読者参加型TRPG風小説 作:矢端トラム
あなたの住まう開拓村。
これの正式名称、つまりは国の公的な文書に記される場合の名は、『パレルヴァ西方魔種領域第3開拓集落』である。
第1と第2はすでにない。
というより、村を脱して町となった。
それぞれ
王国に伝わる古い詩から取った名を与えられ、じわじわと発展を続けている。
後者、バスクィユは夏にあなたが薬師の弟子の少年と共に訪れた隣町である。
この第1から第3までは、パレルヴァからひたすら西へと道を伸ばした。
まずは魔種の領域に切れ目を入れ、人の手を伸ばす余地を生むために。
村長と、彼に率いられる村人達。
パレルヴァからの潤沢な支援。
そして冒険者たちの尽力によって、それは成功した。
ならば次は、と。
切れ目を広げるために作られたのが第4と第5の開拓集落である。
西に伸びた道を少し戻り、北と南へ。
村々を線で結べば、ちょうど第3を頂点にして西を指す矢印の形だ。
結論から言えば。
これはどちらも失敗に終わった。
理由はと問われれば土地が悪かったとしか言えない。
人が手を広げやすいなだらかな丘陵を攻略した第3までとは異なり、続くふたつは山と森に切り込んだのだ。
「やめるべきだとは進言したんだがね。第4、第5の村を主導した辺境伯閣下の御嫡男は、なんだ、机上でアレコレするのが
村長はそう語る。
開拓村跡の廃墟にあなたが向かうと知った彼は、その成り立ちについて情報をもたらしてくれた。
いわく。
第4と第5がその位置に作られたのは、明確な根拠、村を置くに足る理由や目的があったわけではない。
そんな思いつきで生まれ。
そしてさしたる時をおかず滅びたのだと。
「街道の維持がな、できんかったのだ。草原だから出来る事を、森や山でも出来ると思い込みよったのが何とも愚かしい。特に第4は畑に出来る土地もろくになく、細い川が流れるのみの岩山のふもとだ。……運もなかった。常よりも遥かに雪の多い厳冬でな。氷と魔種に道を閉ざされて、そこで何が生きられようか」
長い冬が終わり、ようやく道が開けた頃。
救援にと第4に向かった者たちはそこに残された惨劇の跡を見た。
街道に残る雪の下には、何人もの村人たちの骸が埋まっていたのだそうだ。
誰も彼もが痩せ衰えた姿で、他の集落に救いを求めて雪を掻き分け進み……そして結局、生き残りはひとりも居なかった。
第3集落の者が彼らにしてやれたのはたったひとつ。
打ち捨てられ獣に荒らされた骸を集めて焼き、火神の御許へ送ってやる事だけだったという。
「酷い年だったが、良い事もひとつだけあった。その失態のために、御嫡男が開拓事業から退いてくださった事だ。……開拓村に関してあの方がされたあらゆる決定の中で、それこそが最良のものだったろうよ。我々の上の
ボードゲームを挟んで向かい合う時とはまるで違う、それこそ氷に閉ざされたかのような音色の言葉で、村長は語りを締めくくった。
| 判定内容 | 魔種知識 |
| 判定方法 | 2D6+知識SB 9以上で成功/やや難 |
| 判定結果 | 2D6+4=12(成功) |
あなたは知っている。
ファントムとは、人間から魔種に転じた存在だ。
その原因となるのは。
人である事を捨て去り、死後の救いが失われ、永劫の苦痛に囚われようとも構わないと己に断じられるほどの。
「……優しい目をした娘御だったよ。例えどれほど苦しい冬になろうとも、貴族の命に逆らえず村を離れられない皆を放っておけないとな、義務もなかろうに村の教会に残ったのだ」
神が定めた律さえ焼き落とす、感情の奔流だ。
「終わらせてやれるなら、どうか終わらせてやってほしい。あの冬から、もう何年も経った。残るものは何もないというのに、たったひとり地獄に立ったままでいるのは……いくら何でも酷にすぎる」
容易な相手ではないと、あなたは覚悟すべきである。
廃墟に潜む神官戦士からはすでに創世の四神の庇護は失われ、秘蹟など何一つ扱えはしないだろうが。
