読者参加型TRPG風小説   作:矢端トラム

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クエスト『廃墟の????いファントム』(3/?)

 

 

 

思考の末、あなたは村の入口へと戻った。

そしてそこから少し離れた上で、教会の扉が見える位置に身を落ち着ける。

つまり、神官戦士の亡霊を監視できる場所にだ。

 

行動を起こすべきは今ではない。

討伐にせよ、探索にせよ、隙が出来るのは夜だろう。

それまでは静かに身を休めるべきだとあなたは判断した。

無用な消耗を避け、体力と気力を温存する事は冒険者の基本である。

単独で行動している時は、特にだ。

 

 

 

判定内容休息による回復
判定方法1D3(HP)

1D3(MP)

判定結果1D3=3(HP)

1D3=3(MP)

最大値を超過した回復は効果なし

 

 

 

日はゆっくりと暮れていく。

 

山に囲まれたこの場所では、すでに太陽の姿は見えない。

辺りはとうに暗く、段々と風景が闇に溶けて掠れていくようだった。

秋の夕陽に染まる天頂だけが鮮やかに色づいている。

 

そんな中で、あなたは自分がやけに落ち着いている事に気がついた。

全身から適度に力が抜け、心にも強張りがない。

山間の涼しい風のためだろうか。

それとも夜に備えようと、冒険者の本能が働いているのか。

理由はわからないが、幸いな事に変わりはない。

 

ならばと、あなたはもう一段リラックスする事とした。

 

野営道具から小さな鍋を取り出し、乾燥した大麦と水を火にかける。

この大麦は収穫後そのままのものではない。

一度炒めた後に粗く砕いた挽き割り麦である。

丸のままの麦よりも格段に水を吸いやすい挽き割り麦は、さほど時をかけずに柔らかく食べやすい状態へと変わっていった。

 

そこに、あなたは続く食材を取り出した。

羊のチーズだ。

ギュッと締まったハードタイプで、長期間の保存がきき栄養価が高く、旅にはうってつけの一品。

ナイフで削って投入してやると、熱でとろけて麦とよく絡む。

 

2種の食材が小鍋の中で渾然一体となるまではすぐの事であった。

あなたは程よいところで火を止めると、匙でよくかき混ぜてからひと掬いを口に運ぶ。

 

羊の乳らしい濃厚で深みのあるコクが口いっぱいに広がった。

美味である。

塩味が強いチーズであったのも全く正解だ。

たっぷりと量のある穀物の満足感と合わせるのにこれ以上の選択はそうそう無い。

野営で食べられるチーズ粥としては上等の部類である事は疑いなかった。

 

小鍋ひとつ、しっかり一人前を平らげたあなたは、オマケとばかりにレーズンを取り出した。

天日で干され甘味が凝縮された葡萄は、じっくり舌の上で転がしてもよし、噛み締めて一気に味を弾けさせてもよしの優れ物。

あなたがどちらを楽しんだかはあなた次第だが、どちらにせよ心身の疲れに大変に良く効いたに違いない。

 

あなたの腹は満たされ、精神力も万全まで充填された。

これならばこの後何が起こっても十全の力を発揮できるだろう。

 

 

 

 

 

そうして、やがて完全に日が暮れた。

 

月のない夜がやってくる。

周囲は完全な闇に呑まれ、手元でさえハッキリとは視認出来ない。

事前に用意しておいたランタンがなければ行動は不可能だっただろう。

 

あなたはじっと時を待つ。

ランタンの光を隠し、物陰に身を潜め、息を殺して。

 

教会前の亡霊は闇の中でも良く見えた。

光を放っているわけではないが、闇に溶けているわけでもない。

周囲の明るさはまるで関係はないようだ。

そこだけが世界のあらゆる要素から外れ、ポツリと浮かび上がっている。

異質、という言葉が似合う。

それはもう2度と取り返しのつかない、生命と亡霊の差異を表しているようにあなたには思えたかもしれない。

 

亡霊に変化はない。

静かに、ただ立ち尽くすのみだ。

 

 

 

静寂は長く、長く続いた。

夜の底に、虫の声が響くだけの沈黙がわだかまる。

 

 

 

……そんな中に、あなたは確かに聞いた。

 

()()()()

ジャラジャラと、このような山の中に聞こえるはずのない音色が響く。

それも1本ではない。

何本もの鎖の束を引きずり、猛速で駆け回る様があなたの脳裏に描かれる。

 

