読者参加型TRPG風小説   作:矢端トラム

27 / 55
クエスト『洞窟の ???の フェノゼリー』(2/4)

 

 

 

あなたは後退し、洞窟から外に出た。

 

単純な話として。

この洞窟はフェノゼリーの住処である。

つまりは縄張りの最奥と言うことになるだろう。

 

そんな所に踏み込むのは流石にリスクが高い。

だからこそ得られる情報があるとしてもだ。

故にあなたは真っ先にそれを除外した。

 

では探しに歩くのか。

これもあなたは選ばない。

首尾よく出会えれば良いが、上手くいく保証はなく、ただ闇雲に時間と体力を消費する可能性もあった。

最悪なのは狩場で下手な出くわし方をし、手頃な獲物と勘違いされて襲われる事だ。

おそらく言葉が通じるだろう事を考えれば致命的な事態にはなるまいが、面倒で厄介な事には変わりない。

 

となれば、料理でも用意して待つか、周囲を探索するかが無難なところだが……。

 

 

 

あなたはたっぷりと背負わされた荷の中、大半を占める贈り物の内訳を思い返す。

持ち込んだ食材に、あなたは詳しい。

何しろ神々から与えられた物がほとんどで、そして言うまでもなくあなたが神官であるためだ。

 

神に仕える修業のうち、真っ先に覚えるべきは神授の財の適切な取り扱いだ。

信仰の道を歩む上でこれを避けて通るなどできるわけもなく、あなたは一通りのレシピに精通している。

そのどれがどのような味で、一般社会において人気のものはどれかという点も含めて。

 

 

 

……が、それは結局、人間の社会での話だ。

 

あなた達人間とフェノゼリーでは、根本的に種から違う。

同じ食べ物を好むあたり味覚は似ているのだろうが、細かい部分まで同一と考えるべきではないだろう。

 

もし調理するとしても、好みの傾向を知ってからだ。

話はそれからで良い。

 

 

 

そういうわけで、あなたは洞窟に背を向け足を動かした。

相手を知る事。

まずはそこからだ。

そのために、周囲の環境と生活の痕跡を探りに行く。

 

 

 

洞窟の周囲は、いかにもわかりやすい『山のふもと』である。

ところどころ張り付くように緑が茂った大きな岩山がまずあり。

それに同様の山がいくらか連なり、より傾斜が緩く木々の多い小さめの山がこれまたいくつか寄り添う。

そしてその裾野はなだらかに広がる草原だ。

原にはところどころ小さな森がある。

また、山々からは水が湧いているようで何本かの小川も流れ、その辺りは森と並んで特に生命の気配が濃い。

 

良い環境である。

実に住みやすい土地だろう。

それはつまり、他の獣や魔種も大挙して集まるだろう事を容易に予測させる。

 

そんな中に定住しているとなると、件のフェノゼリーはこの一級の土地で多くの敵を相手に縄張りを勝ち取ったという事になる。

種としての能力もあるだろうが、その中でも上澄みの強者たる気配をあなたに感じさせた。

 

 

 

さて、そんな中をあなたは歩き始める。

 

まずは岩山沿いにひと回り、というところだ。

目的はあくまで生活環境の確認による相手の情報の推察である。

あまり遠くまで足をのばす意味はない。

 

 

 

すると、探索を始めてすぐの事だ。

あなたはふと異臭に気付いた。

血の臭いである。

 

ただし、争いの気配はない。

辺りの空気は落ち着いた雰囲気を崩しておらず、いっそのどかな静けさが広がるばかりだ。

肉食の獣が捕えた獲物を貪っている……などという風ではどうやらない。

 

ではどういったことかと、あなたは臭いの元へ向かう。

 

そこはゴロゴロとした岩の転がる一画であった。

大小様々な岩塊が無造作に積み重なり、小山のようになっている。

ちょうど崖際、山の一部が崩落したようにも見えるが……。

 

あなたはもう知っている(知識判定成功済)

フェノゼリーの住処たる洞窟は、おそらく自然のものではなく、掘られたものだ。

では、掘り出した岩はどこへ行ったのか。

その答えが今あなたの前にある小山らしい。

 

見上げるほどの高さに、奥行きも相当にある。

あなたは改めて感嘆したかもしれない。

どれだけの時間と手間をかけたのか。

岩を掘り進む怪力も恐ろしいものだが、体力の方も無尽蔵と言って良さそうだ。

 

 

 

技能一部判明/フェノゼリー
『??の剛体』

最大HPが100%増加

???????????

