 治癒 | 初歩の秘蹟、消費MP5。 肉体をあるべき姿に戻す。 『1D6+精神SB』のHP回復。 |
| 守護 | 初歩の秘蹟、消費MP3。 肉体があるべき姿を保つ力を強める。 『精神SB』だけ全ダメージを軽減。 効果時間は1戦闘。 |
| 賦活 | 初級の秘蹟、消費MP5。 肉体と魂をあるべき姿に引き戻す。 状態異常を回復。 |
| アイテム | 詳細 |
| におい袋 | 1度だけ100%逃走成功 |
| チェインメイル | 1度だけ死亡を回避 |
あなたの行動は?
-
先手を取って殴りかかる
-
相手を刺激しないよう静かに逃げる
-
崖を滑り下りて逃走する
-
におい袋を叩き付けて追い払う
-
こちらも大声を上げ威嚇し返す
-
静かに様子を見る