あなたの背筋を不吉な予感が駆け上った。

()()()()()()()()()がそこに居る。

生命に反するものが、魂もつ獣全ての仇敵がそこに居るぞと、脳髄が警鐘を掻き鳴らす。

 

そしてそれは。

 

「────ォォォォォオオオ──」

 

山の中から響き渡る、狼の遠吠えに似た声を耳にした瞬間に、最大に達した。

 

 

 

判定内容状態異常抵抗/朦朧
判定方法2D6+精神SB

9以上で成功/やや難

判定結果2D6+4=10(成功)

 

技能判明/バーゲスト
『死を喚ぶ声』

魔術

戦闘前に確定使用

聞いた者に状態異常『朦朧』判定

この判定には『精神』を用いる

 

 

 

あなたは咄嗟に耳を塞いだ。

 

生物としての本能。

神官としての知識。

冒険者としての経験。

その全てがこの声を聞いてはならないと警告していた。

 

揺らされているのは空気ではなく、魂だ。

この遠吠えに囚われたなら正気は削れ消えていくだろう。

 

なるほど、と。

この場でも冷静さを保っていればあなたは納得しただろう。

文献に残される事例が少ないわけである。

心弱い者ならば、出会う以前に終わりが確定するのだから。

 

 

 

だがあなたは耐えた。

良く鍛えられた精神は魔種の侵略を許す事なく、あなたは未だ万全のままだ。

 

そして、確認する。

今の咆哮は真っ当なものではない。

おそらくは魔術によるものだとあなたは理解した。

ならば、霊体であるファントムにも影響を及ぼした可能性がある、と。

 

 

 

判定内容状態異常抵抗/朦朧/ファントム
判定方法2D6+精神SB

8以上で成功/やや難

判定結果2D6+10=14(成功)

 

 

 

……しかし、それは全くの的外れだった。

 

()()()()もしていない。

まるでそよ風が吹き抜けたのと変わらないとでも言うかのようだ。

亡霊は耳を塞ぎさえせず、泰然と佇んでいる。

 

異常と言って良い。

例えその魂がとうに狂い果てていたとしても。

この声を正面から受けてただ聞き流せるなど、明らかに逸脱していた。

 

あなたは確信する。

この亡霊は、通常のファントムの規格から大きく外れている。

 

 

 

情報一部開示
『????い』

?????????????

精神ステータスが6D6強化

?????????????????

 

 

 

聞こえなかった、というわけでは当然ないらしい。

ゆるりと、ファントムが動いた。

声の発された方向へ体を向け、盾を前に、メイスを後方へ。

敵を感知し、明らかに戦闘に備えていた。

 

 

 

判定内容読唇
判定方法2D6+感覚SB

9以上で成功/やや難

判定結果2D6+3=7(失敗)

 

 

 

「………………」

 

その唇が動く。

肉を持たない彼女からは息がこぼれる事はなく、音は伴わない。

それでもその口の動きから何かがわからないかと目をこらすものの……。

 

あなたが何かを読み解く前に、時間切れが訪れた。

 

 

 

はじめに感じ取れたのは音だ。

先に聞いた鎖の音色。

ガラガラジャラジャラと、夜の静寂にふさわしくない耳障りな金属音が山間の底にこだまする。

 

次に届いたのは臭いだ。

肉が爛れ、不潔な汁がしたたり落ちる様をまざまざとあなたに幻視させる。

嗅ぐだけで鼻が腐ったかと惑うほどの異臭が漂い始めた。

 

そして最後に。

それらを引き連れて、ふたつの赤い光が現れた。

爛々と、欲望を溢れさせた双眸が闇の中に尾を引いて長い残光を描く。

 

「フゥゥ……ゥルル」

 

バーゲストだ。

夜闇のためにハッキリとは見えないが、おそらくは伝承の通り狼には似ているのだろう。

金属音に紛れてかすかに聞こえる足音と唸り声から、あなたはかろうじてそう判断した。

 

 

 

判定内容隠密
判定方法2D6+敏捷SB(あなた)

2D6+感覚SB(バーゲスト)

比べ合い/大きい方が成功

判定結果2D6+3=12(あなた)

2D6+4=11(バーゲスト)

 

 

 

どうやらバーゲストはあなたの存在に気付いていないようだ。

意識を向けられた気配が全くない。

……いや、そもそも赤い瞳はひとつの存在しか追っていない。

 

「ハァ、ハァ、ァァ、ウウ……」

 

陶然と、という言葉がちょうど当てはまる。

魂喰らいの怪物の目にはファントムはよほど美味そうに映るのか。

上等の酒に酔ったような音色の吐息がその口からは漏れていた。

もし今日が月の明るい夜だったなら、ダラダラとあふれる唾液も良く見えたに違いない。

 

