読者参加型TRPG風小説 作:矢端トラム
数秒の思考。
その末にあなたはある結論に至り、取るべき行動を決定した。
交渉は少年に一任する。
村の薬師は元々そうするように指示を出していた。
おそらくは学びのため。
ならば、こういった手合いへの対応はまさに良い経験になるだろう。
辺境の薬師とて、使う素材の全てを自ら採取するわけではない。
山や森の中にしか育たないものならば冒険者に。
遠方でしか手に入らないものならば商人に。
それぞれ依頼する機会は少なからずある。
そういった折に常に良心的な相手にのみ当たるなど、余程の幸運の持ち主以外にはありえない事だ。
故に、あなたはこれを少年にとって貴重な機会と考えた。
口を閉ざし、気配を消してただの付き添いに徹する。
とりあえずは、あなたは何もしない。
それでシルフィウムの入手に失敗したならば、それはそれだ。
時間に猶予があるのだから村に戻って薬師の判断を仰ぐか、あなたの財布からもいくらか追加で出し買い取れる数を増やすか。
あるいはあなたが男に対し"対処"しても良い。
いずれにせよそれは事後の事。
今戦うべきは少年だと、あなたは判断した。
ただ、その前に。
このくらいは良いだろうと、あなたは一歩少年へと近付く。
そして、緊張と怯え、さらに困惑で震える小さな背中に手を当ててそっと支えた。
「む……」
「え、神官様……?」
それを見た大男はかすかに眉を上げたが、あなたはそれに頓着しない。
大事なのは少年だ。
ポン、ポン、と肩甲骨の辺りを2度、3度。
ゆっくりと柔らかく叩いてやり、無言でメッセージを伝える。
ここにいるのは少年だけではない。
背中は支える。
気負わずやれば良い、と。
「あ……そう、ですよね。大丈夫です」
顔だけを振り向かせた少年は、男に聞こえないように小声で囁いた。
「はい。急ぎません。落ち着いて、ゆっくりやります。時間はあるんですもんね」
どうやら、伝えるべき事は十全に伝わったようだ。
あなたはすでに、町までの片道の間に少年の信頼をある程度勝ち取っている。
ならばこのくらいの事は
少年の震えは止まり、浅かった呼吸は長く深いものに変わる。
それを確認したあなたは、そのままの位置で沈黙した。
今やるべきことはこれで終わり。
後は見守るのみである。
そうして、少年の交渉が始まった。
素材を持ち込む商人との商談用らしい、部屋の隅に置かれた小さなテーブルを挟んでふたりが座り、向かい合う。
あなたはもちろん、先と同じ様に少年の後ろに立った。
「この値は、少し高すぎじゃないでしょうか。相場で売って欲しいとまでは言いませんけど……」
まず初手は明らかに不自然な高値の指摘だ。
相場の5倍。
いくらなんでも正当な取引とは言えない。
本来男が診る患者に使うべき物を無理を言って譲ってもらう以上、多少の上乗せは仕方ないにしても、これではぼったくり以外の何ものでもない。
が、男は少年の指摘に対し、逆にふんぞりかえった。
胸を張るようにして少年を見下ろし、鼻で笑う。
「なんだ、そんな事も知らんのか? 今年のシルフィウムは育ちが悪かったろうが。生えてるうちの半分も使い物にならんかったからな、どこも品不足で値が上がってんだよ。坊主、勉強不足だな」
| 判定内容 | 相場知識(NpcLv1) |
| 判定方法 | 2D6+知識SB 7以上で成功/普通 技能『薬草学』により『+2』補正 精神状態正常、マイナス補正なし |
| 判定結果 | 2D6+4=8(成功) |
「そんなはずありません。逆です。今年のは良く育ってて薬の出来が良いって先生が言ってました。去年のも一昨年のもです。余って困るぐらいだって」
だが、少年は真っ向から男の言を否定してみせた。
どうやらあなたの行動は少年をしっかり勇気付けている。
頼りになる大人が自分のすぐ後ろで、ここについているぞと主張しながらも見守ってくれているという事実が彼に力を与えているようだ。