そのような些事で弱まるほどに、彼女の情念はぬるくはあるまい。
その話から2日後。
準備を整えたあなたは古びて消えかけた街道跡を北へと向かった。
轍の痕跡など少しもない。
草の背が低い、ところどころに見える固い土が剥き出しの部分が、かろうじてかつて道だった名残を示している。
もはや道なき道だ。
街道を進むのとはわけが違う。
行手を阻むのは倒木や生い茂った草葉だけではない。
足を取ろうとする窪みはそこかしこにあり、雨が流れて出来た傾斜も数えきれない。
そもそも、進む先が本当に目的地に向いているかを判別する手段も乏しい。
そしてもちろん、数多の獣や魔種がそこには跋扈していた。
人跡が絶えて数年。
それは、一度は人の領域となったはずの土地が完全に失われるには十分すぎる時間である。
あなたが開拓村の跡地に辿り着くまでには、野営を挟んで丸2日以上を要した。
道中に受けた襲撃は大小あわせて4度。
遠巻きにあなたをうかがっていた数ならばその5倍にはなる。
全てを大過なく退けはしたものの、楽な道のりとは到底言い難かっただろう。
かつての開拓村は見る影も無く崩れていた。
十数ほどの家屋は屋根を失い、壁を無くし、寒々しい骨組みを晒している。
その床からも、踏み固められた道からも、無秩序に名も知れぬ草が伸びて全てを覆っていた。
いっそ無慈悲なまでの緑に沈み、どこまでが家であるのかも分からない。
村を囲む柵も酷い有様だ。
腐り、外れ、倒れている部分も多い。
聖火の結界なぞとうの昔に失われていると分かりきってはいるが、それを視覚によって強調するかのようだ。
その周囲は低木を始めとした背の低い植物が生える岩山となっている。
村落跡がある部分こそ平地だが、少し踏み出せば激しい急斜面となり、遥か上方に消える尾根までがスゥと伸びる。
硬く冷たい山の合間に閉ざされた、そんな土地だ。
東西と北方をぐるり囲われ、辺りには薄寒い陰ばかりが落ちている。
およそ人の領域と呼んで良い土地ではない。
檻のような岩山のそこかしこから人外の息吹が届くようですらあった。
そんな村の中。
かつて街道に続いていたはずの入口から、あなたは見た。
「────……」
村の中央、原型を保つ教会の前に人影がある。
灰色のモヤのようだった。
正装としてのローブの上にブレストプレートを身につけた姿。
自然体で下げられた右手にはメイスを、胸の前に掲げられた左手にはバックラーを、揺れもせずに構えて佇んでいる。
肉の身を失い、とうに正気も消え果てていように、未だひとり立ち続ける女がそこに居た。
色彩を失った、光の無い瞳があなたを捉える。
| 判定内容 | 対象の観察 |
| 判定方法 | 2D6+感覚SB 8以上で成功/やや難 |
| 判定結果 | 2D6+3=10(成功) |
……いや、それは気のせいだ。
あなたはその場で数歩、横に移動した。
それだけで亡霊の視線はあなたから逸れる。
正確には、視線からあなたが逸れたのだ。
どうやら、明確な意識はないのだろう。
すでに互いを明確に視認できる距離にいて、動きを追わないのはそうでなければ不自然だ。
ただ立っているだけ、前を向いているだけで、その先にたまたまあなたが居たに過ぎない。
いやそもそも、たゆたう煙のような様は肉の身とは明らかに異なる。
眼球とあなたが認識しているものさえ、果たして本当に機能しているかどうか。
だが、だからとあなたを知覚できないなどとは思うべきではない。
村の柵の内側。
そこには雑多な『モノ』が転がっていた。
よくよく研がれた鋭い長剣。
使い込まれたモーニングスター。
打撃にも転用できるよう調整された跡のある魔術師の杖。
そして……身を守る防具や衣服と、その
この依頼は、数年に渡り繰り返し出され続けてきたという。
なのに何故いまだに解決を見ていないのか。
その余りにも明白な答えが白骨となってあなたの目の前にある。
また、冒険者の亡骸の他に、野の獣の死骸もポツリポツリと見える。
