読者参加型TRPG風小説 作:矢端トラム
あなたはわずかに下流側に移動し、昨日登ってきた階段状の部分から崖を降りた。
そうして河原に出て、今度は上流へと足を向ける。
現在地よりも、より討伐対象が現れる可能性が高いだろう方向へ。
それがあなたの選択だった。
あなたが歩を進める度に足元で石や岩が音を立てる。
一見安定していると見えても、実際にどうかは体重をかけてみるまでわからない事も多い。
自然、あなたの進行は慎重にならざるを得なかった。
| 地形変化 |
| 『森林』→『谷底』 森林の効果が消失 回避成功率低下 走行成功率低下 |
ごうごうと音を響かせる川はところどころで曲がっていた。
角度はさほど急ではないが、川の形に合わせて谷もくねっており、遠方を視界におさめる事は出来ない。
今もまた、昨日崖上から確認した殺戮の現場は岩壁に遮られて全く見えなかった。
視界を遮る崖の陰。
そこに何かが潜んではいまいかと、警戒するあなたの足はさらに速度を落とす。
| 判定内容 | ランダムエンカウント |
| 判定方法 | 2D6+幸運SB 5以上で成功/容易 |
| 判定結果 | 2D6+2=5(成功) |
| 判定内容 | 追跡 |
| 判定方法 | 2D6+感覚SB 6以上で成功/普通 |
| 判定結果 | 2D6+3=7(成功) |
幸いにもその道程で何かに出くわす事はなかった。
が、代わりに見つけたものはある。
ノッカーの死体だ。
河原の岩に紛れて打ち捨てられるまま、それらはぽつりぽつりと転がっていた。
五体満足のものは存在しない。
いずれも体のどこかを失い、無惨な屍を晒している。
何体が死んでいるのかを正確に判別することは難しいだろう。
散らばる体の一部たちを拾い集めて並べ検証すればわかるかもしれないが、それをする意味をあなたは持たない。
おおよそで数えるならば、少なくとも5体。
多ければ8か9体ほどになるかと、あなたは感じた。
| 判定内容 | 忌避感への抵抗 |
| 判定方法 | 2D6+精神SB 8以上で成功/やや難 |
| 判定結果 | 2D6+4=12(成功) |
それは、獣の死体とは異なる。
明確に人の形をした、それも人と意思を通じる事のできる生き物の死体だ。
詳細を確かめるには忌避感を伴うのが当然である。
だが、あなたはそれでも転がるノッカーの骸に近付いた。
必要だと思い、心を固めたか。
それとも魔種と人間を混同する感性を持たないのか。
それはあなただけが知る事だ。
近付き調べれば、ノッカーの死因は明らかなものだった。
巨大な力によって砕かれたか、鋭い爪によって引き裂かれたか。
見つけた死体の全てはそのどちらかで死んでいた。
どう考えてもグリズリーによるものに違いない。
あなたは顔を上げ、上流側を見た。
曲がりくねる岩壁に遮られているが、そちらにはあの狂乱の現場がある。
ノッカーの死体の数は、そこに近付くにつれて増えていくようだった。
あなたの脳裏に想像が描かれる。
谷底にて平穏に暮らしていたノッカーの群れと、そこに突如現れた狂乱したグリズリーの戦いだ。
暴虐に抵抗し、身を挺して足止めをし、しかし留める事は出来ずに防衛線を幾度も食い破られながら、下流から上流へと逃げていった。
そのような光景が自然と思い浮かぶ。
恐らく、そう間違ってはいないだろう。
……決死の思いで立ち塞がったに違いない。
ここまでにあなたが見つけたノッカーの死体は、いずれも平均よりも大柄な個体ばかりだった。
成熟した大人の、群れの中では戦う力を多く持った、人間で言う戦士や兵士、あるいは狩人のような者だと思われた。
検分を終えてあなたは立ち上がる。
あなたの標的はやはりこの先にいるようだ。
ノッカーはまだ腐敗が進んでいない。
あなたの鼻が鋭いならば、獣の臭い、その残り香も感じ取れたかもしれない。
敵はそう遠くなさそうだ。
覚悟を改めて固め、あなたは再び足を動かす。
| 判定内容 | ????? |
| 判定方法 | 2D6+感覚SB 8以上で成功/やや難 |
| 判定結果 | 2D6+3=9(成功) |
と、歩き始めたその時だ。
視界の隅。
先ほど調べたノッカーの死体の近くで、何かが光ったのをあなたは見た。
再度近付いてみれば、それは……。
| 判定内容 | 鉱石知識 |
| 判定方法 | 2D6+知識SB 7以上で成功/普通 |
| 判定結果 | 2D6+4=11(成功) |
アイオライトの原石だとわかった。
青く透き通った、美しい宝石である。
大きさは指先ほど。
胸の下から先がないその死体の、顔の横に置かれている。
その鉱石の意味に、あなたは心当たりがあった。