「……ち。知ってやがったか。面倒な」
「これでも、その、勉強はしてるので」
「は、生意気なガキだ」
男が手元の算盤を弾く。
値は少し下がった。
相場の5倍から、4倍へ。
「だが下げてやってもここまでだな。そもそも俺がお前らに譲ってやる義理はねぇんだ」
| 判定内容 | 協会知識(NpcLv1) |
| 判定方法 | 2D6+知識SB 8以上で成功/やや難 技能『薬草学』により『+2』補正 精神状態正常、マイナス補正なし |
| 判定結果 | 2D6+4=13(成功) |
「い、いえ、あります」
「あん?」
「薬師協会の援助規定です。より多くの患者に薬を届けるため、素材の不足から援助を求められたら、要請には可能な限り応える努力をしなければならない。そう決まっているはずです……えっと、確か、規定だけじゃなく理念のところにも書いてありました!」
少年の交渉はまだ続く。
こればかりは薬師として学んでいる者にしか出せない材料だろう。
聞かされた男は驚きからか。
少年を睨みつけるために細めていた目を少し見開いた。
そして、笑う。
「はっははは! こりゃ勉強してるってのは本当らしいな! 随分と珍しいとこまで知ってやがる!」
「えっ、あ、は、はい。ありがとう、ごさいます……?」
「おう、流石に褒めてやる。……だが残念だったな。俺は協会なんぞに所属しちゃいねぇのよ。いわゆるモグリさ。規定の話は聞いちゃいるがよ、俺には関係ねぇな」
| 判定内容 | 工房知識(NpcLv1) |
| 判定方法 | 2D6+知識SB 9以上で成功/やや難 技能『薬草学』により『+2』補正 精神状態正常、マイナス補正なし |
| 判定結果 | 2D6+4=11(成功) |
「それも、嘘ですよね? だって、工房がこんなに綺麗です。俺の先生は協会の一級資格持ちですけど、比べても全然見劣りしません。モグリの人の工房じゃ絶対ないです!」
「ほう? 坊主、お前よその工房なんか見た事あるのか? 薬師の工房なんてのはどこもこうだぞ。師匠を尊敬して持ち上げるのも良いがね、無資格のもんをバカにしすぎだなぁ、えぇ?」
「う……っ。そ、それは……えっと……」
少年の言葉が詰まる。
無意識の動きだろうか、わずかに背を逸らしてあなたに近付き、ローブの裾を求めるように左手が宙をさまよった。
彼はまだ幼い。
おそらく物心ついた頃から開拓村で暮らし育ったのだろう。
他の薬師の工房を見るのは初めてに違いない。
これが当たり前だと言われてしまえば、完全に否定しきる事は難しかろう。
ただし、それは。
今この場では、というだけ。
少年はもうよくよく理解している。
急ぐ必要はない。
落ち着いて、時間をかけて良いのだと。
少年の手が膝の上に戻るのと、思い切ったように口を開くのは同時だった。
「それ、この町の長の方に確認してもいいですか?」
「……なんだと?」
「あ、あなたが正規の薬師か、それとも本当にモグリなのか、町の代表の方が把握してないわけがありません。確認に行けばすぐにわかる事です。今日はもう遅いにしても、明日には簡単に!」
少年には確信があるようだ。
声を一段低くして威圧する男に負けず、身を乗り出して言う。
対し、男の返答は。
「…………本当に、生意気なクソガキめ」
算盤の修正によって返された。
提示された値が下がっている。
相場の2倍。
少年に持たされた購入資金で、最低限の必要量を賄える金額だ。
急に無理を言って融通してもらう事、譲ってもらうシルフィウムから男が得られるはずだった利益を補填しなければならない事などを考えれば、おおむね適正価格と言って良かった。
「一番嫌なとこ突きやがったな。互助規定の罰則は重くはねぇが面倒だ。協会に
「あ……」
少年は算盤を覗き込んで、わずかに身を震わせた。
今度は恐怖でも怯えでもない。
達成感から、だろう。