???????????『????』??

状態異常『疲労』を完全に無効化

??????????

 

 

 

あなたの交渉次第で、この力の持ち主が村の住人となるわけだ。

なんとも頼もしい話である。

 

さて、あなたがここに来たのは血の臭いを追ってのことだ。

方向は間違っていないようで、どうやら臭いは積まれた岩の上から漂ってきている。

 

状況からして、おそらく狩りの獲物の食べ残しだろうとあなたは推察した。

洞窟を掘った後の岩は、普通に考えればフェノゼリーにとって『いらないもの』だろう。

ならばここは『いらないもの』を捨てる場所として使われているのではないだろうか。

 

食べ残しにつられて獣が集まるのを忌避するなら、この上に放り投げて隠すという事はありえそうだ。

何しろ岩は高く、そして不安定に積まれている。

登りたい獣はそう多くはないだろう。

 

だとすれば、岩の上に登ってみれば死骸の状態を確認できるかもしれない。

肉の他にも、果実の皮や種が残っていればここにある可能性は高い。

つまり、嗜好を知る手がかりだ。

一般的なフェノゼリーの好みはすでに知っているが、情報は多い方が当然良い。

実は肉しか食べない偏食家に果実を差し出して機嫌を損ねる、などという事態は避けるに越したことはないのだ。

 

 

 

判定内容登攀
判定方法2D6+筋力SB

6以上で成功/普通

判定結果2D6+2=9(成功)

 

 

 

ならば確認しないわけにはいかない。

あなたは岩に手をかけ、自分の体を持ち上げた。

そしてするすると登っていく。

 

高さはそれなりにあり、積まれ方も乱雑で不安定ではある。

が、手や足を引っ掛けるにちょうど良い箇所はそれこそ山のようにあった。

さほど時間をかけることもなく、あなたは岩の上に到着する。

 

 

 

そうして、あなたはそれを発見した。

 

大きな鹿だ。

頭と胴が泣き別れになっており、完全に死んでいるとハッキリ分かる。

断面はメチャクチャに荒れている。

道具や刃物の類を使ったものでは断じて無い。

 

巨大な力で引きちぎられたか、捩じ切られたか。

いずれにせよ尋常な死に様ではなかったが、それは良い。

すでにここまでの情報であなたはフェノゼリーがとんでもない力の持ち主だと知っている。

この程度の殺し方はやろうと思えばやれるだろう。

 

ただ、それとは全く別におかしな点がある。

この鹿には()()()()()()()()()のだ。

首は落とされ、喉元から腹の下まで開かれてはいる。

だがたっぷりとついた肉も内臓もそのままだ。

折角の獲物にひと口も手を付けずに廃棄されているということになる。

 

あなたはもう一度死骸をよくよく観察する。

 

 

 

判定内容?????
判定方法2D6+感覚SB

8以上で成功/やや難

判定結果2D6+3=8(成功)

 

 

 

……破られたような腹の断面。

そこを目にした時に生じた違和感に、あなたは顔を近付けた。

 

小さな傷だ。

牙の噛み跡だろうか。

腹の内側、太い血管の周囲に大量の小さな穴が並んでいる。

 

 

 

判定内容生物知識
判定方法2D6+知識SB

8以上で成功/やや難

判定結果2D6+4=16(成功)

クリティカル

 

 

 

その傷跡にあなたは心当たりがあった。

 

吸血痕である。

この辺りに生息するコウモリの一部には、動物の血を吸って生きる種がいる。

昼間は()()に潜み、夜になれば飛び立って眠りについている獣に忍び寄り、こっそりと牙を突き立てて流れる血を吸うのだ。

 

そしてこの種は社交性に富む。

通常で100、多ければ1000匹にも達する大集団で活動する彼らは常に協力し合って生きている。

研究によれば、上手く獲物を見つけられなかった個体は、多く血を吸えた個体から口移しで血を分けてもらう習性さえもつという。

 

それをあなたはどこかで見聞きしていた(クリティカル特典)

その社交性から、他の生物との共生を行う例があるという事も。

 

あなたの脳裏に想像が描かれる(追加情報獲得)

大きな鹿を担いだフェノゼリーが洞窟をのしのし歩き、奥に辿り着くとその獲物を怪力で引き裂く。

するとその途端、天井に張り付いていたコウモリ達が鹿に群がり、良い場所を取り合って押し合い圧し合い、噛み付いては血を啜る。

そして、フェノゼリーは皆元気で良いなどと笑いながら巨体を揺らして見守るのだ。

 

 

 

情報一部開示
洞窟の ???の フェノゼリー
????????????