「…………」

 

対する亡霊は巌のごとく。

もう唇を動かす事さえなく、凍りついた表情のまま。

けれど光を失ったはずの瞳がまっすぐにバーゲストを睨んでいる。

 

 

 

滅んだ村の、教会の前。

2体の魔種の睨み合いは、そう長くは続かなかった。

 

 

 

判定内容行動順の決定
判定方法2D6+敏捷SB

比べ合い/大きい方が先制

判定結果2D6+1=8(ファントム)

2D6+5=13(バーゲスト)

 

 

 

先制は当然のようにバーゲストだった。

言うまでもなく痺れを切らしたのだろう。

滾る食欲を抑えつけるような理性がこの獣にあるとは、あなたには思えなかった。

 

「アァゥ、ルルッ!」

 

間の抜けたような鳴き声。

しかしそれとは裏腹に、その一撃は鋭かった。

 

響き渡るは鎖の音。

重厚な、そして耳障りな轟音とともに……バーゲストの体から伸びた()()()()が振り回される。

月ほどではなくとも、星の明かりの下にあなたは見た。

鋼の色と硬度をまとった腸である。

それが幾本もバーゲストの破れた腹から垂れ、そして自在に操られていた。

 

 

 

判定内容バーゲストの攻撃
判定方法2D6+器用SB(命中力)

3D6+筋力SB(攻撃力)

判定結果2D6+3=8(命中力)

3D6+3=16(攻撃力)

 

 

 

さながら鞭のようだ。

しかもそれが複数本、まるで別々の方向からファントムへと襲い掛かる。

 

自分が受けたなら。

そう想像して、あなたをして無傷で済むかは運次第と言わざるを得ない一撃。

 

 

 

判定内容ファントムの防御
判定方法2D6+耐久SB

命中力以上なら成功

判定結果2D6+8=14(成功)

 

判定内容ダメージ計算
攻撃力16
補正防御/-8(50%)

装備/-8(バックラー)

最終ダメージ0

 

 

 

それを。

命なき神官戦士はアッサリと凌ぎ切った。

焦りなど微塵もない。

この程度は出来て当たり前だと言わんばかりに。

 

「──……」

 

柔らかく、息を吐くような口元の動き。

それをあなたが見て取った次の瞬間に、全ての鎖は無力化されていた。

 

わずか半歩の回避から始まり。

重いはずの鋼の鞭は撫でるような盾の動きで逸らされ。

メイスを絡め取って奪うはずの3本は、どういったからくりか逆に手玉に取られ、不恰好な塊となって地に落ちた。

 

無駄な動作などかけらも無い。

加速する攻め手を置き去りに、盾とメイスはさらに加速し、やがて()()()()()()()()()()()()防御を成立させ始める。

 

未来予知めいた先読みだ。

苛烈に攻め立てる黒狼が追い詰められ、守りを固めている亡霊が余裕を積み重ねていくという異常。

 

その果てに、バーゲストが渾身の力を籠めて放っただろう、他の鎖の陰に巧みに隠された本命の1本は、完全なる見切りの元に神官戦士の手中に収まっていた。

 

 

 

バーゲストが驚愕や混乱に声を漏らす暇もない。

鎖を引かれるまま体勢を崩してまろび出た黒狼の顔面に、反撃の鉄塊が迫る。

 

 

 

判定内容ファントムの攻撃
判定方法2D6+器用SB(命中力)

2D6+筋力SB(攻撃力)

判定結果①2D6+2=7(命中力)

②2D6+2=11(命中力)

2D6+3=6(攻撃力)

 

技能判明/ファントム
『不動』

受けたダメージが最大HPの10%以下の時、

直後の行動の成功判定を2回行い、

より都合の良い結果を採用できる

 

判定内容バーゲストの回避
判定方法2D6+敏捷SB

命中力以上なら成功

判定結果2D6+5=14(成功)

 

 

 

並の獣であれば完全に捉えられていただろう。

しかしバーゲストもさるもの。

反撃に対して見せた反応は驚くべき鋭さだった。

 

叩き落とされた鎖が蠢き、地面を掴む。

そして、バーゲストは加速した。

引き寄せられるに抵抗せず、むしろ自らファントムの懐に飛び込んでいく。

 

これによりメイスの一撃はタイミングをずらされた。

有効打は入らない。

ファントムはそう瞬時に判断したのだろう。

好機に固執することなく鎖を手放してわずか一歩を動き、反撃の反撃を危なげなく回避してのけた。

 

 

 

あなたは目を見開いたかもしれないし、納得と理解に深く頷いたかもしれない。

 

何人もの冒険者の討伐行。

バーゲストによる複数回の襲撃。

これらを退け続けてこられた理由は把握できたはずだ。

 

余りにも守りが()()

その技巧は極点に達していると、そう断言しても良い。

しかもただ硬いだけではなく、それを攻撃に転用する業も持ち合わせている。

 

 

 

情報一部開示
『????い』

耐久ステータスが3D6強化

精神ステータスが6D6強化

?????????????????

