読者参加型TRPG風小説 作:矢端トラム
「ほーん……それがコレってわけだ。きれー」
「そうねぇ、本当に見事な細工。石も丁寧に磨かれて……よっぽど心をこめて作ったんだろうねぇ」
グリズリーの討伐完了の翌日。
あなたは宿のカウンターにて依頼の報告を行っていた。
語った相手はもちろん宿の主たる老婆だが、今回はそこにオマケもついていた。
あなたの同輩、女戦士である。
「ちぇ、いいなー。私はもう散々だったってのに。先にそっち取っときゃよかった」
あなたはあの後、ノッカーの幼体に案内された谷の最奥、滝壺を囲む集落の跡地にて一晩休んで、今日村へと戻った。
その帰還を誰より歓迎したのは女戦士だった。
何しろ、彼女は全身に無数の傷を負っていたのだ。
村近くの森に住み着いたという狼の群れ。
これがまたとんでもない難敵だったのだという。
1匹が姿を見せたかと思えばすぐに逃げ、それを追ったならば背後から2匹が奇襲を仕掛け。
退けたと息を吐いたところに3匹の追撃を受け、手傷を負わせて脚を引き摺り逃げ出したところにトドメを刺そうとした瞬間4匹に囲まれ。
多少の被害を覚悟で数を減らそうと捨て身で挑めば、1匹残らずバラバラに撤退され。
疲労を癒そうと一旦引いて休息を取り始めた途端、7匹での総攻撃──からの食料の強奪に、持ち込んだ道具の破壊とくる。
話を聞いているだけのあなたでさえウンザリとしたかもしれない。
それだけ『賢い』群れはもはや悪夢そのものだ。
もっとも、最終的に策も何も放り捨てて朝晩問わずに延々と森中を追い回し、群れ全体が疲れ果てて倒れたところを皆殺しにしてみせたという女戦士も相当にアレだが。
そういうわけで彼女は今あなたによる治療を受けている。
今回の報告はさほど難しい事はない。
グリズリーが狂を発した理由も探索中に把握したあなたの言葉は、理路整然として説得力もあった。
老婆からの詰問などもなく、簡単な秘蹟の行使程度は片手間に行えている。
さて、そんな女戦士と老婆が綺麗綺麗と眺めているのは……あなたが受け取ったタリスマンだ。
翡翠の台座の中央にはめ込まれたアイオライト。
幸福をもたらすとされる緑の石と、正しき方角へと足を向かわせる導きの蒼い石の組み合わせ。
『この子が幸せな日々を歩んでいけますように』
作った者の願いを言葉にするなら、きっとそのようなものになるのだろう。
あの幼体の父か、母か。
あるいは兄や姉。
年に見合わぬ見事な魔術の腕を考えれば、師という可能性もある。
そういった関係の誰かから贈られた物に違いない。
作成者の想いを鑑みれば、幼体の首に提げられている事が正しかっただろう。
だが、あなたは差し出されるままに受け取った。
その理由を語る事はない。
魔種の感情に意味を感じない人格なのか。
単に宝石に価値を見出したか。
それとも、家族と同胞の亡骸に身を埋めてまで復讐に臨んだ戦士の、宝物を手放してでもあなたに報いようとする覚悟をこそ受け取ったのか。
いや、そもそもタリスマンの素材と意匠から意味を汲み取れず、ただ差し出されたから手にしただけなのだろうか。
そのどれであるか、あるいはどれでもないか。
そんなことは、ただあなただけが知っていれば良い事だ。
このタリスマンがこの後どうなるか……売り払われるか、誰かに贈られるか、宿の自室に安置されるか、肌身離さず身につけるのか、といった事についても。
「あ、終わった? ありがとー、助かるわ! 教会のおっちゃんでもいいんだけど……ほら、腕がさ? 悪いとまでは言わないけども、よ」
ともかく、これで今回の依頼は終わりを迎えた。
報告も済み、後は報酬を受け取るのみである。
「あの子は昔っから我慢のきかない子だからね……いい加減蜂蜜は控えなさいって言ってるのに、あれじゃ神様も一生認めてくれやしないよ」
開拓村の教会、その長であるにも関わらず治癒の秘蹟と聖火の管理しか行えない男の話に呆れの息を吐きながら老婆が椅子から立ち上がる。
あなたへの報酬を取り出しにだ。
が、その前に。
「帰ったぞ、婆さん……。はぁ、クッソ疲れた。ネズミなんぞあと10年は見たくもないね」
宿の扉を開けて、野伏が帰ってきた。
疲労困憊。
そんな言葉がピッタリ合う様子でだ。