アイオライトはノッカーにとって特別な意味をもつ鉱石だ。
麦と果実が人に与えられたように、アイオライトはノッカーに与えられたものである。
すみれ色のその石から放たれる光は、彼らにとって『行くべき場所』を示してくれるしるべなのだという。
その特性から、ノッカーは死した仲間の骸にアイオライトを供え、死後に迷わず神の御許へ辿り着けるよう祈るのだ。
あなたは振り返り、これまでに見つけた死体を確認する。
先ほどは気付かなかったが、そのどれもの近くにアイオライトが見つけられた。
同じく指先ほどの大きさで、形も似ている。
偶然とは考えがたい。
どうやら
彼らはグリズリーによって生命を脅かされ、仲間を多く失っている。
そこにやってきたあなたの使命はグリズリーの討伐だ。
協力体制を築ける可能性は高い。
それを心に留め置いて、あなたは今度こそ進行を再開した。
そうして、日が中天に近付きつつある頃にあなたはそこに到着した。
満ちるのは死臭と獣臭だ。
これまで歩いてきた道中の比ではない。
そこかしこから立ち上る濃密な流血の痕跡は澄んだ水の流れでさえかき消せなかったらしい。
昨日見た通り、凄惨としか言いようがない。
あたり一面には夥しい量のノッカー特有の黒い血が飛び散っている。
それはすでに乾いているが、未だに漂う血の香りは胃の腑を搾り上げるようですらある。
しかし、そのような環境下でもあなたは探索を怠らない。
周囲を見渡し、
血痕の量に対して死体が少なすぎる。
河原一帯を染め上げるような黒は、少なく見積もってもノッカー20体程度の犠牲が必要となる量だ。
にも関わらず、転がっている死体は片手で数えられるほど。
いや、よくよく見てみれば、その転がっている骸もおかしい。
この場で見つかるのは腕や脚がほとんどだ。
多少大きい塊であっても、頭や胴の『一部』でしかない。
あなたの視線が崖際に向けられる。
そこには、昨日すでに見つけていた岩の山があった。
半ばの確信をもって、あなたはその一部を崩す。
……岩の下には、ノッカーたちが詰め込まれていた。
鉱石の肌の中、とうに光と機能を失った水晶の瞳が無念を訴えるようにあなたを見つめている。
ノッカーが行う葬送の風習とは異なる。
死体をただ食料とだけ見なして、他の獣から隠すためにまとめて押し込んだ、そんな様だった。
死体の山の表層の個体ほど、損傷は激しいものとなっている。
おそらく、谷底のグリズリーは腹が減る度にここに来て死体を掘り返し、貪っているのだろう。
| 判定内容 | ランダムエンカウント |
| 判定方法 | 2D6+幸運SB 7以上で成功/普通 |
| 判定結果 | 2D6+2=4(失敗) |
そう、まさに。
今この時のように。
「オ゛ォ、オァアアァァアッ!!」
谷底に咆哮が響き渡った。
憤怒と憎悪に満ち満ちた、聴くものを死の確信で縛り付けるような狂乱の雄叫びだ。
弾かれるようにあなたはそちらを見る。
上流、岩壁の向こうから現れたグリズリーは、あなたを見るや猛然と地面を蹴った。
自身の餌場、隠しておいた肉を漁る他者など、野の獣にとっては何より許し難い怨敵である事は疑いない。
| 判定内容 | 敵の観察 |
| 判定方法 | 2D6+感覚SB 8以上で成功/距離:中 |
| 判定結果 | 2D6+3=14(成功) |
崖上の個体との遭遇時とはわけが違う。
今度の相手は、あなたを見逃すつもりはないようだ。
確実にあなたを仕留めてはらわたを貪り食うと、濁った瞳には猛悪な意思が宿っている。
だが、それに怯まずにあなたは敵を見た。
そして気付く。
グリズリーはその巨体に見合わぬ俊敏性でも知られる猛獣だ。
時に馬よりも速く駆け獲物を狩る恐るべきハンターである。
昨日遭遇した個体の突進などまさにであった。
対し、眼前のものは……見る影もない。
ハッキリとノロマだ。
彼我の距離は遅々としか縮まらず、こうして落ち着いて思考を回す余裕さえある。
その理由は明白だった。
後ろ脚を引きずっているのである。
さらにそれだけではない。
遠目にも分かるほどの傷が巨体のあちこちに刻まれている。
顔、喉、腹。
いずれも牙や爪で与えられたと思われる損傷が深々と残されていた。
もし近くで観察したならば、じくじくと滲み出る黄色い膿も見て取れただろう。
あなたは確信する。
このグリズリーは、縄張り争いに敗北した『手負いの』個体だ。
| 特殊条件判明 |
| 谷底の 手負いの グリズリー |
| 『手負いの』 最大HP半減 器用と敏捷のステータスボーナスが0になる 防御と回避に関する技能喪失
凶暴性が劇的に増加 逃走行動の優先度が劇的に低下 |