ちら、とあなたを振り仰いではにかんだ笑顔を見せてから、男へと勢いよく頷く。
「はい、十分です! ありがとうございますっ!」
「ちっ! 礼なんぞいるか! ……保管庫はあっちだ。さっさと行って見繕ってこい」
「はい! ……あの、さっきの、自分でも生意気だなって、思いました。ご、ごめんなさいっ」
そうして、少年は工房の奥へ駆けていった。
まるで逃げるような速度。
というか実際、半ば逃げたのだろう。
最後の謝罪が逆に苛立たしく感じたのか、男が少年を睨む目付きは今日一番の鋭さであったから。
しかしそれは、少年の姿が消えると共に男の顔から消え去った。
脅すための表情がするりと抜ける。
代わりに浮かべられたのは、満足げな笑みだ。
顔の作りがそもそもいかめしいために分かりにくいが、どこか村の薬師のそれに似た柔らかさがある。
「お節介だったかね?」
その様子にあなたは、そちらだったかと納得した。
少年のための演技だったのだろう。
その可能性はそれなりにあるのではないかと、あなたも考えてはいた。
確証こそなかったが、示唆するものがいくつかあったのだ。
少年も触れた、整った工房の様子がまずひとつ。
見るからに患者を第一に考えたそれは、男の自らの仕事に対する姿勢を表しているようであった。
ここを下敷きにすると、手紙の封蝋を目にした際の反応からひとつの情報が得られる。
薬師を束ねる協会の封蝋印。
試験を通して国に能力を認められた証である。
それを見て、男はなんの感情も見せなかった。
とすれば、だ。
村の薬師と同じ資格をもつ者、つまり人を救うために懸命に学びを積み重ね、国に認められるまでに努力を続けた者か。
正規の薬師と地位や能力を比べて嫉妬を抱かない、抱く必要がないと心を固めた、自己よりも患者を優先する人格者のモグリ薬師か。
いくらか例外はあろうが、そのどちらかである可能性が高い。
そのような者が、果たして本当にシルフィウムを5倍の値で売りつけようとするだろうか。
自分がそうしたせいで、村で薬が不足し苦しむ人間が出るかもしれないのに。
「随分と気弱そうに見えたからな。こういう事は早めに免疫をつけさせてやるべきかと思ったが……いらん世話だったかもしれん。は、俺の目も曇ったか」
男はまた鼻をフンと鳴らすと、畳まれた手紙をしばし眺めてから部屋の隅の引き出しへと仕舞い込む。
「あの年で頭の巡りも度胸も大したもんだ。お前さんが後ろについてたにしたってな。うちの孫にも見習わせたいもんだよ。……いっそ孫の婿にでもなっちゃくれんもんかね」
くつくつと、男は髭を震わせて笑っていた。
それから少しして、少年が戻ってきた。
良く乾燥した草の束を5つほど抱えている。
男はそれを見て、ギシリと身を固めた後、口を開いた。
「…………おい坊主。お前、それを選んだ基準はなんだ。言ってみろ」
「え、え……?」
「いいから答えろ。まさか適当に選んだわけじゃないだろうな」
威圧的ではない。
何やら呆れたような、疲れたような。
ため息と共にこぼすのが似合いの声色だった。
| 判定内容 | 協会理念理解度(NpcLv1) |
| 判定方法 | 2D6+知識SB 10以上で成功/難 技能『薬草学』により『+2』補正 精神状態正常、マイナス補正なし |
| 判定結果 | 2D6+4=10(成功) |
「……えっと、協会規定は困っている薬師は助けろと言ってますけど……それは、一方的なものであってはダメだと書いてます」
「おう。続けろ」
「だから、助けられたなら助けないといけませんし、そのために良い関係を築いて……『お互い様』がいつでも出来るようにしないといけなくて。だからです」
そこまで言って、少年は困ったように草束を撫でた。
もしあなたに薬草を鑑定する能力があったならわかっただろう。
少年が抱えた束はどれも、品質の悪い物だった。
薬効には影響はない。