いっそ辞書の挿絵として載せたいほどである。
当然、彼も依頼の報告はする。
身を投げ出すようにカウンターに座ると、さっさと済ませたいのかすぐに口を開き始めた。
「……まったく、畑の男衆が言ってた通りだぜ。あのクソネズミどもの『身軽な』ことといったら──」
その口を閉じさせるのはどうやら容易なことではない。
老婆は苦笑し、申し訳なさそうにあなたに目配せしながら座り直した。
あなたはそれに、ゴブレットを傾けて果実酒をひと口含む事で返答する。
今のところ急ぎの用事があるわけでもない。
野伏の報告を聞き流しながら、多少のんびりと時間を使っても良いだろう。
ちょうど今回の経験を振り返りたいところでもあった。
不意に出来た空白の時間は、むしろ好都合というものである。
| 報酬① |
| 経験点+3 |
谷で起こった出来事を振り返って、まず。
あなたはじっと己の手を見た。
もう傷はない。
秘蹟によって癒されたそこには、日々の鍛錬の跡が残るのみだ。
だが、あのグリズリーの頭蓋を砕いた感触は、未だジンとした痺れのようにあなたの中にある。
獣というカテゴリの中、単純な暴力においてはおそらく最上位に位置するだろう相手。
それを、あなたは罠も策略もなく正面から打ち砕いた。
例え手負いの弱った個体だとしてもだ。
これ以上の経験などそうあるものではない。
谷底での死闘を経て、あなたの冒険者としての位階は間違いなく上がった。
その手に宿る力は、より大きなものになるだろう。
| ステータス上昇 |
| 『筋力』7+1=8 |
| ステータス上昇 |
| 『耐久』13+1=14 |
| ステータス上昇 |
| 『器用』6+1=7 |
カウンターの上で拳を握り、手応えを噛み締めたあなたは依頼中に見た他の事柄に意識を移す。
印象に残っているといえば、やはり崖上のグリズリーだろうか。
あの個体に正対した上で恐怖にとらわれず正確に観察し、的確な対処を行えた点も冒険者として誇るべきだ。
もしあの時、下手に戦闘を挑んでいればどうなったか。
命を落とす事まではなかっただろう。
谷底の個体と違い、崖上の個体は正気であった。
あなたの反撃により多少の痛手を負えば、戦闘は損が大きいと判断して引いていた可能性が高い。
その後はあなたが縄張りを無駄に荒らさず立ち去ればそのまま見逃してくれていただろう。
傷を与えられずとも、におい袋を用いれば逃走程度はかなったはずだ。
だが……激しい消耗はおそらく避けられない。
手負いですらあれだったのだ。
万全の個体相手にどれほどの苦戦を強いられるかは考えるまでもない。
その状態で谷底でもう一戦、など。
やりたいと願うものは冒険者を通り越してただの自殺志願者だ。
そこまでを考えて、あなたは果実酒をもうひと口飲み下した。
そして次に、谷に残るものに思いを巡らせる。
あの崖上の個体を討伐する必要はないだろう。
豊かな森に引きこもり、飢えを知らずに満足している以上、ふらふらと迷い出てくる可能性は極めて低い。
放置しても問題はないはずだ。
今後村があの森に手を伸ばし切り拓くとなったなら別だが、今のところはそんな話もない。
もしそうなったとしてもその時はその時で対処を考えれば良い。
あなたと誰かもうひとり、宿の冒険者でも連れて討伐に向かうなどして。
……ノッカーの幼体はどうなるか不明だ。
滝壺の集落に、他の生き残りはいなかった。
再建は絶望的だろう。
他所の群れを引き込むなどすれば可能かもしれないが、あなたが休む間も残骸を片付け、かつての仲間を拾い集めて埋葬していたあの個体が、思い入れ深いだろう己の里に自分からよそ者を引き入れようとするかは大いに疑問である。
もしあなたが魔種だろうとも幼な子を放っておけない性質ならば、この開拓村に身を寄せるようノッカーを誘ったかもしれない。
しかし相手は首を縦に振らなかったはずだ。
その理由までは、言語を異にするあなた達の間では疎通しきれなかっただろうが。
現実的に考えれば、谷を離れて旅に出てどこかのノッカーの集落に合流する、という未来が最も堅実だ。
幼体がひとり、誰の庇護もなく旅するのは危険も多かろう。
が、彼(?)は戦士だ。
