読者参加型TRPG風小説   作:矢端トラム

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本編
オープニング(1/2)


 

 

冒険者。

それは、未知へと挑む者たちの総称である。

 

未だ人跡の届かぬ土地。

あるいは時の流れに埋もれた太古の遺跡。

はたまた伝説にのみ語られる幻の宝。

 

それらに挑む事を生業とする冒険者はいつの時代もいるものだ。

 

ある者は一攫千金を夢見て。

ある者は栄誉と名声を求めて。

そしてある者は生きるために。

 

 

 

今もまた、その道へと足を踏み入れた者が居る。

 

それはひとり、草原のただ中に刻まれた道を歩んでいた。

旅装に身を包み、武装を携えて、目的地へと一歩一歩進む。

 

あなただ。

 

よく鍛えられているのだろう。

あなたの足取りはしっかりとしたもので、体幹のブレは少ない。

これは当然の事だ。

 

冒険者とは前述の通り、未知に挑む者である。

ならば山地や森林といったいわゆる『人間の縄張り』以外での活動は多く、そういった土地に棲む獣、あるいは魔種との争いはつきものだ。

 

あなたが冒険者を志した理由や経緯はあなたのみが知るものだが、ともかく志したならば最低限満たしておくべき水準というものがある。

例えば、街のごろつき集団を相手にして容易に無傷で勝利できる程度。

例えば、最弱の魔種として良く知られるゴブリンの小さな群れを単身で撃退できる程度。

例えば、凶暴な大型肉食獣たるグリズリーの奇襲を受けて即死せず戦闘に持ち込める程度。

 

冒険者志望。

他者から笑われずにそう名乗る事が許されるのはそういった者だけだ。

あなたもまた、その水準には達している。

それは多少武の心得がある者ならば一目でわかるだろう。

 

 

 

そんなあなたが進む先に、やがて目的地が見えてきた。

 

 

 

判定内容拠点の規模の決定
判定方法1D6/数値が大きいほど大規模
判定結果1D6=2(大きめの村〜小さな町)

 

TIPS/1D6とは?
6面体のダイスを1個振る(転がす)の意。

Dの前の数字がダイスの個数、Dの後の数字がダイスの面数を表す。

 

例えば3D6となった場合、6面体ダイスを3個振り、3〜18のランダムな数字が結果として得られる。

 

TRPGでは冒険中のイベントをランダムに分岐させる時や、攻撃のダメージを算出する時などに用いる。

また、ダイスを振る事をダイスロールと呼ぶ。

 

 

 

柵に囲われた集落である。

村、と口にした時に想像される規模よりはやや大きいが、町と呼ぶのははばかられる。

そういった規模だ。

 

正確に情報を記すならば、以下のようになる。

 

住まう者が『リ・ブレシア』と呼ぶ大陸のうち、人間の領域における西の端。

『ルビアーノ王国』にて魔種に対する防壁として名を知られる『トルボリ辺境伯』が人類の版図を広げるべく命じ作らせた開拓村。

そのひとつである。

 

名はまだない。

あえて言うならば正式な書面に記される場合に用いられる『パレルヴァ西方魔種領域第3開拓集落』だろうか。

が、当然ながら住民たちはいちいちそのような長ったらしい名を用いる事はない。

村、あるいは開拓村とだけ、自らの集落を称している。

 

 

 

その中へあなたは踏み入った。

 

見知らぬ村である。

あなたは視線を巡らせ、様子を伺っただろう。

村の外から、そして内から眺めた限り、世帯の数はせいぜいが数十。

住人はどれほど多くとも300に届くまい。

 

そんな土地であればよそ者は目を引く。

当然、あなたにも村の民が視線を注いでいた。

 

 

 

判定内容冒険者に対する態度
判定方法1D6/数値が大きいほど歓迎
判定結果1D6=5(かなり友好的)

 

 

 

井戸から水を汲み上げながら話をしていた若い女達。

工具を振るい家屋の拡張を行っていた男衆。

親に言いつけられたおつかいか、保存食らしき包みを抱えて歩く幼い子供。

そういった者たちの視線があなたへと向けられていた。

 

そこに込められているのは敵意や隔意ではない。

誰もがまず、見ない顔だ、と疑問を浮かべるものの、それはすぐに喜ばしい感情が含まれた表情に変化する。

 

その理由は、どうやら一人の男があなたに教えてくれるようだ。

 

「おお! あんたもしや、冒険者か?」

 

工具を振るっていた男達の一人。

中でも最も筋肉が発達した年嵩の男だ。

あなたが人物観察に優れているならば、態度と顔に満ち満ちた自信のようなものから、周囲を引っ張る力と精神性を持ったリーダー格と分かっただろう。

この村における職人達の棟梁、といったところか。

 

そんな男の問いにあなたは肯定を返した。

すると、男はすぐさま喜色満面となる。

 

「そうかそうか、よく来てくれた! ──おぉい! 冒険者だ! 冒険者が来たぞ! ようやくの4人目だ!!」

 

棟梁の男は実に嬉しそうにあなたの肩を叩いて歓迎を示すと、村の者へと振り向くやいなや、大柄な体躯に見合った声を張り上げた。

腹の底までビリビリと響くような大音声だ。

あなたが鋭い聴覚を持っているか、あるいは神経質な性質であるならば、眉をしかめずにいるのは難しかっただろう。

 

知らせを受けた村民の反応もまた友好的なものだった。

初めから表に居た者は棟梁と同じく、よく来てくれた、歓迎するよ、待っていたぞと声を上げる。

それに続いて、家の窓から鎧戸を開けて身を乗り出す者、家事の最中に飛び出したのかおたまや包丁を手にしたまま玄関から顔を覗かせる者たちもまた、一拍遅れて似通った反応だ。