 

 

 

あなたは確信する。

バーゲストはファントムを殺し切れない。

バーゲストが鎖の鞭をこの先幾度振るったとして、それがファントムの命に届くとは考え難い。

 

だが同時に、ファントムもバーゲストを易々とは撃退出来ない。

 

亡霊の守りには劣るが、バーゲストの俊敏性も相当なものだ。

反撃の槌がその身を捉え切るのには時間を要するだろう。

 

優位なのは技量で勝るファントムだ。

この戦闘が行き着く先は十中八九、徐々にバーゲストが体力を削られての撤退と思われる。

 

 

 

その決着まではおそらく長くかかる。

あなたは焦らず、ゆっくりと思考を回した。

 

今現在、ファントムもバーゲストもあなたには気付いていない。

互いに敵を前にしている以上、奇襲は容易に成功するだろう。

 

どちらか片方に加勢すれば、おそらく天秤は動く。

あなたは自身のメイスをじっと見た。

その一撃(重撃)の重さには多少なりとも自信があるはずだ。

背後からの奇襲(確定クリティカル)によってファントムに叩き込めば、守りの業には綻びが生まれるに違いない。

秘蹟の光を纏った打撃は魂にも響き、その存在を揺らすはずだ。

 

それは逆、バーゲストにも言える事。

あなたがもしファントムではなくバーゲストをこそ脅威と感じるなら、そちらに殴りかかるのも良い。

 

共倒れを狙うならば、その両方を様子を見つつ行う事になる。

当然、最初の一撃で存在が露見した後は乱戦の形にはなるだろう。

だがおそらくバーゲストはファントムを優先する。

危険度はそう大きくはないはずだ。

 

あるいは、この隙に村を探索する手もある。

先に訪れた冒険者の武具。

村に残された様々な道具。

そういったものが見つかれば別の道が開ける可能性はある。

運次第ではあるが、探索が終わるまで2者の戦闘が続いていれば、あなたはより大きな優位を手に戦場に飛び込めるかもしれない。

 

もちろん、何もせず見守っても良い。

気配を殺して待機し、さらなる情報収集につとめ、バーゲストが立ち去ってからファントムに挑む。

そういう道筋もありだろう。

単一の目標に集中できるのはこの選択の強みだ。

万に一つ程度ではあろうが、バーゲストが魂喰らいの本懐を遂げ、あなたは労せず「ファントムは討伐された」という結果だけを手にするなどという可能性もある。

 

あなたは冒険者だ。

依頼達成という結果さえ出せたならば、その手段を咎める者もいない。

 

 

 

名前(あなたが自由に決めて良い)
職業神官

 

HP36/36
MP17/17

 

筋力8SB=2
耐久14SB=4
敏捷9SB=3
器用7SB=2
感覚11SB=3
知識13SB=4
精神14SB=4
幸運8SB=2

 

装備性能
メイス『2D6+筋力SB』の物理ダメージ
バックラー防御成功時、

物理ダメージを『耐久SB』追加軽減

 

特殊技能詳細
重撃攻撃命中時、『朦朧』判定

クリティカル時、『朦朧』確定付与

信仰秘蹟の使用権を得る
治癒初歩の秘蹟、消費MP5。

肉体をあるべき姿に戻す。

『1D6+精神SB』のHP回復。

守護初歩の秘蹟、消費MP3。

肉体があるべき姿を保つ力を強める。

『精神SB』だけ全ダメージを軽減。

効果時間は1戦闘。

賦活初級の秘蹟、消費MP5。

肉体と魂をあるべき姿に引き戻す。

状態異常を回復。

 

アイテム詳細
チェインメイル1度だけ死亡を回避

 

あなたの行動は?

  • ファントムに奇襲を仕掛ける
  • バーゲストに奇襲を仕掛ける
  • 共倒れを狙って両方に敵対する
  • この隙に村を探索する
  • 何もせず戦いを見守る
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