読者参加型TRPG風小説   作:矢端トラム

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本日(6/6)2話目の更新です
護衛依頼3をまだ読んでいない方はご注意ください


報酬精算フェイズ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました。いやぁ、シルフィウムというのは中々面倒な子でして……。吊るしておくと今回のような事があるのですが、空気の流れないところにしまっておくと、それはそれでダメになるんですよ」

 

村に戻ったあなたは薬師の工房を訪れていた。

護衛の依頼。

その顛末を報告するためである。

 

少年はすでに居ない。

シルフィウムを師に渡してすぐのタイミングで、父親が迎えに来たのだ。

幼い身で村を離れていたのだから両親の心配は当然の事だろう。

今回の旅で学んだ事を先生に教えたいと顔中に書いてありながらも、まずは家族を安心させなければと手を引かれて帰っていく様はなんとも良い子のそれだった。

 

そんなわけで、工房にはあなたと薬師のふたりだけだ。

届いたシルフィウムを保管庫に吊るし終えて戻ってきた薬師に、あなたは報告を始める。

 

 

 

 

 

「なるほど……それはなんというか、はは、シルフィウムの分とは別に今度何かお返しをしなければいけませんね。あの子には良い勉強になったでしょうから」

 

あなたの報告を受けて、薬師はそんな風に言った。

 

聞くに、隣町の薬師は村の薬師と同門なのだという。

隣町のいかつい大男が兄弟子。

あなたの目の前の柔和な男が弟弟子。

ある高名な薬師による私塾にて、机を並べて薬学を学んだのだそうだ。

 

「……忙しさに追われてしばらく顔を合わせていないので忘れていましたが、そうだった、確かにそういう人でした。人を教えるためなら、憎まれ役を買って出て平気でいるような。ふふ」

 

おそらく、村の薬師も少年と同じような事をされた経験があるのだろう。

そして、その度に何かを学び、鍛えられ、一人前の薬師に近付いていった。

事情を知らないあなたが見てもそうとわかるほどに、彼の顔は大事な記憶を懐かしむ暖かさを持っていた。

 

「本当に、何年経っても敵う気がしない兄弟子ですよ。私はなんというか、叱るのも厳しくするのも苦手で。甘いだけでは育たないと、自分自身の過去で分かっているはずなのですがね」

 

薬師はそう自嘲した。

が、それはどうだろう。

あなたは少年がそのつぼみを開かせる様を見た。

厳しさに直面し、試練を得たがための開花だったとしても、それは良く伸びた根と茎があるためだ。

優しく導き、学べば褒め、甘やかに見守ってきたからこそ培われたものであるはずだ。

 

「ああ、失礼。無駄に語ってしまいましたね。こちらが報酬になります。お確かめください。……今回は、あの子の事をありがとうございました」

 

その師弟愛のほどは、あなたが受け取った報酬からも読み取れる。

 

今回、問題を収める事だけを考えるなら。

あなたを護衛としてではなく遣いとして雇う方がずっと安くついた。

隣町の薬師とは同門の関係である上、教会の規定とやらがあるのなら、必ずしも少年を派遣する必要はなかったはずだ。

復路における薬草の管理にしても、1日や2日程度ならそう難しくもない。

 

他者を護る仕事は面倒が多く、要求される能力も多岐に渡る。

相場としては高くなりがちであり、実際にあなたひとりだけを送った場合と比べれば倍近い額になっている。

 

それでも、薬師は少年を遣いに出し、そのために高い金を出してあなたを護衛として雇ったのだ。

村にいれば気を塞ぐばかりだろう彼に挽回の機会と、短いながらも旅での気晴らしと、あわよくばちょっとした経験を与えるために。

少しばかりの兄弟子のお節介で、経験の大きさはグンと膨れ上がったようだったが。

 

 

 

聖典にいわく。

知識と技術をよく培った者は、子にもまた同じだけ学ばせるべきだという。

そしてその際、子に与えるためならば時も財も惜しんではならない。

 

ならば薬師が弟子に与えている物は、それこそが人の在り方だと認められた愛の形そのものだ。

親たる者、あるいは師たる者は、かくあるべし。

神がそう定めた律の実践者に、どうして甘いだけの未熟者などと言えるだろう。

 