グリズリーにさえ通用した魔術の腕と、あの心根の強さがあれば、どのような荒野も踏破してみせるだろう。
心配などするだけ礼を失する行為に違いない。
「うっわダッサ。びっくりしたわ。それで草原半分なくなってたわけ? ちょっと乱暴すぎない? 普段私に頭使えーとか言ってるのなんだったの」
「頭使った結果だわボケ! あの数とすばしっこさ相手に焼き討ち以外手があんなら教えてくれや! いいだろうが元々あの辺全部拓く予定だったんだからよぉ!」
「まぁまぁ、そうねぇ。うちの人が許可したって事は大丈夫ってことよ。あの人、そういうところはちゃんとしてるから」
あなたの思考はそこまでで一旦途切れた。
野伏の報告がおおむねひと段落したためだ。
戦士が白い目で野伏を見つめてつついているが、それはまぁ関係ない事。
老婆はふたりの様子を眺めてくすくす笑って、今度こそ報酬を取りに行った。
さて、最後に考えるべきはその報酬の使い道だ。
危険な依頼だっただけに、硬貨の詰まった袋は重いものになるはずである。
どう扱うかは、頭を回して熟考すべき議題だろう。
| 報酬② |
| 成長点+1 |
もっとも、今ばかりはその前に。
「ねー新入りちゃん。新入りちゃんもそう思うでしょ? 頭でっかちですーぐ人バカにするくせに、本当にバカなのは……ってさぁ」
「んだコラ喧嘩売ってんのか買うぞォ言い値で。バカみてぇな力押しだって有効な場面で使えば最善策なんだよ考えなしに力押ししか選ばねぇテメェがバカなだけでなぁ! おい、お前もそう思うだろ!?」
勝手に罵り合い盛り上がった挙句、あなたを無駄に巻き込もうとする先達ふたりへの対処を先に考えた方が良いかもしれないが。
| 選択肢 | 効果詳細 |
| 鍛錬を行う | HP&MP上昇 上昇量は各1D10 |
| 技能を磨く | 技能習得 次回習得は『重撃』 メイス命中時に状態異常判定 クリティカルヒットで状態異常確定付与 |
| 奉仕に勤む | 秘蹟習得 次回習得は『聖域』 休息の安全性&回復量上昇 |
| 武具の新調 | メイスの命中強化 バックラーの防御成功率強化 |
| 村人と交流 | クエストでの友好的NPCの能力向上 現在Lv1 |
| 名前 | (あなたが自由に決めて良い) |
| 職業 | 神官 |
| HP | 36/36 |
| MP | 17/17 |
| 筋力 | 8 | SB=2 |
| 耐久 | 14 | SB=4 |
| 敏捷 | 9 | SB=3 |
| 器用 | 7 | SB=2 |
| 感覚 | 10 | SB=3 |
| 知識 | 12 | SB=4 |
| 精神 | 13 | SB=4 |
| 幸運 | 8 | SB=2 |
| 装備 | 性能 |
| メイス | 『2D6+筋力SB』の物理ダメージ |
| バックラー | 防御成功時、 物理ダメージを『耐久SB』追加軽減 |
| 特殊技能 | 詳細 |
| 信仰 | 秘蹟の使用権を得る |
| 治癒 | 初歩の秘蹟、消費MP5。 肉体をあるべき姿に戻す。 『1D6+精神SB』のHP回復。 |
| 守護 | 初歩の秘蹟、消費MP3。 肉体があるべき姿を保つ力を強める。 『精神SB』だけ全ダメージを軽減。 効果時間は1戦闘。 |
| 賦活 | 初級の秘蹟、消費MP5。 肉体と魂をあるべき姿に引き戻す。 状態異常を回復。 |
| アイテム | 詳細 |
| チェインメイル | 1度だけ死亡を回避 |
あなたの過ごし方は?
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鍛錬を行う
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技能を磨く
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奉仕に勤む
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武具の新調
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村人と交流