村に踏み入った者を無差別に襲うという情報はおそらく間違いではなさそうだ。
| 判定内容 | 対象の観察 |
| 判定方法 | 2D6+感覚SB 7以上で成功/普通 |
| 判定結果 | 2D6+3=12(成功) |
……転がっている武具は、まだ使えるようにあなたには見えた。
どれほど状態を保っているかは手に取って調べてみなければわからないが、探せば有用なものはあるかもしれない。
女の目の前にある物は回収が難しいとしても、村の中を探ればまた別の冒険者の得物が見つかる可能性は高い。
また、武具以外にも何かが発見できるかもしれない。
村には開拓のための物資や道具が貸与されたままとなっているそうだ。
本当に貴重な価値あるものは慣例から言って教会の中であろうから、ファントムをどうにかしてからでなければ回収は難しいだろうが。
| 地形効果 |
| 『廃墟』 クエスト中、アイテム入手の機会が多い クエスト終了後、状況によって追加報酬獲得 |
亡霊に動きはない。
あなたが何もしなければ、永遠に立ち尽くしているのではないかと感じるほどに。
この敵に対し、どう出るかはあなたの自由だ。
足を踏み出して村に進入してみるのも良いだろう。
情報が確かならそれだけで戦闘になるはずだ。
まずは一当てし、相手のおおまかな実力をはかる手はある。
ファントムは発生した地点、感情の源となった箇所から遠く離れる事はできない。
今回の場合は、村の柵を越えてくる事はないと考えて良いだろう。
危うくなったとして逃走は不可能ではない。
コッソリと、隠れて村を探っても良い。
転がる武具や道具を集めれば亡霊との戦闘を優位に出来る可能性はある。
そのまま相手の背後を取り殴りかかるのもひとつのセオリーだ。
ただしその場合、敵からの奇襲には十分注意すべきだ。
相手は肉の体をもたない特殊な魔種である。
あなたに気付いて近寄ってきたとして、親切に足音を立ててくれるなど期待すべきではない。
そして、もっと消極的に動くならば、やはり村の外からということになるだろう。
あなたは空を見上げた。
山に閉ざされた空の中で、太陽は中天から傾いていこうとしている。
……ここはもう、人の領域ではない。
日が落ちれば余計なものもうろつき始めるだろう。
そういった点にも、気を払わねばならない。
さて、とりあえずはどうすべきか。
あなたの決定は……。
| 名前 | (あなたが自由に決めて良い) |
| 職業 | 神官 |
| HP | 36/36 |
| MP | 17/17 |
| 筋力 | 8 | SB=2 |
| 耐久 | 14 | SB=4 |
| 敏捷 | 9 | SB=3 |
| 器用 | 7 | SB=2 |
| 感覚 | 11 | SB=3 |
| 知識 | 13 | SB=4 |
| 精神 | 14 | SB=4 |
| 幸運 | 8 | SB=2 |
| 装備 | 性能 |
| メイス | 『2D6+筋力SB』の物理ダメージ |
| バックラー | 防御成功時、 物理ダメージを『耐久SB』追加軽減 |
| 特殊技能 | 詳細 |
| 重撃 | 攻撃命中時、『朦朧』判定 クリティカル時、『朦朧』確定付与 |
| 信仰 | 秘蹟の使用権を得る |
| 治癒 | 初歩の秘蹟、消費MP5。 肉体をあるべき姿に戻す。 『1D6+精神SB』のHP回復。 |
| 守護 | 初歩の秘蹟、消費MP3。 肉体があるべき姿を保つ力を強める。 『精神SB』だけ全ダメージを軽減。 効果時間は1戦闘。 |
| 賦活 | 初級の秘蹟、消費MP5。 肉体と魂をあるべき姿に引き戻す。 状態異常を回復。 |
| アイテム | 詳細 |
| チェインメイル | 1度だけ死亡を回避 |
あなたの行動は?
-
正面から戦いを挑む
-
村の外から対話を試みる
-
隠れて村に入り、内部を探る
-
隠れて村に入り、奇襲を仕掛ける
-
村の柵の外から調べてみる
-
しばらく様子を見る