迫り来る危地を前にしながら、あなたはちらりと崖上に視線を向けた。
昨日出会ったグリズリーは、眼前のものより一回り以上大きかった。
あの個体ならば縄張り争いの相手にこれほどの傷を一方的に与え、追い落とす事も容易いだろう。
あなたの考えが正解ならば、あなたの標的は同種との殺し合いの他に崖からの転落を経た上で、さらにノッカーの群れとまで戦った事になる。
相手は間違いなくひどく弱っている。
おそらくは、あなたの想像以上に。
だが、懸念事項もいくつかある。
弱ったとはいえ、それでもグリズリーは油断ならざる相手だ。
正面からただぶつかって打ち倒す自信はあなたにあるだろうか。
もし振るうメイスの威力が心許ないと思うなら、一度逃走をはかるのも手だ。
相手の足は遅い。
岩場の走りにくさは問題だが、相手もどうやら慣れていない様子であり、条件はあなたに有利だ。
引き返して一旦距離を取り、わずかだが迎撃体制を整える余地はあるだろう。
幸いと言って良いかは疑問だが、あなたはグリズリーの餌場を探っているところを発見された。
怨敵と認定されている事は明らかで、しかも狂乱状態から来る異常な攻撃性の高まりはあなたを物言わぬ肉の塊に変えるまでグリズリーを突き動かすだろう。
相手が追跡をやめて行方をくらませる心配だけはまずない。
他に、ノッカーの生き残りの存在も考えねばならない。
ノッカーは温厚で、人間に対し敵対的ではない種族だ。
しかし残念ながら今は彼らにとって最大級の非常事態である。
顔を突き合わせて交渉し約定を結んだわけでもなく、熊と戦うあなたごとまとめて攻撃する可能性も考えられる。
それが出来るだけの遠距離攻撃手段は、魔術として持ち合わせているはずだ。
とはいえ逆に、上手く呼び掛けられたのなら助けとなってくれる可能性もまたある。
ノッカーにとって必ず撃退せねばならないのはグリズリーだけだ。
見知らぬ来訪者たるあなたは警戒されるかもしれないが、わざわざ敵対を選ぶ利が向こうにあるとは思えない。
事情を正しく伝えられたならノッカーはむしろできるだけあなたを生かして矢面に立たせ、後方から援護する事を選ぶのではなかろうか。
そうなれば、彼らの魔術は下手な罠を用意するよりもよほど強力な武器となるだろう。
問題は……そのノッカーの生き残りがどこにいるのかも分からない事だ。
道中で見たアイオライトが供えられた死体の近くだろうか。
グリズリーの餌場があるこの場だろうか。
それともさらに上流へと逃れたのだろうか。
判断材料は少ない。
道中にはそれらしい隠れ場は無かったように思われる、という程度がせいぜいだ。
今あなたが居る辺りは、まだ崖上から死角となっていた箇所の探索を終えていない。
そこに亀裂や洞窟、坑道のようなものが隠されているのかもしれないし、そんなものはないかもしれない。
そして道の先、上流側はせり出した岩壁のために遠くを見通す事ができない。
彼らの助力に期待するなら、現状では推測に頼るほかなかった。
あなたが考える間も、グリズリーは脚を止めていない。
どう行動するにもタイムリミットは近い。
弱りながらも未だ強大な敵を前に、選択の時は迫る。
| 名前 | (あなたが自由に決めて良い) |
| 職業 | 神官 |
| HP | 36/36 |
| MP | 17/17 |
| 筋力 | 7 | SB=2 |
| 耐久 | 13 | SB=4 |
| 敏捷 | 9 | SB=3 |
| 器用 | 6 | SB=2 |
| 感覚 | 10 | SB=3 |
| 知識 | 12 | SB=4 |
| 精神 | 13 | SB=4 |
| 幸運 | 8 | SB=2 |
| 装備 | 性能 |
| メイス | 『2D6+筋力SB』の物理ダメージ |
| バックラー | 防御成功時、 物理ダメージを『耐久SB』追加軽減 |
| 特殊技能 | 詳細 |
| 信仰 | 秘蹟の使用権を得る |
| 治癒 | 初歩の秘蹟、消費MP5。 肉体をあるべき姿に戻す。 『1D6+精神SB』のHP回復。 |
| 守護 | 初歩の秘蹟、消費MP3。 肉体があるべき姿を保つ力を強める。 『精神SB』だけ全ダメージを軽減。 効果時間は1戦闘。 |
| 賦活 | 初級の秘蹟、消費MP5。 肉体と魂をあるべき姿に引き戻す。 状態異常を回復。 |
| アイテム | 詳細 |
| におい袋 | 1度だけ100%逃走成功 |
| チェインメイル | 1度だけ死亡を回避 |
あなたの行動は?
-
ノッカーの事は忘れて迎撃に集中する
-
この場でノッカーに呼び掛ける
-
下流へ逃げて距離を取る
-
すれ違うように上流へ走る
-
いちかばちか崖を登る