 

 

それを、神官として教え諭したか。

あるいは、冒険者として余計な口を聞かずにただ報酬を受け取るにとどめたか。

 

あなたと薬師だけが知る顛末はともかくとして。

今回もあなたは、無事に仕事の代価を懐に収めたのだった。

 

 

 

報酬①
成長点+1

 

 

 

 

 

そんな出来事からしばらくの後。

あなたは冒険者の宿、その1階にて同輩達と語り合っていた。

内容はと言えば、各々の請けた依頼の報告会である。

 

冒険者にとって、情報は武器だ。

どのような怪物にどのような手段が有効なのか。

村の周囲にどのような生き物がいて、どのような生態なのか。

ひとつ知るたびに冒険者が生き残り報酬を手にする確率は上がっていく。

 

逆に言えば、情報交換を軽視する者はその大半がそうそうに死んでいく。

そして幸いに、あなたも、宿の冒険者たちもそういった愚か者ではないようだ。

 

「──とまぁ、そんなわけでな。楽な仕事だったぜ。毎度こんなんで済むんなら一生現役で食ってくのも悪くねぇんだけどな」

 

今聞いたのは、野伏の報告だった。

あなたが選ばなかった依頼、山中の毒羽タテハ討伐である。

 

野伏が言うには、大発生はまさにピークを迎えていたという。

山に入った途端そこかしこに溢れる蝶の群れ。

初めは心底肝を冷やしたそうだが……。

 

「森の獣を片っ端から毒で殺して血を吸いまくって、そりゃ無敵の王様気分にもならぁな。呆れるほど『のんきな』連中だ。罠を疑いもせず簡単に誘導されて、ディナーの真っ最中に一網打尽ってな」

 

その数と毒に任せて山の生態系の頂点に上り詰め、慢心してしまったのが運の尽き。

より頭の良い生き物である野伏に良いように操られてまとめて殲滅されたそうだ。

 

それでもまだ生き残りも多いようだが、当分の間は近隣の冒険者が断続的に山狩りをする予定である。

厄介極まりない毒羽タテハの大発生は、今回はそう大きな被害にはならない見通しが立てられそうであった。

 

 

 

野伏の話はそれで終わり。

続くのはあなただ。

とはいえ。

 

「あー……うん。すげーフツー」

 

「ああ、まぁ、普通だなぁ……」

 

「普通すぎてつまらないなぁ! もっと派手な顛末はないのかい? シルフィウムが実は花の妖精で、意地悪爺さんの工房から連れ出してくれたお礼に魔剣を授けてくれるとか!」

 

タメになる情報でもなく、胸も躍らず、ハラハラドキドキもしない。

戦士も野伏も魔術師も、揃って普通と称してあっさり興味を失っている。

 

 

 

報酬②
経験点+3

 

 

 

仕方のない事だ。

あなた自身、冒険者としての経験は大きかったとは言いがたい。

何の危険もなく、メイスなどベルトから抜きもしていない。

 

ただ、冒険者としてではなく。

少年と意思を通じ、その心を支え、成長を見守った。

そういう、人間としての経験をあなたは積んだ。

 

それは決して小さくはない出来事だろう。

 

 

 

ステータス上昇
『精神』

13+1=14

 

 

 

「ん? 妖精なら聖剣じゃないの?」

 

「??? 何を言ってるんだい? 妖精なんて邪悪なのしかいないじゃないか。夜中に枕にウルシをべっとり塗っていくやつとかね!」

 

「ええ……何それ知らない。どこの妖精なの……」

 

「邪悪の方向性がだいぶ予想と違うんだが?」

 

もっとも、そういうのは評価されない場である。

もしあなたがこの経験を大事なものと思っていたとしても、同輩と共有するのは難しそうだ。

出来るとすれば。

 

「ふふ、お疲れ様。あんたも良い依頼に当たったもんだね。冒険者ったって人間だ。いっつも殺し合いだのなんだのしてるより、たまにはそういうのんびりした日がある方がいいさ」