配下の生物が配置される

 

 

 

その時だ。

あなたは視界の隅で何かが蠢くのを捉えた。

 

咄嗟に身構え、メイスを抜く。

一体何者か。

危険な生物であるなら、足場の不安定な岩の上で戦うべきかどうか。

秘蹟の護りに身を任せて転げ落ち、安定した場所に誘導する方が利があるか。

そういった選択肢を瞬時に脳内に巡らせる。

 

……が、その正体を見てあなたはメイスを戻した。

 

岩の隙間から染み出るように現れたのはスライムである。

体のほとんどが消化液で構成されている、蠢く粘液めいた姿。

別名を死体漁り。

朽ちた木や草、動物の糞、あとは腐肉などに群がって消化するだけの、さほど害のない生き物である。

例外として年を経て巨大に成長した個体は自ら死体の生産に着手する事もあるが、そこまで育つのは稀とされる。

 

黒みがかった赤と白のまだらという色合いのスライムは、岩の上をズルズルと移動して鹿に近付いていく。

食事の時間らしい。

 

 

 

判定内容生物知識
判定方法2D6+知識SB

7以上で成功/普通

判定結果2D6+4=10(成功)

 

 

 

このスライムという生き物であるが、ひとつ特徴がある。

普段食している物に応じて体色が徐々に変化していくのだ。

朽ち木であれば茶や灰、草であれば薄緑、といった具合。

 

それを踏まえてこの個体を見てみると……。

肉と血、そして骨の色だろうか。

他の色彩が一切混じっていない辺り、相当長い間同じメニューが続いているようである。

つまり、継続的にここには死骸が放り込まれているという事だ。

骨だけでなく、肉がついたままの状態で。

 

あなたの想像がまた少し補強された。

おそらく、狩りの獲物である鹿はフェノゼリー自身が食べるためのものではない。

仲間か、家畜か、それとも愛玩動物か。

扱いは不明だが、洞窟に共に住むコウモリに与えている物なのだろう。

あるいは、このスライムもその中に含まれているのかもしれない。

 

 

 

スライムはやがて鹿に完全に覆い被さった。

死骸の表面がゆっくりと溶け始め、かつての命は養分へと変わっていく。

 

推定ゴミ捨て場たる岩の上には、他に何も見当たらない。

ところどころにスライムが吸収し忘れたらしい血の跡がぽつぽつと残るのみだ。

この場にこれ以上見るべき点はなさそうだ。

 

あなたは慎重に岩を下り、安定した地面へと戻っていく。

 

 

 

 

 

その後、周囲をひと回りしてあなたは洞窟前に戻った。

太陽は中天に登り、ちょうど昼頃といったあたりだ。

 

目立った収穫はない。

小さな森や小川のあたりも見回ったが、ごく普通の環境が広がるばかりであった。

 

つまり、巧みな罠が仕掛けてあったり、畑のようなものが作られていたりといった、目を見張るような異状はなかったという事だ。

 

大きな足跡の分布や乱雑な採取の痕跡から、魚を獲り若草や果実を食しているとわかるのみ。

どうやら、ここに住むフェノゼリーは種としての一般的な嗜好から逸脱していないようだ。

あなたの持ち込んだ贈り物はおそらくそのまま通用するに違いない。

 

 

 

そこまで考えたあなたの視界に、巨大な何かが現れた。

 

ひとつ隣の山からである。

木々の間を『よっこいしょ』と抜けて平地に出たその姿は、まさに書物であなたが目にした通りのものだ。

 

ほとんどまん丸の毛むくじゃら。

太く長い茶色の剛毛は全身をくまなく覆い、地肌を一切覗かせない。

その下部からはやはり毛だらけの短い足、側面からは腕が伸びる。

 

間違いなくフェノゼリーだ。

 

 

 

その個体は片手に()()()と掴んだ猪を引きずり、洞窟へと歩き始め……。

そこに待つあなたの姿を見つけたのか、ピタリと立ち止まった。

 

 

 

判定内容野生の知恵
判定方法2D6+知識SB

7以上で成功/普通

判定結果2D6+4=13(成功)

 