が、葉のつき方や茎の太さがいびつで、細かく刻む際に面倒が多そうだと、少し知識のある者ならすぐに気付く。
当然、少年も。
そしてその上で、わざと選んだのだ。
無理を言って、しかも規定を盾に強引に通した交渉の末に助けてもらうのだから、せめて質の良い扱いやすいものには手をつけないのが礼儀であると。
「あの、今回は本当にありがとうございました。無理を言ってしまってすみません。もし、こちらで何か不足することがあったら! すぐご連絡ください! 今度はこっちがお助けしますから! なんだったら俺、村から走って持ってきます!」
「…………はぁ。おいお前、ちょっとついてこい」
「え? は、はい」
男は天井を仰いで長いため息を吐くと、工房の奥へ消えた。
草束を抱えたままの少年も連れ立って。
あなたは同行しない。
その必要が無いのは明らかだ。
「これと、これと……これもだ。ついでに持ってけ。倍額取るんだ。少しぐらいオマケもつけてやる」
「えっ!? あ、あの、でもこれじゃ貰いす──」
「うるせぇ相場トントンぐらいだろ! ガキは黙って受け取りゃいいんだよ! あぁクソ、これもだ!」
「──ぎひゃい!? す、すみません! ごめんなさい! ありがとうございますっ!?」
保管庫の外まで聞こえるちょっとした騒ぎの後。
目を回して戻ってきた少年の腕の中には、実に扱いやすそうな良質のシルフィウムがもう5束ほど増えていた。
そうして翌日……の、さらにもうひとつ次の日。
あなたと少年は宿として借りた教会の一室を出た。
言うまでもない事だが、あなたは神官だ。
当然各地の教会には顔がきく。
2泊分の屋根を借りる程度はわけのないことだ。
滞在が余分に伸びた理由は、天候である。
早朝には雲行きが怪しくなり始め、昼前にはポツリポツリと降り出し、正午を過ぎたあたりからはザアザアと。
目覚めの時点で気付いたあなたと少年は相談し、出発を取り止めたというわけだ。
いくら防水の対策は重ねているといえど、無用なリスクを負う必要はない。
もし少年が初日の焦燥を抱えていたままならば。
あるいは交渉で大きな失態を犯し、また平静を失っていたならば。
無理を押して少年が悪天候の中に走り出し、あなたがそれを追いながら説得しなければならない、などという展開もあり得たかもしれない。
だが、今の少年はそんな状態とは程遠い。
朝、あなたに起こされるまでもなくきっちり目覚め。
水を通さないしっかりした箱型の背嚢に、これまた水を通さない魚の皮をなめして作られた袋で包んだシルフィウムを詰め込み。
最後に隙間はないかと念入りに確認していた小さな体は、ひとつの仕事をやりとげて一皮剥けた雰囲気を纏っていた。
少年の精神状態に気を払い続けたあなたの功績と言って良いだろう。
恐るべき獣や魔種との戦いに比べれば地味で些細なことだが、護衛の依頼においてこういった点は一般に想像されるより遥かに重要だ。
「よかった、今日はよく晴れそうですね」
少年が顔の前に手をかざし、東の空を見た。
雲の少ない青空に、低い位置から煌々と輝く陽光が覗きつつある。
雨が降る兆候は全くない。
昨日出来た水たまり程度はあるものの、日が落ちきる前にやんだ事もあり道の大半はもう乾いていた。
これならばシルフィウムへの悪影響は考えなくとも良いだろう。
少年が勢いよく転び、さらに運悪く背嚢の蓋が壊れて中身が飛び出し、さらにさらに運悪くシルフィウムの包みが水たまりの中にピンポイントで落ちる、などという事態でも起きれば別だが。
……現実的に考えて、そのようなことは起こるまい。
後はただ、復路を無事に歩みきれば良いだけだ。
気持ち良い天候に頬を緩ませる少年を連れて、あなたは町から伸びる街道へと足を踏み出した。
| 判定内容 | 周囲の警戒 |
| 判定方法 | 2D6+感覚SB 5以上で成功/容易 |
| 判定結果 | 2D6+3=5(成功) |