 

あなたのゴブレットが空いたのを見て、すかさず果実酒を注いだ老婆相手ぐらいのものだろう。

 

 

 

経験点余剰発生
ランダム振り分け/1D7

①4=感覚/10+1=11

②5=知識/12+1=13

 

 

 

新しい果実酒を舐めながら、あなたは隣町の薬師を思い出す。

 

彼の演技を、あなたは初見では見抜けなかった。

推察は出来たものの、確信ではない。

もし最初の段階で表情などから情報を得られていたなら、取りうる選択もまた違っていただろう。

 

それがあなたの中にどうやら少しだけ引っかかっていたようだ。

経験とは、成し遂げた事だけを指すものではない。

時に心に残ったしこりを自覚し、消化するために手を伸ばす試みもまた、成長には必要な事である。

 

 

 

後は、と考えて。

あなたは少年が道中で知識を披露していた様を脳裏に描いていた。

 

道端に生える草。

普段食べている果実。

それらの意外な薬効と、効果的に成分を抽出する方法。

 

彼の様子が余りに楽しそうだったからか。

語られた内容のほとんどはあなたの中に残ったままである。

 

それはもしかしたら、いつか冒険の中で役立つ日が来るかもしれないし、全く余剰の情報として死蔵されるのかもしれない。

そして知識とは、きっとそういうもので良いのだ。

 

 

 

 

 

さて、今回の報告会には目玉がある。

なんといっても前人未到。

未だ誰も踏み入った事のない、そこにあると知られているだけの荒野の話なのだから。

 

「んっんー、なんか喉が渇いちゃったなぁ。こーんなにカラッカラだと上手く言葉が出ないかもしれないなぁー」

 

「はー、出たよこのクソアマ節。そういうのマジでいらねぇから。……婆さん、こいつに蜂蜜酒(ミード)ついでやって。俺の奢りで」

 

「わはは、君もクソ()節が出てるじゃないか。あ、それ私にも一杯。この人の奢りで」

 

「この黒ずくめ女の注文はキャンセルな。分かってると思うけど」

 

気の抜けるようないつものやり取りの後、女戦士が語り始める。

村の遥か西。

4つの川を越えた先に広がっていた、赤土と岩の大地の話を。

 

そこは乾いた土地であるそうだ。

煌々と照る陽光に焼かれ、逃げ場の無い熱気が地表に滞留し、水という水は消え果てている。

そんな中でさらに止むことなく風が吹き荒ぶ。

ただ歩くだけで際限なく体力(HP)を奪われる環境に、さしもの女戦士も早々に音を上げたという。

 

「ちょうど陽も風も避けられる岩棚があったからね。そこで夜まで待ったんだけど……夜も夜でさ、きっっっついのよ……」

 

日が沈んですぐは良い。

昼の熱が消え、風こそ激しいものの探索が不可能なほどではない。

しかし、夜の闇が濃くなるにつれて、女戦士は気付いた。

 

()()()()()()()()()()()

 

季節は真夏。

だというのにまるで冬が始まったかのような夜半の冷え込み。

風から身を守る装備こそあったものの防寒の備えなどない女戦士は昼夜通してろくな休息もままならず、日を追うごとに自身が恐ろしい速度で衰弱していくのを感じたそうだ。

 

これはダメだ。

熟練の戦士をしてそう諦める他なく、得られたのは……。

 

「生のサンプルは新種っぽい大トカゲが1匹と、こっちも多分新種なワームの化け物が1匹。死体全部は持って来れなかったけど、頭は回収して村長に預けてある。それと、あそこはちょうど今が『繁殖期の』真っ只中だってことくらい。……トカゲは子連れで気が立ってるし、ワームは腹に細長い卵めちゃくちゃくっつけてて人の肌に植え付けようとしてくるし……あ゛ーもうやだ。しばらく夢に出そう」

 

わずか2種類の生き物の情報ぐらいのものだ。

強力な出血毒を牙に持ち、獲物の体液を余さず啜る大トカゲと。

強力な麻痺毒の体液を分泌し、獲物を余さず丸呑みするワーム。

どちらも乾いた大地にふさわしい、見つけた食料を無駄なく栄養に変える生物と言える。

 

