読者参加型TRPG風小説   作:矢端トラム

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クエスト『街道の ??の 護衛依頼』(1/3)

 

 

 

「ああ、神官様! あなたが来て下さったのですか。よかった、これは心強い」

 

依頼を請けたあなたが工房を訪ねると、薬師の男は朗らかに微笑んであなたを出迎えた。

元々柔和な顔がさらにほぐれ、実に人好きのする顔立ちである。

村の若い娘や奥方達に井戸端で評判になっているのも頷けると、あなたが噂に詳しいのなら思っただろう。

 

薬師とあなたは、少なくとも顔見知りであるはずだ。

村で暮らす間に彼の薬の世話になった事があるかもしれないし、そうでなくとも宴の席で見かけて挨拶程度はしているに違いない。

鍛錬の観戦中に飛んできた石や武具の破片で傷を負った村人に軟膏を塗っている姿もおそらくは見かけている。

 

そもそも、薬師と神官は近しくあるのが常識だ。

 

神官は治癒の秘蹟を扱えるが、それは使えば使うほどに疲労が溜まる。

無制限に人を癒せるわけではなく、限度があるのだ。

 

そこを補うのが薬師である。

秘蹟でなくとも癒せる程度の傷は薬師が担当し、治りを早める軟膏や痛みを和らげる水薬などで処置をする。

また、一部の病、月経と妊娠に関するものや、老いと共に生じる病などには秘蹟よりも薬の方が効きが良いという事情もある。

 

二者の協力と分業は古くから続けられてきたものだ。

もしあなたが大きな神殿に所蔵されているような歴史書に目を通した事があるなら、秘蹟だけでは人を救うに足りないと苦悩し、神官の居ない地を渡り歩いて数多の民間療法を収集し、生涯を賭した研究の果てに学問として体系立てた数百年前の神官が薬師の開祖だという史実も知っているはずだ。

 

 

 

薬師はあなたを工房に迎え入れ、椅子をすすめた。

そして慣れた流れで薬草茶を淹れようとするが、そちらはあなたが首を横に振って断った。

 

残念ながら、聖典は草を食めとは教えていない。

これは失礼と、薬師は弱った顔で頭をかいた。

開祖が神官とはいえ、それはもう大昔のこと。

日々研究と調薬に追われる今の世の薬師が戒律にやや疎いのは仕方のないことだろう。

 

 

 

さて、それはともかく依頼の話だ。

 

「確認ですが、事情はお聞きになられましたか?」

 

もちろんあなたは宿ですでに聞いているが、念のためにと薬師は説明を始めた。

ことの経緯は以下の通りである。

 

 

 

シルフィウム、という製薬素材がある。

春から夏にかけて、長く伸びた一本の茎の先に小さな黄色い花をワサワサと咲かせる植物だ。

一見何ということもない、そこらの野原にいくらでも生えていそうなこの草は、薬師の工房では最も多く見かける種の薬草である。

葉と根がついたままの茎が10本ずつ束ねられ、紐でくくられて天井から吊り下げられていたならば、それはシルフィウムだと考えてまず間違いない。

 

単体でも胃と腸の状態を整える──特に便秘に良く効く──薬効をもつが、重要なのはそこではない。

複数種の素材から薬品を作る時、細かく砕いたシルフィウムを溶かし煮詰めた湯を介すると不思議と良く混ざり、効能が強まるのだ。

そのため、利用法が発見されて以来薬師の工房に欠かす事の出来ない物とされているのだが……。

 

「……ごめんなさい、先生」

 

「あなたを責めているわけではありませんよ。なに、薬師を志す人間なら誰でも一度くらいはやらかす間違いです」

 

このシルフィウムはしっかりと乾燥させてから使うものだ。

工房で吊り下げられているのもそのためである。

が、その状態だとほんのわずかな水気で薬効が抜けてしまうという欠点を持つ。

具体的には、軽く湯を沸かした水蒸気だけで部屋中のシルフィウムが全滅してしまうほど。

 