 

「本当によく来てくれた。パレルヴァから便りをもらってからこっち、まだかまだかと待っていたんだ。これでようやく村を西に広げられる」

 

もう誰の目にも明らかだ。

この開拓村は冒険者を歓迎している。

 

棟梁の男はあなたが4人目だと言った。

先に村に入った3人の冒険者がよほど上手く村に溶け込んだに違いない。

 

また、ここは開拓村である。

それも魔種の領域に踏み入った土地である以上、冒険者にしか任せられない仕事は数多いという事情もあるだろう。

向けられた期待は相当に大きいようだ。

 

あなたが冒険者としての責務を全うする限り、この村はどうやら住み良い場所になりそうである。

あなたが捻くれ者でなければ、と注釈はつくが。

 

 

 

 

 

さて、そんな到着から明けて翌日。

あなたは早くに目を覚まし、与えられた宿の部屋から出て、階段を降りた。

 

ここは『冒険者の宿』である。

およそあらゆる町にある施設であり、名の通り冒険者を専門に相手にする宿だ。

作りはどこも似通ったもので、2階から上が客室、1階が酒場。

そして、酒場の隅には大きな掲示板が置かれ、冒険者に宛てた様々な依頼が貼り付けられている。

 

この村もそういった慣習を踏襲しているようだが、一点だけ違いがあった。

掲示板に、依頼がひとつも無いのである。

 

「おはようさん。それはねぇ、今使ってないんだよ。何しろここじゃいちいち貼り出して選んでもらうのは効率が悪くてね」

 

理由は、酒場のカウンターからあなたに話しかけた老婆の言った通りだ。

 

ここは当然ながら都市ではない。

冒険者の役割が大きい土地ではあるが、依頼の絶対数としては比べるべくもない。

わざわざ掲示板に貼り出して選ばせるよりは、宿の主人がまとめて管理した方がよほど便利が良いというものだった。

 

 

 

よって、あなたは掲示板の前を通り過ぎてカウンターへと向かった。

老婆──昨夜催されたあなたを歓迎する小さな宴にて、村の長の妻だと紹介された宿の主がニッコリと笑う。

 

「武具の手入れは終わっとるよ。職人連中がねぇ、もう張り切っちゃってまぁ、ありゃあ夜通しやっとったんだろうね。ついさっき置いて行ったとこさ」

 

言葉と共に、老婆は横を向く。

その視線の先にはあなたが持ち込んだ武具一式が丁寧に置かれていた。

 

この先あなたが命を落とさぬ限り、開拓村には長く滞在する事だろう。

ならば武具の調整や手入れが出来る職人とは好ましい関係を作っておくべきであり、あなたの武具を一通り見ておきたいとの求めに応じて渡しておいたものだ。

もっとも、あなたが用心深い性格であるならば、予備の武具は渡さずに懐に忍ばせておいたかも知れないが。

 

あなたが近付き手に取ってみれば、しっかりと手入れがされた痕跡がうかがえるはずだ。

どうやら村の職人の腕、そして仕事への姿勢は確かであるらしい。

 

 

 

さて、そんなあなたの武具とは何であろうか。

 

冒険者の扱う武具は数多いが、駆け出しが持つ物は数種のパターンに分けられる。

 

 

 

まずはロングソードとウォーピック。

長大かつ切れ味鋭い大剣と、硬い装甲や毛皮の守りを貫く戦槌は、まさしく冒険者の相棒だ。

 

これらを振るうならば、あなたは戦士に違いない。

 

総身に満ちた生命力、鎧のごとき頑健な肉体、岩をも砕く逞しい筋力をもって、眼前に怪物が立ちはだかろうとも勇ましく戦うだろう。

 

 

 

次いで、ショートソードとショートボウ、それに数本のダガー。

軽く取り回しに易い剣と、敵に気取られる前に先制を行える弓、さらには投げてよし突いてよしの短剣の取り合わせは、あらゆる状況にそつなく適応する。

 

これらを振るうならば、あなたは野伏に違いない。

 

風のような俊敏性、正確に動作する器用な手足、鋭敏に研ぎ澄まされた五感を頼りに、道なき道を切り開くだろう。

 

 

 

または、メイスとバックラー。

重い鉄の塊を叩きつける単純さがわかりやすい槌と、生半な攻撃は軽々弾く盾は、安定性の高さが売りだ。

 

これらを振るうならば、あなたは神官に違いない。

 

信仰に支えられた強靭な精神、教えの下で鍛えられた丈夫な体、そして神々から使用を許された護りと治癒の秘蹟に支えられた粘り強さは、戦場における悪夢としてよくよく知られている。

 

 

 

はたまた、杖。

人の背丈ほどの長さのそれは鈍器ではなく、神々が定めた世の理を捻じ曲げる『魔術』の触媒だ。

 

これを振るうならば、あなたは魔術師に違いない。

 

神よりも己を優先する巨大な自我、書物を読み漁り得た広範な知識、そして何よりもちろん思考と詠唱によって発現する多種多様な魔術は恐るべきものである。

 

 

 

TIPS/選択肢
読者(プレイヤー)による物語への介入手段。

何が選ばれたかで『あなた』の行動が変わる。

アンケート機能により投票を募り、最も多く票が入ったものが『あなた』の選択となる。

 

 

 

あなたは手を伸ばし、使い慣れた己の武具を手に取った。

 

それは──

 

あなたの武具は?

  • ロングソードとウォーピック
  • ショートソードと弓、数本のダガー
  • メイスとバックラー
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