他には岩や土、多少の鉱石類は持ち帰ったものの、どれも珍しいものではなく価値は認められなかった。

荒野の初調査は、ほぼ失敗に近い結果に終わったと言える。

何の事前情報もなかったのだから仕方のない事だが。

 

 

 

女戦士はカウンターに突っ伏して、左腕をガリガリと掻いていた。

ワーム……ミミズを巨大化させて牙を生やしたような生き物の卵をそこに植え付けられ、内側から幼虫に貪られる経験を味わったのだとか。

幼体の時点ですでに持ち合わせている麻痺毒のおかげで痛みは無かったそうだが、それが逆に気味悪く不快であったらしい。

 

そして、戦士が撤退を決断した最大の原因がそれだ。

寄生したワームを摘出するために自らの腕を大きく抉らざるを得なくなり、片腕がまともに使えなくなってしまったわけだ。

 

「…………その、なんだ。もう一杯飲むか?」

 

哀れなほどの大外れである。

せめて、時期さえもう少しマシならば。

野伏もそう感じたのだろう。

憐れむ目で戦士を眺め、生暖かく介抱にあたっている。

 

「飲むー……。ほんでしばらく休むわ。もー今回ばっかしは本気でやる気しねー……」

 

話しているうちに嫌な記憶が鮮明に蘇ってしまったらしい戦士は、もう使い物になりそうになかった。

常よりも遥かに力が抜け、スライムか何かのようになっている。

 

「それか死んだワームだね! はっは! 実はまだ寄生されてるんじゃないのかい?」

 

「やめろやぶちころすぞ」

 

それを見て魔術師が最悪のジョークを飛ばし、女戦士が9割本気の言葉を吐いて、情報交換の夜は終わった。

 

 

 

 

 

さて、その翌日はあなたにとって休日となった。

戦士は宿の部屋でいじけて引きこもっているものの、野伏と魔術師はいつも通りに依頼に出かけた。

そして、宿には依頼が2件しかなかったためにあなたは暇となったのである。

 

老婆の用意した朝食、川魚を使ったサンドイッチで腹を満たしたあなたは、さて今回はどう過ごそうかと自室に戻って考えた。

予定外とはいえ、折角の休みである。

ここは何か有効に時間を活用すべきだろう。

 

 

 

選択肢効果詳細
鍛錬を行うHP&MP上昇

上昇量は各1D10

技能を磨く技能習得

次回習得は『不動』

受けたダメージが極めて小さい時、

直後の行動が成功しやすくなる

奉仕に勤む秘蹟習得

次回習得は『聖域』

休息の安全性&回復量上昇

武具の新調メイスの命中強化

バックラーの防御成功率強化

村人と交流クエストでの友好的NPCの能力向上

現在Lv1

 

 

 

名前(あなたが自由に決めて良い)
職業神官

 

HP36/36
MP17/17

 

筋力8SB=2
耐久14SB=4
敏捷9SB=3
器用7SB=2
感覚11SB=3
知識13SB=4
精神14SB=4
幸運8SB=2

 

装備性能
メイス『2D6+筋力SB』の物理ダメージ
バックラー防御成功時、

物理ダメージを『耐久SB』追加軽減

 

特殊技能詳細
重撃攻撃命中時、『朦朧』判定

クリティカル時、『朦朧』確定付与

信仰秘蹟の使用権を得る
治癒初歩の秘蹟、消費MP5。

肉体をあるべき姿に戻す。

『1D6+精神SB』のHP回復。

守護初歩の秘蹟、消費MP3。

肉体があるべき姿を保つ力を強める。

『精神SB』だけ全ダメージを軽減。

効果時間は1戦闘。

賦活初級の秘蹟、消費MP5。

肉体と魂をあるべき姿に引き戻す。

状態異常を回復。

 

アイテム詳細
チェインメイル1度だけ死亡を回避

 

あなたの過ごし方は?

  • 鍛錬を行う
  • 技能を磨く
  • 奉仕に勤む
  • 武具の新調
  • 村人と交流
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