青い顔で俯き謝罪を口にした少年、薬師の弟子である見習いはまさにそれをやったらしい。

保管場所の扉をキチンと閉めないまま、休憩中に茶を飲もうと近くで湯を沸かし、という流れ。

 

今やこの工房には使い物になるシルフィウムはひと束もない。

部屋の片隅に積まれた草の山は役割を完全に失って、ただ廃棄を待つばかりである。

 

 

 

「そういうわけで、隣町の薬師にいくらか分けてもらえないかお願いする事にしたんです。珍しいものではないので採取自体はいくらでもできますが、何しろ乾燥には時間がかかりますから」

 

そう言って、薬師は封のされた手紙をあなたに渡した。

隣町の薬師へあてたもののようだ。

 

「こんな土地では、都市のようにどこかの商会に素材を買い付けに……なんて出来ませんからね。こういった同業同士の融通はよくある事です。この手紙を渡せば、特に問題なく譲ってくれるはずですよ」

 

蝋に押された印の形は薬師を束ねる協会のものだ。

これを使えるということは薬師として正規の教育を受け、試験を通して国に認められた腕を持つ証である。

彼の薬に関する悪い話は村人からあなたの耳へ届いた例はない。

なるほど道理でと、納得を得た事だろう。

 

 

 

「神官様への依頼は、私の弟子を連れて隣町へ赴き、そして無事にまた村へ連れ帰る事です。……ああ、もちろんシルフィウムの方も。どうでしょう。引き受けてもらえますか?」

 

ひと通りの説明を聞き、あなたは頷いた。

特に問題になる事はなさそうだ。

 

隣町までは、早朝に村を出て夕暮れ近くに着くほどの距離。

それなりに歩くことにはなるが、街道周辺は開拓村と隣町の冒険者が定期的に獣や魔種の間引きを行っているために安全性はかなり高い。

子供のひとり程度を守りながらであっても、まともな冒険者にとっては容易い仕事である。

 

「ありがとうございます。それでは出立は明日早朝、またここに来てください。準備をさせておきますので」

 

事前の打ち合わせはそれで終わりだ。

翌日からの護衛を万全に行うため、あなたは宿に戻り早めに休んだ事だろう。

もちろん、済ませられる準備は全て済ませた上で。

 

 

 

 

 

そうして、明けて翌朝。

あなたは薬師の弟子の少年を連れて村を出た。

畑の間を進み、一度焼けたためにほとんど土が剥き出しの元草原を抜けて、馬車のわだちがかすかにだけ残る街道を歩いていく。

当然、全方位に警戒の目を向けながらだ。

 

 

 

判定内容周囲の警戒
判定方法2D6+感覚SB

5以上で成功/容易

判定結果2D6+3=9(成功)

 

 

 

あたりはなだらかに広がった丘陵である。

視界を遮る背の高い草もなく、随分と警戒もやりやすい。

 

おかげであなたにはハッキリと分かる。

今現在、村近くの道は平穏そのものだ。

人にとって危険な獣の気配は全くなく、幾らかの鳥が地面をつついて虫を掘っているのが見つかる程度。

運が良ければ草の海からちょこんと顔を出してあなたと少年を見送るウサギあたりも目にできたかもしれないが、ともかく牧歌的と言っても良い雰囲気である。

少なくとも当分の間は何かに襲われるような心配はいらないだろう。

 

 

 

地形効果
『街道』

ランダムエンカウント発生回数減少

友好的NPCが配置されやすい

 

 

 

空模様もなかなかに快適だ。

青が3割、白が7割といったところ。

日々気温が上がっていく季節の中、太陽が隠れる時間が長いのは徒歩の旅にはありがたい話に違いない。

 

となれば、今のところ一番に気にかけるべきは少年の事だろう。

あなたは隣を歩む小さな体を見下ろし、声をかけた。

 

「は、はい、大丈夫です。無理はしてません」

 

それに対し、少年はピクリと身を震わせて返答した。

どこか落ち着きがなく、そわそわとした様子。

 