帰りの道も静かなものであった。
あなたと少年は、風が草を揺らす音と野鳥の鳴き声ばかりが響く街道を行く。
そのペースは早くもなく遅くもなく。
精神状態と同じように、安定した無理のない範囲を保っていた。
そんな中、ふと少年が街道の右手側、遠くまで広がる草むらの中を見る。
そしてあなたに一歩近寄って、庇護を求めるようにローブを掴んだ。
「し、神官様、アレって……」
そこに居るものには、当然あなたも気付いていた。
2頭の狼だ。
体格はそれほどでもなく、まだ若い個体と分かる。
時期からして、親離れを済ませたばかりの兄弟だろう。
| 判定内容 | ランダムエンカウント |
| 判定方法 | 2D6+幸運SB 6以上で成功/普通 |
| 判定結果 | 2D6+2=6(成功) |
だが、あなたは少年に大丈夫だと返した。
狼を睨み、メイスの柄に手をかけながら草原に一歩踏み出してみせる。
結果は劇的だった。
狼の片方は怯えたような鳴き声を上げ、もう片方は弾かれたように飛び上がり、連れ立って大慌てで逃げていく。
「わ……! すごい!」
少年は目を輝かせるが、なんという事はない。
過去に人間の脅威を叩き込まれた個体だったというだけだろう。
狼の群れならば2頭は少ない。
おそらく人の武器によって仲間を失ったのではなかろうか。
街道周りはあなた達冒険者が定期的に
それに巻き込まれた事があるならば、真っ当な獣なら人に関わろうなどとは考えもしないものだ。
少し脅してやるだけで、こうして追い払うのは簡単である。
大事なのは『お前たちを殺す手段があるぞ』と自信満々に威圧してやる事。
怯えを押し隠す事さえ出来るなら、戦闘の経験をもたない者でも真似られる。
「それって、もしかして俺にも出来ますか?」
あなたがそう説明すると、少年は好奇心を目に灯してあなたを見上げた。
もちろん可能だろう。
まさに一昨日の交渉の最中、少年はあの強面の大男に似たような事をやってのけている。
ただし、とあなたは付け加える。
獣を相手に実践するのはまだ早いだろう。
何しろ少年はまだ幼い。
体格から来る威圧感の不足ばかりは如何ともしがたいところだ。
「あー、ですよね……」
少年は残念そうに声を漏らしたが、今はそれでいい。
彼は大人には遠い。
まだまだ師や父母の庇護の中で慈しみ護られるべき存在だ。
例えどれほど良く学び、年不相応な知識を蓄えていようとも、そこは動かない事実である。
歩みはゆっくりとしたもので良い。
それが許される環境に、彼はいるのだから。
道程は2度の休息を挟み、何事もなく進んだ。
日が傾き、空が赤く染まり始めるとともにあなた達は見慣れた村の柵を越える。
教会に灯された聖火の結界が強く働く範囲だ。
これでもう少年が害される恐れはなくなった。
つまり、護衛の完遂である。
少年の師、薬師の男は村の入口が見える場所で待っていたようだ。
手を上げて朗らかに微笑み出迎える薬師へと、こちらも笑顔で少年が駆け寄っていく。
それを見送って、あなたは街道を振り返った。
今回の依頼はなんとも穏やかなものだった。
予想外も予定外もなく、街道らしい当たり前の静けさの中を往復しただけと言って良い。
つまり……実に『普通の』仕事であった。
| 特殊条件判明 |
| 街道の 普通の 護衛依頼 |
| 『普通の』 当該環境の平均的な状態を逸脱する出来事が起こらない |
そういう事もある。
というより、そういう事の方が多い。
だからこそ普通は普通と呼ばれるのである。
あなたとて、毎度毎度逞しく肉体を異常発達させた魔種や、手負いとなり荒れ狂った獣を相手取っているわけでもない。
冒険者にとっての、特に語るべき事もない日常。
そういうどこにでもある当たり前の依頼を、あなたは当たり前にこなしたのだった。
| クエスト終了 |
本日(6/6)はもう1話投稿
20〜21時予定
精算フェイズになるため成長選択肢アリ