 

 

対し、あなたは身を低くしてしゃがみこんだ。

 

こちらに害意はなく、逆らうつもりもないと示す姿勢である。

意図せず同種の縄張りに踏み込んでしまった肉食獣が争いを回避するために行う事がままあるという。

 

それはどうやらフェノゼリーにも通じたようだ。

空いている左手で腹(?)のあたりの毛をひと撫でし、歩行を再開する。

その様子に過度の警戒は感じられなかった。

 

 

 

そうして声が届く距離に近付いた後、あなたはフェノゼリーへと訪問の理由を告げた。

 

自身が人間という種の生き物である事。

たまたま見つけたフェノゼリーと交流を持つために訪れた事。

友好を深めるために贈り物を用意している事。

そして、可能であれば頼みたい事があるのだと。

 

フェノゼリーの返答は。

 

「……おお! ニンゲン! ニンゲンか! 聞いた事があるぞ……美味い飯がたらふく食える楽園への道を知っているとかいう……あの伝説の!」

 

体高だけであなたの倍近い巨体を揺らしての歓喜だった。

 

「うむ、うむ、確かに昔長老から聞いた通りだ。小さく、か細く、なのにそれでいて──」

 

フェノゼリーは高揚を言葉の端に滲ませながらあなたへと手を伸ばした。

とにかく大きい。

指の一本だけであなたの肘から拳の先までと同等だ。

 

それが迫る様は恐怖を誘うものであったろうが、あなたの平静を揺らすほどではない。

あなたはフェノゼリーの指がそっと衣服の上を撫でていくのを受け入れた。

 

■ ■ ■ ■(良い毛並)! いいな、良い、素晴らしい! どの獣にもない手触りだ! これが寝物語に聞いた、かのニンゲンの毛並か! まさか本当に実在し、しかも俺が出会えるとは! 我らが太祖、暗く長きカゲの導きに感謝を! なんと喜ばしい日であるか!」

 

魔種の言語をよく学んだあなたでも分からない単語はあった。

が、意味は類推できる。

フェノゼリーのコミュニティにおいて、毛の触り心地を賞賛する言葉なのだろう。

 

神官の正装といえば羊毛で作られたローブである。

あなたが今現在纏っているものも当然そうだ。

どうやらフェノゼリーは羊毛を大層気に入ったらしい。

衣服ではなくあなたの毛だと勘違いしている様子ではあるが。

 

 

 

「ああ、いかんいかん、興奮しすぎたようだ。わざわざ尋ねてくれた客人なのだ、歓迎しなければな! さあこちらへ! ちと狭いが自慢の我が家だ。話は中でゆっくりするとしよう」

 

フェノゼリーははたと身を起こし、洞窟へ入りあなたを手招いた。

天井や壁に時折体をこすり、若干窮屈そうにしながらである。

あなたには広いと感じられた洞窟も彼にはそうでもないようだ。

 

 

 

その案内に応じて後に続きながら、あなたは考えた。

これまでの情報を踏まえて、このフェノゼリーにはどう接するべきだろうか?

 

 

 

名前(あなたが自由に決めて良い)
職業神官

 

HP36/36
MP17/17

 

筋力8SB=2
耐久14SB=4
敏捷9SB=3
器用7SB=2
感覚11SB=3
知識13SB=4
精神14SB=4
幸運8SB=2

 

装備性能
メイス『2D6+筋力SB』の物理ダメージ
バックラー防御成功時、

物理ダメージを『耐久SB』追加軽減

 

特殊技能詳細
重撃攻撃命中時、『朦朧』判定

クリティカル時、『朦朧』確定付与

信仰秘蹟の使用権を得る
治癒初歩の秘蹟、消費MP5。

肉体をあるべき姿に戻す。

『1D6+精神SB』のHP回復。

守護初歩の秘蹟、消費MP3。

肉体があるべき姿を保つ力を強める。

『精神SB』だけ全ダメージを軽減。

効果時間は1戦闘。

賦活初級の秘蹟、消費MP5。

肉体と魂をあるべき姿に引き戻す。

状態異常を回復。

 

アイテム詳細
チェインメイル1度だけ死亡を回避

 

あなたの行動は?

  • 率直に真正面から移住を要請する
  • 武力を匂わせ威圧的に交渉する
  • へりくだり機嫌を取る
  • 時間をかけて仲を深めてから勧誘する
  • 数日をかけて様子を見る
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。