しかたのない事だろう。

自身の失敗で師に迷惑をかけ、薬を待つ村人に迷惑をかけ、そして今こうしてあなたにも迷惑をかけていると、彼は思っているに違いない。

この場合、それが本当に迷惑と呼べるものか、かけられた側が迷惑と感じているか、といった事はいっそ関係ないのだ。

 

 

 

判定内容対象の観察
判定方法2D6+感覚SB

7以上で成功/普通

判定結果2D6+3=7(成功)

 

 

 

幸い、本当に無理はしていないようだ。

気は落ち込んでいるようだが、足取りに不安定なところはない。

目の下に隈を作ってもいないあたり、前日の睡眠時間も十分だと思われた。

 

もしかしたら、彼の師である薬師が眠りを助ける薬でも処方したのかもしれない。

シルフィウムがなくとも製薬自体は可能だと、あなたは昨日聞いている。

ただ、かかる手間と時間、完成品の薬効に大きく差が出るため、間に合わせの手段でしかないようだが。

 

 

 

「あ、あの、神官様」

 

と、今度は少年からあなたへと声が投げられる。

あなたを見上げた少年は表情をキッと引き締めて口を開いた。

 

「少しだけ、早く歩いてもいいでしょうか……? えっと、普通に歩いたら着くのは夕暮れ頃って言ってましたよね。でも、もう少し早く着いた方が上手く話が進むと思うんです! 分けてもらう交渉に時間かかるかもしれないし……あと、隣町で早く休めて、朝早くに出るのも楽になります!」

 

初めはおずおずと。

しかし段々と勢いよく、無自覚に背伸びまでして早口であなたに利点を説く。

 

「俺の事なら大丈夫です! 先生と一緒に一日中歩き回って薬草集めしたりしますし、体力はちゃんとありますから!」

 

少年は懸命にあなたを説得し、先を急ごうとしている。

ほら、と服をまくって自身の脚を見せつけまでした。

あなたが見る限り、確かに日頃から良く歩いていると分かる引き締まった健康的な脚だ。

 

これならば今より少しばかりペースを上げて歩いても問題はなさそうではある。

そうして早めに目的地に辿り着ければ、少年の言う通り隣町の薬師との交渉が難航しても余裕を持って休めるだろう。

 

 

 

さて、どう返答すべきか。

言葉を発しているうちに元気がみなぎってきた幼い瞳を見返しながら、あなたは考える。

 

今回の依頼主はあくまで薬師だ。

弟子の少年の要求に従う義務はない。

むしろ、道中の全ての決定権はあなたに委ねられ、必要ならば少年に命令しても良いとまで言われている。

少年の方もまた、出発時に薬師から、あなたの指示に従うようにと念入りに言いつけられていた。

 

旅程を早めるも早めないも、あなたの自由である。

 

 

 

名前(あなたが自由に決めて良い)
職業神官

 

HP36/36
MP17/17

 

筋力8SB=2
耐久14SB=4
敏捷9SB=3
器用7SB=2
感覚10SB=3
知識12SB=4
精神13SB=4
幸運8SB=2

 

装備性能
メイス『2D6+筋力SB』の物理ダメージ
バックラー防御成功時、

物理ダメージを『耐久SB』追加軽減

 

特殊技能詳細
重撃攻撃命中時、『朦朧』判定

クリティカル時、『朦朧』確定付与

信仰秘蹟の使用権を得る
治癒初歩の秘蹟、消費MP5。

肉体をあるべき姿に戻す。

『1D6+精神SB』のHP回復。

守護初歩の秘蹟、消費MP3。

肉体があるべき姿を保つ力を強める。

『精神SB』だけ全ダメージを軽減。

効果時間は1戦闘。

賦活初級の秘蹟、消費MP5。

肉体と魂をあるべき姿に引き戻す。

状態異常を回復。

 

アイテム詳細
チェインメイル1度だけ死亡を回避

 

あなたの行動は?

  • ペースを上げて到着を早める
  • 落ち着くよう説得する
  • 予定に従うよう命令する
  • 生意気な口出しを叱りつける
  • 少年を背負って走る
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